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【遺跡探訪101】 三重壁の 「象のテラス」 の内側を歩く(Terrace of the Elephants, 12世紀後半)

突然ですが、私は遺跡の平面図を見るのが大好きです。平面図を見ていると、遺跡が立ち上がってくるような気がするのです。

私が建築学科の学生だった頃、図面を見るのは義務感のようでした。劣等生でした。子供の頃は不動産の広告や住宅雑誌を見るのが何よりも好きで、自分でも見よう見まねで描いていたのが、本格的に専攻として勉強し始めると、建築とは雲の上の存在を掴むようなもので、あまりに広く深い世界にただ茫然としてしまっていました。

しかしあれから四半世紀が経ってまさか自分がアンコール遺跡の平面図を趣味として延々と見る日々になるとは思いませんでした。
住宅や公共建築とは違う、アンコール遺跡の平面図。どうしてここに壁があるのか、これとこれが対になっている意味は何なのか。全てにストーリーがあり、歴史や神話に繋がっているのです。

「象のテラス」 が面白いことになっていると気づいたのは、その平面図を眺めていた時でした。


本日のマップ

小回りコースを逆向きに

寒い明け方

アンコールワット

突然気温が下がりました。家を出た時は19度。シェムリアップは標高は低いものの、カンボジアの中でも北部で内陸に位置し、12月の最低気温は結構低くなります。

唯一持っている冬服、ポケッタブルダウンとキルティングスカートを巻いて、アンコール遺跡方面へ向かいました。

アンコールワット環濠南面

プラサット・クラヴァン

久々にプラサット・クラヴァンにも立ち寄りました。暗すぎて写真は上手く撮れていませんが、ほのかに背後から日がさしてとても美しかったです。ここはヴィシュヌ神のレリーフが素晴らしいところです。この時間ではレリーフはまだ見えないので、またにします。

カンボジア基準では寒い!

スラ・スラン

良い時間帯に来ました。こんなに美しい朝日なのに誰もいませんでした。12月半ばだと早朝のスラ・スランに観光客はいないのですかね。8月だと、テラスに人がいっぱいです。
12月をおすすめします!

南側を眺めます
スラ・スランのカフェにて予習をしました。この平面図を読むと、壁が三重になっていることがわかります。

象のテラスへ

さて、勝利の門からアンコールトムへ入りました。
旧王宮前の広場では、前日の夜に世界遺産登録の記念日のイベントが行われていたようです。

象のテラスは非常に広いので、広場前に石碑が建っています

象のテラス北部の、このゴツい部分が、三重になっています。

まずは階段を登ってテラスの上へ。

側溝のような感じで、壁の内側にもレリーフがあります。ここ、かなりの高さがありますが手すりなど何もないので気をつけてください!実際近づくと怖いです。

テラス上部から広場を。王様の気持ちです。

一般的なツアーではこの象だけ

象のテラスって、ツアーで行くと大抵キツイ時間帯の見学です。
アンコールワットの朝日を見て、巨大なアンコールワットを鑑賞して遅い朝ごはん、その後階段だらけのバイヨンを見てからの、象のテラスです。

カンボジア2大遺跡を見た後の、日陰のない炎天下の象のテラス、疲れも暑さもピーク。

だから、この象↑ もみなさんあまり記憶にないかもしれませんね。私もツアーで来た時はそうでした。
「もういいよ、彫刻は。お腹いっぱい。暑いし、休みたい…」 の時間帯です。

面白いのはここから!壁の内側に入ります

実はここから下に降りる階段があります。そして内部がさらに二重になっているのです。

まず、このテラスを取り囲む最初のレイヤーに入ります。

外側からは見えない象がいました。

あまりに通路が狭すぎて、全体像が入りません。
この象も、蓮の花を持っていました
すっごく狭い。80cmくらいしかない壁と壁の間
角にも象がいて、象の鼻で逆さ吊りになった人がいます。なぜこんな描写なのかは不明…
底から見えるナーガの欄干

二枚目の壁のレリーフがすごい!

階段を降りて、さらに壁の外側に行くと、非常に状態の良いレリーフがあります。

写真では右側の空間から、中央の壁を眺める感じです
素晴らしい!!ジャヤヴァルマン7世時代のレリーフは彫りが深く、装飾が丁寧です。一つ一つが美術品のよう
生きているかのよう
こっち向いていいね!っぽい
対になっている壁面のレリーフ。左側にいる巨大な動物は、5つの顔を持つ馬です
バイヨンの四面仏を思い起こさせる口元…今は修復中でバイヨン第3回廊へ行けないので、この表情は貴重です
象のテラスの上部です。今は中央部分が修復中ですが、全て完成すると長さが300mくらいの超巨大テラスになります
側溝に落ちないように
広場中央の印象的な巨大な木
象のテラス中央から、北部を眺めます
写真右部分がライ王のテラス、中央奥が象のテラス北部

ライ王のテラスも壁が二重になっており、これは内部の壁を一度造った後に何らかの理由で埋めて、さらに外側にもう一回壁を造ったのだそうです。同時代の象のテラスもおそらく理由は同様だと思いますが、詳しいことはわかっていないようです。

西門から出ました

観光で来て、象のテラスだけを訪れることはまずないと思いますが、2回目3回目の訪問でしたらこの内部彫刻にフォーカスするのも良いと思います。長年埋まっていただけあって、状態が非常に良いです!かなり満足でした!

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