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うちの黒き猫 #4 話し合い

米軍ドクターとこっちの先生、飼い主夫婦、保護したSさんとで話し合いの場が設けられた。
実は以前から米軍ドクターは飼い主に、飼い方についてずっと注意をしていたらしい。
「まず、なぜ首輪を付けない?野良猫と間違えられたらどうする?」
米軍ドクターが言うと
「付けても嫌がってすぐ自分で外すんだよ!」ときた。
「他の猫たちと離して彼女の居場所を作ってやるべきだ。ちゃんとケア出来ないならSさんに譲渡した方かいい。彼女の幸せを考えるなら、そうしなさい」
日本人と違ってずいぶんハッキリ言うなー、と先生は思ったそうだ。
猫好きのSさんは、もう懐いているし出来ればこのまま飼いたいと言っている。
だが米軍夫は首を縦に振らず、挙げ句に
「オマエはうちの猫を盗んだ!訴えてやる!」と騒ぎ出す始末。
こうなってはどうしようもない。
米軍ドクターが訴えたりしないよう説得し、Sさんは今後は猫が来ても家に入れたり餌をやったりしないという約束で話がついた。
「二度とうちの猫に構うな!」
結局黒猫は飼い主に戻された。

うーん。
これは厄介だ。
「そんな事があったんですか…。じゃあ、その飼い主に帰してやらないと。連絡してもらえますか?」
そう言うと先生が答えた。
「いや、連絡しない方がいい。」
先生が言うには、またあの飼い主は訴えるだの何だのと大騒ぎしかねないし、かと言って飼育環境を変える気も無い。
「だから、このまま猫がしたいように任せて、お宅に [遊びに来たら]可愛がってあげれば?」と。
「それに米軍の人は移動があるから、その内ここを離れる事になるわよ。連れて行くかどうかも分からない。置き去りにされる可能性もあるし、もしそうなったらそのまま飼えばいいじゃない?」

現状はうちで暮らしていても、「遊びに来ている」という風にするわけだ。
そうすれば波風が立たない。
なるほど。
先生の案は妥当だと思った。

「ところで先生、この猫ちゃん名前は何ていうの?」
先生は一瞬戸惑いの表情を浮かべ、ちょっとどもりながら言った。
「ディ…ディアブロ」


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