Z世代が聴く名盤 #11 スキマスイッチ「夏雲ノイズ」
ここ数年で「Z世代」という単語をよく聞くようになった。「団塊世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」等に続く新たな世代の区分である。
なんでも世間様はこの世代を「自分達とは全く違う感性を持った若者」と見ているようで、そんな歳の若者が起こした迷惑行為やトラブルを見つけては叩く報道や、そんな歳の若者を集めては「昔はこうだった」と昭和や平成の映像やらを持ち出して色々説明して反応を見てみる企画が最近増えてきており、「最近の若いのは何を考えているのやら」という空気をなんとな~く感じる事が多くなってきた。
そこまで我々の考えていることが気になるなら発信していこうじゃないか、ということでこのシリーズを始めることにした。当記事はZ世代にあたる筆者が世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴いて、感想を書いていくただそれだけの記事である。
筆者は2003年生まれで、ニュースなどで取り沙汰される「Z世代」よりやや年上だが、WikipediaによればZ世代とは概ね1995~2010年生まれの若者を指すとのことなので、そのちょうど真ん中あたりに生まれた自分はバリバリZ世代を名乗れる。
作品情報
スキマスイッチ、初のオリジナル・アルバム。デビュー曲「view」と出世作「奏(かなで)」「ふれて未来を」、ミニアルバムから1曲を収録している。
前置き
スキマスイッチは幼少期の初期の思い出として根強く残っている。確か次作「空創クリップ」が家にあってドライブ中にたまにかかってたのがうっすら記憶に残ってて、それがきっかけで小学校に入ってから改めて彼らの音楽を掘り進めていき、最初に手に取ったのがこれまた家にあった今作だった。
世間的な全盛期は自分が物心つく遥か前に過ぎ去ってしまい、同世代の知人も小学生の頃からアニメ見てた奴が何曲か知ってる(2009~16年ごろアニソンタイアップが立て続けに入っていた)くらいで知名度と親しみやすさの割にはコアファンどころか新作が出たらとりあえずチェックする、みたいなライトなファンにも出会ったことがない。
そんなわけで自分的にはJ-POP界のお手本!スタンダード!と言っても良いくらいに馴染んだ存在でありながら世間的にはどうやらそうでもなさそう…という極めて個人的に不可解な立場にいる彼ら。果たしてnoteという特異なコミュニティーでファンは見つかるのか?どれほどの反響が得られるのか?
その辺の自己顕示欲の発散検証も兼ねて感想を書いていく。お互い2003年夏デビューしたどうし(7月にスキマスイッチがメジャーデビュー、8月に自分がこの世にデビュー)、それなりに期待はかけていきたい。
※ちなみに今の所一番見られている記事はミスチルの「Atomic Heart」。
感想
今作(というかスキマスイッチの曲全般)は基本的に管弦を適宜バランス良く取り入れたバンド主体のポップスがほとんどを占めている。安定感があってすばらしい。自分が「J-POP」と聞いて想像するのはやっぱり今作みたいなスタイルの音楽だ。改めて自分にとってのJ-POPの原点はこの辺なんだなぁと思わされる。
あと改めて聴いて気付いたけど今作は比較的テンポがある曲が多い。ただしそれはミディアム調の曲が多くてスローなバラードが少ない、という意味で決してアッパーな曲が多いというわけではないんだけれど、自身最高ヒット作ながら意外とまったりした感じの曲が多くて正直ダレてしまう瞬間がある次回作と比べても今作は結構軽やかでバランスが良い。
後追いだと「奏(かなで)」くらいしか有名な曲は入ってないし、実際この後そういうバラードがアルバムの根幹を担っていくようになるからどうしてもスローなイメージに引っ張られると思うんだけど、今作におけるバラードはアルバムを構成するいち要素にすぎない。デビュー曲「view」はアッパーな盛り上げナンバーだし続くミニアルバムの目玉だった「君の話」はファンク要素が効いたアップテンポな曲だし、「奏(かなで)」に続くシングルだった「ふれて未来を」もアッパーとまではいかないけど「ライブで盛り上がれる曲を!」との意気込みで作られただけあって明るくポップな作風だ。後年になればなるほど作りが重厚になっていくことを考えると今作の身軽さからは若さを如実に感じる。もしも今のスキマスイッチがこの頃の作風を目指して曲を書いたとしても、たとえ今作を丸々再現したとしてもこうはなれない。
総じて今作は平成中期のJ-POPアルバムとしてこの上ない理想の名盤であり同時期に売れていたコブクロくらいの人気はあっても良かったんじゃないかと思う(4~50万台のヒットがまだ出せた時代だったのでそれぐらいの規模でヒットしたものと思っていたらまさかの19万枚、オリジナルアルバムで最大ヒットの次回作でも40万台に届いていない)んだけど巡り合わせが悪かったのか何なのか…
デビュー20周年記念として今作を本人が全曲解説する動画も投稿されているので、まだ見てないファンの人や今作をきっかけに興味を持った人は是非。
一番好きな曲:ふれて未来を
一番「…」な曲:ドーシタトースター