長崎から島原へ〜軽い気持ちで路線バス旅〜車内でほっこり逸話も(下)

第102回

難聴ソルのゆんたくTime

2019年(令和元年)12月7日 島原新聞掲載


(下)

このあとはいよいよ、小浜から雲仙へ。ここで一つホッコリしたエピソードがありました。バスが坂を登り始めた頃のバス停で、両手に野菜を抱えたおじいさんが乗ってきました。2つ3つ先のバス停で降りようとしたおじいさん。多分乗車券を取っていなかったらしく、「○○から乗った」と千円札を渡していました。本当なら乗車券と運賃を小銭で箱の中に入れないといけないようで、運転手さんは「○○円入れてください」と説明されていましたが、このおじいさんはよく分からなかったのか、再び千円札を渡しました。すると運転手さんは怒りもせずに千円札を受け取り、両替機に入れ運賃を自ら箱に入れ、お釣りをおじいさんに渡して「お気をつけて」と声をかけていました。島鉄の運転手さんは優しいなと心が温かくなりました。都会にはない光景ではないでしょうか?

ほっこりした気持ちになって乗っていると、バスが雲仙独特のカーブを登っていきます。私も外国人の3人も左右に大きく傾いて、バスならではの揺れを満喫。しばらくすると雲仙に到着。この時点で諫早から1時間半近くかかっていました。もう島原に着いていてもいい時間。ここに来て、私はちょっと大変だということにようやく気づきました。さらに、雲仙で私以外の人は皆降りてしまい、ひとりぼっちになったのです。話し相手は運転手さんだけ。あまりの寂しさに、私は運転手さんに一番近い席に移動しました。雲仙を出てからは誰一人乗ってきません。たまらなくなり、「私、大手で降りたいんですけど停まりますか?」と尋ねたところ、「停まりますよ」とのこと。ちょっと安心して、そのあと運転手さんとおしゃべりをしました「紅葉がきれいですね。お客さん多いですか?」「いつも雲仙からは人は少ないのですか?」「諫原〜愛野〜小浜〜雲仙〜島原のルートは長いですね。こんなに時間がかかるとは知りませんでした。大変ですね」と色々話しかけていると、「そうですね。でも仕事ですから」とすごく真面目に答えてくださいました。そんな運転手さんに身の上話を語りながら大手まで付き合ってもらいました。途中ふと後ろを見るとおばあちゃんがちょこんと座っていました。どこから乗っていたんだろうと正直びっくりしました。色んなことがあって、おかげで長い時間も寂しさを感じずに普段と違うことを楽しむことができました。運転手さん、ありがとう。

いつもは自分で運転して同じルートで同じ光景に気をとめることなく島原へ帰りますが、今回は午前11時に出発して実家にたどり着いたのが午後3時半過ぎ。思いがけなく島鉄バスに乗ったことで、不思議で新鮮な驚きに満ちた小旅行となりました。

いつもと違う道を、いつもと違う方法で進んでみると、普段と違った光景が見られるものですね。運転手さんの優しさも含め、島鉄バスの魅力を再発見しました。皆さんも、たまには普段と違う交通手段を使ってみてはいかがでしょう。今まで見えなかったものが見えるかもしれませんね。

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