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南国家の文献による座右の銘に関する一つの考察

座右の銘というものがある。
有名なものにこんな言葉があるのを知っているだろうか?
 
「葉が落ちても、木は立ち続ける」
 
言わずと知れた我が南国家のひいじいちゃんが大正時代に産みだした言葉なのだが、インターネットにおいては、私の知らないどこかのおっさんの格言のように紹介されていた。
この座右の銘は、一般的に以下のような意味合いで広まっている。
 
「一時的な失敗や困難があっても、基本的な強さや価値は失われない」
 
しかし、この言葉が現代において、本来の意味とは違う意味で広まっているのがなんとも嘆かわしい。
南国家の文献によれば、当時(大正時代)長屋を3軒ぶち抜いて作った自慢の大箱でエレクトロファンクをぶち鳴らしていたひいじいちゃんの言として、「葉が落ちても、木は立ち続ける」の意味がこう書き残されていた。
 
「秋になると庭掃除の時間が増える」
 
南国家の文献に書いてあるからそうったらそうなのだ。
これが世の中に人知れず消えていった、ひいじいちゃんの座右の銘、第一号である。
座右の銘にするほど庭掃除が嫌いだったようだ。ひいじいちゃん、おれもだよ。庭無いけど。
 
ひいじいちゃんは、こうも言っていた。
座右の銘? そんなものに縛られているうちは、人生をゴミ箱に突っ込んでダイナマイトで吹っ飛ばした燃えかすに小便をかけているものだと。
 
では、ひいじいちゃんは庭掃除において、なぜ無駄にかっこいい感じの「座右の銘」なんてものを残したのだろうか。
残念ながら、南国家の文献にもその理由は載ってはいなかった。
数多の年月が経過した今、誰もその理由について知るものはいない。だけれども、どうせならこうだったんじゃないかなって———僕は思いたい。
 
きっとひいばあちゃんの気を引きたくてかっこつけただけ。
 
だから僕の第一座右の銘はこう決めた。
 
「じじいの言う匂わせ言葉に意味は無い」
 


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