見出し画像

わたしたちが『ママ』という言葉を使わなくなった理由

わたしはいま、約110人の女性(+3名の男性)と働いています。
そのうちの約80%が小学生以下の子育て中で、俗に『ママ』と呼ばれる人たちが多く集まっている組織です。

しかし、わたしたちは会社を立ち上げていく過程で、『ママ』という言葉を次第に使わなくなりました

最近、その過程・理由を、社外の方や新入スタッフに話すことが増えたので、改めてまとめてみたいと思います。

(ちなみに、こういう事業をしてるとよく勘違いをされるので、念のため伝えておきますが、わたしは独身ですっ!)

『ママ』を多用していたコミュニティ形成期

画像1

わたしたちは、2015年に「女性と社会をつなげるコワーキングスペース」として立ち上がり、2018年に株式会社として再スタートしました。

(詳しい変遷についてまとめた記事はこちら)

最初の「コミュニティ形成期」の2年間は、とにかく『ママ』をネーミングに入れまくっていて。

・『ママカラ』ママから始める、個々の色(カラー)を活かす仕事チーム
・『ママランチ』ママたちが作る家庭的でリーズナブルなランチ
・『ママルシェ』ママたちによるママたちのためのマルシェ
・『ママログ』長野県東信に住むママに向けた地域密着型情報発信ブログ など

ネーミングの分かりやすさと、当事者たちの熱量が相まって、地域の『ママ』たちに「自分たちに関係のある場所」と認識され、多くの方が子どもを連れて訪れる場所になりました。

画像3

出産や介護、パートナーの転勤など様々な理由で、キャリアや人とのつながりが希薄になった女性たちの、一歩踏み出すきっかけを作れていたと思います。
(今の会社への入社にも着実につながってる)

『ママ』という言葉が持つ不本意な概念

一方で、『ママ』という言葉を使うことで、不本意な状態になることもありました。それは特に、「ビジネス」の場面において。

わたしたちは、単に「地域で女性たちの居場所をつくる」という社会的活動をやっているのではなく、「仕事」として価値を出しながら、継続発展していく経済的仕組みをつくる必要がありました。

しかし、当時『ママ』という言葉で認知を広げたことで、
商談先からは「納期やクオリティは大丈夫なの?」「ちゃんと責任持てるの?」という言葉をいただいたり、
「ママたちにできる仕事はこれくらいだね」と単純作業かつ低単価のものになりがちだったり。

「消費者目線」「丁寧さ」「真面目さ」「あたたかさ」など多少ポジティブな言葉で語られることもあったけど、基本的にはネガティブに機能することの方が多かったように思います。
(もちろん、こちらの ”魅せ方” にも要因があることは承知のうえ...)

また一緒に働く組織の中でも、(それぞれ違うのに)「ママは〇〇だから~~」と一律で語られてしまったり、過剰な同調が生まれてしまったりといったこともありました。

『ママ』という言葉のポジティブな側面とネガティブな側面

わたしが受け取った印象を、あくまでわたしの観点で「ポジティブな側面」と「ネガティブな側面」に分けると、こんなかんじかなと思います。

<ポジティブな側面>
・同じ属性のコミュニティを形成しやすい
・本人が当事者意識を持ちやすい
・共感や助け合いが生まれやすい
・「消費者目線」「丁寧さ」「真面目さ」「あたたかさ」などの印象を持たれやすい
<ネガティブな側面>
・ビジネスパートナーとして対等に見られづらい
・排他的な印象を持たれ、他の属性が関わりづらさを感じやすい
・過剰な同調が生まれやすく硬直化をまねく可能性がある
・子育てしていることは一つの特性で、「そもそも一人ひとり価値観や強みが違う」という前提が抜けがち

そういった両面を踏まえて、わたしたちは
「『ママ』という特性を大事に受け止めつつも、個々の強みをいかして、対等なビジネスパートナーとして価値をつくることを楽しんでいきたい」

という想いから、『ママ』という言葉を今は使わない選択をしました。
(想起させる『ピンク色』も極力使わず、コーポレートカラーは『黄色』に)

※便宜上「女性を中心に」と伝える場面も多いのですが、これまた模索中。
※ちなみに子どもたちがお昼時に託児所から降りてきて「ママ~!!!」と駆け寄っていく様子と、スタッフが『ママ』の顔になる瞬間は、微笑ましさしかないのです。こういうのは大事にしたい。(ぴったり12時に雰囲気が切り替わるので、「人間アラーム」と呼んでます)

画像2

言葉の概念のバージョンアップを

「地方↔都心」「男性↔女性」「大人↔子ども」...
ボーダレスな世の中になってきているがゆえに、それぞれの言葉が持つ意味が広くなっていて、認識のズレも起きやすくなっているように感じています。

認識を完全に一致させることは難しいけど、使い方には気を付けたいし、言葉の裏にある相手の背景を丁寧に汲み取りながら、こちらの背景も丁寧に伝えたい。

そうやって、関わる人たちと言葉の概念をバージョンアップしていきたいなと思う今日この頃です。

▼Special Thanks !
・概念を一緒にバージョンアップしてくれる仲間たち
・それぞれの立場からフィードバックや意見をくれるみなさん
・最後まで読んでくださったみなさん

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?