夢のような話 実現~『赤い花の記憶』に字幕~
第85回
難聴ソルのゆんたくTime
2018(平成30)年 月 日 島原新聞掲載
先日、皆さんにもお知らせした、市民ミュージカル『赤い花の記憶 天主堂物語』(7月21日・長崎ブリックホール)の公演が近づいてきました。とても楽しみです。
私は演劇にも興味があり、ときどき観に行くことはありました。舞台の華やかさやダンスの美しさは、見ていてとても素晴らしいなと思います。しかし、セリフや音楽などの音によるパフォーマンスが全然入ってこないので、楽しさが半分になってしまいます。音楽は仕方がない。でもセリフは知りたい。セリフが分からないと物語が分からないのですから。
実は、今回の『赤い花の記憶』のチケットは、はじめ自分の分の1枚のみしか買っていませんでした。舞台に出る姪の姿だけ見ることができさえすればいいと思っていたからです。ところが、物語の背景を調べていくうちに、私の知らない歴史があることに驚き、また世界遺産登録に向けての支援にもなっていることを知って、じっくり観たい。そして多くの方にも観てもらいたいという気持ちが強くなりました。
今回の舞台に字幕がつけば最高です。そこで無理を承知で、UDトークサポーターの坂本朋恵さんと、ミュージカル実行委員会事務局長の江口満さんに「字幕をつけてほしい」という希望を伝えました。すると思いがけなく、お二人とも「いいですよ」と快く承諾してくださいました。
江口さんとは初めてお会いしたにもかかわらず、積極的に話を進めてくださり、字幕の話がスムーズにいきました。
夢のような話です。
気持ちを理解してくださる江口さんのような方、そして情熱を持って文字支援をしてくださる坂本さんのような方がいらっしゃれば、頭で考えているよりも難しいことではないのだと実感できました。
私としてはこの話が具体的になったとき本当に飛び上がりたいくらいほど嬉しいと思いました。私自身もできる限りサポートしていくつもりです。UDトークの活用は、県内では島原市で行われた草野仁さん講演会に次いで2例目になります。ミュージカルについての字幕は県内初。
聴覚障がい者に芸術鑑賞の門開く
そしてミュージカルの字幕は、UDトークのシステムを使って字幕を表示する方法をとります。事前に台本をいただいて、字幕を準備し、セリフのタイミングに合わせて出していくので、臨場感をきちんと味わうことができるはずです。これは聴覚障害者にとっては、本当に画期的なことで、私の人生の中でも忘れられない舞台となることでしょう。これまで演劇やミュージカルに行きたくても行けなかった聴覚障害者にとっても、ホールの一員となって楽しめる機会になるはずです。
国会での法案成立を受けて今月13日、障害者による文化芸術活動の推進に関する法律が公布と同時に施行されました。これによって、障害を持つ方も文化芸術を鑑賞する機会の拡大が図られます。
今回の市民ミュージカル『赤い花の記憶 天主堂物語』は、聴覚障害者に舞台芸術鑑賞の門を開いた、長崎県で最初の取り組みになります。今後、ますます浸透してさまざまな芸術活動に参加できるようになることを期待しています。
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