見出し画像

戦争ってなんだっけ 「炎628」

レビューでは名作と書かれていたり、検索してはいけないとか書かれていたりしてずっと気になってたんですが、どこのレンタルビデオ屋に行っても取り扱いがなく
こりゃー、DVD買ってみるしかないか、、、と思っていた矢先、
Mosfilm(ロシア最大の映画撮影スタジオ)がYoutubeで無料公開してくれていました。
英語字幕版しかないので、英語がからっきしな私はなんとなくのニュアンスでしか内容を把握できなかったけど(字幕を理解する前に次のシーンに行っちゃったりして)なんかもう、そういう次元の映画じゃなかったです。

ここ最近はどんなに楽しく過ごしていてもこの映画のことが頭から離れなかった。
友達と楽しく遊んだあと、ふと一人になった帰り道のタクシーとかで思い出すんですよね。「全部同じ人間がやったことなのか」って。

1940年〜60年代のソ連では音楽も規制が厳しくて、好きな音楽を聴くためにレントゲン写真を使ったソノシートみたいなレコード自作してたのは有名な話ですよね。真ん中はタバコで穴あけたりしてて、音はどうかわからないけどなんか見た目がかっこいい。服の下に何枚も何枚も隠し入れて売り歩いていたとか。

で、80年代になってもソ連の映画ってめちゃくちゃ規制が厳しかったんじゃないかと思うんだけど、その中でこんな映画を作ったエレム・クリモフ監督は相当な功労者ですね。

というのも戦争映画ってちょっとしたヒーローがいたり、プロパガンダ的だったり、映画だから起承転結がしっかりした物語で構成されてて観やすく作られてるものが大半だと思うんですが、この作品は全然違うんです。
もうただただ、信じられないほど酷いことが起こり続ける。
その結果、主人公の見た目が恐怖や過度なストレスでどんどん変わっていく。その様を見続ける映画、なんです。

でも、そもそも戦争の悲惨さを伝えるのにもしかしたヒーローや物語なんていらないんじゃないか?と思わせる何かがあるんですよ。とにかく画面から常に死臭が漂っている。殺された人たちには本当は未来があって、美味しいもの食べたり、遊んだり、好きな人ができたり、家族を持てたかもしれない。
そういう未来が同じ人間の手で握りつぶされた事実が、過去に確実にあるんですよね。

ここからはネタバレになるので見たくない人は飛ばして欲しいんですが、
まず主人公が志願兵としてパルチザン部隊(対ドイツ)に参加したことによって
自分の家族を含めた村中の人間が虐殺されてしまい、それを後から知る、というシーンがあるんです。
空爆にあった主人公が森の中から一旦自分の家に逃げ込むと、家族の姿はなくまだ温かい食事だけ残っている。それを嬉しそうに食べるんだけど、その壁を隔てた向こうには自分の家族を含め虐殺された村人の死体の山がある。それに気づくシーンには本当にゾッとしました。

最後に主人公がヒトラーの写真に向かって銃を撃つ度に歴史が巻き戻るシーンがあります。これは多分、過去を過去以上のものとして見せる演出だと思うんですが、ヒトラーの子供時代の写真とかまで巻き戻った時は思わずため息が出た。

「同じ人間がやったことなんだ」っていう、重すぎる事実だけが残る。

昨今のSNSもそうだけど、自分だけの正義を振りかざすことってとても危険なことだと思う。正義と悪はあくまで主観的な考えだから。
「ダークナイト」もそうだけど、あれはバットマンとジョーカーが各々自分の正義と美学を持って戦っているから衝突するんだよね。

まあ、何が言いたかったかというと、、、
色々なことを踏まえた上で「戦争反対」、人は人を殺さない。
終戦記念日にはそれを確かめること、毎年の恒例にして映画を観ようと思います。

ちなみにこの話は独ソ戦の「ハティニ虐殺」を題材にしたものです。
観る前に知識として入れておくと、観やすいかもしれません(否、観やすい映画ではないことは確かです)





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?