福島には真摯に向き合ってほしい
「ALPS処理水」の海洋放出が始まりました。
この「処理水」海洋放出に関しては賛否を含め様々な意見を目にします。
「原発」や「処理水」放出に関する政府の対応や、これらに賛成する意見を見ていると、私は沖縄での米軍基地建設やそれに賛成する論調と同じような空気を感じてしまいます。
原発や基地に共通するのは、公共の福祉に利するとされるリスクの高い施設に対して、交付金や調整金などによる財政的補助を安易に行い、特定の地域にリスクを受け入れさせて、地域住民の間のみならず、国民の間にも分断を生じさせてしまっている点です。
そもそも交付金などは施設のリスクを軽減するものではありません。交付金などの財政支援を受けているからといって地域住民は黙ってすべてのリスクを受け入れ、懸念は飲み込まなければいけないということではないはずです。
公共の福祉に資する重要施設であるというのであればなおさら、施設を受け入れた地域の懸念に真摯に向き合うべきですし、分断を避けるべくあらゆる手を尽くしてほしいと思います。
私たちはその施設から利益を享受していると感じるならば、政府に対して地域の負担を少しでも軽減し、懸念を払拭し、分断を避けるように働きかけるべきですし、施設が公共の福祉に資するものではないと感じるならば、そのような施設に公金を投入する政府の方針に反対するべきで、いずれにしろ、地域住民が責められる理由はないと感じます。
「ALPS処理水」に関しては、地下水の流入を止めない限り処理すべき汚染水は発生し続け、いつまでも海洋放出は止められないということになります。なによりも電力会社や政府には、胸を張って「海洋放出は安全だ」と言い張る前に、これ以上処理すべき汚染水を発生させないための対策にもっと早急に真剣に取り組んで欲しいと思います。
地質学の分野からは地下水流入を今以上に削減する提言もすでに出されており、早急な実施が期待されます。
[朝日新聞 2021年10月7日 11時00分]