社会課題について「優しい結論」を持つということ 〜ブラッシュアップ動画完成に寄せて〜
2021年9月22日にYouTubeで、私たちが制作した番組に修正を加え、アップデートしたものを公開しました。この記事は、それを記念して書かれたものです。ディレクターを務めた私が、番組が完成してからの半年で感じた「社会課題について『優しい結論』を持つ」ということについて書いています。
はじめに
初めまして。番組ディレクターを務めました、ゆっかと申します。このnoteを読んで下さり、ありがとうございます。
この記事は、せっかくブラッシュアップした番組を公開したのなら記念にnoteでも書こうかな、という、かなり気まぐれな気持ちで書かれたものです。
この半年、私の後輩にあたる受講生の皆さんが同じように番組制作にチャレンジしているのを見たり、またスーパーでパック入りの卵を見かける度に考え事をしたりと、私も色々と思うことがありました。
それを書き残しておきたくて、今noteの編集画面を開いている次第です。
どうかごゆるりと、お付き合い下さいますと幸いです。
制作で感じた「誰も傷つけない」ことの難しさ
この番組を制作する際、デザインスクールから出された条件。
それは「誰も傷付けない」ということでした。
バタリーケージ廃止や動物愛護を語るとき、
「バタリーケージは悪だ!」
「みんなケージフリーの卵を買おう!」
「今の卵は安すぎる!正当な値段で売ろう!」
そう言ってしまうことは簡単。
けど、本当にそれでいいのか?チームメンバー全員で考えました。
すると、安いケージ飼いの卵の背景に、様々な事情が存在することが分かってきました。
政府が長年の間、税金を使って価格調整をしていたお陰で、安くて安全な卵が継続的に手に入っていたこと。
恐らく、それに助けられている家計がたくさんあること。
養鶏農家がケージフリーに移行するには多額の設備投資と広い土地が必要で、それほど簡単に実現できるものではないということ。
私たちは、バタリーケージに苦しめられている鶏を救いたい気持ちと、それを阻む様々な事情との間で板挟みになり、悩みました。
「バタリーケージは悪だ」と番組で発信してしまえば、その背景に存在する複雑な事情までもまとめて否定してしまうことになる。それによって傷付く人が出てしまうかもしれない。
世の中にどんな発信をすれば、この状況は少しでも良い方向に向かうのだろう...。
考え抜いた末に辿り着いた、「誰も傷つけない」答え
最終的に私たちが辿り着いた答え、そしてこの番組のラストメッセージは、
「まずは、食べ物の背景を知ることから始めよう」
というものでした。
バタリーケージが悪で、ケージフリーが善だと決めつけてしまうのは簡単。しかしこの問題は、そんな単純な勧善懲悪で片付けられるものではなくて、もっと根深い。
私たちが特定のものを推し進めたり、否定したりすることで、誰かを傷つけてしまうかもしれない。そう考えるとやはり、特定の判断や行動を強制するような内容にはできない。
ならば、まずは事実を知ってもらうことの大切さを伝えれば良いのではないか。
今日も、狭いケージの中で苦しんでいる鶏がいるという事実。
「自分の目で見て、自分で判断することが大事」と語る、平飼い養鶏を営む植仲さんの熱意。
卵に限った話ではありません。食べ物は全てその背景に、誰の手によって、どうやって生産され、どうやって私たちの手元に届いたのか、それぞれのストーリーを持っています。
そして、それを知った上で何を選ぶのか、どう行動するのか。それは、私たち個々の判断に委ねられています。
無理のない範囲で個々がこの問題と向き合って、小さくても世の中を変える動きが生まれて欲しい。
その想いで、私たちはこの動画を世へ送り出しました。
ケージ飼いの卵を買ってしまうたびに思うこと「優しい結論っていいな」
卵についての番組で「平飼い卵って良いよね!」みたいなことを言っておきながら、私は毎回スーパーで平飼いの卵を買うわけではありません。
一人暮らしであまり余裕の無い家計との兼ね合いで、卵コーナーの中で一番安い、恐らくバタリーケージで生産されたであろう卵を買ってしまうことの方が多いです。
少し心が痛むけれど、その度に私は、私たち自身で出した結論に救われています。
「まずは、食べ物の背景を知ることから始めよう」
社会課題について知った上で、自分のペースで、できる範囲で、向き合っていくこと。それが大切だと、この番組の制作を通して気付くことができました。
最近は、シャンプーをヴィーガン処方の環境に配慮したものに変えました。
ケージフリーの卵も、一人暮らしの大学生のお財布には厳しいけど、たまになら買えると思います。
まずはそれについて知って、できることから、少しずつ。
その小さな行動が、やがて大きな波になり、世の中を変えていけると、私は信じています。
おわりに
この記事を最後まで記事を読んで下さり、ありがとうございました。
よろしければ、番組のご視聴もよろしくお願い致します。
前に公開したものから、フォントや色の再選定、音声を整える作業を行い、さらに見やすくなりました。
この番組が、卵について知るきっかけになれば幸いです。
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