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尾道旅行記 2日目

7月某日(日)澄み渡る晴れ

 この日は朝6時には起床し、のんびり支度をした。今回宿泊した宿は学生の頃にも泊まった事のあるゲストハウス。共有スペースになってる一階の和室は、当時皆でけん玉をしたり話し合いをするなどした思い出のある場所だった。時間があったため、少し和室を眺める事にする。中庭から朝陽が綺麗に入る縁側が相変わらず美しかった。脇にギターが置かれているのを見つける。

ギター。
学生の頃、ゼミの皆であなごのねどこの和室で団らんしている時だった。ゼミ生の黒タンクトップマッチョの彼がおもむろにギターを手にして、弾き語りを始めた。しかもかなり上手い(笑)見た目とのギャップに、和室が沸いたのを思い出す。

あなごの寝床

 時刻は7:30頃。荷物を預け、身軽になったのでモーニングを食べに行く事にした。
アーケードには観光客はおらず、ランニングをする人、自転車に乗るおばあさん、犬の散歩する人など、地域の人々の生活だけがそこにあった。これが普段の尾道なのだろうか。観光地としての商店街しか知らない私にとって、その光景はなんだか貴重だった。朝の静けさの中に、どこからか風鈴の冷えた音が響いている事に気付く。昼間はわからなかった、優しい音色を聴いて、音で涼む。

モーニングを食べに向かった店は、昨晩訪れた飲み屋街にあった。立派な洋館のような外観をした喫茶店。ショーケースには年季の入った食品サンプルが並ぶ。

 店に入れば先客が二人。おばあさんが二人で接客をしていた。女性二人で営んでいるらしい。客の一人はかなり濃いめの広島弁で話す男性。お店の方とはもう随分長い付き合いのように感じた。もう一人のお客さんはずっと誰かと電話をしている。こんな朝早くから長電話なんて、相手は誰だろう。他人の長電話の相手を気にするのはかなり野暮だとと思うが、気になってしまう。

「モーニングでいい?」席に着いた私に、腰の曲がったおばあさんが尋ねる。目を細めてにこやかに笑う。朝イチ、爽やかな笑顔が見れて嬉しかった。
「あ、はい!」
どうやらメニュー表はないらしい。

モーニングを待っている間、男性客は「走ってくる!」とヘルメットを持って店を出た。推測でしかないが、きっとバイクでしまなみ海道をツーリングでもするのだろう。こんな天気の良い日に海岸沿いをツーリング、きっと気持ちが良いだろう。原付バイクの講習ですらままならなかった私にとっては無縁すぎる体験だろう。

一方、長電話の女性は電話を終えていた。
「こんな朝から、彼氏に電話?旦那さんに言っちゃうよ。」
「違うわよ、娘よ」
「娘にこんな朝から長電話するもんか」
お客さんとおばあさんの会話ですら、なんだか耳に優しい。その後ろのテレビからは朝のニュースが流れ、店の良いBGMになっていた。次のニュースは芸能界のゴシップだった。
「いけないねぇ」
「そうよ、人様の家の事情まで口出して、テレビはダメだねえ」

私もそう思う。とこっそり相づちを打つ。

そうしてるとモーニングが到着。
きつね色した焼き目が美味しそうなトースト、サラダとゆで卵。更にはグラスに入った黄色い飲み物もついてきた。ミキサーにかけてあるのか、その飲み物には何か固まりが残っており、その凹凸が照明に反射してキラキラしていた。説明も特にないので、まずはこの何か分からない飲み物を飲み込んでみる。

「あまい、、」
果物の甘みを凝縮していて、且つかなり爽やか。
ミックスジュースだった、、。甘みが鼻の奥まで広がり、そしてその冷たさがまた寝ぼけた私の頭に働きかける。なんだか目が覚める一杯だった。

モーニングセット


 街の喫茶店から始まる朝、お客さんとお店の方との声を目覚ましにして、良い1日のスタートを切った。

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