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カスタマードリブンがエンジニアを不幸にする。
ベンチャー企業のプロダクトマネージャーとして、1年半過ごしてきて、大手SIerから転職した当初は気づかなかった”企業選びの重要なポイント”が掲題の内容です。
○○ドリブン
そもそも、○○ドリブンという単語自体が、SIer時代は聞き慣れなかった言葉です。
要約すると、○○ドリブンは、辞書的な意味で言うと「○○に突き動かされた」と言う意味ですが、現代のビジネス用語としては、「○○を起点にした、○○を元にした、○○主義」と言った意味で使われることが多いように感じます。
例をあげると、データドリブン、テクノロジードリブン、カスタマードリブン、プロダクトドリブン、ハートドリブン、議事録ドリブンなど、様々な○○ドリブンが飛び交っておりますが、今回は以下の社風で”エンジニアの幸不幸が左右される”と言う話をしたいと思います。
カスタマードリブン⇄プロダクトドリブン
カスタマードリブンとプロダクトドリブン
そもそも、”カスタマードリブンとは何なのか。そして、プロダクトドリブンとは何なのか”、について述べたいと思います。
カスタマードリブン
「顧客主義」のことです。顧客の声に耳を傾け、顧客の意見を取り入れてマーケティングなどを行うという考え方です。
カスタマードリブンな会社(個人見解)
人材業界、広告業界、証券業界、保険業界、SIerなど、営業力が強い企業、または受託系の企業、BtoBの企業が多い傾向です。
プロダクトドリブン
ユーザーや顧客の意見をベースとするが、最終的なプロダクトの方向性、どんな機能を開発するかの”意思決定権はプロダクト側にある”と言う考え方です。
プロダクトドリブンな会社(個人見解)
GAFAなどのプラットフォーム型企業、自社開発企業、BtoC、CtoCの企業が多い傾向です。
カスタマードリブンであることの弊害
カスタマードリブンである会社の傾向としては、”営業力の強さ”です。営業(もしくは、マーケ、Bizdev)が獲得した新規顧客、または、運用などで関係性を築き上げてきている顧客に対して、今後の安定収益を見据えてSaaS型のプロダクトなどをオススメすると言う流れが一例と挙げられます。
上記のような場合に、プロダクト側のトップ(プロダクトオーナー)に就くのは元々営業、マーケを担当していて技術もある程度わかる人である傾向があるように感じます。
収益基盤が営業力で大部分を占めている会社、および、エンジニアサイドのオーナー権が営業、マーケサイドの人間が就くような企業だと、”どうしても営業サイドの意見とエンジニアサイドの意見の双方を踏まえた意思決定にならず、営業側の都合に偏る”というのが、私自身が感じる弊害です。
カスタマードリブンは本当に会社のためになっているのか。
プロジェクトの進行が、営業、マーケサイドの都合に左右される(もう少し踏み込んで言うと、さらに先の顧客の都合に左右される)と、”元々予定していたスケジュールに差込が入ったり、顧客の都合に合わせて期日が切られてリソースが逼迫したりする”ので、エンジニアサイドが疲弊していくことは、目に見えてます。
また、悪く言ってしまうと、顧客の要望ばかりを受け入れてしまうと、”プロダクトの思想が薄れてしまい、ある顧客とっては便利なツールになるかもしれませんが、それが業界標準になりうるかと言うとそうではなくなってくる”懸念があります。
まさに、営業、マーケサイドの意見、およびエンジニアサイドの意見の双方を中立的に把握し各ステークホルダと円滑にコミュニケーションを取れる立場がいないと、会社が達成したい目的からどんどん遠ざかっていってしまうと思います。
私は、その役割を担うのが、プロダクトマネージャーと理解しております。
プロダクトドリブンであることの恩恵
プロダクトドリブンであると言うことは、”自分たちが作るプロダクトが起点になる”と言うことです。もちろん、エンドユーザーの声はかなり大事にしますが、言われたことを言われた通り、言われた期限でやると言うことは基本しません。”プロダクトのビジョン・世界観を常に中心に置きながら、ユーザーの声にできる限り寄り添うこと”で形が出来上がっていきます。
そうやって出来上がったプロダクトには、自社の想いというものが垣間見えます。
「And most important, have the courage to follow your heart and intuition.」
「一番大切なのは、心の声や直感に従う勇気を持つことだ」
Appleの創始者スティーブ・ジョブズが、2005年に母校スタンフォード大学で行った有名なスピーチの一言です。
彼の作品である、Macintoshやipod、iphoneは彼の世界観や強い思いが詰まっていること言うまでもないと思います。
少し話が発散してしまいましたが、プロダクトドリブンは、”プロダクトの裏側を支えるエンジニアにも優しい思想”です。なぜなら、プロダクトが目指す方向性をブラさないように企画を検討するため、”プロダクトの思想や世界観に共感していれば、なぜこの機能を作っているのか、と言ったような疑問に苛まれることもほとんどない”と考えます。
プロダクトドリブンな会社をどう見抜くか
プロダクトドリブンの会社を見抜く方法に王道はないと思いますが、私の経験、および周囲の人の話を聞くかぎりは、プロダクトドリブンの会社には以下のような傾向があるように感じます。
プロダクトドリブンな会社の特徴
・社長がエンジニア出身
・社員比率がエンジニアの方が多い
・Vartical SaaSでなくHorizontal SaaS
・会社のミッションがプロダクト中心
・社員のバックグラウンドがプロダクトドリブンな会社の人が多い傾向
・BtoBでなく、BtoC、CtoC
・PMFを達成して少し安定フェーズに入っている。
まとめ
社会人になり約8年近く、カスタマードリブンなプロジェクト進行を経験してきた私にとって、プロダクトドリブンであることは、エンジニアのキャリアを形成するにあたり、”最も重要なファクターの一つ”です。
エンジニアの方の多くは、”自分のペースで技術を極めたい、目的を理解した上で開発を進めたい”、という方が多いと思いますので、上記のような観点で企業選びに迷っている方は、ぜひご参考ください!