デスメイド大西、「おそロシア革命」を語る
自称、人々の心を鷲掴みにしている超人気尾道発タイムスペシフィックアーティスト集団、おそロシア革命。
そのフロントマンであり、私の友人でもあるデスメイド大西に今回インタビューを行うことになった。
新シングル配信、そして自主企画ライブを控える彼女は何を思い何を見据えているのかについて迫っていこうと思う。
──今日はよろしくお願いします。
大西 よろしくお願いします。
──まずおそロシア革命の結成理由について教えてください。
大西 尾道市立大学の軽音部に所属しているんですけど、先輩に日本文学科の生徒だけで組んでたバンドがあったんですね。
それに対抗して美術学科だけで組んだバンドがあってもいいんじゃないかっていうちょっとした対抗意識で、美術学科の子に私が声かけて4人集まってなんとか…で!結成しました。
──1人で曲を作るっていうことに関してメリット・デメリットはありますか?
大西 1人だったら結局、自分の癖とか自分がよくやってしまうフレーズとかわかるんで、ちょっともう…新しいことができない。
新しいアイデアが欲しいからメンバーに口出してほしいんですけど、メンバーは私が作る曲が一番って言われて(笑)
自由にさせてもらってるんですけど、1人でするのは気が楽な分いつかもう全てアイデア出し切っちゃう日が来るんだろうなっていう怖さと戦ってて。
おフランス革命(おそロシア革命の前身バンド)で4人いた時も私はボーカルじゃなくて、キーボードの子が歌ってて。
自分の曲を歌ってもらうことに全然違和感はなくて(私はどうせ歌下手だし)とか(キーボードの方が声通るし歌上手だし)って思ってお願いしてたんですけど、最近はその子が抜けてから自分の気持ちを自分で歌うようになって、(いやこの曲私しか歌えんのじゃないか)っていう自意識が芽生えました。
──美術学科に所属する中でアートでは無く音楽でも表現しようっていう気持ちになった理由はありますか?
大西 うーん…音楽が好き。
絵ももちろん好きだけど音楽も好きで。
本当に嫌いな人がいた時に、いちいち嫌いな人の似顔絵を書いて✕って書いたりとか?(笑)。
そういうことしても私は嫌いですよっていうのは出来るんだけど、そういうのじゃなくて口で言っちゃったほうが早いじゃないですか。
「これのどこが嫌!」「これのどこがムカつく!」みたいな。全部口に出しちゃったものがそのまま曲になっちゃった。
──音楽じゃないと伝わらないことはあったりしますか?
大西 私のこの気持ちは…やっぱり私もそんな頭がいいわけじゃないから絵とか視覚的な表現でどうやって私の気持ちを伝えるか、どうやって汲み取ってもらえるかと思ったら難しくて。耳の情報ってもう一瞬だからマジでみんな汲み取ってくれるし、自己投影とかしてくれて共感してくれるし、もう音楽の方が手っ取り早かったんですよ。
その瞬間を解決するために。一瞬の瞬間。
あと絵って書くのに時間かかるんですよね。
構図考えて材料買ったりして。
音楽はパソコン1台とギターさえあればできちゃうので、そのスピード感も多分自分に合ってたんだと思います。
──音楽に最初に触れたきっかけや自身のルーツはありますか?
大西 お母さんがピアノの先生をやってて。ちっちゃい頃からグランドピアノを触ってて。多分3歳ぐらいからバイオリンを習い始めて、ずっと何の気なしに自分の意志もないままピアノとバイオリンの発表会に出続けるっていう生活で、車の中では絶対クラシックがかかってるみたいな。
自我が芽生えた時に(何で私これしてるんだろう?)(やりたいって言ったことないけどな…)みたいになって、本当にやりたいことなんやろなって考えるきっかけになった。
そういう時期にアニメとか漫画とかに出会ってオープニングの曲かっこいいとか。エンディングの曲かっこいいとか。アニソンから(なんだこのギターの音は!)みたいな衝撃受けてなんとなくわがまま言ってエレキギター買ってもらったぐらいからですね、自分が選んで音楽を聴くようになったのは。それまでずっと親の聞いてた曲ばっかり聞いてたけど。なので自分で曲を選んで聴き始めたのは中学生ぐらいですね。
──歌詞の内容は実際の出来事だったり、自分自身で思ったことを元にしてるという感じですか?
大西 そうなんです。だから東京でやってもみんな誰のことを歌ってるのか分かんないわけですよ。そこで歌って「おぉー!」って反応してくれるけど…
最近、大阪でバンドやってる友達に言われたんだけど、もし有名な人と付き合ったとして…。ちょっと名前出すけど(笑)
しのだくん(トップシークレットマンのフロントマン)としーなちゃん(東京初期衝動のフロントマン)みたいな公認のカップルみたいに私がなるとするじゃん。
それでその人について曲書いたら炎上するんじゃないって。付き合ってる時も曲にして、別れた後も私が「ボケ死ね!」って思ってそういう曲作ったら炎上するんじゃないかなみたいな。そういう風に心配してくれて「どうするの?」と言われた。いや、有名な人と付き合わなきゃいいんだけど、そんなのわかんないし(笑)
絶対匂わせしないって言ったけど、ファンにもそういう目で見られるのかなと思って今までは。でも私は全然ムカついたら誰でも曲にするし。その人がどんな有名人でもどんないい人でもムカついたら曲にするっていうのは東京でも変わらずにやろうと思う。
──歌詞が誰についてなのかっていうのはリスナーに理解してほしいとか、誰のことか想像してほしいみたいな気持ちはありますか?
大西 ある、あるね…でも匂わせだね。
本人に対して「お前のこと曲にしてるの気づいてるー???」ぐらいの煽りでやってる。
自分からは「これお前の曲だから」とかは言わないようにしてたんだけど、前酔っ払ってやってたらしい(笑)
恥ずかしい、絶対普段はしないから本当に。
まあ書かれた本人は気づくよね。
──曲に対して双極性障害による感情の起伏が影響してる部分はありますか?
大西 してると思う。鬱な時はローテンポのゆったりした曲しか聞けないみたいな。元気な時はもうどんな曲でも聴けるけどみたいなのは自分の中でもあって。でも暗い時こそロックを必要としてる人もいるし、私もめっちゃしんどい時にホルモンとか聴くもん(笑)
私もうるさい音楽が好きだから。
感傷に浸りたい時は思いっきり浸って。うるさい音楽が好きで私はこういう音楽やってるから、音楽はガチャガチャしてんのに歌詞は暗いなみたいな状態になるんだと思う。
全然鬱になって何もできないっていう日もあるけど、作詞ぐらいはできるからノートとか日記帳にいっぱい書いてて。それを元気な時に元にして歌詞にしてるからそういうことが起こるんだと思った。
Twitter(現X)で"女版ART-SCHOOL"って言われたのがめっちゃ嬉しくて(笑)
「こいつこのアルバムで男の愚痴と死にたいしか言ってないじゃん。」みたいな。3rd EPの喫煙許可に対してね。女版ART-SCHOOLじゃんっていうツイートがあって嬉しい…!と思った。
──そういったような感じで活動する中で一番嬉しかった瞬間はなんですか?
大西 今言ったやつが嬉しかった(笑)
私は「このバンドに似てるね」とか「このバンドを感じるよ」とか言われたら大抵何でもめっちゃ嬉しくなる。でも時たま嫌な気持ちする人もいるんだなって最近知って。人を褒める時にバンド名を出さないようにしようと思っているんだけど、私はすごく嬉しいからどんどん例えてほしい。全然。
「コートニー・ラブだね」とか言われたら(キェーー!)って感じで本当に嬉しいし(笑)
あとはリスナーさんのDMとかで「元気もらえました」とか「勇気づけられました」とかのメッセージをもらうと本当に「やっとって良かったな」って思える。
──DMに返信したり会話したりとかは?
大西 めっちゃ会話します(笑)
女の子からが多いな、同性だからなのかな?
女の子のリスナーが多いですね。リスナーのインスタとかTwitterとか見るとめっちゃみんな可愛くておしゃれで。「次ライブ楽しみ~」とかつぶやいてくれるじゃん。で、実際に会えるのが本当に楽しみ!
──今、音楽活動を続けてるのは比重的に自分のためとリスナーのためのどちらのが大きいですか?
大西 昨日(10/19、宇部BBBにてライブ)ぐらいから自分のためになったかも。昨日までは(お客さん2000円もチケットに払ってるんだよ?)とか思ったり。東京でのライブだけど、もしかしたら静岡とか大阪とかから新幹線で来てる子とかがいるから(お金もかかってるし…)みたいな。今日のために服装も考えてオシャレして来てくれてるし、(私がしょうもないライブしちゃだめだな)みたいなこと考えてて、本当に来てくれる子のためが一番って考えてたんですけど最近はもう自分のため。もう自分のフィールドじゃんって思って。
昨日のライブは機材トラブルもあったり、楽器のミスとかもあって途中までうまくいかなくて。最後の 2 曲で取り戻したけど、(自分の手によって。本当に動かせるんだなバンドを)って気づいて。
今は一番は自分が気持ちよくなるためにライブして、ついでに有名になりたいから何回もライブして、いろんな人に見てもらう機会を増やしてる。
だから自分のため。
──自分のためにやってることが人のためになってるということですか?
大西 そう。ずっと宅録は自己満でやってて。自分が聴きたい曲を自分で作ってただけなんだけど。それが意外と誰かを助けてるんだなってバズってから気付いて。意外と必要としてくれてる人がいるんだなって思って。人の目に触れることによって自己満が自己満じゃなくなったかな。
──新しくリリースする音源はどういう思いで作りましたか?
大西 ちょっと直前で曲を変更することに決めました!頑張ってミックスを1週間以内で終わらせて配信するんですけど(笑)
おそロシア革命総集編をリリースしようと思います。タイトルはまだ決まってないです(取材時点)。自分が今までやってきた曲を1個にまとめた感じです。
私、結構人の曲で泣いたりすることあるんですよ。
(この人も私と同じ気持ちだったんだな)って作った人を想像して涙出たりとか。
(私より年下でこんなすごい曲作るんや…負けたわ…)っていう涙とか(勝ち目ないわ)とか嫉妬のしくしくもあるけど。
今回曲作りながら自分の曲で初めて涙が出たんですよ。曲の途中に「自他共に」のギターリフを入れたんだけど、入れた後ぐらいに聴き直したら涙が出ちゃって。もうちょうど「天下無敵」(1st EP)リリースから1年経ったわけで。いろんなところ行って、いろんな人が手のひら返してきて(笑)
本当になんかいろんな人とも出会って、本当にいろんなことあって自分でも追いついてない。まだ普通の大学生な気分なのに持ち上げられて。
自分の中で無理しとった部分とかキャラ作ってた部分もあったから。でも本当にしんどかったけど、楽しいこととか嬉しかったことの方が多いんじゃないかな。本当にいろいろあったなーっていう涙が出て。
たった1年でこんな泣くんだったら10年とか活動したらどうなっちゃうんだろうと思って。たった1年でもう感慨深いんですよ。本当にこれから卒業して東京行ったらおそロシア革命第2部の始まりみたいな感じで。
おそロシア革命東京編が始まる幕開けの曲でもあるから、やっぱりこれをシングルに持って行った方がいいんじゃないかな?と思って。
またEP出してツアーするんでその時もまたこの曲は入れるし、結構思い入れのある曲ですね。
──最後に今後やりたいことや目標はありますか?
大西 東京でおそロシア革命展をしたいです。
──それは美術とか音楽とかを色々合わせての展示ですか?
大西 そう。今までライブで使ってきた小道具を展示したり、衣装を展示したりもしたいし、自分たちが書いた絵とかを販売したりしたい。
メンバー3人ともちゃんとやればめっちゃ上手い絵が書けるから、ちょっと男たちのケツ叩いて「本気で描けよ!」って(笑)
パワハラブルーピリオドしてあいつらに絵を書かせて、グループ展みたいな3人の展示会がしたいなと思ってます。
あとは雑誌とかのコラムを書いたりエッセイ書いたりとか文章の仕事もしたいし。
マジで音楽で有名になってからそういう仕事やりたいですね。
音楽で有名になったら、自分のやりたいこと全部がやりやすくなる。だから1回有名になる。
──音楽も続けますか?
大西 続けるね。もう続ける!10年後にやばいライブやりたいもん。泣きながら(笑)
もう絶対続ける。これは本当にやめない。今言います。頑張ります。
──今日はありがとうございました。
大西 ありがとうございました。
彼女が放つメロディーや歌詞の裏には個人的な葛藤や苦しみ、そしてそこから生まれるエネルギーを感じられる。自らの内面を表現し続ける彼女の姿はただのパンクではなく、一つの芸術作品だ。
東京に進出し、おそロシア革命はさらに進化を続けていくだろう。
そしておそロシア革命第2部東京編の幕開けともいえる新曲「お復讐革命」を是非とも聴いていただきたい。
10/26(土)には尾道B×Bにて企画ライブが行われる。彼女は現在skool shutterのサポートベースも担っているため2アクト行う。尾道のライブも残り少ないと思うのでこちらも是非足を運んでいただきたい。