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【遺跡探訪48】要塞そのもの、バンテアイサムレ(Banteay Samre, 12世紀)

前回バンテアイプレイに行ったことからバンテアイ繋がりで、ずっと気になっていたバンテアイサムレに行こうと思いました。ここは他の遺跡とちょっと離れ、プレアダックという集落の中にあります。


クメール語の先生グループに、シェムリアップでなくプレアダック在住の先生が一人いて、何とかシェムリアップの会社に通っていましたが、やはり遠すぎて退職してしまったようでした。その先生からよく「かなり田舎だけど、ご飯が美味しいよ(特にノンバンチョック)」という話を聞いていて、以前からプレアダックを訪れるのを楽しみにしていました。

本日のマップ

朝5時半と早い時間に出発したため、途中のプレループで朝日を見て時間調整し、7:30オープンのバンテアイサムレに行こうと思いました(ですが、後述するようにプレループで朝日は2021年から見れなくなってしまっていました…)

プレループのちょっと北から東に向かうとプレアダックで、小さい村ながら市場や商店、沢山の食堂や籠の専門店など、通っていても飽きないです。その数々の店が途切れたあたりにバンテアイサムレがありました。

往路・復路同じでした。

朝のスラスラン

スラ・スランの朝

久々に朝のスラ・スランに来ましたが、やはりいいです。ただ訪れてボーッとしている地元の人もいますね、わかります。

この時点で6:30でしたが、バンテアイサムレが7:30からなので、時間調整でプレループで朝日を見ようと思っていました。

あれ?7:30オープンの立て看板があります。朝日OKの遺跡(プレループ・アンコールワット・スラスラン・プノンバケンの4箇所)は5:30オープンのはずです。周りをチラチラみると、スーツ姿の人に呼び止められました。

遺跡にスーツの人、驚きました。流暢な英語で、「ここは昔は朝日を見る有名な場所だったけど、一昨年からアプサラオーソリティが早朝の入場を禁止したんだ。理由はわからないけど」と言っていました。
かなり残念です。

とは言え、後からよく考えると、5:30amは時期によっては真っ暗です。アンコールワットとスラ・スランは昇降もなく、プノンバケンは山とは言え、なだらかな斜面をゆっくり登る感じです。それに対して急階段が延々続くプレループは、確かに日中でも危険を感じるくらいなので、やはり事故の可能性を考えたのかもしれません(遺跡周辺は国立公園なので完全に街灯なしです)

ここで曲がるとプレアダック村です。目印は諸々の政党の看板と牛たち。

真東に向かって走るので、朝の風景が美しいです。

途中市場を眺めながら、カフェを探しているうちに結局バンテアイサムレまで着いちゃいました。

ロリュオス遺跡は7:30前でも入らせてくれたので、ロリュオスと同じく中心部からちょっと遠いバンテアイサムレも大丈夫かなと思いきや、セキュリティの人が5人くらいいてダメでした。

これはプレア・ダックの市場の方まで戻らないといけないかな?と思ったとこで、バンテアイサムレ入り口に小屋があるのに気付きました。

突然現れたバインセオ屋さん

なんと、バインセオ屋さんです(カンボジアではバンチャエウ)こんなところで私の大好物ベトナム料理に出会うなんて。バインセオ、地域によって中身や食べ方が違うのがいいんです。ベトナム各地で食べました。

ホーチミンでは豚肉、海の街ファンティエットでは海老、野菜の宝庫カントーとヴィンロンでは何かしこしこしたクワイみたいなものが入っていました。
なので、気になってそぼろは何肉ですか?と聞くと、なんと「トライ(魚)」とのこと。トンレサップ湖の魚なんだろうな。

驚いたのは、せっかくきれいに作ったものを皿の中で壊してからスープをかけて提供されることでした。これはファンティエットのバインセオと同じ!!ファンティエットだけの独特な食べ方だと思っていました。遺跡の前の森の中で、いきなりファンティエットの開放的な海の街を思い出して懐かしくなりました。

ハーブとサクサクのココナツベースの生地、茹でもやし、甘辛いスープ、非常に美味しかったです。ドクダミだけは抜いてもらいました。完食。
後から、このお店に名物ノンバンチョックもあったことに気付いたので、次回来る時にはノンバンチョックにします。

他に多少の店もあったものの、このお店の独壇場でした。私の席が空くのを待っている人がいるくらいの大繁盛でした。

遠くから振り返って、バンチャエウ&ノンバンチョック屋さん

満を持して、バンテアイサムレ入場

駐輪場とトイレから、100メートルくらい参道を歩きます。現代の道では、プレアダックの道路から南下します。(本来の正式な入り口は東門)

Banter Samre
Date: Mid 12 century
King: For stylistic reasons, most experts connect Banter Same to the reign of Suryavarman II. Others interpret the presence of Buddhist scenes as a sign it was built later, under the reign of Dharanindravarman II, the father of Jayavarman Ⅶ and a fervent Buddhist.
バンテアイサムレ 
年代:12世紀半ば
国王:様式上の理由から、ほとんどの専門家はバンテアイサムレをスールヤヴァルマン2世と関連付ける。また、仏教のシーンがあることから、ジャヤヴァルマン7世の父のダラニンドラヴァルマン2世の時代に建てられたという専門家もいる。

Focusing on the Angkor Temples
北門

なんと、北門の門以外が壁です。門の両脇に連子窓がありますが、ラテライトで内側から目張りされていて、全く見えません。壁の高さは6mだそうです。

私は前回の投稿で「バンテアイは要塞」と書いた後、ちょっと要塞は言い過ぎだったかな、「砦」の方が良かったかなと思っていました。訂正しようか迷っている時にバンテアイサムレに来て、「これこそ要塞だ…」と感じました。

外側の壁を入ったところ

緑色のシャツのお掃除隊が子連れで出勤していました。

さらに階段を登って降りて、第二回廊へ

第二回廊入りました。写真で改めて見ると彫刻がすごいです。

インドのラーマーヤナの民話の猿が、他の猿のお尻を噛んでいる、という珍しい彫刻が見たかったのですが、そのエリアが修復中で近づくことができず…

この壁に二重に囲まれた内部、普通は参道にあるナーガの欄干が中央祠堂に向かっていて不思議です。

ドラゴンフルーツのことをスロカーニア(ナーガの鱗)とクメール語で言うのを思い出しました

強烈な圧迫感

何かこの空間、苦しいなあと思っていましたが、改めてガイドブックを開くと、そう言えば第一回廊も第二回廊も開口部が無いので、門以外は4重に壁に囲われていることに気付いてしまいました。

お天気いいですが、圧迫感がすごいです。見たい彫刻がいくつかあったのですが気持ちが苦しくなってきてきました。

残念ですが、第二回廊内から出ることにします。

第二回廊から外へ(東)

なぜか、正式な入り口の東門側だけ第一回廊が建設途中で終わってしまったようで、内側の壁がありません。観光するにはいいですが、疑問は残ります。

テラスが超かっこいい

東門、実はとても美しいです。そしてなぜか少し中国風にも見えます。ここから
入ればよかったなあ。

昔の参道を歩く

外に出てしまったので、当時の参道を歩きます。東門より200mは参道が続く、とガイドブックにありました。

シンハのおしり

シンハは本来、4方向×2で8体あるかと思いますが、残っているのは5体、残念ながら顔は一つも残っていませんでした。

威風堂々としています。

ひたすら参道を歩きます。誰もいません。鳥のさえずりだけ。

ここで終わりでした。特にユネスコの石碑もなく、他につながっている道もなく、遺跡保存のため、このようになっているようです。しかし200mのナーガ像、長いです。

どれだけ長かったんだろうか、当時は

結局また200m歩いて戻ってきました。ここからみるとアンコールワット風です。東から(裏から)入ったアンコールワットにそっくり。

奥のおばちゃんに「オンクイ(座りなさい)」と言われ、どこからきたのか、仕事は何か、家族はいるのか、朝ごはん食べたか、など色々聞かれました。
朝はバンテアイサムレの前の店のバンチャエウ食べて美味しかった、というと、プレアダックの食べ物は何でも美味しいのよ。私はプレアダックの出身。とのこと。

ペディメント。インド神話から来たものだと思いますが、魚のような怪物や切り取られた首など奇妙なモチーフです。

南門から北門は回廊内側のテラスは歩けず、第一回廊を通るしかなく、閉所恐怖気味の私は再び脱落。外に出ました。

どこまでも壁
門が見えた
来た道かな?

来た道と思ってバインセオ屋さん方面に進むと、水牛の群れに出会い、おや?と思いました。方角間違えていました。

何か違う

こっちでした。北門から出ました。日本からの観光客もすれ違いました。マイナー遺跡と思っていましたが、知っている人は知っているんですね。

プレアダックまで戻りました。籠屋さん、素敵です。

プレアダックを訪れ、家に帰った後、その地が「地雷を踏んだらサヨウナラ」の著者、一ノ瀬泰造さんの遺体が見つかった場所だと知りました。50年前には戦場だったという事実を突然思い出し、頭を殴られたような衝撃を感じました。



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