ハチの巣

NHK教育テレビ(今はEテレというらしい)で、サイエンス・ゼロという番組をみた。自然界には六角形が溢れている、という話で、色々なところに、まるで誰かがデザインしたかのように、見事な六角形が出来上がっているというのだ。その中で、蜂の巣の六角形だ。一見すると、同じ大きさの正六角形をした巣穴が何千何万と整然と並んでいるのは馴染みがあると思う。ただ、蜂の巣は、働きばちとなる幼虫と、女王蜂となる幼虫では、大きさが2倍以上違う。当然、育てる巣穴もそれに合わせて大きくしなければならない。ところが、大きさの異なる正六角形を並べていくことは幾何学的に不可能だそうだ。


一体どんなやり方でハチたちは一つの巣の中にサイズの異なる正六角形の部屋を作るのかという研究が多国籍チームで行われた。分かったことは、細部の異なる六角形群の間に、五角形、と七角形の列を噛ませることで、隙間を作ることなく、大きさの異なる正六角形群を無レベルことに成功しているという。専門家のコメントがこれだ。「蜂の巣の中で、誰かが指令を出しているわけではない。一匹一匹が自分の持分である身の回りで、最大限の仕事をし、それが大量に積み重なった結果、全体としても、優れた成果となったと考えられる」という。


これは、どこかの国の運営に似ている気がした。そう、アメリカ合衆国。巷では謀略論など、誰かが背後で黒幕となって、アメリカ社会を操っている、などという考えもよく見かけるが、実際に、政府の動きだけ見ていても、とてもそんな統率がとれた動きには見えない。そもそも、アメリカ人の発想では、そのような組織運営はしないし、できない、と確信している。それぞれが、自分の置かれた場所で、それぞれ自分なりの最善を尽くしている。中には、サボっている者もあるだろう。が、大量に積み重なることで全体としては、上手くいっている。そんな国の形が浮かび上がってくる。多分、3億を超える人口、それも移民の国らしく、色々変わった人間が集まって、それぞれやりたいことをやっている。政府の統制は最小限。結果的に、ここ100年ぐらいは一番上手くいっている国になっている。


最近は、内向き思考が流行って、外国のことはどうでもいい、とかいう風潮が流行っているようだが、品格のない国になりたくない、と感じる人が必ずいるし、バランスを取ろうとする力が働いてくると考えている。中国も、12億人とか恐ろしいほどのたくさんの人がいるから、集まればすごいいいことになる潜在性は高いと思うが、何処かかで、一人のために人を縛ろうとするとせっかくの能力を発揮できない、残念なことになる気がしてならない。人間の能力は解き放ってこそ日の目をみるものだろう。

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