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Z世代が聴く名盤 番外編 「この世で最もいい曲」を、全部聴く
本シリーズはZ世代にあたる筆者(2003年生)が世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴いて、感想を書いていくただそれだけのシリーズである。
これまで31枚の名盤(+番外編)を取り扱ってきたが、33回目となる今回は趣向を変えた番外編をお届けしてみる。
今年の春、Twitter上で次のような企画が立てられた。
#この世で最もいい曲100選
— 𝑷𝒆𝒕𝒆𝒓 (@zippu21) March 3, 2024
リサフランクさんのツイートがきっかけで流行ったこのタグ、実は私の方で集計中で、どの曲が一番票を集めたか、いつか発表しようと思っています。現時点で300人近く集計済み
読んで字の如くこの世で最もいいと思った曲を100曲選んで公表するというただそれだけのシンプルなハッシュタグだが、そのシンプルさ故に大規模な盛り上がりを見せ、多くの人がそれぞれの「この世で最もいい曲100選」を公表した。それを上記の通り、全部かき集めて集計しランキングにまとめる超人が現れたのである。
5か月後、人数にして415人分、41,805票を集めた結果をまとめた記事が彼のサイトに投稿された。
結果、最終的には約26,000曲もの名前が挙がったようで、記事で公開された3票以上を獲得した曲だけでも2,864曲ある。
※なお、このランキングはサブスクで聴ける曲のみを対象にし集計しているので、山下達郎「クリスマス・イヴ」やTHE BLUE HEARTS「TRAIN TRAIN」などのサブスクに来ていない名曲やCHAGE & ASKA「SAY YES」、BLANKEY JET CITY「ガソリンの揺れかた」など今はサブスクで聴けるけど集計期間中はまだだった名曲はランクインしていない。特に後者は期間さえ合ってれば結構上位に食い込んできそうだっただけに惜しい。
「この世で最もいい曲」と銘打っただけあってランクインした曲達はみんな音楽業界に重要な影響をもたらしていたり、有名なミュージシャンやその他センスのある人が絶賛していたり、と聴いたことはないけどかねてから気になっていた曲もちらほら見受けられる。
第13回、第23回に続く恒例の番外編となる今回は、そのなかでも10票以上を獲得した283曲をランキング順に全て聴き、感想を羅列する地獄のマラソン記事を展開していく。本当は2,864曲全部聴きたかったけど余裕で死ねるので断念しました
エイリアンズ / キリンジ
1位タイの片割れは2人してソングライターな兄弟が組んだユニット(今は兄が一人でやっている)の代表曲。これは弟の作品。
夜の高速道路を舞台としたスローでメロウな感じの曲。キリンジ自体がまず玄人好みな作風なのもあって、実際発売当時もそこまでヒットはしなかったのだが、20年以上かけてあらゆる媒体を経由してじわじわと広まっていったという経緯を持つ。
個人的にもキリンジというユニットはこの曲をきっかけに知ったので思い出深いっちゃ深いけど「この世で最もいい曲」を選ぶとなるとそんなに上までやってくるイメージがなかったのでこの結果には意表を突かれた。初心者にキリンジを勧めるならまずはこの曲、みたいな風潮は感じるんだけど…
若者のすべて / フジファブリック
もう片方の1位は、来年の2月をもって無期限活動休止に入るロックバンド・フジファブリックの代表曲。
初代ボーカルにしてメインライターだった故・志村正彦による夏の終わりを描いたロックバラードで、こちらも発売当時よりも後(特に志村氏が29歳の若さで夭折してから)になってじわじわと皆の人気を集めていき、とうとうヨルシカ(のボーカル)と亀田誠治がタッグを組みカバーするまでに至った。
この曲に関しては、高校で初めて出来た友達が誘ってくれたコピーバンドで演奏したという自分にしては珍しく青春してる思い出があるので、他の曲に比べても思い入れは強いほうだと思う。それを抜きにしてもいずれどこかのタイミングでハマっていただろうし。でも最近はかつての中島みゆき「糸」の如く、誰も彼もがこの曲をカバーする状況が続いているので若干食傷気味ではある。
ミュージック / サカナクション
2位は5人組ロックバンド・サカナクションの代表曲。彼らの代名詞と言えるキャッチーでダンサブルな作風を極限まで高めたような一曲で、今のところ唯一となっている紅白出場もこの曲で出ている。そのまま「ミュージック」をテーマにした決意表明のような歌詞も相まってファンたちのあいだでは「最高傑作」との呼び声も高い。
この曲はちょうど集計期間中に放送されたNHKのドキュメンタリー番組で、ボーカルの山口氏がうつ病から復活するライブからの抜粋で感動的に流れていたのも影響していると思うが、なるほど確かにこれも納得の結果。前述のとおり歌詞もひっくるめて評価されている部分が大きいと思うから、歌詞をそこまで重要視してない自分としては、「この世で最もいい曲」に挙げたいサカナクションの曲はもっと他にあるけど、トータルで考えてくれと言われたら自分もこの曲を挙げちゃうだろうなと思う。
ばらの花 / くるり
3位はそんなサカナクションにも影響を与えた奇才・岸田繁が率いるロックバンド・くるりの代表曲。淡々とした演奏に繊細な描写の歌詞、気だるげなボーカルに流麗な女声コーラスの対比が映えるそんな感じの一曲で、これも1位タイの2曲と同じく時代とともに認知度を高め、最終的には高校生向けの音楽の教科書に掲載されるまでに上り詰めた。
この曲に出会ってから5年近く経つが何回聴いてもまだ飽きないし、これは確かに自分も「この世で最もいい曲」に挙げるかもしれない。ガツンとした盛り上がりは皆無だし巷で大ヒットを飛ばす曲達とは対極の位置にある楽曲だとすら思うんだけど、それでもこの曲には人々を惹きつける何かがあると聴くたびにそう思う。
Don't Look Back in Anger / Oasis
続いては先日再集結を発表して世界が沸きに沸いたオアシス。2ndアルバムに収録されている壮大で叙情的なロックバラードで、バンドが解散した後もボーカルを取ったノエル・ギャラガーのライブではお約束のようにこの曲が求められる程度にはアンセムと化している一曲である。
個人的には同じ2ndアルバムの曲でも「Wonderwall」の方が好きで、この曲はあんまり聴いてこなかったんだけど、今改めて聴き直すとこっちもかなり良い。ここまで表現力のあるボーカルを務めているのが当時本職ボーカルではなかった兄というのも何気に凄い。
風をあつめて / はっぴいえんど
メンバー全員がその後の邦楽界に計り知れない影響を与えたことで現在最も神格化されている日本のロックバンド・はっぴいえんどの代表曲。その曲調は案外素朴なもので、後に作詞家としてアイドル・歌謡界で無双することになる松本隆による文学的な歌詞が主に高く評価されている。
個人的な印象は初めて聴いた時からずっと一貫して地味だけど率直に良い曲といった感じ。フレーズを大事にして歌っているように聞こえるので曲より詞を楽しむ曲な気がしてて、いつも歌詞に染み入るようにして聴いている。
September / Earth, Wind & Fire
ファンク界のレジェンド、Earth, Wind & Fireの代表曲。タイトルには「September」とあるが実際は12月に9月の出来事を思い出しているという内容の歌詞だというのは有名な話か。
上位付近の洋楽にはみんな言える事だと思うけど、タイトルは知らなくても聴けば分かるスタンダードな曲。ノリノリの陽気なダンスチューンなので、歌詞とかは何を言っているのかさっぱりだが結構好きな曲だ。
Virtual Insanity / Jamiroquai
不可思議な動く床のPVがあまりにも有名なJamiroquaiの代表曲。近年のJ-POPでよく見る「丸サコード」を使っており、演奏はシャレオツなピアノに跳ねるベースのアシッド・ジャズ、歌詞のインスピレーション元はまさかの札幌の地下街…あとカップヌードルのCMと日本人と親和性の高い要素が他の洋楽と比べても多めで、ゆえに日本でもこの曲は大人気である。
この曲は曲そのものよりPVのインパクトが強い。長いこと知らない曲だったけどYouTubeにオススメされて一発で引き込まれたのを覚えている。当時は渋谷系にハマっており、その手のものと雰囲気が近かったら何でもハマっていた気がしないでもないけど、この曲は今聴き返しても良い感じ。
Wouldn't It Be Nice / The Beach Boys
「美しい」「訳分からん」と聴く人によって感想が真っ二つに割れ、未だに賛否両論を巻き起こし続けている名盤「Pet Sounds」の一曲目。アルバムの「つかみ」を担うためか難解な今作の中では飛び抜けてポップな曲であり、今作を理解できない人の間でもこの曲だけは「好き」という声を聞く事例もちょいちょい見受けられる。
何を隠そう自分がそのタイプの人間なので、この手の感想に遭遇するたびに自分は一人ではないとホッとする。それはそれとしてこの曲は能天気な感じの明るい曲(といっても底抜けに明るい感じではない)でひときわ印象的。山下達郎が影響を受けたとされる重厚なコーラスも美しいけど、それは同じアルバムの別の曲の方が顕著でこの曲では正直そこまで印象的ではない。
君は天然色 / 大滝詠一
ナイアガラ・サウンドの担い手、大瀧詠一による名盤「A LONG VACATION」のハイライト。発売から何十年と経ってもビールのCMソングになったりアニメのエンディングになったりとタイアップは絶えず今も根強く愛されている楽曲である。
シティ・ポップの大御所たる山下達郎を育てたキーマン…にしては海外ではあまり注目されてる感じがしないのが不思議だが、曲は煌びやかなポップスになっており、普通に海外で注目を集めても何らおかしくないクオリティ。彼の音楽はシティ・ポップではなくナイアガラ・サウンド…的な風潮か何かでシティ・ポップを狙う海外のディガーの眼中には入らないのだろうか。
ナイトクルージング / フィッシュマンズ
近年海外を中心とした再評価が進み、知名度急上昇中のバンド・フィッシュマンズの出世作「空中キャンプ」よりこの曲がランクイン。幻想的で浮遊感のあるサウンドはまさに「ナイトクルージング」というタイトルがピッタリで、シングルカットもされている。
フィッシュマンズといえば「LONG SEASON」が海外で再評価されている事で有名であり、このランキングでも世論に流された人が大量に出てそっちが一番上に来るかな、と思ったらこの曲が一番人気だった。かつて自分はこの曲の事を「Vaporwaveの先駆けみたいな」と表現した感想を出したが、今のところそういう趣旨のコメントは他に見たことがない。自分は何か根本的にジャンルの認識を間違えていたのだろうか。
There She Goes / The La's
80年代のイギリスで活躍していたロックバンド・The La's(ザ・ラーズ)の代表曲。このランキングを集計したPeter氏によると「その美しさから数々のアーティストに影響を与え、カバーされ続けている曲」とのこと。
ここにきて初めて知らない曲が出てきた。パッと通して聴いた感じは時代を感じさせない普遍的なアコースティック・ポップ。Wikiによるとオアシスは彼らのファンだったらしいけど、お互いの作風的にそれも何となく分かる気がする。
空洞です / ゆらゆら帝国
「バンドが完成してしまった」として解散したロックバンド・ゆらゆら帝国のラストアルバムの表題曲。その言葉通り今作は発売当時も今も揺るぎない名盤として10年以上にわたって語り継がれている。
とか言いつつこれも聴いたことなかったんで今回を機に初めて聴く。バンドの解散理由はこれ以上なくカッコいいが、曲自体はアングラ界隈でブイブイ言わせてたバンドの完成形だけあってプリミティブで渋い。どことなく昭和末期のバンドブームっぽい空気もあって、現代のロックバンドに欠けている物が全て詰まっているようにも感じる。何にせよ不思議な魅力のある曲だ。
Bohemian Rhapsody / Queen
日本との親和性が異様に高く、もちろん海外でも高い人気を誇るイギリスのロックバンド・Queenの代表曲。他の楽曲と比べてCMソングや番組のBGMとしては使いづらく一般的な認知度は実は結構低いらしいのだが、音楽好きの間では変わらずこの曲が大正義なようで、この企画においてもQueenの曲の中ではぶっちぎりの第一位を記録している。
自分もなんだかんだQueenではこの曲が一番好き。6分弱とポップスにしては結構な長尺だがアカペラ→弾き語り→バラード→オペラ→ロック、と曲調がどんどん変わっていくのでメリハリがあって飽きない。自分はその中でも美しいコーラスが聴けるアカペラパートとオペラパートが好き。
Ditto / NewJeans
韓国発、新進気鋭のアイドルグループNewJeansの出世作。元々はシングルのC/W曲だったのだが、意味深なPVが話題を呼び、考察が盛り上がるなどして表題曲に匹敵する人気を得た模様。
NewJeansはAppleの広告で死ぬ程かかってた「ETA」しか知らず、それ以外の曲は今回を機に初めて聴く。この曲は浮遊感あるシンセにやたら忙しないビートが乗っかる不思議な感触の曲で、確かにC/W曲にとどめておくのにはもったいない中毒性があると感じた。
In My Life / The Beatles
ここでビートルズが初登場。6枚目のアルバム「Rubber Soul」よりこの曲がランクイン。作者のジョン・レノンが「初めて真面目に歌詞を書いた曲」と語っているように内容はそれまでの人生を回顧するノスタルジックなものでメロディもそれに寄り添うような穏やかでピースフルな曲調となっている。
ビートルズがこの手のランキングに入ってくるなら一番上は「Yesterday」か「A Day in the Life」辺りだろうと思ってたので、この曲が最上位というのは少し意外。でも個人的にもその2曲よりはこの曲を聴く事のほうが圧倒的に多いし、実際どれも好きな曲には変わりないので、まぁ何だかんだで納得の結果ではあるのかなと思う。
WORLD'S END SUPERNOVA / くるり
くるり2曲目のランクインは、ロキノン系のロックからエレクトロ路線へと舵を切ったアルバム「TEAM ROCK」に続いて、打ち込みサウンドが円熟味を帯びてきた時期に発表されたダンスミュージック。当時の人気が右肩上がりだったのもあって、今作でグループ史上最高売上も叩き出している。
この曲も先程の「ばらの花」や「ワンダーフォーゲル」と並んでエレクトロ期のくるりを代表する曲としてよく挙げられがちではあるが、それら2曲と違ってこの曲にどっぷりハマった時期というのはなかったので、個人的にはどうしても印象は落ちてしまうところがある。
Merry Christmas Mr. Lawrence / 坂本龍一
映画「戦場のメリークリスマス」メインテーマ。オリジナル・バージョンは坂本氏が当時所属していたグループ・YMOを思わせるようなテクノポップ調の時代を感じるアレンジだが、現在は2000年代に入ってからリメイクされたピアノ一本のバージョンのほうが人気かと思われる。
映画は見たことないけど雪がしんしんと降り積もる情景が見えてくるような繊細なメロディは美しく、色褪せない。有名なのはピアノ一本で弾いたほうなんだろうけど、個人的にはもう少し装飾のある原曲のほうが好き。
What's Going On / Marvin Gaye
ローリング・ストーン紙の選ぶ「オールタイム・ベストアルバム」改訂版で1位に輝いたことも記憶に新しい、マーヴィン・ゲイの代表作の表題曲。
ベトナム戦争から帰還した自身の弟との再会を機に書かれたという穏やかでソウルフルな反戦歌で、昨今の時勢もあって急激に再評価が進んでいる。
元々そういうメッセージの事は全く知らず、たまたま偶然聴く機会があってメロディの良さに惹かれたという経験があるので、まず歌詞よりも前に楽曲としての芯が強いなと真っ先に思う。反戦歌らしからぬ穏やかさも慈しみを感じられて良い。
Rock with You / Michael Jackson
マイケル・ジャクソン、初のランクインはブレイクのきっかけとなった「Off The Wall」の収録曲。のちにシングルカットもされ、先行シングルだった「Don't Stop 'Til You Get Enough」に続いて大ヒット、その勢いのまま「Thriller」へ続いていくこととなった。
「Thriller」より前のMJの曲は知らなかったので、必然的にこの曲を聴くのも初めて。ざっと聴いた感じはやっぱ大ヒットを飛ばしただけあってヒット性抜群のファンキーなナンバーだなぁといった感じだがキラッキラのシンセや80s全開の打ち込みが炸裂する「Thriller」や「Bad」に比べると生音主体で若干大人しい印象。
Lucky / SUPERCAR
くるり、ナンバーガールらとともに特定の世代の特定の層の一時代を彩ったロックバンド・SUPERCARの代表曲。ギターの中村弘二とベースのフルカワミキの男女ツインボーカルで歌われるラブソングで、当時平均年齢19歳とはとても思えない完成度の高さとその頃ならではの若さが並行して評価されているものと思われる。
スーパーカーはくるり繋がりでベスト盤を借りて聴いたことがある。代表曲とされてた「STORYWRITER」や「Strobolights」は一発でハマった一方でそれらと同等かそれ以上に代表的扱いを受けているこの曲はイマイチピンと来なかった記憶がある。改めて聴き直しても世間で言われている程の良さはなかなか見えてこない。同じような印象だった「cream soda」はその後継続して聴いているうちにじわじわハマってきたのでこの曲ももっと聴き込めばそのうち良さが分かるようになるだろうか。
Live Forever / Oasis
オアシス、2曲目のランクインはデビューアルバムの収録曲。「自分が嫌いだし死にたい」と謳っていたカート・コバーンに対するカウンターの意味も込められているというこの曲は、今回のランキングにおいて「Smells Like Teen Spirit」に2票差をつけて勝利した。
ただ個人的には昔記事にもしたように次作の曲と比べて圧倒的に弱い感じが否めない。時間を置いて聴き直す事でちょっとは印象も変わるかなと思ったけどダメだった。メロディが全然覚えられない。どちらかというと「自分が嫌いだし死にたい」側(?)の人間だからタイトルにも共感できない(だからってNirvanaが好きな訳でもないけど)し、この曲は昔からどうにも馴染まない。
Born Slippy (Nuxx) / Underworld
イングランド出身のエレクトロニック・ミュージック・グループ、アンダーワールドの出世作。映画「トレインスポッティング」の主題歌に起用され、彼らの名を世に知らしめるきっかけになったという。
アンダーワールドと言われると自分は真っ先にジョジョのスタンド名を思い浮かべてしまうが、曲自体は爽やかで洗練されたテクノチューン。知らない曲だし特に言う事もないがこういうのは嫌いではない。元々この曲は「Born Slippy」という別の曲をリミックスしたものだったそうなのでオリジナル版も聴いてみたが全くの別物でビックリした。個人的にはこっちのが好き。
Teardrop / Massive Attack
アーティスティックで謎めいたユニット、マッシヴ・アタックの3作目からこの曲がランクイン。制作が難航しメンバーの緊張状態が長く続いた状態で作られたという環境が報われ、彼らの中で最も商業的に成功したアルバムになったというドラマがある作品を彩っているダークな一曲で、この曲だけに関する大きなトピックはなかったものの、この順位につけたことに対しては概ね納得する声が大半を占めた。
静かで妖しげなジャンルの呼称に困るタイプの曲で、今回この記事を書くにあたって初めて聴いたけどこの曲の良さが分かる人はかなり音楽の偏差値が高いんじゃないかと思う。世間でも言われているとおり非常に美しい曲ではあるけど何となくインテリ向けというか敷居が高い感じも同時にしてしまうというか。ちょっと自分には掴みどころが見出せない…
あとジャケ写がモロにミスチルのベスト盤の構図と同じで笑った。時系列的にミスチル側がオマージュしたものと思われるが、こんなところでこんな形で自分の好きなバンドの影響元に遭遇するとは…
Race for the Prize / The Flaming Lips
80年代から活躍しているアメリカのロックバンドがキャリア17年目の90年代末に発表したサイケなポップス。この曲が入ったアルバムによってバンドの評判がさらに高まり、以降しばらくゴールドディスクやプラチナディスクを連発することになる。
この曲も初めて聴いたけど、こっちは自分でもわりと理解できる大衆向けに開いた感じのポップスに仕上がっている。1999年の曲にしては若干80年代を引きずったようなサウンドだが現代においては逆にそれが新鮮。
Every Breath You Take / The Police
ある程度の洋楽好きなら知らない者はいないであろう3人組ロックバンド・ポリスの代表曲。「見つめていたい」との邦題が示すとおり、一途に想いを寄せ続ける男のラブソングなのだが、歌詞の捉え方によってはかなりヤバい内容になることは有名な話か。
この曲は昔ドラムを習っていたころに課題曲として提示されたときに初めて聴いたので、その印象が強い(ひたすら同じフレーズを叩き続けるので初心者向けみたいな風潮があったのだろう)。曲自体はその当時から一見地味だけど気がついたら覚えている…みたいな印象だった記憶。
Omoide In My Head / ナンバーガール
福岡発の大物ロックバンド・ナンバーガールのライブの定番曲。ボーカル・向井秀徳による「ドラムス、アヒト・イナザワ」との掛け声から即座に高速ドラム乱打ちが炸裂しイントロになだれ込むのがライブでのお約束となっていた。なお、スタジオ音源が収録されているアルバム「SCHOOL GIRL BYE BYE」はサブスク解禁されていないので本作はSpotifyではライブバージョンしか聴けない状態となっている。
いつもドラム乱打ちの所で満足してイントロを聴き終えたら別の曲を聴きに行ってしまっていたので、今回初めてそれ以降を聴いた。ナンバーガールはライブアルバムを2枚出しており、その両方にこの曲が収録されているが、個人的にはイントロはサッポロ(解散ライブ)、曲自体はシブヤ(バリバリ現役時代)バージョンの方が好み。
サーカスナイト / 七尾旅人
高知県出身のシンガーソングライター、七尾旅人による一曲。ランキングを集計したPeter氏のコメントによると、当初は全く売り上げが振るわなかったところ口コミでじわじわと評判を上げ、人気番組「テラスハウス」のBGMに起用されたことで人気が爆発したとのこと。
2012年発売の曲とのことだが、聴いてみた感じは2000年代初頭のR&Bブームを思わせるような軽めのリズムの色気漂う一曲といった感触だった。確かにこれは「テラスハウス」みたいな恋愛が絡むリアリティ番組には「映える」だろうし、口コミで広まるだけの良さはやっぱりある。
Heroes / David Bowie
デヴィッド・ボウイ、初にして唯一のランクインは1970年代後半のベルリンを拠点に活動していた頃の代表曲。プロデューサーにブライアン・イーノを起用し、当時東西に分かれていたベルリンのカップルを主人公とした歌詞が時代を問わず人気を集めている。一説によればベルリンでのライブでこの曲を歌ったことがきっかけでベルリンの壁が崩壊したとも言われている。
デヴィッド・ボウイは名前だけ知ってたけど、曲をちゃんと聴くのは今回が初めて。この曲は歌詞的な意味でも音色的な意味でも、当時の時代性が強く表れたロックナンバーで正直前述のような情報を事前に仕入れてなかったら微妙だと思ってたと思う。曲そのものよりも曲を取り巻くバックストーリーのほうが面白かったという…
When You Sleep / my bloody valentine
「シューゲイザー」というジャンルを世に知らしめた大名盤「loveless」からこの曲がランクイン。シューゲイザーをシューゲイザーたらしめる轟音爆音なギターと多重ボーカルはもちろん、キャッチーなメロディーが多くの人の心を掴んだものと思われる。
基本的になんかよく分からなかったという印象が先行する「loveless」だが、唯一一発で耳に残ったのがこの曲。難解というか実態がつかみにくい他の曲に比べてこの曲だけ明らかに飛び抜けてキャッチーであり、最早浮いているまである。そんなわけで「loveless」はこの曲ぐらいしか聴いてない。
Smells Like Teen Spirit / Nirvana
グランジロックというジャンルを世に知らしめ、それまで主流だったメタルや産業ロックを一気にオワコンへと追いやってしまった問題作。その影響の大きさは作曲者でありボーカルのカート・コバーンにも跳ね返り、ヒットがもたらした環境の変化に耐えられず自殺してしまう遠因ともなった。
この曲はなんかさわりだけは聴いたことあったけど、腰を据えてじっくりと聴き込むのは今回が初めて。元々アングラ界隈にいた彼らがアルバムを売るためにポップス側に寄せてこの曲を書いたという逸話を知ったうえで聴くとその狙いは寸分の狂いもなく成功していると思うし、それで良かったのかはともかくとしてシーンに対してあれほどの地殻変動をもたらすだけのパワーを持っているのは確かだ。
世界の終わり / Thee Michelle Gun Elephant
主要メンバー2人が亡くなった現在でもなお高い人気を誇るレジェンド級のロックバンド・Thee Michelle Gun Elephantの代表曲。メジャーデビュー1発目にして解散ライブの最終曲でもあり、何かと節目に縁がある。
これも今回初めて聴いた。色んな人から「ミッシェルは真のロックだ」的な話を散々聞かされてたので、人を寄せ付けないイカツい楽曲を想像していたのだが、ロックに明るくない自分でも理屈抜きで盛り上がれるアッパーな曲が流れてきて驚いた。これは確かに皆から支持されるのも納得。
ロビンソン / スピッツ
我らがスピッツからは名実ともに最大級のヒット曲が一番人気を集める結果となった。ライバルのミスチルやシャ乱Qに後れを取りつつ直近のアルバム「空の飛び方」で兆しはつかみかけていたが、この曲でついに大ブレイク、人気バンドの仲間入りを果たしたきっかけの一曲となった。
これもまた納得の結果。スピッツも好きな曲は色々あるけどなんだかんだで結局この曲に落ち着くし、この曲ほど周りの評価と実際に出した結果(売上)が釣り合っている曲もなかなかないと思う。欲を言えばこの曲の良さが何かの手を使って海外にも広まらないかな、とも思う。
1984 / andymori
解散して10年近く経ってもなお愛され続け、最近TikTokで別の曲がバズったせいで界隈内でひと悶着あったandymoriの代表曲。タイトルの「1984」とはボーカル兼メインライターの小山田壮平氏の生まれ年であり、自らの幼少期を懐かしむ歌詞とノスタルジックな曲調が人気を集めている。
この曲も良い。トランペットをフューチャーした穏やかでエバーグリーンな曲調とか、サビでの力強さのまるでないファルセットが最後の転調で地声に変わっていきなり青春っぽくなる所とか、初めて聴いた高校生の頃でも結構しみじみと浸りながら聴いてたけど今聴き返すとなんかリアルに涙を誘う。
Piano Man / Billy Joel
超大物シンガーソングライター、ビリー・ジョエルのデビュー曲にして代表作。ナイトバーでピアノを弾くバイトをしていた頃の経験を基にした3拍子のバラードで、いきなりの大ヒットを記録。一気にスターダムを駆け上がる足掛かりとなった。
デビュー作ではあるものの長い下積みがあり、既にレコード会社から何枚かアルバムを出したりもしているので初々しさはあまりなく、むしろこなれた感じさえ漂っている。デビューまでの紆余曲折でそれ相応の苦労もしてきたらしいからそれも踏まえてこの曲を聴くとより深みが増すのかもしれない。
Just the Two of Us / Grover Washington, Jr.
ボーカルにビル・ウィザースを迎え(アーティストのグローバー・ワシントンJr.は間奏でサックス吹いてる人)た上質なAOR。当時大ヒットを記録しただけでなく、J-POP界隈でもこの曲のコード進行が最近のヒット曲に頻用されていたり、海外でもこの曲を使った変なミームが突如流行ったり…と現代でもネタに事欠かない名曲。
初めて自分がこの曲を知ったのはEXILEがカバーしてる音源だった(幼稚園~小学生の頃にかけてファンだった)のだが、その頃は知らんけど普通にええ曲やな程度の認識だったので、まさかここまでこの曲が再評価される時が来るとは…と改めて振り返るとその扱いの変わりように驚く。だが今回この曲について調べてて一番驚いたのはこの曲に邦題(「クリスタルの恋人たち」)があったことだった。
Ain't No Mountain High Enough / Marvin Gaye
「What's Going On」を発表する前だった若かりし頃のマーヴィン・ゲイが自分で曲を書くようになる前、女性歌手のタミー・テレルとのデュエットで発表していたラブソング。ボーカル2人とも夭折して随分経つが、現在でもこうして「この世で最もいい曲」に選ばれる程には曲の良さは色褪せない。
「What's Going On」しか知らない状態でこの曲を聴くとマーヴィン・ゲイの声が違いすぎてビックリする。声を張り上げてがっつくように歌っているので本当に別人みたいだ。曲自体は60年代らしい優雅なストリングスの存在感が強いポップス。嗜好というよりは教養のために聴く音楽みたいな印象。
High and Dry / Radiohead
音楽好きがなぜかこよなく愛するロックバンド、レディオヘッドからはこの曲が最高位にランクイン。バンド結成前から存在していた楽曲で、バンドのデビュー当時に録音した音源がそのまま使われたという逸話がある。
初期の彼らの作風だったっぽい鬱屈したアコースティックロックナンバー、というのが今回初めて聴いてみての感想。タイトルの「High and Dry」とは「見捨てられた」という意味の慣用句らしく、それを踏まえて楽曲を聴くとサビの「Don't leave me high, Don't leave me dry」の繰り返しがより切実に聴こえてくる。
God Only Knows / The Beach Boys
賛否両論の名盤「Pet Sounds」よりもう1曲ランクイン。タイトルに「God」と冠しただけあって神々しさすら覚える美しいハーモニーが特徴的な一曲であのポール・マッカートニーが「今まで聴いたなかで最高の一曲」と評したとまでいわれている。
という前評判だけ聞くとハードルが激上がりしてしまうが、実際のこの曲はその手の評判を聞いて想像するような派手さも荘厳さもないので、「あの超名盤「Pet Sounds」のハイライト!」的なノリで聴いたらわりと肩透かしを食らうと思う。個人的にもそうやって気合を入れて聴いた時より、ランダム再生でたまたまこの曲に当たったり、往年のロックを学ぶ大学の授業の一環で教授がこの曲をかけたりとあまり気負わずにこの曲と向き合った時の方が良い曲に聴こえたように記憶している。
What a Fool Believes / The Doobie Brothers
メンバーにマイケル・マクドナルドを迎え、作風から何から全て激変させてしまったことで有名なバンド、ザ・ドゥービー・ブラザーズのキャラ変後の代表曲。激変後の作風であるAORを前面に押し出した楽曲で、全米で一位を獲得したのにとどまらず、グラミー賞までこの曲で獲得したという。
ドゥービー・ブラザーズはキャラ変前の曲を小学生のころのドラムの先生に課題曲として提示されたのでその頃のイメージで固まっており、この時期の曲は初めて聴く。鍵盤を前面に押し出したアーバンな曲調で歌声も雰囲気も何もかも違うので普通に誰だお前って感じだけど、グラミー賞を獲っただけあってポップさは抜群なので、別物として割と楽しんで聴けてしまう。
サマージャム'95 / スチャダラパー
日本におけるヒップホップ普及の立役者の一組、スチャダラパーの代表曲。「オモロ・ラップ」を提唱しシーンに現れた彼らだが、この楽曲においてはコミカルなラップはそのままに、裏で流れているトラックが涼し気であまりわちゃわちゃしていないという新境地に辿り着いている。
彼らのラップは「今夜はブギー・バック」でしか聴いたことがなかったが、ノリとしてはそれとあんまり変わらない。夏の日の情景を切り取った会話のような掛け合いラップに、印象的なサビが何回か挟まる構成をとっている。軽やかな語り口に身を任せて聴いているとレンタカーで皆でプール行ったりクラブでハメ外したりやったことない事でも「あーそんなことあったなぁ」という気分にさせられてくる。
I'm Not In Love / 10cc
イギリス出身のバンドによるソフトロックの名曲。メンバーによるコーラスを多重録音し、全編を声で埋め尽くした耽美なサウンドが有名で、ビリー・ジョエルのプロデューサーがこの曲に影響を受けて「Just the Way You Are」のサウンドを作り出したという逸話も残っている。
曲自体はスティーヴィー・ワンダーの「You Are My Sunshine Of My Life」を連想させるようなスローバラードだが、それ以上に印象的なのがコーラス。上の段落にも書いたけどマジで曲全体を覆う勢いであり、PCのスピーカーを通して聴いていると耽美を通り越して不気味にすら思えてくる。
(They Long To Be) Close To You / Carpenters
邦題「遥かなる影」。元々は職業作家達によって作られた男性俳優の持ち歌だったが、カーペンターズによるこのカバーが大ヒットし、現在では完全に彼女らの曲として定着。心に沁みる名曲として現在も歌い継がれている。
普段暮らしててこの曲が頭をよぎる事はないんだけど、いざこうして真面目に聴いてみるとやっぱ良い曲だわとなる。ケチのつけようがない。とにかくこの端正な歌声と楽曲がハマりすぎてて、逆に原曲である男性俳優が歌ったバージョンの仕上がりが想像できない。
No Surprises / Radiohead
前作「The Bends」で一気に高まっていたレディオヘッドの地位を絶対的なものにした出世作「OK Computer」よりこの曲がランクイン。穏やかだけどどこか危うい雰囲気が漂うこじんまりとしたバラードで、「Paranoid Android」と並んで今作のハイライトとされている(っぽい)。
物は試しと聴いてみて記事にまとめるも結局良さが理解できなかった「OK Computer」だが、アルバムの後半で癒しのようにかかるこの曲だけは今でも継続して聴いている程には好きな曲だ。今にもどこかへ消えてしまいそうなか細い感じが今の自分のメンタルに合っていて逆説的に救われる気がする。
サヨナラCOLOR / SUPER BUTTER DOG
レキシやハナレグミがかつて組んでいた5人組ファンクバンド・SUPER BUTTER DOGの代表曲。別れを題材にしたアコースティックなバラードで、バンド外でもボーカルの永積タカシ氏ことハナレグミが晩年の忌野清志郎とこの曲をデュエットするなどのトピックがある。
叙情的なボーカル、これでもかと切なさを増幅させるスライドギター、前述の通り別れをテーマにした刹那的な歌詞、それを引き立てるメロディー、とこれが嫌いな日本人なんているのか?ってくらいJ-POPの「泣き」の要素がギュギューッと詰まったド王道。SUPER BUTTER DOGのバラードといえば「5秒前の午後」も捨てがたいけどやっぱりこっちに軍配かな。
A Day In The Life / The Beatles
長らく「ビートルズの最高傑作」と持て囃されてきた(最近は「Revolver」や「Abbey Road」に人気を取られつつある)アルバム「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」の最後を飾る名曲。今作を過大評価だ!と主張している人でもこの曲は認めている(というかこの曲だけが取り柄の作品、みたいな言い草が多い)という、それほどの曲である。
それほどの曲なだけあってやっぱり今聴いても凄い風格を感じる。ジョンとポールが持ち寄った未完成の楽曲が奇跡的に嚙み合いこの曲になった話とかひたすら高い音へ高い音へと昇っていくオーケストラとか最後のピアノ3台を使ったEコードとかどこをとっても名曲オーラが滲み出てくるというか。ただそもそも「Sgt. Pepper's」をそんなに聴かないのでこの曲もそんな頻繁に耳にすることはない。
There Is a Light That Never Goes Out / The Smiths
ド暗い歌詞で悪名高い(?)イギリスのロックバンド、ザ・スミスの最高傑作(らしい)。「光は決して消えることはない」という希望が見えそうな題名とは裏腹に希死念慮丸出しの破滅的な愛情が歌われている。
そんな歌詞の事を一旦忘れて聴いてみた感想は穏やかで普通に明るい寄りのポップな曲といったところ。この曲調で「君と一緒なら二階建てバスに轢き殺されたって幸せだ」とか歌ってると思うとシュールすぎる。
深夜高速 / フラワーカンパニーズ
1989年結成のロックバンド、フラワーカンパニーズの代表曲。元々ライブの会場限定で配布されていた曲だったがスタッフの声によってシングルとして発売、それから20年もの時を経て彼らの代表曲にまで上り詰め、キリンジの「エイリアンズ」と完全に同じ道筋をたどった。
この曲は確か岡崎体育がCMソングとしてカバーしたというニュースを見て存在を知って、そんなに重要そうなポジションにいる曲ならいっちょ聴いてみっかとトライしたけどあんまりピンとこなかった記憶がある。今回初めて原曲を聴いたわけだけど、その時に比べると割と素直に曲が入ってきた気がする。このガムシャラな歌声が曲に合っているというか。
Hyper-ballad / Björk
初期の見た目が日本人の誰かに似てると俺の中で話題のアイスランド出身の歌姫、ビョークの(たぶん)代表曲。うるさ型の評論家から絶賛されたというアルバム「Post」からシングルカットされ、全英4位を記録した。
さっき聴いたアンダーワールドみたいな緊迫したテクノ調の一曲。どこかでドーンと盛り上がることはなく、じわじわと盛り上がっていく構成で最後はいつの間にかストリングスまで入ってきて華やかに幕を閉じる。そのなかでビョークは独特のリズム感で粛々と歌っている。好きか、と言われると全くそんなことはないけど、何だか凄いことになっている感じは伝わってきた。
Not Strong Enough / boygenius
クィア(性的マイノリティ)を公言する女性シンガーソングライター3人によるスーパーグループが昨年放ったばかりのキラーチューン。決して明るくない歌詞を瑞々しいサウンドで歌い上げるこの曲は、今年の2月にグラミー賞を獲得した。
一聴した印象は少し物憂げなアコギ主体のポップス。3人とも元々は別々に活動していたシンガーソングライターだったからか歌声の主張が各々強く、随所で聴けるハモリパートの聴き応えが半端ない。打ち込みやヒップホップばかりだと思ってた最近の洋楽でバンドサウンドが聴けたのも嬉しい。
Alright / Kendrick Lamar
今年あちら側で大旋風を巻き起こし完全に時代の主人公と化したラッパー、ケンドリック・ラマーの代表作の一つ。切迫した状況を訴えながらも「Alright(大丈夫だ)」と繰り返し唱えるメッセージソングであり、「Black Lives Matter」運動のアンセムとしても使われたという。
普段ヒップホップは聴かないので、何を書けばいいものか全く浮かばない。全編ほぼラップで構成され、基本的に英検準2級程度のリスニング能力では聞き取れない早口だが、ちょくちょく放送禁止用語らしきものが聞き取れるのでそういうシリアスな曲だろうと言葉遣いは過激なのがデフォなんだなぁと思うなどした。ちょっとこれ以上の感想は出てきそうにない。
come again / m-flo
何気にジャンルの形容が難しい3人組ユニット・m-floの代表曲。2001年当時の流行の最先端を抑えたクールなナンバーで、発売から20年以上経ち完全にその頃のトレンドが時代遅れになった今でも色褪せない名曲として時を越え聴き続けられているようだ。
実際こういうクールなJ-POP(で良いのかな?)は案外ほかにありそうでなく、割と唯一無二のポジションを築いた名曲だと思う。ただ、当時のm-flo自身は女性ボーカルと男性ラップ、それと優れた作曲家の3人組という組み合わせを売りにしていたんだと思うけど、この曲に関してはラップが邪魔に思えて仕方ない。ラップの部分だけ突如別の曲に変貌したみたいで何年聴いててもそこのパートは好きになれない。世代の差か個人の好みの差なのか…
Hello,Again~昔からある場所~ / My Little Lover
当時全盛期であったMr.Childrenのプロデューサーを務めていた小林武史氏が直々に参加したユニット・My Little Loverの代表曲。ポップスの職人として名を馳せていた当時の小林氏の手腕がいかんなく発揮された名曲で、実際にこの曲を「J-POPの中で最もいい曲」と評する声も何回か見たことがある。
「この世で最もいい曲」というテーマにはうってつけの名声をちょこちょこ頂いているそんな今作だが、個人的には聞き飽きたというか、もちろん稀代の名曲だとは今でも思うんだけど、そう思って聴き倒していた時期が過ぎ、今は自分から積極的には聴きに行かなくなった…という感じのポジション。
Creep / Radiohead
レディオヘッド、3曲目のランクインはデビュー曲にして出世作。自虐的で陰鬱な歌詞と、「ガガッ、ガガッ」という象徴的なギターのカッティングが世間に受け大ヒットを記録したが、ヒットが大きすぎた故にその後しばらくこの曲の一発屋で終わるのではという悩みも生み、現在ではめったにライブでは披露されないという複雑な立ち位置の曲でもある。
代表作である「OK Computer」や「Kid A」は難解な作品として度々語り草にされ、割ととっつきにくいバンドとして扱われる事も少なくない彼らだが、デビュー作であるこの曲は意外にもシンプルで分かりやすいギターロック。自信なさげなボーカルはこの頃から健在だがそこまでグッと来なかった。
すばらしい日々 / ユニコーン
現代のバンドたちに多大なる影響を与えたロックバンド・ユニコーンが解散間際に発表した一曲。コミカルな作風が特徴だった彼らが一貫してシリアスに別れを歌い、この後ソロでもヒットを飛ばすようになる作詞作曲ボーカルの奥田民生氏のソングライティング力が遺憾なく発揮された名曲である。
ユニコーンの事はあまり詳しくないけどこの曲は好きだ。バンドが散り際にこういう曲を出すなら普通は物悲しさを前面に出すと思うのだが、この曲にそういう過剰な悲しさは見当たらず、淡々とカラッとした雰囲気。この曲における切なさとは演出される物ではなく、滲み出てくる物であるというか…
言語化するのが難しいが、そういう滲み出る切なさに惹かれてついつい何回も聴いてしまう、不思議な力を持った曲だと思う。
One Last Kiss / 宇多田ヒカル
デビューから何だかんだで約30年、ずっとスゲースゲーと言われ続けているシンガーソングライター・宇多田ヒカルの一番人気はこの曲。10数年に渡る蜜月の関係が続いた「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ最終作の主題歌であり、相変わらず色んな人達からスゲースゲーと言われている。
個人的な印象としては、極端に盛り上がりすぎない抑えた曲調の裏でなんか色々仕掛けられたインテリチックな曲(頭の悪い感想)といった感じ。乱暴に言えばいかにも音楽偏差値が高い人が褒めそうな曲調ってことなんだけど、発売当時テレビでかかってたサビのオッオッオッオッオーオという部分を一発で覚えてしまったので大衆向けポップスとしてもちゃんと成立しているんだよな…
ロックンロールは鳴り止まないっ / 神聖かまってちゃん
インターネット時代の申し子たる個性派ロックバンド、神聖かまってちゃんの代表曲。デビュー作の1発目にしてブレイクのきっかけになったり、本人達に「この曲の一発屋」というヤジが飛んだり、ロックバンドを題材にしたアニメのサブタイトルになったり、何故か映画化されたり、と良くも悪くもとんでもない爪痕を残した。
初期衝動という概念をそのまま曲にしたような一曲。前のめりで歌っているというよりは叫んでいるようなボーカルといい、後ろの激しい演奏といい、若さ青臭さ全開のノリでありどこかノスタルジックでもある。多分こういう曲は歳をとって若さの尊さに気づいてからより輝きを増すタイプで、自分も世間的にはまだ若いほうだと思うけど生まれてからそれなりに年月が経って昔を振り返る事が増えた今はちょっとだけこの曲が良い曲に思える。
Just the Way You Are / Billy Joel
ビリー・ジョエル、2曲目のランクインはまごうことなき出世作。デビュー以降徐々にセールスが停滞するなか最初の妻・エリザベスに捧げて作られたバラードで、彼を一躍スターダムに押し上げる起死回生の一手となっただけでなくグラミー賞まで受賞する自身最大のヒット曲にまで成長した。
妻へのラブバラードとはいってもそんなに熱烈に愛を歌う感じじゃなくて、幸せを静かに噛みしめるような控えめで大人しい曲調となっている。初めて聴いたけど割と好印象。あとこの曲は後にダフト・パンクが「High Fidelty」という曲で滅茶滅茶に切り刻んでサンプリングしてて、個人的にはその印象もかなり強い。あんな風に改変するのはなかなか出来る事ではない。
Walk On the Wild Side / Lou Reed
ロックにおける最重要人物の一人、ルー・リードの代表曲。当時身近にいたトランスジェンダーやゲイの役者達にスポットライトを当てた物語調の一曲で、キャリアでも数少ない大ヒットを記録したとされている。
大きな盛り上がりは皆無で、ボーカルも淡々としてて伴奏も最小限、ベースだけ何故か2人体制(普通のエレキベースとウッドベースが演奏を分け合っているっぽい)という変わった編成の楽曲。初めて聴いた印象は圧倒的に地味でちょっと数回聴いた程度じゃこの曲の良さには気付けないのかもと思った。
Champagne Supernova / Oasis
オアシスを代表する大名盤「(What's the Story) Morning Glory?」のラストを飾るロッカバラード。さざ波の音から静かに始まり、徐々に複数のギターのアンサンブルが連なる曲構成で、その長さは7分半に及ぶ。
「Wonderwall」「Don't Look Back In Anger」に比べると知名度は一段落ちる印象だけど、この曲も当たり前に良い曲である。メロディーは言わずもがなキャッチーでまさに全盛期的な勢いを感じるし、サウンドも前述の通り何本ものギターを重ねた轟音が壁のように迫ってきてド迫力だし、めちゃ久々に聴いたんだけど前聴いた時以上に魅力的に聴こえてくる。
Don't Stop Me Now / Queen
みんな大好きQueen、中期の代表曲。「俺を止めないでくれよ」と繰り返し歌う歌詞はWikipediaを見る限りあんまり良い意味ではなさそうだが、曲自体は一発で耳に残るアッパーなロックであり、CMソングや番組のBGMとして現在でも親しまれている。
個人的には正直Queenのなかでは「この世で最もいい曲」レベルにまで来る感じの曲ではなかった(好きだけど)のでちょっと意外だったんだけど、いざ聴き返したら「なんだかんだでやっぱり良い曲だな」ってなったし、確かに「We Will Rock You」「We Are The Champions」とか他の代表曲と比べても負けないくらいちゃんと魅力的だし、「Bohemian Rhapsody」以外だと実はこの曲が一番好きかもしれないと考えが180度変わった。我ながらチョロい
透明少女 / ナンバーガール
1990年代末期から2000年代初期の邦ロックを代表するオルタナティブロックバンド・ナンバーガールの代表曲。同期のくるり、スーパーカー、椎名林檎辺りもそうだが、彼らは現代のバンドや初期ボカロにも大きな影響を与えており、この曲も「泣く子も黙る必殺の一曲」みたいな扱いになっている。
ナンバーガール、世間では伝説的な扱いを受けているが個人的にはどうにもハマらず(元々こういう激しいロックが好きじゃないのもある)唯一ちゃんと知っているのがこの曲。代表作であり後世へ与えた影響も絶大なだけあってインパクトもあって覚えやすいし、嫌いではないんだけど…世間で言われているほどの熱量でこの曲に接することは出来そうにない。
owari no kisetsu / レイ・ハラカミ
脳出血により40歳の若さで夭折した電子音楽家、レイ・ハラカミの代表作「lust」よりこの曲がランクイン。細野晴臣の「終りの季節」のカバーで、インスト主体のアルバムながらこの曲だけは自身でボーカルを取っている。
曲調は彼特有の抜けの悪いこじんまりとした音色で構成されたエレクトロな感じなので、原曲は聴いたことないけど多分相当自分のものにしたカバーに仕上がっているものと思われる。そこに乗っかる本人によるボーカルは正直あんまり上手くはないんだけど独特の味があり、曲にもマッチしている。
恋は桃色 / 細野晴臣
日本の音楽界におけるドン、細野晴臣のソロデビュー作よりこの曲がランクイン。仲間のバンドとともに当時の自宅で録音された落ち着きのある作風が後世の音楽家たちへ今も影響を与え続けている。
地味だけど味わい深い一曲で、ソロデビュー作ながらちょっとした貫禄さえ感じられる。後年、お笑いトリオの東京03が単独公演の主題歌としてこの曲を下敷きにした「でも生きるけど」という曲を作っており、自分はその曲がきっかけでこの曲の事を知った。今作が好きな人には是非こっちもチェックしてみてほしい。
虹 / 電気グルーヴ
ゲストボーカルとして五島良子を迎えた電気グルーヴ渾身のテクノポップ。アルバムでは10分を超える長尺であり、アニメ「交響詩篇エウレカセブン」に使われたことで知っている人も多いのではないだろうか。
個人的には電気グルーヴをこの曲で知った(某ピエール瀧氏の逮捕を受けて、サブスクから電気グルーヴの曲が消えた時に見に行ったらなぜかこの曲だけ残ってた)ので割と思い出深い曲である。ボーカルが入るまでの3分間で楽曲を構成する音が1個ずつ増えてだんだん盛り上がってくる展開が好き。
Like a Rolling Stone / Bob Dylan
フォークの貴公子として世に現れたボブ・ディランがロックに転向したとの評論で有名な彼の代表曲の一つ。音楽性こそ変わったものの、発信しているメッセージはフォーク時代からの総決算であり、「ローリング・ストーン」誌は名前に引っ掛けたのかこの曲を最も偉大なロックの一つに数えている。
とはいえ今聴くとこの曲もフォークの範疇に入る曲だと思う。確かにエレキギターを使ってるのでサウンドはロックっぽいけど、歌詞は普通にフォークだし、何より随所に挟まれるハーモニカがまだフォーク抜けてない感を増幅させる。そういう曲のために「フォーク・ロック」という言葉があるのか。
Hotel California / Eagles
大ベテランロックバンド・イーグルスが世に出した全米歴代売上枚数第3位というモンスターアルバム「Hotel California」の表題曲。象徴的なイントロのアルペジオやアウトロのギターソロもさることながら、隠喩めいて退廃的な歌詞が現在でも議論を呼ぶ時を越える名曲である。
自分がいつも聴いている曲に比べると外部のシンセとかブラスも入ってない超シンプルな編成なのだが重厚なギター・アンサンブルに緻密なコーラス、最後のギターソロと限られた音色のなかでこれ以上ないくらい派手なことをやってて、そのミニマルさが改めて良いと思った。それだけが原因な訳でもないんだろうけど、曲の節々から70年代という時代を感じられて聴くだけで昔通ったライブハウスの匂いが立ち込めてくるような、そんな感覚がする。6分半とそこそこの長さだが、そんなにダレることもない。
環境と心理 / METAFIVE
日本におけるテクノの大物ミュージシャン6人が一堂に会したモンスター・ユニット、METAFIVEの復帰作。作詞作曲は小山田圭吾で後に彼のユニット・Corneliusでもセルフカバーされた。
不思議な浮遊感を伴った現代的なテクノポップ。どことなく寂しい雰囲気を纏ったキャッチーな楽曲で個人的にはめちゃめちゃ刺さった。ビッグネームがコラボして曲を出すとき、人は豪華なのに肝心の曲は微妙…なんてこともザラにあるけど、この曲はネームバリューに負けない確かな名曲だと思う。
Welcome to the Black Parade / My Chemical Romance
21世紀生まれのアメリカ発ロックバンド、マイ・ケミカル・ロマンスより、「死」をテーマにしたコンセプトアルバムのリード曲がランクイン。作品は物語仕立てとなっており、若くして癌に侵された若者が死の淵をさまよい、恐怖や後悔に出会ったことで生きようともがく、そんなアルバムを構成する楽曲の一つである。
タイトルにも含まれる華やかなパレードと元気なバンドとの演奏が交錯するニュータイプな印象の一曲。「Black Parade」とは調べてみた限りどうやら死の隠喩であるようで、そうなるとこの曲で入ってくるパレードもあんまり良い意味ではなさそうだ。パレード調とハードロックで曲調が目まぐるしく入れ替わるのは死にかけの状態でなんとか生きようと意識を保っていることの表れなのだろうか。(全く調べてないので的外れな可能性大)
Sir Duke / Stevie Wonder
邦題「愛しいデューク」。伝説的ジャズマンの一人、デューク・エリントンに捧げられたファンキーな追悼ソングであり、見事全米1位、全英2位を獲得した大ヒットナンバーでもある。
というわけで言われてみればジャズっぽい複雑さのあるメロディで聴いてて無条件で楽しくなれるようなノリノリな楽曲に仕上がっている。個人的にもそういう底抜けにハッピーな曲として認識してて「愛しいデューク」という邦題も誰かへのラブソングなのかな?程度にしか思っていなかった。なので実は追悼ソングだったのは今回調べて初めて知った。そういう事実を知ったうえで改めてこの曲を聴くと、上手く言葉には表せられないがそれまでとは違った感じで聴こえてくるから不思議だ。
Once in a Lifetime / Talking Heads
ニューヨークの異端な4人組ロックバンド、トーキング・ヘッズの代表曲。敏腕プロデューサーのブライアン・イーノと手を組み制作されたアルバム「Remain in Light」のハイライトであり、アフロビートをニューウェーブに取り入れた独自の音楽性は現代においてもなお評価され続けている。
独特の語り口調で歌うというか完全に喋っているボーカルとサビでフレーズを繰り返し歌うコーラスが交互にやってくる変則的な構成の楽曲。イントロからアフロビート要素である民族っぽいドラムに、リズム合わせる気皆無の電子音が重なって一瞬で意識が曲の中に引き込まれる。なんか、こうやって文章に起こすとちょっとした儀式とか催眠術みたいだな…
Marquee Moon / Television
ニューヨークにおけるパンクムーブメントにおいて活躍したロックバンド、テレヴィジョンのデビュー曲。メンバーの方針によりワンテイクのみで録音された緊張感ある音源で、その長さは10分前後に及ぶ。
という前置きから激しめの曲を予想していたのだが、流れてきたのはかなりのんびりしたロック。主にやたらとテレテレ言うギターが牧歌的な印象すら与えてくる。なんか思ってたのと全然違うというのが全て。
I Want You Back / The Jackson 5
マイケル・ジャクソンが子供時代に所属していた人気コーラス・グループ、ジャクソン5のデビュー曲。当時イケイケで一時代を築いていた頃の伝説的レーベル・モータウンの徹底したプロデュースによるポップソングで、当時10歳であったマイケルのボーカルが冴え渡る。
世界的な大ヒット曲なのでどこかで一部は耳にしたことがあるが、自分から聴きに行くのは今回が初。マイケルのボーカルが当時から凄かった話はよく聞くけどこうして実際に曲を聴くと、流石に若すぎる感じは否めないものの10歳=小4にあるまじき熟練したプロフェッショナルな歌声が流れてきて、凄いというか「よくここまで頑張ったね」という気持ちになる。
RYDEEN / YELLOW MAGIC ORCHESTRA
テクノポップの祖、YMOことYellow Magic Orchestraの代表曲。ドラムの故・高橋幸宏氏によるアップテンポな一曲で、現在でも「80年代の象徴」的なイメージでテレビ番組ではその頃の映像が流れるとこの曲や「TECHNOPOLIS」がかかるのをよく見かける。
まさに80年代に思い描かれていた近未来を具現化したような一曲で発売自体は1979年だけど、当時思いを寄せられていた未来に接近した現代においてもまだ未来的な響きがある。個人的に好きなYMOの曲はもっと他にあるけど、この曲には当時の日本の象徴というか、あの頃を映す鏡みたいなイメージと畏敬の念がある。
不思議 / 星野源
サブカル界隈のスター、星野源からはこの曲がぶっちぎりのトップでランクイン。当時新垣結衣氏との婚約を発表したばかりであり、本人曰く「初めて書いた」ラブソング「恋」はラブソング判定ではなかったらしである本作を発表した際は案の定各方面から憶測を呼んだ。
この頃には「SUN」「恋」みたいな大衆向けのポップスは出さなくなって、やや落ち着いた玄人好みの曲を連発しはじめてて、この曲もその典型という印象だった。16ビートを基調とした抑えめのR&Bで、発売当時よりは音楽に対する造詣も少しは深まったのかこれを書くにあたって久々に聴いたら割と良さが分かるようになっていたのだが、星野源の曲の中でこれがぶっちぎりトップに君臨するのかぁ…という意外な思いはやっぱりある。
Xtal / Aphex Twin
テクノの異端児、エイフェックス・ツインがデビュー作での一発目に放ったアンビエントテクノ。タイトルは「クリスタル」と読み、その名の通り透き通った音像の叙情的なインストと評される。
自分の感想も概ねそんな感じ。昔記事にした「Richard D. James Album」はアナログシンセの温かみのある音色をふんだんに使ったレトロな作風の作品だったけど、この曲はなんか当時(1992年)の最先端っぽい音がする。どちらが優れているという事でなく、どちらにも違った良さがあると感じた。
Stand By Me / Ben E. King
今回ランクインした曲の中でもほぼ最古(1961年発売)となる曲の一つ。黒人霊歌に触発され、やや宗教的なニュアンスも込めて作られたといわれているこの曲は、ジョン・レノンのカバーや同名映画の主題歌への起用などで世代を超えて歌い継がれ、現在にまで通じるスタンダードナンバーとなった。
ほぼ初出と思われるこのバージョンは後年のカバーみたいにサビでドーンと盛り上がるアレンジではなく、静かな伴奏に流麗なストリングスが乗っかる全体的に抑えめで静かなアレンジ。流石に「この世で最もいい曲」とまではいかないけど、やっぱり60数年も歌い継がれている曲なだけあってここまでアレンジを削っても尚成立していると思える。それだけ曲としての芯が強いということなのだろう。
Orphans / cero
「シティポップ」というジャンルを再評価へと導いたといわれている3人組バンド・ceroの2ndシングル曲。同時期の星野源と並べて評価する声もあるように、ブラックミュージックの影響が色濃いメロウな曲であるという。
という説明を書いたはいいものの、いざ聴いた感じだとシティポップっぽさもなければ星野源っぽくもないメロウな曲。確かにこういう企画に投票する人達の琴線に触れそうな作風ではある。あと上の項を書くためにバンドの事を色々調べてたら予測変換に「嫌い」だの「下手」だのネガティブなワードがやたら出てきたんだけどこのバンド何かあんの?
あなたがいるなら / Cornelius
テクノ界の大物ソロユニット、Corneliusの代表曲(多分)。作詞に元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎を迎えたロマンティックなラブソングで、長いブランクを得て放たれた久々のシングル曲となった。
歌と伴奏が噛み合ってないようで噛み合っている(多分)ハイレベルなリズム感の楽曲。なんとなく予想はしてたけど大衆ウケを狙ったポップさは皆無でゆったりと地味な状態で進行するので、ちょっと自分はまだ咀嚼しきるのに時間がかかりそう。
21st Century Schizoid Man / King Crimson
プログレッシブ・ロックというジャンルを代表するアルバム「クリムゾン・キングの宮殿」の冒頭を飾る一曲。一度見てしまったらもう絶対に忘れないあのジャケットのインパクトにも負けないぶっ飛んだ曲調で、デビュー作の一発目にして歴史に名を刻むに充分な爪痕を残した。
とにかくこの曲は物凄い。同じプログレを代表するバンド・イエスの楽曲がどれも結構澄ましててクレバーな雰囲気が漂っていたので本作もそんな感じと予想して聴いたんだけど、ド頭から襲来する迫力あるブラス隊、ひたすら叫び倒すボーカル、急に楽器隊が暴れ出す曲構成、「21世紀の精神異常者」というあり得ない邦題(現在ではコンプラ的にNGという事で差し替えられたようだ)、とどの要素をとっても「この曲はヤバい」と感じる。そこが良い。これほどまでに危うさを覚えるほどの狂気を孕みつつ、ミーハーな自分でも良さを感じられるキャッチーさを両立できているのが良い。
only shallow / my bloody valentine
続いてこちらもアルバムの1曲目。シューゲイザーの代名詞こと「loveless」の冒頭を飾る一曲である。控えめなドラムのスネア4発からのいきなり轟音ギターというイントロは、民衆にインパクトを与えるには充分すぎるくらい充分でアルバム史上最高の最初の数秒間と評されることもしばしばある。
この曲はくるりにハマっていた時期に「LV30」という曲がこの曲をパクっているという話を聞いて初めて知った。両者聴き比べてもらえれば分かる通りちょっと言い逃れできないレベルで似てるんだけど、個人的にはより無機質でJ-POP向けに味付けされた「LV30」の方が好み。
接吻 / Original Love
渋谷系(…と呼ばれるのを本人は嫌がってたらしいけど)の筆頭として名を挙げていたバンド時代のOriginal Loveの代表曲。洒落た大人の色気漂うラブソングに仕上がっており、現在でも唐突にTikTokで流行るなどして若者にも通用する強度の強い楽曲として邦楽界に名を残している。
Original Loveで好きな曲となるとこの前だったり後だったりの方が多いけど今聴くとこの曲も悪くない。何気に現代のヒット曲の定番コード進行である丸サ進行も使われてるし、そういう所が今の若者の心を掴んでTikTokで急に流行ったのかも、とか考察してみたり。ていうかこの曲がTikTok民にウケたというのが改めて驚き。この曲で踊るのか。
Where Is My Mind? / Pixies
オルタナティブ・ロックという言葉が広まる以前からオルタナティブだったロックバンド、ピクシーズのデビューアルバム収録曲。発売当時から人気は一定数あったようだが11年後に映画「ファイト・クラブ」で取り上げられて以降はそれまで以上の人気を誇るようになったようだ。
ちょっと鎮魂歌っぽい印象の泥臭いロッカバラード。まぁ先に映画で主題歌になったという話を知ってから聴いたんでバイアスがかかっているだけかもしれないけど、アルバムのトリとか映画のラストシーンとか、いかにもその手のクライマックスが似合いそうな曲調だと思った。
Let Down / Radiohead
出世作「OK Computer」よりもう1曲ランクイン。アルバムのリード曲的な役割を担う強い曲で、元々シングルカットの予定もあったといわれている。Mr.Childrenが強い影響を受けたようで、「Prism」という曲とこの曲が若干似ているという話もある。
ミスチルの方は中学生の頃から好きでよく聴いていたが、この曲に似ているというのは言われるまで気付かなかった。確かに比べてみたら全編に渡って繰り広げられるギターのアルペジオとかモッタリして重苦しいドラムとか、間違いなく参考にしたと分かるくらいには共通点が多い。ただ印象としてはこちらの方がまだ相対的に明るい気がする。
Paranoid Android / Radiohead
もういっちょ「OK Computer」。アルバムからの先行シングルにして最大のハイライト。3部構成で6分半に及ぶ複雑怪奇な一曲で、おそらく時系列的にレディオヘッドの評価が大きく上向く契機になった曲でもあると思われる。何気にボーカルのトム・ヨーク以外のメンバーが中心になったかなり珍しい制作体制で作られた数少ない曲でもある。
ハイライトであると同時にアルバム内で一番難解な曲でもあるため、初めて聴いた時は全く理解できず、先述の記事でも「一番「…」な曲」としてこの曲を挙げた。あれから1年、この記事を書くにあたって聴き直してみたけどやっぱ意味分かんねぇ。いつかこの曲を理解できる日は来るのだろうか…
Bitter Sweet Symphony / The Verve
イギリス出身のロックバンド、ザ・ヴァーヴの代表曲。レディオヘッドの「OK Computer」に並んで1997年を代表する洋楽とまで言われた大ヒット曲で、サンプリングされたストリングスのループ(のちに著作権問題で揉める)が印象的な一曲であるという。
当時急激に頭角を現していたであろうヒップホップの匂いもやや感じられる美しいミディアムナンバー。曲の最初から最後まで鳴っているストリングスの方に意識を持っていかれるので、聴き終わってみると意外と曲そのものは覚えてなかったりするけど、このストリングスだけでおつりが来る程の名曲に感じられるし、この流麗なループにはずっと身を委ねていられる。
The Mayor of Simpleton / XTC
日本のミュージシャンに少なからぬ影響を与えたといわれるロックバンド、XTCの最大のヒット曲。プロモーションに本腰を入れじわじわとその人気を高めていたバンドをさらなる飛躍へと導いた明るいギターポップで、「僕は単細胞の市長になれるくらい単純だけど君を愛していることだけは分かる」という独特の感性でつづられた歌詞が目を引くラブソングでもある。
そういう歌詞を抜きにしても今作は非常に聴きやすいポップな曲になってて単純に聴き心地が良い。演奏時間も3分57秒と長すぎず短すぎずの大衆音楽として優等生なちょうど良いコンパクトさ。なんとしてもこの曲をヒットに導くという気概が感じられる。
スウィートソウル / キリンジ
キリンジ、2曲目のランクインはこれまた弟の手によるバラード。デビュー以降ずっとプロデューサーとして携わってきた冨田恵一とのタッグの中でも末期にあたる時期の一曲であり、とてつもなく完成された円熟味ある楽曲に仕上がっている。
「エイリアンズ」が好きならそのまま今作も気に入ると思える同系統のAORっぽい洒落たスローナンバー。この時期のキリンジの曲は今回初めて聴いたけど、自分が知ってる時期(「3」「Fine」の頃)の曲から大きく変わったりはしてなくてとても安心感がある。
星間飛行 / ランカ・リー=中島愛
アニメ「マクロスF」挿入歌。劇中に登場するアイドル歌手ランカ・リーの持ち歌として登場する曲で、作曲は数々のアニメソングを手掛けてきた菅野よう子、作詞は実際に数知れぬアイドルたちの歌詞を手掛けてきた松本隆が担当。ネームバリューに負けないキラキラしたポップに仕上がり、アニメの枠を超えて人気を博している。
架空のアイドルのデビュー曲、それも「銀河一のアイドル」のヒット作(wiki参照)を作れというのは素人目に見てもかなり高いハードルであり、設定に曲が負けてしまっても全然おかしくない所だが、その設定に全く見劣りしないクオリティの曲を用意した松本隆・菅野よう子両氏の手腕にはただただ天晴と思う。
あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう / 岡村靖幸
代表作「家庭教師」よりこの曲がランクイン。岡村氏自身の学生時代も反映させたと思われるバスケ部の少年を主人公とした甘酸っぱい青春爽やかラブソング。発売から31年もの時を経てシングルがアナログ化されたり、映画「モテキ」の挿入歌に使われたり現在でも根強い支持を受ける楽曲である。
岡村氏の個性が爆発した濃い世界観が一作通して続く「家庭教師」の中では異色の清涼感溢れるギターポップであり、初めてアルバムを聴いたら誰もが真っ先に食いつくであろう貴重な普遍的J-POP枠を担っている。少なくとも自分は初めて「家庭教師」を聴いた時はこの曲しか理解できなかった。
雑感 / 柴田聡子
近頃その地位をひっそりと急上昇させているシンガーソングライター、柴田聡子の代表曲(たぶん)。集計を行ったPeter氏の解説によると「何気ない日常に対して抱く苛立ちなどの機微が、ユーモラスに綴られている」曲とのことで、ランクインに納得する声も多数見られた。
ゆったりしたリズムで淡々と歌う地味めな一曲。解説の通り、そんな楽曲に乗る歌詞は日常的な描写をですます調で次々綴る芸術的な愚痴という印象。「雑感」とはまさにそんな本作を端的に一言でまとめた秀逸なタイトルだ。
N.O. / 電気グルーヴ
電気グルーヴ、デビュー当時からの人気曲がここでランクイン。前身バンドの解散をインスピレーションに書かれたこの曲は「良い曲だからジョーカーとしてとっておこう」と温められ、のちに非商業的な内容のアルバムを出す際にバランスをとるためボーナストラックとして収録された。
そういう待遇を受けただけのことはある、すごくポップなアレンジでこれぞ勝負曲といった風格の曲。初めて聴いた自分でも数回聴いただけでもうサビくらいなら口ずさめるくらいになってしまった。
Time After Time / Cyndi Lauper
めちゃめちゃパンクな見た目でキュートな感じの声を発するレジェンド女性歌手、シンディ・ローパーの代表曲。曲自体も派手な見た目とは裏腹に素朴なラブソングとなっており、ブレイクのきっかけにもなった。
個人的にこの曲はこの動画のイメージが強く、上記の説明文もそこから半分ぐらいパクってきているそれ以上でも以下でもない印象だったので、こんなところで遭遇するとは思っていなかった。好みとしてはそんなでもないけど歴史的な意義は自分が思う以上にあるのかな。
Digital Love / Daft Punk
フランス出身のエレクトロ・デュオ、Daft Punkの意欲作にして出世作「Discovery」からこの曲がランクイン。ジョージ・デュークの「I Love You More」を大胆にサンプリングしたロマンティックなナンバーで、アルバム内の佳曲として作品を彩っている。
自分の肌感で言えばこの曲は本当にアルバムの小品というか、リード曲達に隠れた名曲的なポジション、まさに佳作といった感じで「この曲が良い!」という話は聞かなかったので、代表曲とか歴史的な意義とかそういうネームバリューを全部取っ払って純粋に良い曲を募ったら、今作がDaft Punkでの一番人気に躍り出たという事実は個人的に興味深い。実際いい曲だしね。
Got 'Til It's Gone / Janet Jackson
マイケル・ジャクソンの実妹、ジャネット・ジャクソンのヒットアルバム「The Velvet Rope」の先行シングル。当時人気を上昇させていたラッパーのQティップをフィーチャリングし、PVはグラミー賞を獲得した。
この数年後に日本に訪れるR&Bブームの源流と言えそうな軽い音のリズムに乗せたクールな一曲。そのR&Bブームに乗った曲はそれまで流行っていたJ-POPに比べてリズム重視で音数が少ないというイメージがあったがこの曲はそれらに比べてもさらに薄味で、曲の編成は先述した通り軽い音の打ち込みリズムに加えて、後ろで薄くかかっているキーボードと終始流れている女性ボーカルのサンプリングのみ。あまりに飾りっ気なさ過ぎて個人的には感想を書こうにも如何ともし難い。
Runaway / Kanye West
現在日本滞在中のお騒がせミュージシャン、カニエ・ウエストの大名盤「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」収録曲。アメリカの大物ラッパー、プッシャ・Tとコラボしたこの曲はかなり内省的な内容の楽曲で、35分にも及ぶショートフィルムがMVとして制作されている。
マイケル・ジャクソンばりのショートフィルムの長さにもビックリだが、曲自体も9分超えの大作。世間を騒がせてきた自身の振る舞いを振り返る歌詞に合わせて曲もバラード風の落ち着いた作風に仕上がっており、ラップより歌メインの構成が自分の肌に合って良い曲に感じられた。
Mercy Mercy Me (The Ecology) / Marvin Gaye
マーヴィン・ゲイ、出世作「What's Going On」よりもう一曲ランクイン。「The Ecology」のサブタイトルが示すとおり環境問題に切り込んだ社会的な歌詞で、シングルカットの際も「What's Going On」に引き続きなかなかのヒットを記録した。
この曲はアルバムを教養の為に手に取った時に何回か通して聴いた。表題曲から引き続いて穏やかな曲調で、やたらマーシーマーシーいうのが気になる一曲という印象で記事にまとめてからはそれっきり聴き返す事もなかった。なのでこの曲がこんな上位までやってきた事に驚きを隠せない。そこまでのポテンシャルを秘めているとは全く思ってなかった。確かに歌詞は発売当時1971年と考えるとかなり先鋭的な内容だったとは思うけど、それだけでこの位置まで上り詰めるだろうか…個人的にはランクインが一番謎な曲の一つ。
Luv(sic.) pt3 (feat. Shing02) / Nujabes
ローファイ・ヒップホップというジャンルを生み出し、36歳で早逝した天才トラックメイカー・NujabesがラッパーのShing02と手を組み制作した「Luv(sic.)」シリーズの3作目。アニメ「サムライチャンプルー」の海外人気なども手伝って主にアメリカで今も根強い人気を保っている。
DJもラッパーも日本人だが、曲そのものは全編英語詞。ローファイ・ヒップホップの特色でもある若干こもった音のバックトラックが特徴的なチルい(?)一曲。なんというか独特の情緒があって、BGMとして心地良く聴ける。
I Wanna Be Your Lover / Prince
アメリカの奇才マルチミュージシャン、プリンスが最初に送り出したヒット曲。ボーカルはもちろん、ギター、ベース、キーボード、ドラムス、そして作詞作曲までこなす多才さを2ndアルバムにして見せつけた一作である。
全編裏声で通してしまうファンキーなポップス。ずっとファルセットで全く地声を聴かせてくれない攻め様からは、初期の曲でありながらもう既に彼が只者じゃなさそうな気配を感じられる。
Under Pressure / Queen
クイーンがデヴィッド・ボウイとコラボし話題を呼んだファンキーな一曲。勢いのままにヒットチャートも賑わせ、クイーンにとっては「ボヘミアン・ラプソディ」以来となる全英1位を獲得する大ヒット曲となった。
当時のトレンドを的確にとらえた実にトレンディでナウい一曲。のっけから登場し、その後も随所で登場するアイコニックなベースラインが癖になる。作者にはクイーン4人とデヴィッド・ボウイの計5人がクレジットされているがそんなに手が込んでる感じはせず、むしろヒット曲らしい分かりやすさを5人で一丸となって突き詰めていったみたいな印象が強い。
Bridge Over Troubled Water / Simon & Garfunkel
フォークを代表するデュオ・グループ、サイモン&ガーファンクルの代表曲の一つ。ポール・サイモンが書いてアート・ガーファンクルが歌うフォークロックであり、日本では「明日に架ける橋」の邦題で親しまれている。
Wikipediaを見ながら書いた上の項では「フォークロック」と書いてあるが、実際のこの曲はピアノ主体のバラードに近く、聴く前に想像していたよりもだいぶしっとりしている。最後はバンド隊にストリングスまで入ってきて、かなり派手に盛り上がって終わる。バラード系名曲の黄金パターンだ。
Englishman In New York / Sting
元ポリスのメンバー、スティングによるヒット曲の一つ。ゲイ・アイコンの英国人(=Englishman)であるクエンティン・クリスプをモデルに書かれた楽曲で、楽曲の元ネタにしただけでなく本人をPVにまで出演させてしまった。
曲の最初から最後までついて回ってくるソプラノサックスが良いアクセントとなっているレゲエチックな抑え目の楽曲。ゲイ・アイコンの人がモデルになった曲のサビで「I'm alien(私はよそ者だ)」を連呼する辺り当時のそういう人達に対する風当たりの強さも垣間見えて興味深いが、曲としては個人的にそんなに好きな方ではない。
YUMEGIWA LAST BOY / SUPERCAR
SUPERCAR、2曲目のランクインは後期の代表曲。初期のオルタナロックからテクノ方面へ一気に路線変更し、プロデューサーに元電気グルーヴでテクノ界隈の大物である砂原良徳を起用、翌年には映画「ピンポン」の主題歌にも抜擢され前作「Strobolights」と並び当時の彼らを代表する曲として広範囲にわたって知られている。
疾走感あるスタイリッシュなテクノポップ。ここまで振り切っていると最早ロックバンドとしての面影は皆無だがこれはこれで良い感じ。初めて聴いた当時は同時期の「STORYWRITER」や「Strobolights」は好きでよく聴いてたけどなぜか今作はスルーしていた。今思うとなぜそうしていたのか謎だし、普通にもっと早いうちから聴いておけばよかったな。
Since I Left You / The Avalanches
オーストラリア出身のエレクトロ系音楽グループ、ザ・アヴァランチーズのメジャーデビュー作。ランキングを集計したPeter氏によると、この曲を含む彼らのデビューアルバムは900~3500曲もの音源がサンプリングされているとのことで批評家からはその年のベストアルバムと太鼓判を押され、表題曲であったこの曲もアルバムから頭一つ抜けて高い評価を得ていた模様。
という訳で頭からもう既に色々サンプリングされてると分かるくらいの音の洪水が迫るドリーミーな一曲。基盤になっているのは恐らくオーケストラのコンサート音源か何かから取ってきたと思われる流麗なストリングスの旋律で、この演奏の上でなんかもうやりたい放題やってて訳分からん状態だけどなんだかんだ曲としてはまとまっている、という感じだろうか。
グッドバイ / toe
国内外で活躍するインストバンドが初めてボーカルを入れて制作した楽曲。EP版ではギター担当の山嵜廣和を、アルバム版では元Cymbalsの土岐麻子をボーカリストに起用しており、今回の集計ではこの2つのバージョンを別々に分けて投票されていた所を合算して集計したらこの順位になったようだ。
今回聴いたのはアルバム版。スリリングなドラムに乗るオーガニックな伴奏というちょっと前のキューピーか何かのCMソングにあった(森林をメインに映していた記憶)ような不思議な曲調の曲で、個人的にはそのCMを連想して少し懐かしくなった。それで参考用にリンクを貼ろうと思って該当のCMを探したけど、全然見つからなくて今はモヤモヤしている。
Thousand Knives / 坂本龍一
世界に名を連ねているピアニスト・坂本龍一がテクノポップユニット・YMOの一員としてデビューする直前に発表したソロデビューアルバムの表題曲。まもなくデビューするYMOのテクノポップ的要素を既に兼ね備えた曲調で、実際にYMOとしてもアルバム「BGM」でセルフカバーされている。
やたらポコポコカンカン言うパーカッションが目立つオリエンタルな一曲。冒頭1分半にわたってヴォコーダーを通した毛沢東の詩の朗読が続いたり、間奏に合計3分ほどの長いギターソロが入ったりして結果9分半という大作に仕上がっている。個人的には後にYMOでリメイクした奴の方がコンパクトにまとまってるし、威圧感あるアレンジに生まれ変わっているので好み。
透明人間 / 東京事変
椎名林檎率いるロックバンド・東京事変よりこの曲がランクイン。バンドのベーシストであり、名プロデューサーとしても知られている亀田誠治によるキャッチーでアッパーな一曲。
Twitterでは同系統のアッパーな「閃光少女」が並んでこなかったのを意外に思う声をちらほら見たんだけど、個人的にはより快活な今作の方が圧倒的に好き。東京事変には鋭く攻撃的なドラミングが持ち味の刃田綴色という名のドラマーがいて、この曲にはそんな彼の良さが一番出ていると思う。
何なんw / 藤井風
岡山の奇才、藤井風のデビュー曲。ブラックミュージック的な要素が全面に押し出されたハイセンスな楽曲で、デビュー曲にして周りからのものすごい称賛を一気に集め、一目置かれてブレイクのきっかけとなった。
リアルタイムではどうせ周りの感受性が凄いだけで、自分みたいな一般人が聴いても理解できないんだろうなという斜に構えたイメージというか偏見があって聴いていなかったんだけど、「きらり」のヒットで興味を持ち始めていざ聴いてみたら2000年頃のR&Bブームを思わせる黒めのリズムが特徴的な普遍性の高い曲だった。おみそれしましたって感じ。
帰ろう / 藤井風
そんな藤井風からもう1曲ランクイン。先程の「何なんw」も収録されているデビューアルバム「HELP EVER HURT NEVER」のラストに置かれたバラードである。自身の死生観にまで踏み込んだ達観した歌詞がこれまた周りからの凄まじい称賛を集めている。
打って変わってこちらは流麗なストリングスが終始曲を彩るアルバムの最後らしいバラード。当時のバラードというとストリングスに加えてリズム隊もバンド編成でどっしりこってりやるのが主流だったと思うけど、この曲ではその辺が打ち込みで処理されているのでその分身軽。個人的には生バンドの曲の方が好きではあるんだけど、この曲に関してはあまり豪華に飾るよりはこのくらいのスケール感の方が合ってるように思う。
Dancing Queen / ABBA
70年代を象徴する4人組ポップ・グループ、アバの代表曲。アーティストもタイトルも聞き覚えがなかったとしても一度聴けば多分どこかで聴いたことあると思い出せるくらいにはありとあらゆる場面で現在でも使われており、それほどの人懐っこいメロディとアレンジを持った楽曲ともいえる。
個人的にもこの曲はかなり好きな方だ。彼女らの他の曲と比べると、なぜかこの曲だけ妙に圧が強いというかアタックの効いた音作りがなされており、それによってリズムが強調されているのでタイトル通りダンシングしやすい仕組みになっている。実際の意図は分かりかねるがこの独特の音作りが結構クセになって聴いている所もあるかもしれない。
If I Ain't Got You / Alicia Keys
アメリカ出身の女性シンガーソングライター、アリシア・キーズの手により書かれたバラード。彼女と同世代の女性歌手・アリーヤの飛行機事故による死をきっかけに書かれた一曲であるという。
6拍子のジャジーでスウィンギンな感じのソウルナンバー。アリーヤ氏への追悼の意味合いがある曲かと思って(少なからずそれもあるだろうけど)和訳された歌詞を見たら、事故の話はあくまで曲を書くきっかけに過ぎなかったようで、実際はあなたさえいれば他には何もいらない(超訳)と繰り返し歌う一途なラブソングっぽい内容だった。何気にこういうジャズ風味で落ち着きのある曲は他にあんまりランクインしていないので一際印象に残る。
Yellow / Coldplay
イギリス発の老舗ロックバンド、コールドプレイのブレイク作。アルバムのリード曲としてシングルカットされいきなり全英チャートのトップ10入りを果たし、現在でもライブでの定番曲として人気を博している。
コールドプレイは「Viva La Vida」しか知らなかったので2000年から第一線で張ってる古参勢だったと知って結構驚いた。その意外と長い経歴にも驚きなら、最初のヒット曲となったこの曲の作風にも驚き。レディオヘッドの「Creep」みたいなシンプルなギターロックで「Viva La Vida」へ向かう兆候などまるで見えない。でもこれはこれで好きかも。
Get Lucky (feat. Pharrell Williams and Nile Rodgers) / Daft Punk
80年代のファンキーな音楽を担ってきたギタリスト、ナイル・ロジャースと後に「Happy」でも大ヒットを飛ばすシンガーのファレル・ウィリアムスをゲストに迎えた、まんま80年代って感じのディスコ・ナンバー。時代が一周回っていたのかこれが大ウケし、グラミー賞まで獲得してしまった。
それまでのDaft Punkのエレクトロ全開な作風とは全くの真逆を行くバリバリ生演奏の楽曲であり、個人的にはこれと「One More Time」が同一人物の曲なの⁉とか思ったりしたんだけど、よくよく考えたらこれまでの作品も曲調こそエレクトロだけどサンプリング元はこういうディスコナンバーばっかりだったりするので、先祖返りみたいなものだったのかもしれない。
Your Song / Elton John
邦題「僕の歌は君の歌」。「ピアノ・ロック」というジャンルを確立したとされるイギリス出身のシンガーソングライター、エルトン・ジョンの代表曲である。ラジオをきっかけに火が点いて大旋風を巻き起こし、あのジョン・レノンに「僕らの出現以降、最初に起こった新しいこと」とまで言わしめたというエピソードが残されている。
初めて聴いた印象としては、とても味わい深く風格のあるバラードといった感じ。ジョンが言うような真新しさは正直感じなかったけど、とても歌心があるというか、幼稚園児の頃に聴いていた平井堅のカバーアルバムにこんな感じの洋楽がいっぱい入っていたので、個人的にはそれを思い出して童心に帰ってくるような感覚を覚える。
Hallelujah / Jeff Buckley
「天使の歌声」と称された類まれなる声帯を持つシンガーソングライター、ジェフ・バックリィの生涯唯一のアルバム収録曲。元々レナード・コーエンという別のシンガーソングライターが作り、数々の著名人達にカバーされてきた名曲だったが、彼のカバーこそが至高だとする声も少なくない。
エレキギターの弾き語りで7分に渡って繰り広げられるバラードナンバー。ちょっと自分には何故この声が「天使の歌声」と呼ばれているのかイマイチ分からなかったんだけど、声の強弱を巧みに操り感情たっぷりに歌い上げ、バックがエレキギター一本でもボロが出てこない彼のボーカルの技術は素人の自分でも相当なものだと理解できる。
Kids / MGMT
サイケデリックなエレクトロ・ポップを展開する2人組(当時)音楽グループ、MGMTのデビューアルバム収録曲。いきなり大ヒットを記録したブレイク作で、YouTubeに投稿された非公式MVの再生回数は5000万回を超える。
まさに発売当時(2007年)の最先端っぽい、が今となってはちょっと懐かしい感じのエレクトロナンバー。2010年代にどこからともなく湧いて出てJ-POP界を席巻したEDMとやらはもしかしてこういう曲達が起源だったのか?少しそれらと似たようなものを感じられる。
soon / my bloody valentine
シューゲイザーを代表する名盤「loveless」より3曲目のランクイン。作品のラストを飾る重要なポジションに配置されており、また先行シングルとしてリリースされた際は全英41位という大躍進を見せた曲でもある。
先程の2曲に比べるとだいぶ轟音ギターは大人しくなり、若干ポップス寄りな感触の曲になった。正直「loveless」自体そんな聴き込んでなくてこの曲もほぼ初聴だったんだけど、普通側に寄せた曲もあったんだ的な感想が出た。
Reflection Eternal / Nujabes
Nujabes、二曲目には生前最後となったアルバムからこの曲がランクイン。メランコリックなトラックで人気を博し、彼の没後には追悼ソングとしてtoeとクラムボンがこの曲をカバーしている。
サンプリングされたピアノの演奏と男性ボーカルがひたすらループし続ける先程の「Luv(sic.) pt3」に比べるとより淡々としてて起伏がない印象の一曲。そのぶんチルな感じは増したし、何かしらのBGMとしてはより適している気もするけど、個人的な趣向としては「Luv(sic.) pt3」の方が好き。
아름다운 세상 Beautiful World / Parannoul
世界各国で話題を呼んだという韓国出身のミュージシャンの2ndアルバムの一曲目。日本映画「リリィ・シュシュのすべて」のサンプリングから始まるシューゲイザーで、タイトルは「アルムダウン セサン」と読む。
全編韓国語詞でマイブラ直系の正統派シューゲイザー(といっても異端な方を知らんけど)といった印象。とにかく有無を言わせない轟音が終始鳴り響いて曲を聴いている間はただただ圧倒される。歌詞が分からないのでこの楽曲の意味を完全には理解できないのが残念だが、この曲のタイトルに「Beautiful World」とつけるのは凄くピッタリだと思う。
When Love Breaks Down / Prefab Sprout
天才ソングライター(らしい)パディ・マクアルーンを擁するロックバンド、プリファブ・スプラウトによる「愛の終わり」を歌ったヒット曲。バンドのメンバーであり、パディと元恋人関係にあったウェンディ・スミスがこの曲でコーラスを入れており、曲の持つ説得力は段違いである。
曲のテーマがテーマなだけに冷たい空気が漂うシリアスなポップス。どこか寂しい印象をもたらすシンセの音色と、ウェンディによる透き通った声質のコーラスが楽曲の冷え切った雰囲気に拍車をかけている。これ収録の現場の空気とか大丈夫だったのかな、いくらバンドメンバーとはいえ元カノに失恋ソングのコーラスやらせるって気まずすぎてその場地獄になりそうだけど…
A Whiter Shade of Pale / Procol Harum
イギリス出身のロックバンド、プロコル・ハルムのデビュー曲。日本では「青い影」という邦題で親しまれているこの曲はデビュー曲にして世界中で大ヒットを巻き起こし、日本でも松任谷由実がこの曲に影響を受けて音楽の自作を始め「ひこうき雲」を書いたとされている。
ということでいきなり「ひこうき雲」っぽいオルガンが炸裂するバラード。このオルガンに引っ張られて楽曲自体も「ひこうき雲」っぽく感じてくる。そうなるとあの曲って結構露骨に元ネタ提示してたんだな…と思う等した。
Somebody to Love / Queen
クイーン、早くも最後となったランクイン(今作は13票獲得、次に獲得票数が多かった「Another One Bites the Dust」は5票獲得と極端に差が開いている)は初期の作風でのピークとなった名盤「華麗なるレース」のハイライト。「愛にすべてを」の邦題でも知られゴスペル調の名曲として数あるクイーンの名曲の中でも異彩を放っている。
実は1回も通して聴いたことなかったんだけど、この企画のためにこうしてちゃんと聴いて一発で「この曲良いな」と思った。とくに緻密に構成されたコーラスの掛け合いがハモリ好きの自分のツボにハマった。
If You Want Me to Stay / Sly & The Family Stone
ファンクという音楽を語る上で外せないバンド、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのヒット作。セールス面において勢いのあった全盛期に発表されたほぼ最後の作品であり、ブラックミュージックの源流の一つとして今もなお語り継がれている。
「ファンク」と聞くと明るくノリが良い音楽を連想するがこの曲はそういうタイプとは微妙に違う。確かにノリは良いけど一定以上には盛り上がらず、全体的にずいぶん大人しい。あと何故かベースがやたら強調されてる一方でドラムは音が軽い上に何か音量が絞られててあまりに存在感がなさすぎる。一応ドラムを嗜んでいる身としてはこの格差には憤慨するばかりだ。
Here, There And Everywhere / The Beatles
そしてビートルズ。傑作「Revolver」の中盤に佇むポール作のラブバラードであり、ポール、ジョン、そしてプロデューサーのジョージ・マーティンも本作をお気に入りの一曲として挙げている。もちろん民衆からの人気も高くこうして数々の名曲を抑えビートルズで堂々の3位(タイ)の座に君臨した。
落ち着いた佇まいの穏やかなバラードであり、個人的には世間で言われてるほどの良さは感じられなかったんだけど、非常に「名曲」的なオーラが漂うというかこれを「名曲」と呼びたくなる気持ちが(そんなに好きな曲じゃないのに)なんとなく分かる。ケチをつける隙がないというか。
Let It Be / The Beatles
続けてビートルズ。バンド解散秒読みの段階で追い詰められていたポール・マッカートニーが夢で見た亡き母の「あるがままに全てを受け入れなさい」との言葉に影響を受けて書き上げたバラード。バンド末期時代の屈指の名曲として今日まで聴かれ続けている。
そんな感じで発売から50年以上経った今も神聖視されているこの楽曲だが、個人的にはあまりに王道のバラードすぎて、「この世で最もいい曲」という御題目では意外と浮かんでこなかったりする。同じ「Let It Be」収録曲でもまだ「The Long and Winding Road」の方が何倍も好き。
Strawberry Fields Forever / The Beatles
またまたビートルズ。こちらはジョン・レノンが幼少期を思い起こしながら作ったというサイケデリックな曲。当時開発されたばかりだったメロトロンを導入したり、逆再生を駆使したりと実験的な要素も強く、現在においてもなお斬新さを感じられると評されている。
かくいう自分もこの曲は割と好き。あまりに実験的すぎたためにチャートが振るわずに唯一ランキングで1位を獲れなかった話も有名だが、「Please Please Me」とか「She Loves You」とか歌ってた連中がたった4年かそこらでここまで来た訳だからそりゃついていけない人も多いだろうなという感じ。
Boys Don't Cry / The Cure
イギリス出身のロックバンド、ザ・キュアーがキャリアの極初期に発表したシングル曲。当時広まっていたポストパンクの曲調に乗せて歌われる未練が隠しきれない男のラブソングであり、初期の代表曲としてよくこの曲の名前が挙げられるという。
軽快な曲調に湿っぽい声質のボーカルが乗っかる独特な味わいの曲。初めて聴く曲のはずなのだが、曲中何度も繰り返される3連符が特徴のギターリフは何だかどこかで聞いたことがある気がする。なんかの番組のBGMか何かに使われてたのかな。
Friday I'm In Love / The Cure
そんなザ・キュアーがもういっちょランキングに送り込んだこの曲は、活動十数年目を超え人気が絶頂期に達した時期に出されたポップな一曲。金曜に訪れる多幸感を歌ったこの曲はダークなイメージが強いというこのバンドの中では異色な曲とされている。
めっちゃ80sなサウンドが時代を感じるギターポップ。実際の発売時期は1992年で80年代はとっくに過ぎ去ってるはずなんだけど、こういうリバーブがかかりまくった音作りは否が応でも80sの三文字が頭をよぎる。この曲に関してはその色褪せた感じが味ということなのかな。
1979 / The Smashing Pumpkins
日本では「スマパン」の愛称で知られるロックバンド、ザ・スマッシング・パンプキンズの代表曲。バンドのボーカルでフロントマンでもあるビリー・コーガンが12歳であった1979年の少年期を描いた楽曲である。
ひたすら8ビートを刻み続けるドラムと、ひたすらブリッジミュートを刻み続けるギターを軸に進行する沸々とこみ上げる何かを感じる一曲。この曲もジャンルを何と形容すれば良いのか分からず、曲調の説明にすら少し困る。演奏は淡々としてるはずなのに楽曲自体はそうではないし、スローな曲でもなければアップテンポという程でもないけど「ミディアムナンバー」と呼ぶのは何か違う。似た系統の曲としてはくるりの「ばらの花」やandymoriの「1984」、あと中村一義の「キャノンボール」辺りが思い浮かぶけど、この系統の音楽をまとめて呼べる上手い言葉はないものだろうか。
Tonight, Tonight / The Smashing Pumpkins
1990年代のオルタナロックブームから頭一つ抜けた存在感のロックバンド、ザ・スマッシング・パンプキンズの代表曲。バンド最大のヒット作となった2枚組アルバム「Mellon Collie and the Infinite Sadness」のリード曲であり壮大でドラマチックな曲の展開が今でも人気を呼んでいる。
ド頭からオーケストラをフィーチャーした前評判通り壮大な曲。速いテンポで弦の音が目立つロックということで聴いていて自分はGOING UNDER GROUNDの「STAND BY ME」を連想したけど、原型はこれだったのかな。
Sunday Morning / The Velvet Underground
あのバナナのジャケ写でお馴染み、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの名盤「The Velvet Underground and Nico」のハイライト。タイトルの通りコーラスにドイツ人の女性歌手・ニコを起用したこの曲は、発売当時でこそ売れなかったものの後年のミュージシャンに強い影響を与えたとされ、Spotifyでは1億5000万近い再生数を叩き出している。
グロッケンのこじんまりした伴奏を基調として進行する大人しくまとまった静かな一曲。何回か通して聴いた程度では正直良さが見えてこなくて、結局この曲の何がそんなに人々の心を揺り動かしたのかは分からずじまいだ。
春の風 / サニーデイ・サービス
サニーデイ・サービス、この記事唯一のランクインは意外にも初期ではなく2020年発売と比較的最近のこの曲。新メンバーのドラムを迎え入れて一発目となったアルバムのリード曲であり、シンプルなバンドサウンドに回帰してきたその作風が人気を集めたものと思われる。
デビュー25周年を超えたバンドの曲とは思えない、若々しく疾走感あふれるロックナンバー。若い頃は「東京」「あじさい」のようなフォーキーで老成した楽曲をやってた人たちが年を重ねてこういうパンクな音楽に挑むというのがもう既に凄いし面白いけど、それでちゃんと良い曲を書けるのも凄い。
夜を駆ける / スピッツ
スピッツ、2曲目のランクインはまさかのアルバム曲。2002年発表「三日月ロック」の冒頭を飾る一曲で、現在まで20年以上続くプロデューサー・亀田誠治氏とのタッグを組んだ最初のアルバムの一曲目でもあり、ファンからの人気もかなり高い。
制作期間中にあった911テロ等の影響もあったのか、いつになくシリアスな空気でアルバムの幕を開ける役割を担っているこの曲。スピッツらしく高値安定のクオリティで安心感がある。あと、個人的にこの曲には昔から何故か謎のアニソンっぽさを感じる。曲全体の差し迫った雰囲気や間奏のピアノがそうさせるのか、理由は自分でもよく分からない。
シャングリラ / チャットモンチー
(当時)3人組ロックバンド・チャットモンチーの代表曲。ポップでありながら変拍子を取り入れたトリッキーな曲構成や、正真正銘3人だけのシンプルな演奏は現在でも類を見ない唯一無二のものであり、発売から18年経った現在でも邦ロック界に燦然と輝く楽曲の一つとして支持されている。
変拍子が入って複雑なリズムのはずなのに普通に盛り上がれるダンサブルな曲調で、メロディーは全体的にそんなに暗くないはずなのになぜか所々から哀愁が漂ってきて、色々相反する要素が含まれた不思議な曲といった感じの印象で、チャットモンチーはよく知らないけどこの曲だけは何か覚えてる。
茜色の夕日 / フジファブリック
フジファブリック、もう一つの代表曲。志村正彦氏が上京後に初めて書いた珠玉のバラードでインディーズ時代からずっと歌い継がれてきた曲である。志村氏の死後、バンドはギターの山内総一郎氏をボーカルに据え再出発し、ライブでも志村氏が歌っていた曲を山内氏が歌うことが多くなったが、この曲だけは今でもテープ等を使って志村氏がボーカルを取る形をとっている。
という訳でバンド的にもファン的にも思い入れの強い楽曲で、最近志村氏の地元・山梨県富士吉田市では氏の命日に夕方のチャイムでこの曲が流されたとのニュースが流れたのも記憶に新しいけど、個人的に純粋に曲だけ聴いた感想としては、かなりまったりした曲調で割と長さを感じてしまうので同じバラードでも正直「若者のすべて」とかの方が好きだったりする。
ひこうき雲 / 松任谷由実
セールス面でも邦楽の歴史的な意味でも凄い重要な立ち位置にいらっしゃる御方、荒井由実(当時)のデビューアルバムの表題曲。当時19歳とは思えない達観したバラード。発売から40年もの時が経った2013年秋に、ジブリ映画「風立ちぬ」の主題歌に起用され一般知名度を一気に上げた。
既に50年以上前の楽曲だがあまりそんな年月を感じないエヴァーグリーンな名曲。ユーミンの中でも好きな曲はもっと他にあるので「この世で最もいい曲」となるとそんな上まではやって来ないけど、今でいう大学1年生に該当する女の子がこの曲を書いたと考えるとやっぱりなかなかにとんでもない。
そして僕は途方に暮れる / 大澤誉志幸
この記事では珍しい80年代のヒット曲。詩人・銀色夏生による詞に歌い手の大沢本人がメロディを付けた80sサウンド全開の楽曲で、カップヌードルのCMソングに起用されたことで人気に火がつき、彼の代表曲となった。
妙にスタッカートが効いたリズムの伴奏が気になるモロに80sな一曲。当時ヒットを飛ばした割にはあまり頭に残ってこないと思ってしまったのだが、こうして「この世で最もいい曲」として13もの票を獲得しているのを見ると自分の感性が間違っている気がしてくる。
プラスティック・ラブ / 竹内まりや
2010年代半ばからYouTubeのアルゴリズムが世界中にこの曲を勧めはじめ、今ではシティポップというジャンルを紹介し一大ブームを巻き起こすまでに成長してしまったグローバルな楽曲。
個人的にも竹内まりやというミュージシャンはこの曲の再ブレイクによって初めて認識した(ケンタッキーのあのCMソングはこの後になって竹内まりやだと知った)ので結構象徴的なイメージがある。最近はシティポップブームも佳境を迎え、やや旬が過ぎ去った感は否めないがやっぱり発売から3~40年経っても評価されるだけあってそんな状況下でも曲の良さは色褪せない。
光るとき / 羊文学
今勢いに乗っている3人組新人ロックバンド、羊文学のシングル曲。アニメ「平家物語」のオープニングとして書き下ろされたこの曲は、平家が滅亡に向かうというアニメの内容にピッタリ寄り添った楽曲となっているという。
硬派な音楽性の割に売れているバンドというイメージが個人的にある彼女ら羊文学の曲だが、今作もそんなイメージを裏切らない余計な装飾を極力削ぎ落としたシンプルな音楽性のロック。アニメの方は見ていないのでそことのシンクロ具合は分からないが曲だけ聴いても充分に楽しめる出来である。
Take on Me / a-ha
ノルウェー出身のポップ・ロックバンド、アーハによるいかにも80’sな感触のサウンドが時代を感じさせるラブソング。漫画と実写を交錯させた斬新なPVが当時話題を呼び、バンドを代表する一曲にまで上り詰めた。
自分の記憶が合っていれば確かこの曲、幼児向け番組「ロボットパルタ」(多分。NHKの教育番組だったのは確実)の冒頭でイントロが流されていたのでその印象が強い。近未来的なシンセの音色とロボットというモチーフが合致していたからか幼心にそれだけは妙に記憶に残っていて、全然関係ない場面でこの曲を初めて聴いた時に「⁉」と思ったのを何となく覚えている。
Duvet / bôa
イギリス出身のロックバンド、ボアの代表曲。その筋からはカルト的人気を誇るというアニメ「serial experiments lain」のオープニングテーマに起用され、これがバンドの名が広く知れ渡るのに一役買ったといわれている。
さっきのマッシヴ・アタックみたいなミステリアスな女性ボーカルが楽曲をリードする、これまたジャンル不詳の大人しい曲。洋楽としては結構珍しいアニソンタイアップだけどアニソンらしさは皆無。まぁそりゃそうか。
Livin' On A Prayer / Bon Jovi
80年代を象徴するド派手なロックバンド、ボン・ジョヴィの代表曲。MTVでこの曲のPVがヘビーローテーションされたことで彼らの人気に火が点いて、一躍人気者に押し上げられることとなったようだ。
ザ・80年代なド派手パワフルマッチョサウンドが展開するギラギラロック。今聴き返すと「時代」の2文字しか出てこないが、同時に全てを丸呑みするかのような勢いも感じられ、当時はこれが本気で格好良かったんだなぁ…と先人たちの若かりし頃に思いを馳せるなどした。
Viva La Vida / Coldplay
なんだかんだでデビューから四半世紀以上経っている老舗バンド、コールドプレイの代表曲。ストリングスをフューチャーした荘厳なサウンドと、太古の革命を想起させる歌詞が世界中で人気を集め、コールドプレイを知らない人間でもこの曲は聴いたことがあるレベルまで世間に浸透した。
自分もそんな人間のひとりだが、この曲はなんというか洋楽の特異点という感じがずっとしている。革命チックな歌詞は洋楽の世界観じゃなければ絶対書けないし、管弦を基調にしたサウンドもなくはないけど当時の洋楽ヒット曲で他には思い浮かばないし、この曲だけなんか異質な感じがする。そこがオンリーワンの魅力となって飽きさせないという面は確実にあるだろう。
I.G.Y. / Donald Fagen
アメリカ発の世界的ロックバンド、スティーリー・ダンの中心人物であったキーボーディスト、ドナルド・フェイゲンがバンドの解散後に発表したソロデビュー作のハイライト。タイトルの「I.G.Y.」は「国際地球観測年 (International Geophysical Year)」の略称で、科学の発展とそれに伴って夢想されていた明るい未来に対する皮肉が込められているという。
浮足立ったリズムのAORで曲調は別に暗くもなんともないが全体的な印象はどこか冷めてて乾いている感じで、まさに先述の皮肉めいた内容を曲全体の空気でも表している。サビで急に大人数のコーラスが「What a Beautiful World~♪」と大挙して押し寄せてくる箇所がお気に入り。
Change the World / Eric Clapton
映画「フェノミナン」の主題歌として当時売れっ子プロデューサーであったベイビーフェイスが手掛けたラブバラード。「Tears In Heaven」と並ぶ後期クラプトンの代表曲である(と認識している)。
この曲は小学生の頃ドラムを習ってて先生から課題曲として提示された事で初めて知った。ほぼ10年ぶりぐらいに聴いたけど印象はあの頃から変わらずサビのコーラスが艶やかで、渋めの歌声が染み渡るバラードといった感じ。
STAY GOLD / Hi-STANDARD
「メロコア」というジャンルを日本に紹介したパイオニア、Hi-STANDARDの代表曲。全英語詞の激しいサウンドが当時の多くの若者の胸を打ち、今でも多くの若者に影響を与え続けている。
この手の激しい曲は高校生のころまでは良さが全く分からなかったのだが、大学の軽音サークルに入ってライブでコピーされているのを皆各々暴れ回りながら盛り上がって聴いたことで、これはライブで聴いて初めて真価を発揮する曲だと気付いた。今これを書くにあたってCD音源をひとり部屋のなかで聴いているが、そんな環境なので魅力は半減どころじゃない。この曲の真の良さに気付きたければ外に出てライブでこの曲を聴いて暴れ回ろう。
Little Wing / Jimi Hendrix
歴史上最も偉大なギタリストのひとりに数えられるミュージシャンのジミ・ヘンドリックス率いるザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスによるバラード。集計を担当したPeter氏によるTwitterでの発表では11票を獲得したとされていたが、後に彼のサイトで結果がまとめられた際には12票に数値が修正されていた。(滑り込みでもう1票入ったか?)
バラードではあるが露骨にエモーショナルな感じを醸し出す事はなく、ただ目の前の演奏をこなしていく渋い雰囲気の一曲となっている。何故かギターソロに入ってまだ曲が続きそうな所をバッサリフェードアウトして2分半で終わってしまう潔い構成なので「あれ、もう終わり?」となる事は必至。
All My Friends / LCD Soundsystem
音楽プロデューサーのジェームズ・マーフィーによるソロプロジェクト、LCDサウンドシステムの2ndアルバム収録曲。ダンスパンクというジャンルを専門とする彼の音楽性が前面に押し出された高揚感ある楽曲で、作曲した本人はもちろんピッチフォークやガーディアンといった超巨大音楽メディアからの評価も上々で2000年代のベストソングとして名前が挙がる事もある。
ひたすら同じコードを等間隔で連打するピアノを軸に進行する一曲。テクノっぽいけど100%生演奏という不思議な感触の編成で、ダンスパンクというジャンル名はかなり的確なネーミングだと思う。どこかで一気に盛り上がるという訳ではなく、じわじわとテンションが上がっていくアハ体験みたいな盛り上げ方をとっていて7分半もあるけど長さはそんなに感じない。
Ceremony / New Order
ジョイ・ディヴィジョンという名で活動していたバンドがボーカルを失い、残されたメンバーで再出発することになったという経歴を持つポストパンクバンド、ニュー・オーダーのデビュー曲。元々はジョイ・ディヴィジョンの作品として用意されていた楽曲だが、再出発に際し録り直されている。
元々前のバンドで作っていた曲ということでそこまで意図していたかは不明だが、ここからまた始めるという決意を感じられる前向きな一曲。そういう音づくりが主流だったのか知らないが、楽曲全体に何かダブっているようなエフェクトがかかっているのが気になる。
Debaser / Pixies
オルタナティブ・ロックの雄、ピクシーズが放ったオルタナティブ・ロックとしか言いようがない一曲。親しみやすくポップな伴奏にボーカルの絶叫が重なる正しくオルタナティブ・ロックな一曲で、発売から8年もの時を経てシングルカットされている。
曲の構成は上の項で説明したまんまの感じで、伴奏だけ聴いてたらポップで親しみやすく明るいロックなんだけど、ボーカルがひたすら叫び倒していてかなり前衛的というかトチ狂った印象が先にやってくる。個人的にこういうぶっ飛び方をした曲は結構好きで、今回初めて聴いた曲の中でも割と上位に入ってくるくらいには刺さった。
Glory Box / Portishead
トリップ・ホップというジャンルを確立した立役者の一組と言われる集団、ポーティスヘッドの初期の代表曲の一つ。往年の大物ミュージシャンであるアイザック・ヘイズの楽曲をサンプリングし制作されたこの曲は、デビューアルバムの目玉として後にシングルカットもされている。
おそらくサンプリングしてきた物と思われる流麗なストリングスにベース、それと簡素なドラムが全体を引っ張る控えめな一曲。楽曲全体にレコードを聴いてる時のようなプチプチ音が入ってるのも手伝って随分退廃的な印象がある。アルバムの目玉にするには地味で暗すぎるような…
Everything In Its Right Place / Radiohead
ふたたびレディへ。今度は「OK Computer」に続く傑作(とされている)「Kid A」からランクイン。10拍子のエレクトリック・ピアノの演奏をベースに、大人しめで難解な展開が延々と続く初心者には手厳しい一曲である。
とはいえこれでも「Kid A」の中では分かりやすい部類に入る曲ではある。自分はかろうじてこの曲の良さは理解できたと思うけど、2曲目以降はもうお手上げでこの曲と「Idioteque」ぐらいしか継続して聴いていない。しかもその理解できたという良さを説明しろと言われるとこれまた困る。その良さを説明できるだけの語彙力が自分には圧倒的に足りない。「後ろのピアノのループが気持ち良いよ!」とかいうアホみたいな感想しか言える事がない。
Fake Plastic Trees / Radiohead
そんなレディへからもう1曲ランクイン。先ほどの「High and Dry」と同じく初期の名盤「The Bends」収録曲で、難産だったアルバムのなかでもとくに製作が難航したというアコースティックなバラードである。
第一印象はオアシスみたいなバラード。上の項を書くためにWikipediaで曲の情報を見ている時はそうなりそうな予感なんて全然なかったけど、よくよく考えたらオアシスってよくストリングス起用するし、アコギをメインにしたバラードってまさにオアシスの十八番だし、要素にだけ着目したらたしかに似通った作風になってもしょうがないのかなと感じる。
Can't Stop / Red Hot Chili Peppers
ミクスチャーロックのパイオニア、レッド・ホット・チリ・ペッパーズよりこの曲がランクイン。ギターのジョン・フルシアンテによるカッティングやシュールなMVが特徴的な一曲である。
この曲はドラムを習ってた小学生の頃先生に教えてもらって初めて知った。その時は別になんとも思ってなかったけど改めて今聴くと結構カッコいい曲だった事に気付いた。なんというかリズムがキレッキレで自然と体が動く。
Iambic 9 Poetry / Squarepusher
イギリス南部の奇才、スクエアプッシャーことトーマス・ジェンキンソンの手によるメランコリックな一曲。元々ベーシストの顔も持っている彼により演奏される正確で適切なベースと、生のドラムが主役を張るグルーヴィーなサウンドがこの曲の持ち味である。
受けた印象は上の項で説明したものとあんまり変わらず、テクニカルな生のドラムと同じフレーズを繰り返し続けるエレクトロニック・ピアノが朝焼けのような爽やかさをもたらす総じていい感じのインストといった所。普段はエイフェックス・ツインのようなぶっ飛んだ曲をメインにして活動しているらしい(地元も同じようだ)けど、今作にそういう面影は見えない。
Isn't She Lovely / Stevie Wonder
盲目の天才ミュージシャン、スティーヴィー・ワンダーによる多幸感溢れるナンバー。愛娘のアイシャが産まれた喜びを歌っており、2枚組アルバム「Songs in the Key of Life」のハイライトを担っている。
この曲もドラムの先生に課題曲として提示されて初めて知った。先生が選ぶ課題曲は基本的にアーティスト1組につき1曲というシステムだったのだが、スティーヴィー・ワンダーだけは何故か3曲も選んできたのを覚えている。この曲に関してはその頃は好印象だったけど、今はその時一緒に選ばれた「Higher Ground」「I Wish」のほうが好み。
STAY TUNE / Suchmos
自動車のCMソングに起用され、一気にスターダムを駆け上がるきっかけとなったシティポップ的な一曲。当時よくネタにされた歌詞の「Mで待ってる奴 もうGood Night」の「M」とは作詞者の故・HSU氏によると「(世の中で憶測されている)マクドナルドやマゾヒズムのことではない」とのこと。
基本的に自分は流行に乗り遅れるタイプで、誰かがブレイクする瞬間を目撃することなど滅多にないのだがこの曲が売れるきっかけになったテレビCMは何回か目にしたことがある。多分世間の誰もが思っていたのと同じように「これは売れる」と直感したし、後に皆が思った通りSuchmosは売れた。
Everybody Wants To Rule The World / Tears For Fears
イギリスの2人組バンドによる大ヒットナンバー。「みんな世界を従えたいと思っている」というタイトルの通り、発売当時の冷戦時代の空気を反映し警鐘を鳴らす真面目な内容でありながら、そのメッセージをより多くの場所に広めるためにわざと明るく開放的なアレンジに仕立て上げられている。
一応そんなわけでアレンジ自体は明るいんだけど、アレンジに時代を感じるせいか、曲のメッセージに引っ張られているのかどことなく後ろ暗いものが見え隠れして突き抜けて明るい曲だとは思えなかった。わざと親しみやすい曲調にして色んな所で聴いてもらえるようにしたとかいう割にはまだ不穏な空気が隠しきれておらず、例えばこれをドライブ中にかけても空気が微妙に盛り下がりそう。何か本当にどっちつかずな印象の曲だった。
そなちね / Tempalay
個性的な連中が多い邦ロック界のなかでも特に異彩を放っている(イメージがある)3人組ロックバンド、Tempalayの代表曲(詳しくないけど多分)。YouTubeのコメント欄では「妖怪ロック」と評する声もあるサイケデリックな曲調で、不条理なMVも評判を呼んでいる。
個人的には「とにかく変な曲」という印象しかない。聴く人は選ぶだろうし自分も嫌いではないけど「この世で最もいい曲」に選べるほど好きな曲かと言われると微妙なところではある。この曲にのめり込める人はけっこう高い音楽偏差値を持ってそう。
Blackbird / The Beatles
翻ってビートルズ。2枚組の大作「The Beatles(通称・ホワイトアルバム)」に収録されたポールによる弾き語りナンバーで、当時盛り上がっていた公民権運動の中で、差別と闘うとある黒人女性を黒い鳥が自由を獲得し飛んでいくストーリーと重ね合わせたメッセージソングとなっている。
アコースティック・ギターの弾き語りというスタイルと歌詞のメッセージ性からして、この曲は完全にフォークである。ただ曲だけ聴いた感じ2分18秒という短さもあってかメッセージの割には結構さらっと流れていく印象で、この手の社会派な曲にありがちな押し付けがましい感じは全くない。
The Downtown Lights / The Blue Nile
活動44年目にしてアルバム4作しか出てない超寡作なシンセポップバンド、ザ・ブルー・ナイルの名盤「Hats」のリード曲。エレクトロニックAORとも称されるメロウな作風は発売から35年経った今も密かに人気を集めている。
ちょい時代を感じるドラムの音色が気になるミディアムナンバー。シンセの音が結構長めにとられてて、ストリングスみたいに何重にもなって迫るのでシンセの音に包まれている感覚がするというか、天に召されるときに後ろでかかってそうというか、とにかくこの曲には並大抵でない包囲力を感じる。
Be My Baby / The Ronettes
1950年代から活躍する超古参3人組女性ボーカルグループ、ザ・ロネッツのデビュー曲。プロデューサーにフィル・スペクターを迎え、彼の作風である「ウォール・オブ・サウンド」を代表する大ヒット曲となった。
大瀧詠一に多大なる影響を与えたフィル・スペクターのプロデュースという事でちょっとナイアガラサウンドにも通ずる物がある…というかイントロのドラムパターンなんてモロ「夢で逢えたら」だし、おそらくそういう作風の醸造に大いに寄与したであろうポップス。なので初めて聴いた曲だが初めてという感じはあまりなく、時代感が否めないというのはあるにせよけっこう親しみを持って聴ける良い曲だと思った。
Today / The Smashing Pumpkins
長いこと日本に来てないロックバンド、ザ・スマッシング・パンプキンズの出世作。「このアルバムで名を上げないと次はない」というプレッシャーのなかで制作され、見事ブレイクを果たした一曲となった。
先程の2曲に比べるとバンドの主張が強く、テンポも遅めのギターロック。レディオヘッドの「Creep」と同じでシンプルなこの感じが好きという人は一定数いそうだし、実際そうだからこの企画にランクインしたんだろうけど個人的には「Creep」と同じくそこまでハマらなかった。
Baba O'Riley / The Who
イギリス発の大物ロックバンド、ザ・フーの代表作「Who's Next」の冒頭を飾る一曲。ロックオペラの金字塔として今でも語られるアルバム「Tommy」により高まった期待に見事に応え、バンドの地位を確固たるものにした。
元々この曲を軸にした「Tommy」に続くロックオペラの第二弾をやろうとしていたらしく、そのコンセプトの名残なのかあんまり普通のロックっぽくはないかなり作り込まれた一曲に仕上がっている。のっけから1971年当時はまだ全然普及も発達もしていなかったであろうシンセサイザーの演奏で幕を開けるし、アウトロではテンポアップしてバイオリンを入れてくるしで尋常じゃない気合とエンターテイナー魂、そして独特な世界観が感じられる。
I Saw the Light / Todd Rundgren
メロディーメーカー及び大物音楽プロデューサーとしても知られるシンガーソングライター、トッド・ラングレンのヒット曲。2枚組の大作アルバム「Something/Anything?」からのシングルカットで、楽曲に含まれる全ての楽器演奏とコーラスを一人だけでこなしたという力作。
独特の哀愁が漂うポップナンバー。演奏もコーラスも一人で完結させた割にそんなに粗もないし、特にコーラスなんかは全部同一人物がやっているのを忘れて普通に良い声の人いっぱい雇ったんだなぁと聴き入ってしまうくらいクオリティが高かった。
Obscurity Knocks / Trashcan Sinatras
スコットランド出身のバンド、トラッシュキャン・シナトラズのデビュー作の表題曲。Wikipediaにはオルタナやインディーロックに分類されているが曲そのものは瑞々しいギターポップであるらしく、何件かヒットした評論の中には「ネオアコ」という単語が飛び出すものも。
ということで屈託のない爽やかなアコギ主体のポップス。全体的にリバーブがかかっている曖昧な音像には時代を感じるが、それだけに留まらない別の魅力も今作からは感じられる。具体的に言えば人懐っこいメロディだったり真っ直ぐなボーカルだったり、そういった要素は今聴いても色褪せない。
東風 / YELLOW MAGIC ORCHESTRA
YMOから2曲目、こちらはキーボード担当・坂本龍一氏の作曲。1stアルバムのB面に収録されてる「ゴダール三部作(そのまんま曲のタイトルにゴダールの映画のタイトルを付けている3曲のメドレー)」の冒頭を飾り、結果的にはYMOのみならず坂本氏を代表する一曲になった。
「RYDEEN」はほとんどシンセサイザーで構成された高純度のテクノポップ(なんか間違ってたら恥ずかしいので「純度100%の」とは言わない)だったがこの曲は生演奏もほどよくフューチャーして、人間味と機械っぽさを絶妙に混じり合わせた奇跡の名曲だと思う。3人とも元々プロのバンドマンとして音楽業界を渡り歩いてきた人たちだし、この曲は特に細野晴臣氏のベースが素晴らしい。もう散々YouTubeのコメ欄やら何やらで言われてきたことではあるが、この跳ねるベースは他ではなかなか聴けないものではないか。
Swallowtail Butterfly~あいのうた~ / YEN TOWN BAND
映画「スワロウテイル」に登場する架空のバンドが実際に現実でも稼働するというコンセプトで始動した4人組バンドYEN TOWN BANDのデビュー曲にして代表曲。ボーカルにCHARA、キーボードに小林武史を据えて制作されCD全盛期らしい特大ヒットを記録した。
1990年代のJ-POPはよくひとまとめにして称賛されるし、この記事でも若干やっちまっている節があるが、主に前半に単純明快で分かりやすいヒット曲が並んでて、後半にかけてだんだんアーティスティックで難しい曲が流行りはじめるという変遷があるイメージで、1996年発売のこの曲はそのちょうど真ん中にいる印象を受けた。ボーカルのクセの強さもあってベースは90年代後半の難解な感じなんだけど作者がミスチルやマイラバを手掛けた小林武史だから曲は90年代前半のようなキャッチーさが実はある…みたいな。
金木犀の夜 / きのこ帝国
現在無期限活動停止中のロックバンド、きのこ帝国の代表曲。金木犀の香りをトリガーに昔の恋人を思い出すラブソングで、控えめな曲調もあいまって邦ロック界隈での人気は高い。
現在の邦ロックにも通ずるものがある穏やかなバラードとあって最初聴いた時はもっと最近の曲だと思っていた。この曲が発表された頃の筆者は最新の音楽にはほぼ見向きもせずにYMOやらミスチルやらに夢中だったので、その裏でこんな良い曲が出ていたこと、この曲にリアルタイムでありつけた人がたくさんいるということを思うと不思議な気分になる。
Drifter / キリンジ
キリンジ、ここで初めて兄の作品が登場。どん底から静かに立ち直る感動的なバラードで、弟の「エイリアンズ」と双璧する楽曲だとも言われている。実際人気は折り紙付きで、ミスチル桜井率いるBank Bandがカバーしてたりもする。
個人的には「エイリアンズ」よりも普遍的な曲だと思っていて、歌詞は一見いつも通りの堀込ワールド全開で抽象的なものに見えるが、実際その内容は大多数の人間に響くものがありそうな再起を歌っており、メロディはむろん一級品、アレンジもストリングスをフィーチャーしたド王道のサウンド…と要素を一つずつ鑑みると思ってたより大衆的。正直「エイリアンズ」よりも「この世で最もいい曲」感がある。
ロックンロール / くるり
そして再びくるりからランクイン。アルバム一作ポッキリで辞めてしまった外国人ドラマー、クリストファー・マグワイアをメンバーに据え発売された唯一のシングル曲で現在でもライブの盛り上げ曲として頻繁に演奏される。
20数年の長いキャリアを持つくるりの作品でもとくに高い評価を受けている今作及び今作が収録されたアルバム「アンテナ」。その良さを理解するのに若干時間はかかったが、今ではすっかりお気に入りの曲のひとつとなった。この曲にはそれまでのくるりにあった影がなく、ひたすらに明るい。売れたバンドが明るくなって以前と変わってしまうという現象を度々耳にするが、この曲はその現象が良い方向に作用した例なのではないか。
染まるよ / チャットモンチー
チャットモンチー、今度はミディアムナンバーがランクイン。プロデュースを亀田誠治に依頼し、煙草をキーアイテムに据えた切ないラブバラードで、ドラマ主題歌にも起用された。
亀田誠治を招いたからか、「シャングリラ」に比べるとややJ-POP色が強くなった気がする。個人的には「でももう要らない」と歌う箇所で唐突に転調することで心情の変化を表してるっぽい所が気に入った。
いかれたBABY / フィッシュマンズ
フィッシュマンズ、初期の代表曲。発売以来ライブの定番曲となっており、海外で「LONG SEASON」が再評価される前は、この曲こそが彼らの最大の代表曲という風潮が確かに存在した。
彼らの初期の作風であったレゲエのリズムを基調としたヘンテコな曲。確か「空中キャンプ」でフィッシュマンズにハマった直後に代表曲とされていたこの曲と「ひこうき」を聴いたんだけど、どっちも良さが分からずに離脱、その後海外で評判されてた「LONG SEASON」にドハマりした記憶がある。改めてもう一回聴いてみてもやっぱり良さはよく分からない。多分このまま一生分からない気がする。
Automatic / 宇多田ヒカル
日本におけるR&Bブームを先導し、弱冠16歳にして日本一の売上枚数を誇るアルバムを作った天才シンガーソングライター、宇多田ヒカルのデビュー曲。アルバム発売前に発表された今作も話題を呼び、最終的に255万枚もの売り上げを記録している。
今聴くと歌声は若いし音色が思いっきり2000年代初頭だしで時代感じまくりだが、曲自体の強度ゆえか不思議と古臭いとはそんなに思わなくて、もはやその時代特有の味としてこれはこれでアリに思えてくる。こういう皆が諸手を挙げて絶賛している曲を褒めるのって周りに流されてるみたいであんまりやりたくないんだけどこの曲はもうしょうがない。良い曲なんだから。
異邦人 / 久保田早紀
この記事では異例のランクインとなるコッテコテの歌謡曲。当時新人だった女性歌手・久保田早紀のデビュー作として用意され、いきなりの大ヒットを飛ばしまくりそのまま彼女の代表作になってしまった。
「異邦人」の名に違わぬエキゾチックなアレンジがとんでもないインパクトを与えてくる一曲。あまりに濃ゆいので普段から聴くような曲にはなりそうもないけど、当分あのイントロは忘れないと思う。
プラチナ / 坂本真綾
ベテラン声優でありながら歌手としても活動する坂本真綾の代表曲。アニメ「カードキャプターさくら」の主題歌で当時タッグを組んでいた菅野よう子の作風が前面に出たアニソン史に残る名曲として、界隈の内外を問わず長きにわたって語り継がれている。
アニソン界隈でもてはやされている名曲という事で名前だけは知っていたがちゃんと聴くのは今回が初めて。転調に次ぐ転調が現代のJ-POPを思わせる普遍的で爽やかなストレートど真ん中のポップスという印象。こういう転調まみれの曲が巷にあふれる現代では珍しさはないけど、この曲みたいに制約が少なくて色々実験できたアニソンという場で生まれた名曲が現在の状況を作った先駆者だったのかな、とか勝手に推測した。
初恋 / 村下孝蔵
いぶし銀のシンガーソングライター、村下孝蔵の代表曲。現代っ子の耳には歌謡曲といっても過言ではない渋いラブソングで、当時まだ30歳だったとは思えない深みが今も時代を超えて愛され続けている。
発売当時は1983年と昭和真っ只中(そろそろ終わりに向かうくらい)で、実際時代に寄り添ったヒット曲だとは思うんだけど、一方で「高気圧ガール」「悲しみがとまらない」みたいなシティポップが生まれ、そしてヒットしたのもこの年だし、アイドル界を見れば松田聖子も中森明菜も現役のところにYMOが殴り込みをかけ、海外からは「Time After Time」「Uptown Girl」「Jump」などが襲来…と考えるとなんてカオスな時代だったんだと思う。
ギブス / 椎名林檎
良くも悪くも濃い世界観と濃いファンを抱え込むシンガーソングライター、椎名林檎がここで初めてソロでランクイン。「罪と罰」と同日に発売された楽曲であり、シングルでは初のバラードとして世に出された。
バラードとはいっても普通にしっとりした曲調ではなく、当時の彼女らしいギターをガンガン鳴らした激情系のバラードとなっている。メロディ自体はゆったりしているが後ろの電子音がリズムを結構細かく刻むので、そこまで間延びした感じがしないのも良い。
群青日和 / 東京事変
東京事変2曲目のランクインは自身のデビュー曲。スピーディーで攻撃的な事変印のサウンドはこの時点で既に完成しており、「東京事変やりたい!」と可愛い女の子が言い出してそれに釣られたバンドマンがあまりの難しさに泣きを見る状況を作ることになる記念すべき(?)最初の一曲でもある。
東京事変で好きな曲は先程の「透明人間」をはじめもっと他にあって(個人的にはマイナーなアルバム曲だと思ってた「絶体絶命」が3票も獲得していたのが驚きだった&嬉しかった)この曲にはそんなに思い入れはない。デビュー曲としては申し分ない凄いインパクトを持った曲だとは思う。
花 / 藤井風
藤井風、3曲目のランクインは去年のヒット曲。ドラマ「いちばんすきな花」の主題歌として書き下ろされた抑えめのポップスで、宇多田ヒカルの曲にも参加したA・G・クックがプロデューサーとして参加。彼らしい哲学的な歌詞も健在である。
前々作「grace」に続いてわざと若干外したピッチが特徴的なポップスで、「きらり」以降の路線を踏襲した難しいけど親しみがある一曲に仕上がっている。難しすぎてついていけない曲も時々あるけど、この曲をはじめとした近年のシングルを擁する次のアルバムの完成がとても楽しみだ。
二人セゾン / 櫻坂46
欅坂46(現・櫻坂46)、初期の代表曲。「セゾン」はフランス語で「季節」を意味し、移ろう季節を二人の出会いと別れに重ねた歌詞が人気を呼んだのかアイドルソングとしては異例な票の伸びを見せ、結果的に48・46系で唯一のランクインとなった。
48系列は商法の悪質さも手伝ってネット上ではボコボコに叩かれていたが、ミスチル桜井が持ち歌を絶賛した乃木坂46やエース格のメンバー1人が何かと崇拝されていた欅坂46など46系列は割とネットでも好意的に見られていた印象だったので秋元系で入ってくるなら46だろうなとは思っていた。肝心の曲の方はサビのタイトル連呼が頭に残る真面目な一曲で、初めて聴いたけど確かにキラキラアイドル路線一直線だった48のヒット曲群とは一線を画す。
Jolie / Al Kooper
1960年代から活動する息の長いミュージシャン、アル・クーパーの代表曲。当時の恋人だったジョリー・ジョーンズの名前をそのまま使ったラブソングで、英語版Wikiの記事はないのに日本語版Wikiの記事は存在するという日本人気激高な一曲でもある。
音数過多気味で一途な雰囲気のスローナンバー。普通のバンド編成に加えてオルガン(多分)と大所帯コーラス隊がイントロから迫ってくるのでいきなり圧倒されグイグイと引き込まれる。普通に日本以外でヒットしてもよさそうに思えるけど、世界ではイマイチ浸透していないのはなぜなのか…
Simulation Swarm / Big Thief
ブルックリン出身新進気鋭のインディー・ロックバンド、ビッグ・シーフが2022年に発表したばかりの2枚組アルバムからのランクイン。Googleで検索しても日本語の記事がほとんど出てこない閑散っぷりが哀しいところだが、YouTubeでの再生回数はアルバムの中で一番多く、とりあえず作品の目玉を担っていることだけは確かだ。
終始派手な盛り上がりもなく淡々と進行する地味目な一曲。ちょっと感想に困るくらいには地味。途中の演奏を切り刻んだようなギターソロがおそらくこの曲一番の聴きどころだと思うんだけど、その部分が人々を惹きつけたのだろうか?皆が何に惹かれてこの曲に投票したのかよく分からない…
Waltz For Debby / Bill Evans
モダン・ジャズ一派の一員、ジャズ・ピアニストのビル・エヴァンスによるインスト。ピアノ、ベース、ドラムのみのシンプルな編成で演奏されるビルの姪であるデビイに捧げられたナンバーで、ジャズ愛好家の間ではジャズの名曲として筆頭に挙げられ、日本で一番売れたジャズアルバムの表題曲でもあるといわれている。
タイトルにはワルツとあるがワルツっぽいのは最初の数分だけで、ドラムが入ってきてからは王道のジャズが展開する、そんな一曲。自分がいつも聴く音楽に比べると全体的に控えめで、どうしても敷居の高さを感じてしまう所ではあるがそれでもこの前聴いた「Bitches Brew」よりは親近感が持てる。玄人の方々みたく姿勢を正してただ音を聴くより、この曲の音源に出てくる観客みたいに食事なり談笑なりのBGMとして気軽に聴きたい一曲だ。
Honesty / Billy Joel
デビュー曲、ブレイク作とキャリアの美味しい所を順々に辿るランクインをしていたビリー・ジョエルの3曲目は、ブレイク作に続いて放たれた渾身のバラード。主に日本で高い人気を誇っているようで、アメリカで発売された彼のベスト盤には入らなかったこの曲が日本版では追加で収録されている。
何かを訴えかけるようなメロディーが炸裂するサビが日本人の琴線に触れる泣き泣きのバラード。確かにこういう歌謡曲っぽい感じの曲はアメリカではウケなさそうだし、一方で日本人にはめちゃめちゃ刺さったというのもよく分かる。現に自分も初めて聴いて一発でハマった。
So Far Away / Carole King
作曲家としてたぐい稀なる才能を発揮し夫とともに一時代を築き上げた女性シンガーソングライター、キャロル・キングの代表作。遠く離れた恋人の事を想うラブソングで、自身最大のヒットアルバムと評される「つづれおり」の序盤を飾った。
ピアノの弾き語りにアコースティック・ギターが絡むシンプルなバラード。「丸ノ内サディスティック」や「Something」が同順位で並んでいることを考えると結構すごい曲に思えるが、個人的にはどうも普通のバラードにしか感じられず、なかなか良さが見えてこない。
One More Time / Daft Punk
ダフト・パンク、3曲目のランクインは自身の大出世作。ゲストボーカルに有名DJのロマンソニーを招いたアップテンポなディスコナンバーで、2人が敬愛する漫画家・松本零士がキャラデザを担当した全編アニメーションのPVも話題を呼んだ。
この曲は自分にとっては「曲」というより「アイコン」という感覚が強い。聴き返した時期があまり良くなくて(完全に飽きてはいないがそんなに新鮮味も感じられなくなってきた所)、いざ一つの曲として今作に向き合ってみても感想らしい感想がなかなか浮かばない所ではあるが「この世で最もいい曲」と言われて11人がこの曲を挙げるほどのキャッチーさがあることは、そんな状態であっても納得できる。それほどの曲であることは間違いない。
Layla / Derek & The Dominos
伝説のロックバンド、デレク&ザ・ドミノスの代表曲。「いとしのレイラ」の邦題で知られている情熱的なラブソングであり、エリック・クラプトンとデュアン・オールマンというレジェンド級のギタリスト二人が一緒に演奏をしているというトピックもあって現在でも名を馳せている。
というわけで歌も演奏も感情乗りまくりの熱烈なロック。ボーカルは最初の2分で歌い終わり、残りの5分は全部セッションだが終始テンションが高く、さらに演奏者がレジェンド2名を擁しているので、その演奏にも聴き応えがあって飽きさせない。この曲の中で愛を向けられているのは作者(エリック・クラプトン)の親友の当時の妻で、のちに作者は親友から妻を奪い取って結婚(そして離婚)までしてしまった。それでもキャリアに傷がつくことはなく、この曲も変わらず名曲扱いされている、なんならその辺のスキャンダラスな要素さえこの曲の魅力の一つに数えられている風潮さえ感じる今のこの曲を取り巻く状況はなかなかにぶっ飛んでいる。今から別の曲で同じような状況を作るのはまず不可能だろうし、規格外すぎる。
I'm Coming Out / Diana Ross
モータウン出身の女性ソウルシンガー、ダイアナ・ロスのヒットナンバー。ナイル・ロジャースらによる作曲のディスコソングで、「カミングアウト」というタイトルからも分かる通り、ゲイ・コミュニティを鼓舞するアンセムとして近年も人気を誇っているそうな。
歌い出しからタイトルを連呼する、ヒット性抜群のディスコナンバーとしか言いようがないディスコナンバー。同じディスコ路線でヒットを飛ばしてたドナ・サマーとかに比べるとやや甲高い歌声で少し華奢な印象も受ける。
Never Catch Me (feat. Kendrick Lamar) / Flying Lotus
ジョン・コルトレーンを親戚に持つ大物音楽プロデューサー、フライング・ロータスのソロ作品。当時評価をグングン伸ばしていた所だったラッパーのケンドリック・ラマーを客演に迎えた曲で、ロータス自身もプロデューサーとして参加したケンドリックのアルバムとともにグラミー賞を獲得した。
ゆったりしたテンポとは裏腹にやたらと忙しない早口ラップと素早いドラムが印象的なヒップホップ。こういう感じの手数が多くて速いドラムが特徴の音楽ジャンルにドラムンベースというものがあるが、この曲もそれにあたるのだろうか。それにしては疾走感が足りない気もするけど…
Sweet Child O' Mine / Guns N' Roses
80年代のロックを代表するモンスターバンド、ガンズ・アンド・ローゼスの代表曲。ギターのスラッシュによるアルペジオは今でもなお語り草にされるくらいの伝説と化している。
80年代という時代や、いかにもなアートワークからゴリゴリの激しいハードロックを想定していたが意外や意外、流れてきたのは爽やかで存外ポップな親しみやすい曲だった。有名なアルペジオというのも思ってたより明るくて開放的なフレーズであり、ビジュアルと曲調の乖離具合が半端じゃない。
Love Will Tear Us Apart / Joy Division
「ポストパンク」というジャンルを代表するといわれているロックバンド、ジョイ・ディヴィジョンによる最大の代表曲。若くして亡くなったボーカルのイアン・カーティスにとっては遺作であり、バンドを超え80年代のロックを語る上で外せない一曲だと評する声もある程の大ヒットを記録している。
先ほど聴いたニュー・オーダーの「Ceremony」と比べてみるとサウンドの方向性はほぼ一緒だが、こっちは曲全体に影がある印象。メロディーがまずそんなに明るくないし、ボーカルの声質が暗さに拍車をかけて決定的なものにしている。この妖しげな陰気さが人を惹きつけるということだろうか。
Protection / Massive Attack
マッシヴ・アタック、今度は2作目からランクイン。こちらはアルバムでも冒頭に配置され、表題曲にまでなるという破格の扱いを受けている楽曲で、相変わらず曲単体でのトピックは見つからないがGoogleで検索して得られる情報は「Teardrop」よりいくらか多い。
2000年代初頭のR&B系J-POPみたいなカタカタ言うドラムに乗せてしっとり歌い上げるクールな一曲。相変わらず難解な作風ではあるのだが、ジャンルすら特定できなかった「Teardrop」に比べるとまだ多少は分かりやすいように感じる。
Killing In the Name / Rage Against the Machine
オルタナティブロックの雄、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの出世作の一つ。デビュー作に収録された彼らの特色である政治色の強い歌詞が特徴的なロックで、「グランド・セフト・オート」や「ギターヒーロー2」等のゲームに起用されるなどして後の世代にも波及している。
「警察の横暴に対する抗議」というシリアスなテーマの歌詞に合わせた曲調の重たいロック。ひたすら同じフレーズを連呼しつづけるので、嫌でもそのメッセージは頭の中に残る。ただ自分はこの曲を空耳アワーで知ったので、頭の中には本人達が意図した物とは全く違うメッセージが残ってしまう。
夜を使いはたして feat. PUNPEE / STUTS
日本の若手トラックメイカー、STUTSによる一曲。そんな彼と同じく有名な若手トラックメイカーのPUNPEEを客演に迎えたヒップホップの名曲の一つで、クラブでは主に朝方に流されることが多いという。
STUTSと言ってもピンとこない人には星野源のライブで何かよく分からないパッドみたいなのをポチポチ叩いてる人といえば通じるだろうか。タイトルの通り一つの夜を明かしたような清々しさがある気だるいテンポ感の一曲。朝焼けが目に浮かぶような賑やかなバックトラックが心地良い。
Here Comes The Sun / The Beatles
続いてビートルズ。ここにきてジョージの曲が初ランクインである。名盤「Abbey Road」収録の春の日差しが来た喜びを歌った穏やかな一曲で、Spotifyにおいては名だたる名曲を抑えてビートルズの中でこの曲が一番再生されているという称号がついている。
個人的にも「Abbey Road」の中だったらこの曲が一番好き。この時期にはもうバンドは解散に向かっていて、それで逆に気負わずに制作に臨める感じになったのかよく分からないけど、この曲は本当に穏やかで憑き物が落ちたかのような雰囲気。Spotifyではビートルズで一番再生されてるという話は、ビートルズには名曲がたくさんあるからそもそもどれが一番再生されててもそんなに驚かないし、この曲がビートルズで一番再生されてると言われれば「あぁ、確かにこれ良い曲だもんね」と納得できる。
Something / The Beatles
同率でまたしてもジョージの曲がランクイン。同じく「Abbey Road」収録のゆったりとしたラブバラードであり、これまでジョンとポールの影に隠れて軽視されがちだったジョージの曲でありながらその二人の曲と同等の名声を得た数少ない一曲である。
ただ自分は「Let It Be」と同じく、あまりに王道を行くバラードなのでそこまで好きになれていない。その「Let It Be」と比べたらこっちのほうが好きなんだけど…
Video Killed The Radio Star / The Buggles
邦題「ラジオ・スターの悲劇」。当時テレビの台頭によって、衰退の一途を辿りつつあったラジオ(のスター)に想いを寄せたノスタルジックな一曲。現在のシティポップリバイバルにも通ずるものがあるポップさが受け、皮肉にもMTV(海外の有名な音楽系チャンネル)で最初に放映された曲となった。
自分はこの動画でこの曲のことを知った。言うなれば歌ってみたメドレーの中でほんの一部を歌われただけなのだが、その部分だけで一気に心惹かれて後々CDを借りるまでに至ったので、人を引き込むとんでもない力を持った曲だと心から思う。あと、これをMTVで流すのにゴーサインを出した人は何を考えていたのか?ラジオ業界への煽り?
Waterloo Sunset / The Kinks
ビートルズやストーンズと同じ時代を生きたロックバンド、ザ・キンクスの大ヒット作。ウォータールー駅にて落ち合うテリーとジュリーという二人のカップルを眺めている男の視点で進行する第三者目線でのラブソング(?)で、緻密なアレンジも相まってロック史で最も美しい曲と評されたこともある。
タイトル通りサンセットな感じの(?)フォーキーな一曲。耳が素人な自分にはスタンダードなフォークロックに聴こえてどこがどう緻密なアレンジなのかよく分からなかったけど、和訳サイトに載ってた歌詞やその内容に合わせたどこか哀愁漂うお疲れ気味のアレンジは確かに美しいといえる。
Sympathy For The Devil / The Rolling Stones
ビートルズと互角に渡り合える数少ないレジェンド・バンド、ローリング・ストーンズの唯一のランクインとなった楽曲は、「悪魔を憐れむ歌」という邦題で知られ、サンバのリズムを取り入れた呪術的な雰囲気が特徴の稀代なロックである。
ピチカート・ファイヴがこの曲のイントロを無許可でサンプリングした曲を発表したことがあるのでイントロだけ馴染みがあったが、そのあとの展開は当然ながら全く違う。歌詞を読んでないので実際どうなのかは知らないが、曲だけ聴いた印象は民族チックな展開が延々続くニュートラルなテンションの曲で悪魔っぽくもなければ、憐れんでいる感じもない。
This Charming Man / The Smiths
ザ・スミス、今度は超初期のヒット曲が登場。貧しい少年が裕福な男の援助を受けるストーリー仕立ての歌詞で、行間を読ませる描写が現在でも憶測を呼んでいる。当初はそこまでの人気はなかったようだがバンド自体の人気が高まるにつれこの曲も評価されていき、発売から8年経ってシングルカットされたことでようやく数字に表れる形でヒットしたようだ。
跳ねたリズムで奇妙なウキウキ感を演出している謎な曲調のロック。何故にこのスタイルを採用したのかはよく分からないが、そもそもの歌声があまり明るくないので少しでも暗さを中和するためにこうなった、とかなのかな。この曲調とこの歌声がセットで来るとなんか言いしれぬ違和感が頭の片隅に居座り続ける。
水星 (feat. オノマトペ大臣) / tofubeats
様々な場所でトラックメイカーとして活躍するtofubeatsがゲストボーカルに同じくトラックメイカーのオノマトペ大臣を起用した代表曲。2010年代前半のサブカル界隈に大きな影響をもたらし、2015年にはDAOKOがカバーし、2020年代に入ると「今夜はブギー・バック」とマッシュアップしたカバーが「ほろよい」CMソングに起用されるなど根強い人気を得ている。
ヒップホップと呼ぶにはポップすぎる気がするし、渋谷系やシティポップに分類すると何か違う感じがするし、意外とジャンルの形容が難しい唯一無二の楽曲だ。現在のサブカル界隈に大いなる影響を与えただけあって発表から12年も経った今聴いてもそんなに古く感じないけど「iPod iPhoneから流れ出た」というくだりは時代を感じてちょっと切なくなった。
Cinderella / TOMOO
近頃急激に名前を見かけるようになった女性シンガーソングライター、TOMOOによるバラード。この手のラブソングにしては珍しく、TikTok発のヒット曲ではない様子でSpotifyの「Gacha Pop」など海外向けのJ-POPを特集したプレイリストなどでもこの曲は見かけない。
アルバムのジャケ写がけっこうアーティスティックだったので勝手にもっと個性派な人だと思ってたんだけど、曲は割と直球で王道なバラード。後ろにストリングスを従えてピアノから始まる、2000年代のヒット曲みたいなベタな編成ではあるのだが曲を支えている打ち込みは今風で、その辺でかつての曲達と差別化している印象。
With Or Without You / U2
社会派ロックバンド、U2の初にして唯一のランクインはアメリカでブレイクを果たすきっかけとなったこの一曲。元々は名盤として名高い「The Joshua Tree」の収録曲で、どこまでも余韻が残り続けるギターなどが象徴的なその独自のサウンドは後年多くのフォロワーを生んだ。
という感じの説明文を読んでから視聴に臨んだので凄い独特なアレンジの曲を想像していたのだが、流れてきたのは正統派なバンドサウンドをベースに展開する王道のロックで、唯一「独自のサウンド」と言えそうな要素は上の項にも書いた余韻の長いギターぐらい。それも後ろで微かに鳴っている程度で意識しなければ聞こえない。まぁここまで取り上げてきた洋楽の中でこれほどストレートなロックは案外そんなになかったりするから、そういう意味では独自のサウンドと言えるかもしれない。
踊り子 / Vaundy
Z世代ミュージシャンの筆頭、Vaundyの代表曲。シングルを出すごとに作風が変わっていくことでお馴染みの彼だが、この曲は派手な装飾を一切排除しベースドラムボーカル+αだけで勝負した究極にシンプルな一曲。女優で、かつ菅田将暉の妻である小松菜奈が出演したPVも人気の一端を担っている。
普通なら地味な曲にしかならなそうなバンド編成だがそこはさすが売れっ子ミュージシャン、きちんとキャッチーなメロディーを書き上げて、挙句11人もの人に「この世で最もいい曲」とまで言わしめる非の打ちどころのない曲を作ってしまった。「被害者面で」を「ひがいしゃ/づらで」と分けて歌う所だけはこの曲の非として昔からずっと気になってるしかもこの曲、音程が全体的に低めで高い所も裏声で許されるためカラオケで非常に歌いやすい。元々地声が低くて、最近の高音を要求するヒット曲が歌えないのである程度広い世代に知れ渡っているこの曲は本当に重宝している。
今宵の月のように / エレファントカシマシ
4人組ロックバンド・エレファントカシマシの代表曲。ドラマ主題歌として書き下ろされ、最大ヒットを記録し紅白にもこの曲で初出場、甲斐よしひろや10-FEETにもカバーされるなど名実ともに文句なしの代表曲である。
思いっきりやさぐれた感じのロック。この時点でもう既に荒々しい歌い方が確立されてきているが、このちょうど20年後ぐらいにこの曲を歌っている男が椎名林檎とコラボして大暴れしている光景を知っているので、この歌い方でも随分大人しく聴こえてくる。
海と花束 / きのこ帝国
活動休止中の今もなお邦ロック界隈内で存在感を放ち続けるロックバンド、きのこ帝国の2曲目のランクインはメジャーデビューの前に発表された所謂初期の名曲。3拍子で迫りくる激しいバラードで、楽曲に込められた感情が多くの人の感性に響いたものと思われる。
残響系というのだろうか、まさに海辺の冷えた空気というイメージの音作りで全部のパートにやたらリバーブがかかっている。曲に込められた感情には確かにグッとくるものがあり、もっと適切なタイミングでこの曲に出会えていたら凄いハマってただろうなと思う。
愛のCoda / キリンジ
キリンジ、今度も兄の作品。先程の「スウィートソウル」と同じアルバムに収録されている彼らのパブリックイメージに沿った穏やかな一曲。Codaとは音楽用語で楽曲のエンディングのことを指し、ひとつの愛が終わる様を堀込ワールド全開で描いている。
「スウィートソウル」と感想はほぼ変わらず、自分が知っている「3」や「Fine」収録曲の正統進化系という印象。2曲ともこれから自分の好きな曲になっていくと思う。ていうか「3」「Fine」まで聴いてて何でその次の今作はちゃんと聴いてなかったんだ自分。
ワンダーフォーゲル / くるり
くるり、4曲目のランクインは「ばらの花」に並ぶ代表曲。オルタナロック路線から一気にエレクトロ路線へ舵を切った最初の一曲で、打ち込みを全面的に使ったディスコ的な曲調が人気を博している。
この曲は個人的にくるりを知るきっかけになった一曲であり、これを契機にくるりだけでなくサカナクションや中村一義などそれまで聴いてこなかったタイプのバンドやミュージシャンにもハマっていくことになるので、全ての始まりの一曲みたいな意識が自分の中にあって、思い入れは段違いに強い。高校の頃からもう5年は聴いてるけど未だに飽きないし、きっとこれからも聴き続けるだろう。
琥珀色の街、上海蟹の朝 / くるり
続いてくるり。こちらは結成から20周年のタイミングで発表された一曲で、Spotifyでは彼らの曲の中でも一番聴かれていたり、TikTokで流行したりなど明確にヒットしたといえる実績を残している。曲そのものはヒップホップを導入した新境地的なナンバーで、近年のライブでも定番と化している。
この曲もなかなか思い出深い。「ワンダーフォーゲル」でくるりにハマってその次くらいにハマったのがこの曲だったと記憶している。当時はちょうどコロナ禍真っ最中で、発売は2016年だから関係ないんだけど街中のみんながヘルメットをしている閉鎖的な世界観のPVにちょっとシンパシーを覚えたのを聴いてて思い出した。
銀河鉄道999 / ゴダイゴ
同名のアニメ映画の主題歌で、まさしく蒸気機関車が走るかのように力強いアップテンポな一曲。アニメの枠を超え現在でも愛され続ける楽曲へと成長し、後年ではEXILEのカバーがCMソングになる等話題性においても息の長い一曲である。
初めてこの曲に触れたのは確か幼稚園児の頃にEXILEのカバーを聴いたときだったと思う。数年後に原曲を初めて聴いたときに「早いな」と思ったのを覚えている。その後も吹奏楽団でこの曲を演奏したり高校の頃にTSUTAYAを巡っててこの曲が入ったベストがたまたま目に入って借りてきたり、なんだかんだで人生の節々にはこの曲がいるような気がする。
さよなら人類 / たま
奇才4人組バンド、たまの代表曲。キーボード担当の柳原陽一郎による作曲で、テレビ番組「三宅裕司のいかすバンド天国」にて披露された際に話題を呼び、そのまま彼らを代表する一曲にまで上り詰めた。
もはやジャンル分けができない、「たま」としか言いようがないマジモンの唯一無二の一曲。かなり癖が強く人を選ぶような曲調であり、実際今でこそたまの中ではずば抜けてポップな曲として受け止めてるけど、中学生の頃に初めて聴いた時は全く理解できなかった。隠喩めいてて意味深な歌詞も何か恐ろしい意味が隠されているのではないかと勘繰ってしまうし、少なくとも自分はそう解釈してたけど作者によると歌詞には特に意味はないとのこと。果たしてその真相はいかに。
BABY BLUE / フィッシュマンズ
フィッシュマンズ、3曲目は「ナイトクルージング」に続きまたしても名盤「空中キャンプ」からのランクイン。アルバムの2曲目という大局を担い、後にシングルカットもされ、Spotifyではこの曲がぶっちぎりダントツで再生されている(彼らの海外人気に火をつけた「LONG SEASON」の2.5倍となる約1100万再生)などファンからの人気は結果相応に高い模様。
気だるいレゲエ調の楽曲で、1曲目「ずっと前」から引き続き低血圧な曲が続く…とかそれくらいの印象しかなかったのでここまでの人気があったとは知らなかったし意外でしかない。アルバムを構成する大事な曲の一つであることは事実だし人気の高さは数字が示しているのだが、個人的には「ナイトクルージング」に続く「空中キャンプ」の人気曲がこれなの?という釈然としない思いがどうにも消えない。
帰れない二人 / 井上陽水
浮世離れした大物シンガーソングライター、井上陽水のフォーキーな一曲。RCサクセションの忌野清志郎との共作であり、当時今以上のレアものだったミリオンセラーを達成したアルバム「氷の世界」にも収録されている。
まず歌声が今と全然違う。「少年時代」などに代表されるような鼻にかかる歌声はこの時点では会得していなかったようで、普通に声を張り上げて歌う若かりし彼の貴重な歌声がこの曲では堪能できる(他には「夢の中へ」とかもこの歌い方だった)。曲自体はじっくりと浸れる小洒落たミディアムナンバーで、実際はシングルのB面として世に出たのだが、当初本人はA面としてこの曲を推していたという話も納得できる名曲。
道 / 宇多田ヒカル
宇多田ヒカル、3曲目は人間活動からの復帰作よりランクイン。復帰直前に亡くなった母へのメッセージともとれる悲痛な歌詞が印象的で、打ち込みを駆使した形容しがたいジャンル(ポップスの範疇ではある)の一曲。
復帰一発目となったアルバム「Fantôme」は、先行シングルが「桜流し」「花束を君に」「真夏の通り雨」と全てバラードであり、アルバムの目玉となった「二時間だけのバカンス」もゆったり目のノリの楽曲であったため、結果的にこの曲が一番テンポのあるリード曲となった。それだけにこの曲はアルバムの中でも一際存在感を放っていたし、復帰以降を通してもこの曲を超えるような曲はそんなにないと思う。
スポーツマン / 細野晴臣
当時所属していたYMOの活動休止中に発表したソロアルバムのリード曲。YMOの作風を引き継いだテクノ色の強い楽曲で、近年YMOの楽曲群とともに国内外を問わず再評価が進んでいる。
音色も作風もそんなに違わないはずだが、YMOでの細野作とはまた違う印象で何かしっくりこない。YMOに傾倒していた中学生の頃3人のソロも聴いてみたんだけど、坂本龍一の一部ソロ作くらいしかピンと来ず早々に聴くのを辞めてしまったのを思い出した。やっぱり3人が揃うことで初めて生まれる化学反応みたいなのはこの頃絶対にあったと思う。
ぼくらが旅に出る理由 / 小沢健二
東大卒のインテリ詩人ミュージシャン、小沢健二の代表曲。各方面から名盤と称賛されるアルバム「LIFE」の一曲で、ポール・サイモンの楽曲から一部フレーズを引用した快活なポップスとなっている。近年でも桜井和寿率いるBank Bandやフジファブリックがカバーし、その人気は衰え知らずである。
管弦を多用した多幸感あるアレンジに、別れをテーマにした文学的な歌詞が乗っかるまさに「名曲」の称号にふさわしい一曲である。シングル用に一部カットされたバージョンでも5分台、アルバムに入っているオリジナル版に至っては7分近くに及ぶが、そんな長さも感じさせない。
丸ノ内サディスティック / 椎名林檎
近年のヒット曲にサビのコード進行が使われていると話題になったり、去年の紅白でちゃっかり歌われたり、発売から25年以上経った今でも何かと話題に事欠かない椎名林檎の代表曲。実は元々はアルバムのなかの一曲であり、シングルになったことは一度もない。
という訳で現代の邦楽における最重要楽曲的なポジションを築いたこの曲、流石に最近はあちこちで聴きすぎて飽きてきたのも否めないけど、モダンでジャジーでシャレオツなこのサウンドは今でも色褪せてはいない。
旅路 / 藤井風
藤井風、最後のランクインは自身初のドラマ主題歌。ドラマの内容に沿った暖かな雰囲気の曲で、「きらり」なども収録されているアルバム「LOVE ALL SERVE ALL」ではトリを飾った。
タイトルを見た段階では知らない曲だと思ってたけど、サビだけはどこかで聴き覚えがある曲だった。1stアルバム発売後一発目の新曲という事もあってR&B要素が濃い目のややマニアックな1stと、より大衆向けに若干開いた作風の2ndとのちょうど中間にあたるR&B風味ポップスみたいな印象。
君は薔薇より美しい / 布施明
このランキングでは貴重な歌謡曲分野からのランクイン。当時大ブレイクの真っただ中であったゴダイゴのミッキー吉野が作曲を担当したコッテコテの歌謡ラブソングであり、今や彼の代表曲でもある。
まずこれをゴダイゴの人が書いてたというのが驚きだった。言われてみれば確かに「ビューティフル・ネーム」っぽいかもとは思ったけど、主に作詞と歌声の面でゴダイゴとは思いっきり方向性が違うのでギャップがまぁ凄い。あと、この手の企画に参加する人は今作のような大衆向けの歌謡曲を避けて通好みのバンドの曲を選んだり、大衆向けの曲でもちょっと小難しかったり捻った感じの曲を選んでくるイメージがあったので、ザ・歌謡曲なこの曲がランクインしてきたのは何気に凄いことなのではないかと思う。
カブトムシ / aiko
25年間ラブソング一筋のシンガーソングライター、aikoの代表曲。スローなテンポでじっくり歌い上げる珠玉のバラードであり、あの槇原敬之に「この曲みたいなラブソングが書けたら引退する」とまで言わせた、それほどの曲である。
恋愛経験が皆無なもんで歌詞に関しては特にコメントできることはないが、この曲が凄いのは歌詞だけではない。音大出身の彼女らしいどこか捻くれたメロディーが耳を引くのである。まったりしたバラードという本来自分ならかったるいと忌避する曲調なのに、この曲はすんなり聴けてしまうのはその面がとても大きい。
Let's Stay Together / Al Green
アメリカのソウルシンガー、アル・グリーンの大ヒットナンバー。前作「Tired of Being Alone」のヒットの勢いに乗って何週間もかけて制作されたこの曲は、彼にとって初のビルボード全米1位を獲得した。
聴かせる方面の大人しいソウルナンバー。前述の通り録音に数週間かかった渾身のボーカルは若干ウィスパー気味の控えめなものになっており、後ろの伴奏もホントに必要最小限といった感じ。相対的にアクセントとして随所に入ってくるブラスがめっちゃデカく聞こえる。余計なものは入れないというスタンスがひしひしと感じられるこだわりの一曲。
Never Meant / American Football
バンド名の通りアメリカ出身のロックバンド、アメリカン・フットボールのデビューアルバム収録曲。それも1曲目、デビュー一発目となった楽曲で、「エモ」というジャンルに位置付けられるらしい。英語版Wikipediaによればその中でも最高峰に値すると評価する音楽雑誌もあったようだ。
ドーンと盛り上がりそうで盛り上がらないハイテンポなロック。ひたすらに技術が求められそうな複雑な演奏をあんまり複雑そうじゃない雰囲気で演るという地味にハイレベルな曲だった。スピッツの「8823」のサビに入る前のあのテクニカルな感じが延々と続いているような印象。
How Deep Is Your Love / Bee Gees
「サタデー・ナイト・フィーバー」でお馴染みビー・ジーズの大ヒット曲。まさにその「サタデー・ナイト・フィーバー」で使われたディスコナンバーであり、当時全米1位、全英3位という輝かしい記録を叩き出した。日本では「愛はきらめきの中に」という邦題でも知られている。
一応Wikipediaのジャンル欄には「ディスコ」と書かれていたので上の項ではそれに倣ったが、実際の曲は微塵もディスコじゃないミディアムナンバー。「Stayin' Alive」みたいなビートの強い曲しかやってないと思っていたので、こんなバラードみたいな抑えた曲もやるんだという驚きがあった。
Song 2 / Blur
オアシスと双璧をなしブリット・ポップを代表するロックバンド、ブラーの代表曲。「ブリット・ポップは死んだ」との宣言とともにそれまでの作風を捨て去りオルタナロック方面に舵を切ったこの曲で、それまでの悲願であり苦戦を強いられていたアメリカでのブレイクを達成したという。
「Song 2」とのタイトル通り2分ピッタリで終わるこの曲、世界中で爆発的な人気を得たのは確かなようで、自分もブラーといえばこの曲のイメージ。ていうかブラーの曲ってこれしか知らない。てっきりこの路線でオアシスと戦ってたものと思ってたけど、上の項を書くにあたって調べた限りライバル関係だった頃はまた違う路線だったようだ。ブリット・ポップの代表みたいに言われてたらしいからやっぱりオアシスみたいな曲やってたのかな。
Don't Dream It's Over / Crowded House
オーストラリア出身のロックバンド、クラウデッド・ハウスの出世作。元々デビューアルバムに収録されていた一曲に過ぎなかったのがシングルカットされるや否や、全米2位の大ヒットを記録。自身最大の代表曲と化した。
ゆったりしたテンポで、ロックというよりはバラードと呼んだ方がしっくりくるタイプの楽曲。サビでヘナー、ヘーナーとみんなで歌うのが凄く印象的で、最後の方はそれだけでとどまらずヘナー、ヘーナーと大合唱しながらフェードアウトしていく。聴き終わった後には最早ヘナー、ヘーナーしか頭に残ってない勢い。史上最強のヘナヘナソングと呼んで差し支えないのではないか(?)。
The Wagon / Dinosaur Jr.
オルタナロックブームを彩ったというアメリカのロックバンド、ダイナソーJr.がまさにオルタナ全盛期の1991年に放ったアルバム「Green Mind」からの収録曲。タイトルのWagonとは彼らが活動初期にツアーに出るために親から借りていたワゴン車のことで、バンドの初期衝動を歌ったものだとも、仲間との決別(当時オリジナルメンバーの一人が脱退したばかりだった)を歌ったものだともいわれている。
何か妙にぬるっと始まる元気でアッパーなロック。音だけ聴いた感じだと、仲間との決別とやらは感じさせず初期衝動をそのまま曲にしたように思えるけど、バンド結成から大分経った後の曲という情報を先に知っているせいでバイアスが働いているのか、純度100%の初期衝動と呼ぶのは違うというか主にボーカルとドラムに変な落ち着きを感じてしまった。
Still D.R.E. / Dr. Dre
USヒップホップ界の重鎮であるドクター・ドレーが放ったヒット曲。自身の原点だったギャングスタ・ラップ路線に立ち返った一曲で、レーベルの後輩にして盟友のスヌープ・ドッグや、現在あんま良くない意味で注目がすごいラッパーのジェイ・Zなどの大物ミュージシャンがこの曲に参加している。
元々ヒップホップはリリックの重要性がかなり高いジャンルだし、特にUSのヒップホップは言語に加えてそのラッパーの人間関係とかも把握してないと楽しめないイメージがあるんだけど、この曲はまさにその典型。トラックがずっと一本調子で変化に乏しいので本当に逃げ場がない。英語さえ分かればリリックに着目出来てまだいくらか楽しむ余地は出来るんだけど…
My Sweet Lord / George Harrison
元ビートルズのメンバー、ジョージ・ハリスンのソロデビュー作。バンドの解散から半年ほどのタイミングで特大ヒットを飛ばし、曲作りの場において冷遇されていたバンド時代からいきなり大躍進を遂げることとなった。ただその後、昔のヒット曲からメロディを「無意識に盗用」していた事が発覚、裁判沙汰に発展し各方面へ負の影響を与えたという側面もある。
結果的に元ビートルズのソロ曲で唯一のランクインとなったこの曲、まさに「Abbey Road」での彼の作品のクオリティの高さをそのまんま引き継いだような普遍的なポップスに仕上がっている。10票を稼いだのも納得の結果。でも代わりに自分がこのアルバムで激押ししている屈指の名バラード「All Things Must Pass」が3票も獲得できなかったのはかなり腑に落ちない。
Basket Case / Green Day
アメリカ発のアメリカンなロックバンド、グリーン・デイの初期の代表作。「不安との闘いで何もできない人間」を描いたパンクな楽曲だそうで、当時メジャーデビューアルバムからシングルカットされてチャートで5週連続1位を獲得する快挙を成し遂げている。
そんな曲のテーマからは想像もできない、疾走感ある爽快ロックナンバー。ライブで披露したら普通に盛り上がりそうだし、なんなら実際のライブでは観客も一緒に歌う一種のアンセムと化しているそうだ。3分ちょうどで曲が終わるコンパクトさもグッド。
Computer Love / Kraftwerk
ドイツ出身、テクノポップの祖となる4人組グループ、クラフトワークよりこの曲がランクイン。80年代に入り、活動も円熟味を帯びてきた時期に発表された楽曲で「社会へのコンピュータの進出」をテーマにしたアルバムの中で頭角を現しシングルカットもなされた。
彼らがブレイクした70年代はまだ技術が追いついてなくて、全体的に音数も少なく(わざとそうしてたところも少なからずあるだろうけど)かなり質素な編曲の曲が多かったと思うんだけど、シンセサイザーを使った音楽が大衆に浸透してきて技術も進歩した頃に出た今作は、周りと比べたらまだ控えめな編曲ではあるけど音数が増えてちょっと豪華になった。自分は「人間解体」くらいしか彼らの作品は知らなくて、今回これを書くために初めてこの曲を聴いたけど、何か今まで少ない資金でやりくりしてた奴がまとまった収入を得て急に羽振りが良くなったみたいな複雑な印象を抱いた。
Stairway to Heaven / Led Zeppelin
年配のロック好きから神の如く崇められているハードロックのパイオニア、レッド・ツェッペリンの代表曲。「天国への階段」の邦題で知られる8分の大作であり、高まりつつあったバンドの地位をさらに押し上げ確固たるものにした歴史的にも重要な一曲である。
この曲は昔アルバムごと聴いてみてボコボコにこき下ろしている。あの時は最近寝不足だから感受性が鈍ってるのかもと言ってて、近頃たっぷり睡眠を取るようになったのでその条件の違いで何か聴こえ方にも違いが出るかもと期待を持って視聴に臨んだ。結果、皆が褒めている最初のアルペジオの良さにようやく気付くことができた。あまりに小さな一歩だが、自分にとっては大いなる前進である。
My Love Mine All Mine / Mitski
三重県生まれの日系アメリカ人シンガーソングライター、ミツキ・ミヤワキのソロプロジェクト、ミツキのヒット曲。自分の愛情の所在について歌ったスケールの大きな歌詞が特徴のカントリー調の楽曲だそうで、英語版WikipediaによるとTikTokから人気に火がついて広まっていった模様。
月夜の情景が目に浮かぶジャジーでロマンティックなナンバー。現在これを書いているのが午前3時の就寝前なのだが、ゆったりとしたテンポに非常に眠気をそそられ睡眠導入には持ってこいの一曲だと感じた。本当はもう少し執筆するつもりだったけど、今日はここで切り上げて寝ることにする。
ラビリンス / Mondo Grosso
あちこちで名前をよく見かける大物音楽プロデューサー・大沢伸一が率いるプロジェクト、MONDO GROSSOが長いブランクを経て発表した楽曲。Twitter上での結果発表では影も形もなかったが、滑り込みで票を獲得したか何かしたのか集計を行ったPeter氏のサイトではこの曲が追加で入っていた。
ボーカルとして満島ひかりを起用した透明感あるテクノポップ。バラバラなリズムが入り組んだ複雑なアレンジが癖になる。これを執筆している時点でテクノポップ系はあらかた聴き終えたようで知らない曲を聴いてもロックかバラードかよく分からん系の3択しかない状態が長く続いてたのもあって、不意にこういう系が出てくると普通に聴く時より引き込まれる。
Blue Monday / New Order
ニュー・オーダー、2曲目のランクインは再出発から3年後の1983年、路線も前身バンドのポストパンクからテクノ、ニュー・ウェイブ系統へとすっかり様変わりした時期に出されたシングル曲。前身バンドのボーカルが自殺したと知ったメンバー達の心境を曲にしたものだそうで、1988年にクインシー・ジョーンズがリミックスしたバージョンがリリースされている。
実はニュー・オーダーは電気グルーヴに大きな影響を与えたバンドとしても知られており、先ほど出てきた電気グルーヴの「N.O.」のタイトルの意味も否定を表す単語ではなくNew Orderのイニシャルだったりする。それだけの事はあってこの曲も非常に電気グルーヴっぽいテクノポップとなっている。歌詞の重さの割には悲壮感とか喪失感とかは欠片も感じられないけど、一向に煮え切らない暗めのメロディとボーカルからは一気に先が見えなくなったどん詰まり感は確かに感じ取れる。
Regret / New Order
「Blue Monday」からさらに10年後の1993年に発表されたニュー・オーダー3曲目のランクインとなった今作は、別れた恋人への未練が延々と歌われるギターロック。無事大ヒットを収めるもこの後バンドは活動が停滞し長きにわたって沈黙する事になるため「彼らの最後の傑作」「ニュー・オーダーはこれ1曲で90年代を乗り切った」などと評されたことがある。
ということで、打って変わって昔のJ-POPみたいなポップな作風に変貌して生み出されたこの曲。ちょうどこの頃のCMソングってこういう感じの曲が多かったしピッタリだったんじゃないかと思う。映像が容易に想像できる。曲としてもここまで聴いてきた彼らの3曲の中では一番好印象だった。
Don't Know Why / Norah Jones
アメリカのジャズ・シンガー、ノラ・ジョーンズのデビュー曲にして代表曲。元々はあるシンガーソングライターの持ち歌の一つに過ぎなかったが、彼女のレパートリーとして抜擢されるや否やグラミー賞で3部門を制覇するなど一気に脚光を浴びることとなった。
この曲は発売の翌年に平井堅がカバーしてて、親の影響で彼のファンだった自分はそれを幼少期によく聴いていた。原曲は初めて聴いたけど、カバーのアレンジがアコギメインだったのに対し原曲はピアノがメインのアレンジでよりジャジーで敷居が高い感じに仕上がっているという印象。
アポトーシス / Official髭男dism
今をときめくOfficial髭男dismからは意外にもこの曲のみがランクイン。当時29歳を迎え、20代としての時間が残り僅かとなった事にインスピレーションを受けて制作された力作で、当時の最新アルバム「Editorial」を彩った。
一般リスナーから評論家っぽいリスナーまで幅広い支持を得てそうな髭男が1曲しかランクインできなかった、それどころかそれ以上にこういう企画に参加する人が好きそうなイマドキのアーティストであるKing Gnuや米津玄師に至っては1曲もランクインすることができなかった(3組とも9票以下の次点枠ならそこそこ入ってきている)のには結構ビックリした。貴重なランキング圏内となった今作は打ち込み全開の難解な曲。今波に乗っている人達の楽曲なだけあってメロディはある程度キャッチーだけど…「ミックスナッツ」や「Pretender」を抑えてこれが一番人気…?
Purple Rain / Prince
プリンス、2曲目のランクインは自身が主演した同名映画の表題曲。ここで音楽のみならずビジュアル・アーティストとしても絶頂期に入った彼はこの曲を含むアルバムでグラミー賞とアカデミー賞の両方を獲得した。
時代性の強いサウンドのバラードで、8分41秒とただでさえ長いのに曲自体同じフレーズを繰り返す類のメロディで、ようやく歌い終わったと思ったらクソ長いアウトロが待っているので数字で表されている以上に今作は長い。歌が終わってギターソロに入ったところで完全に締めの気分になる(というかその時点で4分くらいなので普通はそこで終わって良い)がまだ半分にも到達していない、6分半の時点で演奏が完全に終わる…と見せかけてまだ2分ほど残ってる、そっからは流麗なストリングスの演奏がしばらく続き、そこまでたどり着いてようやく終了となる。映画の主題歌だから映像ありきみたいな所はあるだろうし、実際「この世で最もいい曲」として10人もの人が今作の名前を挙げているわけであんまり悪く言うのも良くないとは思うんだけど、ちょっと自分は良さよりも長さしか感じられなかった。この項も長い
Losing My Religion / R.E.M.
オルタナティブ・ロックというジャンルを牽引したロックバンド、R.E.M.の出世作にして代表曲。メインの楽器としてマンドリンを導入したラブソングであり、続いて出たアルバム「Out Of Time」は今作のヒットを起爆剤として全米全英1位というとんでもない記録を打ち立てることとなった。
オルタナロックを代表するバンドということでニルヴァーナみたいな曲調を予想して聴いたら何かえらいアコースティックな曲が流れてきた。オルタナロックとは主流から外れたロックを指すので、これもオルタナで間違いないのはそうなんだけど、これがニルヴァーナと並んで今一番熱い音楽とされていたというその場面はちょっと想像し難い。何かこの曲の前にもこういう曲は既にあった気がする。スティーリー・ダンにこういう曲なかった?
Dreams Burn Down / Ride
初期のスピッツが影響を受けていたというシューゲイザーバンド、ライドのデビューアルバムの収録曲。後になぜかオアシスのメンバーとして活動することになるフロントマンのアンディ・ベルによるノイジーなギターと美しいメロディが特徴的な傑作であるという。
初期スピッツへの影響というのは正直分かりかねるが、ノイジーなギターと美しいメロディという看板に偽りはない。同じシューゲイザーであるマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン等と比べてもメロディの比重が明確に大きい。それを支える裏でやたらドッシンドッシン鳴り響くドラムも魅力的だ。
Alison / Slowdive
イギリスのシューゲイザー・バンド、スロウダイヴの2ndアルバム収録曲。アルバムの冒頭に配置されたスローテンポで儚い雰囲気の一曲とのことで、Google検索で得られた希少な情報によれば彼らの代表曲の中でもエース級の立ち位置にいる楽曲らしい。
シューゲイザーにしてはメロディアスだと思っていた一個上の「Dreams Burn Down」だが、今作のメロディアスさはそれ以上。しかも今作はギターが遠くにいてノイジーさもない。なので最早シューゲイザーっぽくもない。結局そんな今作の方がとっつきやすくて好きだったりするんだけど…
Heartbeat / Tahiti 80
フランスのポップバンド、タヒチ80のデビューシングル。何とCorneliusがこの曲に一枚かんでいるようで、デビュー前の彼らがCorneliusに製作途中のこの曲のデモを渡したことでコンピ盤に参加が決まったり、デビュー直後のリミックスアルバムにCorneliusが参加してこの曲をリミックスしたりなどの御縁をこの曲を通して結んでいる。
ちょっとファンキーさが入った普遍的なポップス。1999年発売の曲ながら、かつての渋谷系のような気取らないお洒落さがあると感じた。この後に出るカーディガンズの「Carnival」に近いというか、根底に同じ物を持っているというか。とにかくこのお洒落なポップさが気に入った。
This Must Be the Place (Naive Melody) / Talking Heads
ブライアン・イーノを離れ、セルフプロデュースでアルバムの制作を始めたトーキング・ヘッズの一発目のアルバムからこの曲がランクイン。バンドにとって初のラブソングで、2011年には今作と同じタイトルのコメディ映画が製作されている。
バンド初のラブソングということで、ピュアで拙い感じを出すためにわざとメンバー間でパートチェンジを行ったという逸話もあるこの曲は、そういう試行錯誤の賜物なのかどこかぎこちないけど純真な一曲に仕上がっている。好みで言えば「Once In A Lifetime」の方が好きだけどこの曲も別に聴いてて悪い気はしない。特にイントロから最後までずっと繰り返されるキーボードのリフは曲を聴き終わったらしばらく頭から離れない。
The Weight / The Band
ボブ・ディランのバックバンドだったことでも知られるロックバンド、ザ・バンドの代表曲。元々はデビューアルバムの収録曲の一つだったのが、映画「イージー・ライダー」に起用されて認知度が急激に高まり、そのまま彼らを代表する楽曲の一つに位置付けられた。
コーラスの掛け合いが耳を引く、昔ながらののどかなロック。こんな感じの曲をBGMにかけまくっていた「カウボーイ家族」というレストランを直感的に連想した。近所にあった店舗が閉店してしまってから一回も行ってないなと思って調べてみたら随分前に全店閉店してたようで諸行無常を感じる。
You Are The Universe / The Brand New Heavies
渋谷系との緩い繋がりを持ち、アシッド・ジャズというジャンルを代表するバンド、ブラン・ニュー・ヘヴィーズのヒット曲。クインシー・ジョーンズの秘蔵っ子でマイケル・ジャクソンとの共演歴もあるサイーダ・ギャレットをボーカルに迎えたファンキーなナンバーで、有識者の記事によると当時はハウス系のクラブで一世を風靡したという。
アシッド・ジャズという名称ではあるが所謂ジャズっぽいスウィングなノリとは対照的な踊れるリズムの一曲。渋谷系で例えるなら初期のORIGINAL LOVEが一番近いか(コラボした事もあるし)。「この世で最もいい曲」という御題目だとやっぱりじっくり聴かせるバラードやミディアムナンバーに票が集中しがちなので、こういうノリが良い曲は一際輝いて聴こえる。
Carnival / The Cardigans
スウェーデン出身の5人組バンド、カーディガンズの代表曲。少し渋谷系に通ずるものがある爽やかなポップスで発売の2年後に映画「オースティン・パワーズ」の挿入歌になり、10年後に日本で車のCMソングに起用される等曲としての耐久性は抜群である。
渋谷系に通ずるものがあるというかそのまんま渋谷系としか言いようがないサウンドだが、当時は各地でそういうサウンドが流行っていたのだろうか。それはともかく今作は曲としても充分良い。タイトルに反して派手さはなく地に足のついた穏やかなメロディだが地味ではなく不思議と中毒性がある。
Mr. Brightside / The Killers
21世紀のラスベガスからやってきたロックバンド、ザ・キラーズのヒット曲の一つ。デビューアルバムの収録曲として発表され、イギリスを中心としていきなりの大ヒットを記録。世界的な知名度を獲得するきっかけとなった。
どこか邦ロックっぽさも感じられる爽やかなロックナンバー。邦ロック界にこのバンドが影響を与えたという話は聞いたことがないが、自分が知らないだけでバンドマンの間では知れ渡っていたりするのだろうか。初めて聴いた時からずっと邦ロック、特にストレイテナーの「Melodic Storm」っぽいなという感想が浮かんで全然消えない。
Funny Bunny / the pillows
邦ロックの発展に少なからぬ貢献をしてきたベテランロックバンド・the pillowsの代表曲。元々はアルバムの中の曲の一つでシングル等になったことは一度もないが、複数のアニメに起用され、様々な人物にカバーされるなどして発売から長い年月をかけてバンドを代表する一曲へと成長したようだ。
ピロウズは何かマニアックでとっつきにくいイメージが勝手にあって、長年敬遠してたんだけどこの曲はパッと聴いてパッと良い!ポジティブな歌詞に軽快なロックサウンドが映える一般受けしやすそうな楽曲で、自分も聴いて一発で「良いな」と思った。今後も聴き続けるお気に入りの曲になりそう。
Elephant Stone / The Stone Roses
マッドチェスターという音楽ジャンルを牽引し、オアシスらブリットポップ陣に多大なる影響を与えたロックバンド、ザ・ストーン・ローゼズによって発表されたシングル曲。元々はアルバム未収録曲だったのだがファンの間で人気を博したのか米国盤やサブスクの1stでは追加で収録されている。
妙に機械的なドラムに時代を感じるロックナンバー。マッドチェスターなる音楽ジャンルは初耳だが、この曲がその典型という認識で合ってるのかな。この曲のどこら辺がブリットポップに影響を与えたのかは数回聴くだけではよく分からなかった(その前にブリットポップもオアシスしかまともに聴いたことないし…)けど、当時の時代に寄り添ったポップな一曲だと思う。
My Ever Changing Moods / The Style Council
1980年代にかけて活躍したポップ・ロックバンド、スタイル・カウンシルのデビューアルバム収録曲。Twitterでの結果発表の際にあった反応によると、シングル版とアルバム版で曲調が大きく違うとのことだが、バージョン毎の区別はつけずに集計されている模様(Spotifyのプレイリストではアルバム版が採用されている)。
せっかくなので自分は両方とも聴いてみた。アルバム版はボーカルとピアノだけのシンプルな編成で、シングル版はブラスを入れたバンドポップ。元々メロディが強力なのでボーカル+ピアノのみなんて攻めたアレンジをしても全くパワーダウンした感じはしないんだけど、個人的な好みとしては単純に装飾が多くて聴きどころがいっぱいあるシングル版の方がより良く感じる。
Pale Blue Eyes / The Velvet Underground
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、2曲目はあのバナナの奴の次くらいに評価されているセルフタイトル作からランクイン。アルバムの白眉として長らく支持され続けているほか、今作はやけにカバーが多いようで英語版Wikipediaに載っているものだけでも8バージョン存在する。
先の「Sunday Morning」に続いてまたも大人しい系の曲。語り掛けるようなボーカルは「Sunday Morning」の時に気付けなかった新しい魅力の一つだと思うけど、大人しすぎてイマイチピンと来ないのは相変わらず。
ダニー・ゴー / Thee Michelle Gun Elephant
ミッシェル、2曲目のランクインはライブでの定番であり、ファンの人気も高かったといわれるこの曲。元々はアルバムのトリを飾る一曲で、全体的に重々しかったその作品の空気を一気に打ち壊し、明るく爽やかに締める役割を担っていたらしい。
自分の感想も概ねそんな感じ。ライブで盛り上がりそうな疾走感あるロックで、現在の邦ロックの直系の先輩というか、今の邦ロックで生まれたアップテンポな名曲達のインスピレーションとなったんだろうなと思うくらいには通ずる物がある、そんな曲だった。(全然詳しくないので的外れな可能性大)
Africa / TOTO
産業ロックの名手、Toto(トト)の代表曲。アフリカを舞台にした(多分)雄大なイメージが独特でグルーヴィーな一曲で、当時特大ヒットを飛ばしただけでなく現在でもなおYouTubeでPVが10億回再生を突破するなど人気は衰えていない。
Totoというともう一つの代表曲「Georgy Porgy」のイメージが個人的に強くこっちはそんなに聴いては来なかったんだけど、いざこうして聴いてみると当たり前だがこっちも順当に名曲。日常的に聴き倒せるくらい好きな曲かと言われたらそうでもないけど、突然ふと思い立って聴いてみた時にバチっとハマるような、そんなタイプの名曲っぽさはある。
Animal Spirits / Vulfpeck
アメリカのユーモラスなミニマルファンクバンド、ヴォルフペックの楽曲。今回ランクインしたミュージシャンの中でも数少ないインディーズのままで人気を博しているバンドの一つで、この曲もハッピーな曲調は勿論のこと、インディーズならではの個性全開でレトロなMVも評価されている。
というわけで非常に多幸感溢れる跳ねたリズムの明るい一曲。自分が個人的に大好きなミュージシャンのジンジャー・ルートはこのバンドに強い影響を受けているそうだが、少し篭り気味の音色や手作り感&ネタ感満載のMVの作風は確かに一目でこのバンドが影響元だと分かる。
PERSPECTIVE / YELLOW MAGIC ORCHESTRA
YMO、3曲目のランクインはキーボード担当の故・坂本龍一氏による流麗なバラード。散開(解散)前のラストアルバム「SERVICE」のラストに収録された正真正銘最後の一曲であり、その何とも言えない寂寥感が今でもファンの間で高い人気を誇っている。
散開(解散)前最後の一曲になるのを意識していたのか、今となってはもはや聞く術もないが、とにかくこの曲はなにか大きな物事が終わっていくような切なさが全体に漂っている。初めてこの曲を聴いた中学生の頃からそんな事を思っていたが、作者でありこの曲ではボーカルでもある坂本氏がこの世を去った今もう一度聴くとその時より物悲しく聴こえてくる。
じゃっ夏なんで / かせきさいだぁ
日本におけるヒップホップの黎明期を支えたラッパー、かせきさいだぁ≡の代表曲。タイトル通り夏の情景を描いたレトロでノスタルジックな楽曲で、初期のヒップホップ界に燦然と輝く一曲として脈々と語り継がれている。
「サマージャム'95」に続いてこちらも夏の曲。そういう郷愁を感じる夏唄が好まれているのか、昔のラッパーがめっちゃ夏好きだったのか知らんけど、こちらは夏の恋愛模様が描かれた甘酸っぱい詞が特徴で「サマージャム'95」とは若干毛色が違う。そういう経験がないので共感できないのが残念だが、ラップのノリとバックトラックはこっちの方が好み。
二人のアカボシ / キンモクセイ
歌謡曲やニューミュージックを思わせる懐かしいポップスを作る事に定評のあるバンド、キンモクセイの代表曲。「時代を後取り」とのキャッチコピーが示すとおり、R&Bやヒップホップがチャートを席巻していた2002年の曲にしては異例の哀愁漂う歌謡ポップス。結果的に彼らにとって唯一のヒット作となり、この曲で紅白歌合戦にまで出場してしまった。
自分がこの曲を知ったのは発売から随分後になってからだが、その時聴いた感想が「今年の曲って言われても違和感ないな」というものだった。むしろ尖った曲が多かった2002年当時のヒット曲に紛れてこの曲がいる状況の方が異様で、歌謡曲が再評価されはじめた現代にこの曲が出てくる世界線の方がやっぱり自然に思える。そう考えると「時代を後取り」するのは十数年ほど早すぎたのではないか。
東京 / くるり
くるり、最後のランクインは記念すべきデビュー曲。地元に恋人を残し上京した人物を主人公にした繊細な描写の歌詞と(当時の)メンバー3人が織りなすケミストリーが絶妙なロックバラードである。BOØWYやGLAYなど、数々の大物を手掛けてきたプロデューサー・佐久間正英をして今作は「自分がプロデュースしてきた曲の中で群を抜いている」と言わしめており、業界内外を問わず評判は高いようだ。
そう思っていざ曲を聴いてみるといつもより風格があるように思えてくる。後年出てきた制作の裏話とか見た感じだと、そんなに肩の力を入れて作った感じでもない様子でこっからデビューしたるぞ‼みたいな気概があったわけではなかったらしいけどデビュー曲にしてこの完成度はなかなか凄まじい。
真夏の果実 / サザンオールスターズ
J-POP界のレジェンド、サザンオールスターズからはこの曲がランクイン。桑田佳祐自身が監督を務めた映画「稲村ジェーン」の主題歌にしてJ-POPのド王道を貫くスローバラードで、90年代サザンにおける代表曲でもある。
個人的には同時期に出た「希望の轍」と同じく「J-POP」というジャンルのお手本のような楽曲といった印象。でも今思うとこの曲が出た時は1990年で平成もまだ2年目だったんだよな…昭和時代の古いサウンドを未だ引きずっていても全然おかしくない時期だし、実際この頃はそんな曲もチラホラあったけど、この曲は平成2年にして平成のサウンドをすでに確立している。そう考えると当時の人からしたらめっちゃ新しい感じの曲だったのかも?
チェリー / スピッツ
スピッツ、3曲目のランクインはこれまた外せない超代表曲。カノンコードという昔からあちこちで使い古されてきたコード進行を用いておきながら、他では絶対に見ない爽やかでキャッチーなメロディーが印象に残るポップな一曲で、「ロビンソン」と並ぶスピッツの名刺代わりの楽曲と化している。
個人的な好みで言えば「ロビンソン」に軍配が上がるけど、なんだかんだでこの曲も良い。キャリア全般を通してどこか影がある、一筋縄ではいかない種類の曲が多い彼らにしては実は珍しい明るくポップに開いた曲で、しかも前述したように、曲の構造は結構な定番どころを使っているのにそれに乗るメロディが独特、つまりキャッチーさとオリジナリティを両立させるというなかなか高度なことをやっているのである。これはすごい。
楓 / スピッツ
続けてスピッツ。こちらはよりエモーショナルなバラード。元々はアルバムの中の一曲に過ぎなかったのが、新曲「スピカ」との両A面としてシングルカットされ、ファンのみならず一般的にも潜在的な人気を集め続けた末に、YouTubeではミリオンセラー3曲に続く再生回数を誇るまでになっている。
この曲は中学生の頃に同じ部活だった子がよくピアノでこの曲を弾いていてそれで初めて存在を知った。その時の印象が「メロディラインが美しい曲」である。それまで曲を聴いてて「美しい」という感想が出てきたことなんてなかったのでそれはよく覚えている。
雨 / ペトロールズ
東京事変では浮雲の名で活動し、星野源の横でサポートとして度々ギターを弾いている長岡亮介が率いる3人組バンド、ペトロールズの最大の代表曲。その名曲っぷりはあの藤井風やSuchmosがカバーする程のものである。
編成は完全にバンドなんだけど自然に体が縦に揺れるリズムとかボーカルの声質もあってR&Bっぽさも感じるゆったりした大人なムードの曲。具体的にどこがそう思えるかと言われたら困るけど、なんかブラックミュージックの匂いがして普段一緒に仕事をしてる星野源の曲にちょっと近いタイプの魅力を感じた。確かにこれは藤井風もSuchmosもカバーしたら似合いそう。
BADモード / 宇多田ヒカル
宇多田ヒカル、最新作から表題曲がランクイン。イギリスのミュージシャンFloating Pointsと共同で制作されたハイセンスな一曲で、過去の大ヒット曲2曲に票数で並ぶ快挙を成し遂げた。
今まで打ち込みで曲を作っていた印象の彼女にしては珍しく生演奏を主体とした落ち着いたポップス。そんな曲調とか随所で急に割り込んでくるブラスからは本人も意識したというシティ・ポップっぽさがちょっと感じられる。あの頃のヒット曲群のようなインパクトはもうないけど、何回も繰り返して聴くごとに良さが感じられてくる確かな良い曲だと思う。
Beautiful World / 宇多田ヒカル
そしてもう一曲宇多田ヒカル。のちに最終作までズブズブの関係を築くことになる「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版」シリーズ第1作目の主題歌。エヴァの世界観に合わせたシリアスでスタイリッシュな曲調が受け、「Flavor Of Life」などと並ぶ中期宇多田ヒカルの代表曲となっている。
この曲は確かリアルタイムで遭遇したことがある。当時4歳とかそのぐらいでだいぶ記憶も曖昧だけど、なんかえげつない映像と一緒に裏声が冴え渡るこの曲のサビが流れるのをテレビかパソコンで見たことがあるような…そのときからうっすら好印象で、数年後成長し学生になった身で改めてこの曲を聴いて正式にハマった。こういうスタイリッシュな曲には昔から弱い。
traveling / 宇多田ヒカル
もういっちょ宇多田ヒカル。デビュー以降の大旋風が続くなかで発売されたアップテンポなナンバーであり、カラフルなPVが強烈なインパクトと話題を呼んだことで盤石の大ヒットを記録した。
宇多田ヒカルというと初期は本格派寄りのR&B、最近はなんかよく分からんけど凄そうな曲をやってるという印象で、あまり大衆に合わせないというか歩み寄らないイメージがあるが、この楽曲はそんな彼女にしては珍しく一般受けを狙ったように思える明るいポップス。個人的には可もなく不可もなく的な感じで特に思い入れもないけど、発売から数年後にこの曲を槇原敬之がカバーしていて、そのバージョンは曲の良さを殺さず槇原流にアレンジした絶妙な塩梅のカバーになっていて今でも時々聴き返すくらいには好き。
カルアミルク / 岡村靖幸
名盤と名高い「家庭教師」より2曲目のランクイン。時代を感じさせる歌詞が特徴的な落ち着いたバラードであり、桜井和寿率いるBank Bandにカバーされたり映画「モテキ」の挿入歌に起用されたりと後の世代に与えた影響も大きい。
この曲はアルバムを代表するバラードとしてラストの「ペンション」と一緒に絶賛されているのを本当によく見かける。勿論良い曲だとは思うんだけど彼の曲に関しては「どぉなっちゃってんだよ」みたいなぶっ飛んだところが好きで聴いてる節があるので、こういうバラード系はそれらに比べると妙にフツーに思えてしまってそこまで良さに浸れたことがない。
駆け抜けて性春 / 銀杏BOYZ
色んな意味でエネルギッシュなロックバンド、銀杏BOYZによる代表曲。前身バンド・GOING STEADY時代の楽曲のリメイクであり、この音源ではゲストボーカルにあのYUKIを起用している。
うるせぇ。最初だいぶ音が小さかったので音量を上げたら、急に爆音で曲が始まったので鼓膜が大変なことになった。新手のトラップである。その後も基本的にパンクな曲に乗せてひたすら叫び倒しててうるせぇ。後半のYUKI氏によるソロボーカルパート辺りから徐々にトーンダウンして大人しくなっていくけど、自分の尺度では最初から最後まで一貫してうるせぇ曲だった。
riot in Lagos / 坂本龍一
世界のサカモトがYMO在籍中にソロで発売したラディカルなテクノポップ。当時のYMOが辿っていた攻撃的な作風に沿った一曲で、ソロ作でありながらYMOのライブでもしばしば披露された。またWikipediaによるとアメリカの有名なDJがこの曲をよくプレイしており、あちら側のヒップホップ界隈でもそれなりに名の知れた曲であるそうな。
尖りに尖ったテクノポップ。すごく実験的な一曲だが不思議と引き込まれる何かがあって昔はよく聴いていた。欲を言えばこの頃は坂本氏だけでなく、YMO自体がそういう尖った方向性に突き進んでいたので、ソロではなくYMOとしてこの曲を発表してほしかった。細野氏と高橋氏の意見も入れたらこの曲はどうなっていたのか、それがとても気になる。
One more time, One more chance / 山崎まさよし
孤高のシンガーソングライター、山崎まさよしによるバラード。主演として山崎本人が出演した映画「月とキャベツ」の主題歌に起用されロングヒットを記録、前作「セロリ」に並ぶ初期の代表曲として名を馳せている。その後アニメ映画「秒速5センチメートル」主題歌にも抜擢されたことで10年もの時を経て再ヒットもしている。
aikoの「カブトムシ」と同じく、この曲も曲調だけなら苦手なんだけど曲のメロディーだけで全部吹っ飛ばして好きになってしまうパターン。とはいえそんな頻繁に聴くほどハマってはいない。
今夜はブギー・バック - nice vocal / 小沢健二
小沢健二、2曲目は同じく名盤「LIFE」よりランクイン。ヒップホップ界隈の大物・スチャダラパーをフィーチャリングしたヒット曲で、黎明期であった当時の日本のヒップホップを代表する一曲であるといえるだろう。
当時のヒップホップは生まれてまだ20年も経ってなかった時期だし、日本でそれをやる人も少数派だったからきっと斬新だったんだろうとは思うけど、ヒップホップが日本に浸透してラップとJ-POPの共存が進んできた今聴くとこれもJ-POPの一種としてとらえられる。時代は変わるものだ…
やさしさに包まれたなら / 松任谷由実
ユーミン、2曲目のランクインはその長いキャリアを通してもトップクラスの代表曲。元々は不二家ソフトエクレアのCMソングとして書き下ろされたゆったりした曲だったのがアルバム収録に際してアップテンポなカントリー調に変更、これがその15年後にジブリ映画「魔女の宅急便」の主題歌として起用され、一躍有名になった。
時代を超えた名曲。ユーミンの曲は特にセールス面で全盛期を迎えた80年代90年代の曲が当時最先端の機材をふんだんに使ったアレンジで今聴き返すとちょっと時代感が…的な例がちょこちょこあるのだが、この曲は100%プロの手による生演奏で構成されており50年前の曲だがそんなに古びていない。
あと、元々のゆったりしたバージョンも味変みたいな気分で聴いてみたけどなかなかに味わい深い。あくまであの有名なバージョンがあってこその良さだとは思うけどこれはこれでアリ。
サマーヌード / 真心ブラザーズ
真心ブラザーズ、有数の代表曲。カップヌードルの夏季限定フレーバーのCM用に書き下ろされた、夏をそのまんまストレートに楽曲に落とし込んでいるかのような煌びやかな一曲である。2年後の夏にはCHOKKAKU氏による編曲でよりヒット性が強められたリメイク作「ENDLESS SUMMER NUDE」が発表され、原曲以上のヒットを飛ばしている。
というわけで彼らの中でも屈指の人気曲なわけだけど、自分はリメイク版の「ENDLESS SUMMER NUDE」を先に聴いてしまっているので、そっち側のイメージが強く焼き付いている。純粋な完成度もそっちの方が高いし…まず始めにこの曲を知って、その後パワーアップしたリメイク版を聴いて衝撃を受ける、という体験はしてみたかったかも。
SUN / 星野源
星野源、2曲目のランクインは10年前の出世作。自身初のドラマ主題歌で、それまでの内省的な作風から一転した明るくダンサブルな曲調が大ウケし、その後の大躍進につながるブレイク作となった。
あれから色々発表されたけど、なんだかんだで星野源の曲はこの時期の奴が一番好き。この路線でブレイクしたことで一気に注目が集まり、その影響で色々ストレスになる事もあったっぽいのでもうこの路線に戻ってくることはなさそうなのが残念だが、10年経っても聴き続けられるこんな名曲を作ってもらえただけありがたいと思うことにするか。
くだらないの中に / 星野源
そんな星野源の初のシングルもここで登場。Wikipediaによるとこの曲は彼が「初めて正面から書いたラブソング」で「不思議」発売時の「初めて書いたラブソング」発言とは何だったのか、ずいぶん遠くまでやってきた現在でも未だに名曲として評価され続けている。
アコギ主体のスローナンバー。この路線の星野源で好きな楽曲はもっと他にいっぱいあるので、これがそんな人気なのかみたいな意外性はあったけど、この曲もまた素朴でこじんまりとした素敵な曲であることには間違いなく、現在のスケールが大きい彼の曲とはまた別のベクトルの良さがあると思う。
歌うたいのバラッド / 斉藤和義
自由気ままなイメージのシンガーソングライター、斉藤和義の代表曲。発売当初の反響はそんなに大きくなかったそうだが、発売から10年後に桜井和寿率いるBank Bandがカバーした辺りから風向きが変わり、Mステという音楽番組を持ちながら楽曲に対してコメントをほぼしないタモリが今作の歌詞を褒めるというレベルにまで来てしまった、それほどの楽曲である。
個人的にこの曲はちょっと王道のバラードすぎると思っている節があって、長らく好んでは聴いてこなかったんだけど今回これを書くにあたって久々に最初から最後まで通して聴いてみたところ「こんなに良い曲だったっけ?」と思った。何事もトライしてみるものである。
都会 / 大貫妙子
大貫妙子、近年シティポップというジャンル名で海外を中心に再評価が進む名盤「SUNSHOWER」よりこの曲がランクイン。坂本龍一がアレンジを担当したタイトルの通りアーバンなサウンドの一曲で、再評価が始まった2015年には38年越しにシングルカットがなされた。
なんかやけに音が外れたシンセが気になる、シティポップというよりはAORといった感触の曲。歌詞の世界観に合わせて一定のテンションを保ち続けるクールなアレンジで、サックスまで入れた上質な味わいの音楽として完璧に仕立て上げられているのに何でシンセだけこんな変な音なのか。当時はYMO結成前だったし坂本龍一もシンセの勝手が分かっていなかったのだろうか。
恋するカレン / 大滝詠一
大瀧詠一(アーティスト名をよく見ると大滝詠一)、2曲目のランクインは名盤「A LONG VACATION」収録のこれまたナイアガラなポップス。後ろのオケは本人も自画自賛するほどの出来で、アルバム発売後に先の「君は天然色」に続くシングルとして発表された。
大瀧詠一ともあろう御方が自画自賛するだけあって、後ろの伴奏は細部まで緻密に作り込まれていて広がりがあり、ひたすら圧倒されるばかり。Wikiによるとそんなオケに乗せるボーカルの録音ではオケに負けないクオリティのテイクを録るのに苦労したとのことだが、最終的に世に出たこのボーカルはそんなオケが醸し出す世界観に上手く溶け込んでいると思う。
そのいのち / 中村佳穂
京都出身の女性シンガーソングライター、中村佳穂の代表曲(たぶん)。元は2018年発売のアルバムに入っていた楽曲で、ライブにおけるファンの人気も高く、今年に入ってからはこの曲を元にした戯曲が宮沢りえ主演、佐藤二朗脚本で上映されている。
集計を担当したPeter氏によるランクインした曲をすべてまとめたSpotifyのプレイリストで最後に配置されているこの曲。偶然だったのか意図的な采配だったのかは不明ながら、283曲もの「この世で最もいい曲」を巡る体験を締めくくるのに相応しい生命力あるゴスペル調の曲に仕上がっている。感想を書いていない曲がまだ沢山あるので執筆はここでは終わらないんだけど、この曲を聴いてると完全にゴールしたような気分になってくる。
ありあまる富 / 椎名林檎
東京事変とソロ活動とを並行して行うドタバタした時期に放たれたシングル曲の一つ。当時ソロでは誰かしらとコラボしての企画作が続いていたなかでドラマの主題歌として書き下ろされ、完全なソロ名義で発表した5年半ぶりの新曲となった。
アコギのストロークを基調として粛々と進行するジャンルの形容が難しい系の曲。所謂J-POPとは絶対違う曲調で、ゆったりしたテンポだけどバラードではないし、後ろのコーラスと力強い感じがゴスペルっぽいけど、この曲はゴスペルだ!と言い切ってしまうのもなんか違う。あとそれとは関係なしに何があろうと一定の周期で絶対に鳴るトライアングルがめっちゃ邪魔。何か意図があって入れたのかもしれないけど普通に要らないと思う。
My Revolution / 渡辺美里
日本の音楽業界が冷え込んでいた1986年に特大ヒットを記録したシンガー・渡辺美里の代表曲。のちに一時代を築くことになる作曲家・小室哲哉によるほとんど最初期のヒット曲であり、まだ権威を失墜させる前のレコード大賞にもノミネートを果たした。
発売から40年近く経った今でも通用するポップオブポップ。まだ個性を模索している段階だったのか、後の小室哲哉らしさはこの曲からは感じられない(この時「Get Wild」ですら未発表)が、ヒットメーカーとしての素質はもうこれ一曲だけで充分すぎるほどに感じられる。
また逢う日まで / 尾崎紀世彦
ここに来て本記事では貴重な歌謡曲枠からのランクイン。阿久悠と筒美京平という黄金コンビによる別れをテーマにしたフリーソウル的な一曲であり、当時珍しかったミリオンセラーに迫る売上を記録したといわれている。
別れを歌ってはいるが曲調は明るく、曲だけさらっと聴いた感じはあくまで前向きな別れをテーマにしているように聞こえる。ちなみに実はこの曲、「ひとりの悲しみ」という全く違う歌手・歌詞で出来ている別バージョンが存在する。元々こっちが本家だったのを阿久悠氏が尾崎氏にカバーさせるにあたって歌詞を書き換えたのがこの「また逢う日まで」らしいが個人的には声も歌詞もこの「ひとりの悲しみ」の方がより身近に思えて好きだ。
浪漫飛行 / 米米CLUB
昭和平成の百鬼夜行、米米CLUBの代表曲。当時の彼らに漂っていた(らしい)コミカルなノリは鳴りを潜め、「航空会社のCMオファーを狙って作った」というポップさを極めたような非常に分かりやすい曲調がまず当時大ヒットを呼び込み、現在でももちろん大人気。昨年には収録曲全部が「浪漫飛行」という珍作トリビュートアルバムまで作られている。
自分にとっての王道J-POPの典型の一つがこの曲である。お手本と呼んでもいいぐらいにこの曲はJ-POPの王道を爆走していると思う。ありとあらゆるヒット曲で使われてきたコード進行に英語交じりのポジティブな歌詞、CMタイアップ起用でのブレイク、からの代表曲化…という経緯、とどの要素をとってもこの曲はJ-POPすぎる。曲自体のスタイルもヒットした時期も平成なのでそのまま平成の曲だと長年思い込んでいたが、昭和には既に存在していた曲だった(1987年発売)というのが今回調べてみて一番の驚き。
1999 / 羊文学
羊文学、滑り込みでランクインした2曲目はバンドの知名度を大幅に上げるきっかけとなったクリスマスソング。タイトル通り1999年の世紀末を舞台にした一曲で、イントロの象徴的なコーラスワークや、意味深長で様々な考察を呼んだ歌詞が高く評価されている模様。
クリスマスソングというテーマと元々の作風も相まってやや神聖な雰囲気が漂う穏やかなロックナンバー。作者の塩塚モエカ氏は1996年生まれで1999年当時はまだ3歳。世紀末の空気をそこまで実感していないはずの人が世紀末のクリスマスを歌うという構図はちょっと面白い。羊文学は「ロマンス」と「more than words」くらいしか知らなかったんだけどこの機会に他の曲も聴いてみようかな。
Boy / 踊ってばかりの国
最後のランクインとなったこの曲は、邦ロック界を飄々と生きている5人組ロックバンド、踊ってばかりの国の人気曲。当初Twitterでの結果発表にもSpotifyのまとめプレイリストにも名前はなかったが、集計を担当したPeter氏のサイトで改めて結果が発表された際に突如としてこの曲が追加された。
8分近い大作となっているサブカルなギターロック。ただしそのなかで歌が入っているのは最初の4分だけで、残りの4分は全部アウトロ。長きにわたるセッションが繰り広げられるのだが、ギタリストが3人もいるバンドなのでそのぶん熱量が物凄くて不思議と聴いていられる。この記事のために最後の最後に聴く一曲としても気分良く執筆を終えることができて素晴らしい。
というわけで、総文字数89,092文字に渡ってお届けしたこのマラソン企画もこれにて終了である。この記事で取り上げた曲達は「ラビリンス」と「Boy」を除いて全て下のSpotifyのプレイリストに収められているので気になる人達は是非チェックしてみてほしい。
👆3票以上を獲得した2864曲をまとめた拡大版。こっちには「ラビリンス」も「Boy」もちゃんとある
👆拡大版からも漏れた自分の好きな曲を集めたプレイリスト
一番好きな曲 (総合):ばらの花
一番好きな曲 (初聴):空洞です