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うちの黒き猫 #7 猫暮らし
前の飼い主が「嫌がって自分ですぐ外す」と言っていた首輪。
なるべく軽くて負担が少なそうな物を選び着けてみると少しも嫌がらず、寧ろ自信に満ちたような表情。
「あたしはその辺の野良猫とは違うわよ」 とでも言ってるように見えた。
嫌がって外したりするどころか、ブラッシングの後は 「さ、ネックレス着けてちょうだい」 みたいな風に首をすっと伸ばして待っている。
最初の頃は殆ど鳴かず、要望がある時だけ低音で「ぎゃー」と言っていたのが、今では「にゃーん」とか「ぴゃーん」と猫らしい(?)声でよく話しかけてくるようになり、表情だけでなく熊みたいな剛毛もいつの間にか随分柔らかく変わった。
時々私と一緒に散歩もする。
『散歩に行きましょうよ』という感じですみちゃんから誘ってくる。
のんびり、たらたらと空き地に寄り道して草を噛んだり、追いかけっこやかくれんぼをしながら近所を一回り。
途中、私がご近所さんと立ち話を始めても話し終わるまでちゃんと待っていてくれる。
散歩中知らない人が「すみちゃーん」と声をかけてくれたりもする。
首輪の見える所に名前が書いてあるので、行く先々で名前を覚えてもらえているようだ。
私よりご近所情報に詳しいとみた。
すみちゃんのおかげで新たな交流も増えた。
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もうすぐ10歳になるが相変わらず活発で、時々姿を見せる茶トラのジョンジーと屋根の上を走り回ったりしている。
二匹の関係は謎のままだ。
争う事も無く、かといってべったり仲良しという訳でもない。
ジョンジーはアクリル板の猫ドアの向こうから、じっとこちらを覗いている事があるが決して中には入って来ない。
そもそも、すみちゃんをうちに連れて来たのはジョンジーだった。
見守っているのだろうか。
この辺りは小高い山に囲まれた谷戸で車も少ないせいか放し飼いの猫が多い。
猫たちは、ねこ道=塀の上や家と家の間の隙間、路地、緑地を今日も自由に散歩している。