Z世代が聴く名盤 #29 サカナクション「sakanaction」
ここ数年で「Z世代」という単語をよく聞くようになった。「団塊世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」等に続く新たな世代の区分である。
なんでも世間様はこの世代を「自分達とは全く違う感性を持った若者」と見ているようで、そんな歳の若者が起こした迷惑行為やトラブルを見つけては叩く報道や、そんな歳の若者を集めては「昔はこうだった」と昭和や平成の映像やらを持ち出して色々説明して反応を見てみる企画が最近増えてきており、「最近の若いのは何を考えているのやら」という空気をなんとな~く感じる事が多くなってきた。
そこまで我々の考えていることが気になるなら発信していこうじゃないか、ということでこのシリーズを始めることにした。当記事はZ世代にあたる筆者が世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴いて、感想を書いていくただそれだけの記事である。
筆者は2003年生まれで、ニュースなどで取り沙汰される「Z世代」よりやや年上だが、WikipediaによればZ世代とは概ね1995~2010年生まれの若者を指すとのことなので、そのちょうど真ん中あたりに生まれた自分はバリバリZ世代を名乗れる。
作品情報
サカナクション、6枚目のオリジナル・アルバム。今作で自身初のオリコンチャート1位を獲得した。
前置き
※この記事にはサカナクションのライブツアー「SAKANAQUARIUM 2024 “turn”」の4/20公演@幕張メッセのネタバレが若干含まれます。
今年のはじめ頃、音楽友達が誘ってくれた幕張で開かれるサカナクションの復活ライブのチケットが見事に当選し、二人して初めての生サカナクションをそれはそれは本当に楽しみにしていた。ただ、友達が中高生時代を丸ごとサカナクションに捧げて育ったガチ勢なのに対し、自分はベストアルバムとそれ以降の2枚のアルバム、あとはその友達の影響で何曲か知っている程度の知識しかなくせっかくライブに行くからにはもっと深掘りしておきたい!と友達に聴いておくべきアルバムを聞いてみたところ今作を提示された。
という訳でライブの前日まで何回か繰り返し聴いていた今作。本当は前回の記事を出した翌日(ライブ1日前)に記事を書いて出す予定だったが、そこまで気力が持たずに断念していた。だがライブに行った後にサカナクションへの熱が過去最高にまで高まり、ここ1か月で彼らの曲を聴き返す頻度が急上昇した。今回はその勢いに任せて感想を書いていく。
感想
今作の曲は後に出たベストにはシングル曲を除くと「なんてったって春」「ボイル」の2曲しか収録されていない(限定盤にだけ付いてる裏ベストにはさらに3曲入っているが)。シングル曲含めると14曲中6曲(裏ベストも数えるなら9曲)選ばれているので充分入っているように感じられるが、前作「DocumentaLy」からは12曲中8曲も選ばれた(しかも残り4曲のうち2曲はインストなので残ったのは実質2曲)事を考えると若干少なく感じてしまう。これは今作が当時の最新作だったから売上が落ちないように控えめな選曲にしたのか、いやいや最新作とはいっても当時発売から5年は経っているから関係ないか、ていうかこれを見越して友達は今作を勧めてくれたのか、など色々と思いは尽きない。率直に詰め込みすぎじゃね?こんだけ選んだんならアルバム聴かずベストで済ましても良くね?とも思う
そんな今作だが、バンド名をタイトルに冠しただけあってそれまでのダンスミュージック路線を極めてきたサカナクションの集大成のような仕上がりになっている。特に先行シングルである「ミュージック」はそういった作風を貫いてきた彼らの一種の到達点のような楽曲で、ファンの間でもダントツの人気を誇るのも頷ける傑作。
もちろんそれ以外も安定のハイクオリティダンスナンバー「夜の踊り子」やNHKサッカー応援歌に起用された彼らにしては珍しく熱い「Aoi」、ベストには入らなかったがチルなテンポが心地良い「mellow」など粒揃いである。
個人的には正直次回作「834.194」やライブ後に速攻で借りた「シンシロ」の方が好きではあるし、結局ライブでは今作からは最低限の曲しか演奏されなかったが、サカナクションのダンサブルな一面が好きな人にはうってつけの一作だと思う。今ならサブスクで何でも気軽に聴けるし、ベスト盤だけで良いや、と敬遠している人にも2枚目のコアな部分、所謂「中層」に感じるものがあったなら「M」や「mellow」を聴いてみる価値は充分あるはずだ。
一番好きな曲:mellow
一番「…」な曲:朝の歌