【#曲からストーリー】 いじっぱりーLOVE涙色ー
PJさんの企画におかわり参加します。
次の曲は松浦亜弥のLOVE涙色で。
YOUTUBEでハロプロのMVが一斉公開されたので、毎晩ハロプロ沼にハマっている私が、松浦亜弥の曲で一番好きな曲です。
鍵が見当たらない。
朝出かける時、急いでてカバンに放り込んだから、底の方にあるらしい。
あぁもう…本当嫌だ。
最近仕事が忙しすぎて、帰宅するのはいつも終電間際。
あんなに自炊するぞ!って思ってたのに、キッチンはゴミ箱を置くための部屋になっているからずっと綺麗だ。
「ただいまー…」
誰もいない部屋で何となく呟いて、郵便物をテーブルに置く。
松本サキ様か…私の苗字っていつ変わるんだろうな。
カバンからスマホを取り出して、何気なく画面を見ると、メールが届いていた。
メール?
誰だろう。
とりあえず、とコンビニで買ってきたパスタをレンジに入れて温める。
その間に手を洗って、お風呂の準備をする。
ちょうどパスタが出来上がってテーブルに運び、やっと椅子に座る。
明日の朝も会議だから、7時には家出ないと。
会議室の準備って何で女子社員の仕事なんだろう。
あ、会議の資料、印刷出したまま忘れてる!
頭の中で色々考えながらパスタを食べると、味なんてよく分からない。
この時間のコンビニって、棚にある物の中から食べられる物を選ぶだけだから、ある意味悩まなくて楽だ。
ささっと食べ終わって、ペットボトルから水を直飲みする。
「ごちそうさま」
あれ、いただきます言ってないな、まぁいいか。
こんな時でも挨拶のことを考えてしまうのは、母親が口うるさかったからかもしれない。
「そうだ、メール!」
仕事のメールかもしれないと、急いでスマホを探す。
さっき出したばかりなのに、もう郵便物の下にあった。
“久しぶり。元気?
こっちはまぁ相変わらずやってる。
彼女と別れたんだけどさ、今度会えない?“
読まなきゃよかったって思っても、読む前には戻れないんだよね。
***
「ねぇこの間一緒にいた子誰?!」
私が問いただしても、敦は全く顔色を変えない。
私はその態度がまたムカついて捲し立てる。
「ねぇ!この間、カフェで喋ってた子は誰?!って聞いてるんだけど!!」
「誰って、会社の後輩だけど」
何の悪気もなさそうに敦が答えた。
「そんなの信じられない!だってめちゃくちゃ楽しそうだったじゃん!!
二人でケーキ分け合っちゃってさ!!」
「あーあれは、あの子がそれも食べたいって言うからあげただけだよ。」
敦は昔からそうだ。
私がそれも食べたいって言うと、いいよ、と自分のケーキを分けてくれる。
だけど…
「敦といるといつもそう。
会社の子とか、友達とか、いとことか。何人女の人がいるの?ってくらいいつも違う女の人と一緒でさ、それを毎回見つける私の気持ちにもなってよ。」
「サキ、俺といるの嫌なの?」
「嫌じゃないけど…辛い。」
「辛いならもうやめたらいいんじゃない?別れようよ俺ら。」
ちょっとそれ取って、ぐらいのテンションで言われたから、飲み込むのに時間がかかった。
「敦はそれでいいの?」
「サキがいいなら。」
***
結局私は、変な意地を張ってそのまま敦と別れた。
3年も付き合ったのに、最後は嘘みたいにあっさりとした別れだった。
今更何なの、と思うのと同時に、涙が出てきた。
あー…しんどい。
お風呂入ろう、と立ち上がって、ちょっと前にお風呂が沸いていたのを思い出した。
ぬるめのお湯がさらにぬるくなった湯船に入る。
一旦吹っ切ったはずの敦のメールが、目の前の浴室の壁に浮かび上がってくる。
また涙が出てきた。
大体、そっちが別れようって言ったのに、何よ会いたいって。
どんな顔で会ったらいいの。
今、何してるんだろう。
湯船のお湯、私の涙が溜まったみたいだな、と泣きながらふと思った。