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Z世代が聴く名盤 #1 L'Arc~en~Ciel「Clicked Singles Best 13」

ここ数年で「Z世代」という単語をよく聞くようになった。「団塊世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」等に続く新たな世代の区分である。
なんでも世間様はこの世代を「自分達とは全く違う感性を持った若者」と見ているようで、そんな歳の若者が起こした迷惑行為やトラブルを見つけては叩く報道や、そんな歳の若者を集めては「昔はこうだった」と昭和や平成の映像やらを持ち出して色々説明して反応を見てみる企画が最近増えてきており、「最近の若いのは何を考えているのやら」という空気をなんとな~く感じる事が多くなってきた。

そこまで我々の考えていることが気になるなら発信していこうじゃないか、ということでこのシリーズを始めることにした。当記事はZ世代にあたる筆者が世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴いて、感想を書いていくただそれだけの記事である。

筆者は2003年生まれで、ニュースなどで取り沙汰される「Z世代」よりやや年上だが、WikipediaによればZ世代とは概ね1995~2010年生まれの若者を指すとのことなので、そのちょうど真ん中あたりに生まれた自分はバリバリZ世代を名乗れる。


作品情報

本作はL'Arc~en~Cielがアジア圏15億人を対象に行ったシングル20作を対象とする人気投票で上位に入った12曲と新曲「Anemone」を収録したベストアルバム。彼らにとっては現状最後のミリオンヒットであり、唯一の1枚組ベストでもある。

前置き

個人的にはラルクは全く世代とは言えず、知っている曲もテレビ番組の90年代特集か何かでかかってた「HONEY」と、「千鳥の鬼レンチャン」というカラオケ番組で課題曲として登場した「winter fall」しか知らなかった。

たまに目にした同時期に売れていたGLAYと比べて評価する文献で決まって「メロディーが持ち味のGLAYに対してラルクはハードでマニアックなサウンドが特徴」という趣旨の記述があったのもそういう作風が苦手な自分にとっては敷居の高さに拍車をかけている感じがして、曲を聴く機会もきっかけも特になく、「昔のすごいバンド」というアホみたいな認識でずっと止まっていた。

ラルクのベストといえばこの後に出た「The Best of L'Arc-en-Ciel」シリーズや「TWENITY」シリーズの方が広く知られているっぽいけど、どちらも合計CD3枚分に相当する大ボリュームであり、さすがにそこまでの曲数を一気に聴き通す集中力は持てないな…ということでコンパクトな曲数で、「HONEY」も「winter fall」も入っている本作をSpotifyで聴くことにした。

感想

一言でいえば予想よりずっとポップで親しみやすい曲が多い印象だった。
前述のように「ハードでマニアックなサウンド」が売りだったということである程度身構えて聴き始めたら、1曲目の「Blurry Eyes」からして既にバンド以外の音色が次々に飛び出すポップな曲。確かにギターは効いているしちゃんとロックなバンドサウンドだけどハードと表現するほどゴリゴリなサウンドではない

その後も適度にバンド外の楽器をアクセントに使ったロックというよりはJ-POPの範疇に入るような曲が続く。一番バンドらしいなと思った「Driver's High」でさえ全体的に薄くキーボードがかかっているし、新曲のバラード「Anemone」に至ってはエレキギターがいない

元々知っていた2曲にしても「winter fall」はイメージよりも管弦の主張が強いし、「HONEY」は結構イメージ通りだったけどサビでどう考えても場違いだろそれと言いたくなるタンバリンの裏打ちがシャカシャカ入ってきて単なるハードな曲というイメージで終わらない。2曲とも90年代らしい風格のあるポップスであり、全体的にも正直これのどこがハードでマニアックなサウンドなんだ…?と思うくらいに分かりやすくて敷居が低いアルバムだった。

直前までMr.Childrenやスピッツなどのもっとポップなバンドが売れていたという事情を考えると、確かに彼らの曲に比べたら今作の曲はハードだしさぞ衝撃的だっただろうとは思うけど、現代の尖りまくった新人バンド達の曲に慣れている自分にとっては「ハードでマニアックな曲」に分類されるのはせいぜい「STAY AWAY」くらいで、あとはだいぶマイルドに聴こえた。やっぱり人気投票で上位に入った曲を集めたというコンセプトの都合上、そういう一般層に合わないマニアックな要素は自動的に排除されているのだろうか。

そういうわけで、今作だけ聴いた限りではラルクは思ったより大衆に向けてかなり開いた感じのバンドであったという印象に落ち着いた。個人的にはこれ以上深くラルクの曲を掘り進めて行こうという気にはならなかったけど、当時のヒット曲の中でも投票から漏れて入らなかった曲はたくさんあるようで、ヒット曲だけを手早く聴きたいなら今作を聴いてハイ終わり!とはならないあの頃にラルクに興味があった人が最初に買うCDとしてはうってつけの一枚だったんじゃないかと思う。

一番好きな曲:winter fall
一番「…」な曲:STAY AWAY

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