好きだった人と再会した話
高3の夏。
地元の夏祭りで中学生の時好きだった人と再会した。
見た目は当時と違っていたが、目があった瞬間、3年前の彼の姿と重なった。
『あっ』
冬弥「村方?」
紫乃「矢吹くん?」
彼は何人かと一緒に来ていた。
私は友達と待ち合わせの場所に行く最中。
「……。」
お互い立ち止まり目が合ったまま1秒。
沈黙を破った彼の第一声は
冬弥「久しぶり。」
クールな表情を少し崩してそう言った。
紫乃「あ、うん。」
頭に言葉が浮かばず気の利いた返しができない私。
それでも気にする様子もなく
冬弥「元気だった?」
と会話を続けてくれた。
少し落ち着いた私。
紫乃「うん。見ての通り。矢吹くんは今年受験?」
中学生の時、臨床心理士になるのが夢だと言っていた。だからおそらく進学だと思った。
冬弥「うん。国立目指してがんばってるわ。」
彼は高校受験の時も努力して進学校に合格した。
別々の高校に進学して会っていなかったが今話す姿は当時と変わらない。
紫乃「そう、さすが矢吹くん。」
もっとこうしていたかったが彼の名前を呼んでいる声が聞こえた。
紫乃「追い込みすぎて体壊さないでね、応援してる。」
目を見て伝えた後、私は体の向きを変えて歩き出した。
冬弥「おう、がんばるわ。じゃあ。」
歩き出しつつ顔はまだ紫乃に向いていた。
口も閉じず何か言いたげだったが1歩、また1歩と2人は遠のいた。