サテコン質疑応答まとめ(即応地球接近小惑星探査衛星)
衛星設計コンテストで日本航空宇宙学会賞をいただいた即応地球接近小惑星探査衛星のポスター前での質疑応答のまとめです。順不同、思い出せた範囲で載せています。ミッションアイデアの概要は衛星設計コンテスト最終審査会のプレゼンテーションをご覧ください。https://www.youtube.com/live/qszP1mjZZ74?t=12097&si=1LpQuPNoVO5bczN9
Q.探査できる小惑星はどのような小惑星ですか?
A.地球に接近する小惑星のうち遠点が385000km以下で地球に対する軌道傾斜角が40〜80度の小惑星の小惑星です。軌道傾斜角に関してはフライバイ検討の簡略化のため衛星の軌道傾斜角を小惑星と一致させる仮定をしたためなので改善の余地があると考えています。
Q.探査できる小惑星はどれくらいの頻度で来ますか?
A.現在よりも厳しい条件(傾斜角小惑星合わせ40〜80度・360000km)で2年に1回ぐらいは確認しています。
Q.2年に1回だと待機期間が長くコスト・モチベーション的に厳しそうです。
A.近年、地球接近小惑星の発見ペースは上がり続けていてNASA NEOサーベイヤー望遠鏡なども控えているため間隔は短くなっていくと考えています。また傾斜角を合わせない遠点のみをあわせ軌道が交差するフライバイについめ検討すれば軌道傾斜角の要件が外れるのでより多くのチャンスが見込めると思います。
Q.即応打ち上げですがロケットは天候や海域の状況次第で打ち上がらないこともあります。その場合はどうしますか?
A.次回以降の小惑星の接近チャンスを待ちます。各国で即応打ち上げが商業オプションになってきている現実があるので対応は可能だと考えています。
Q.軌道上待機と比較して利点はありますか?
A.長期間の信頼性が要求される軌道上待機に対して即応探査はミッション全体が数百時間で終了するため高度な信頼性が要求されない利点があると考えています。
Q.傾斜角のついた円軌道からはΔVのタイミングしだいで地球近傍の上側・下側の領域、両方探査できるという理解であっていますか?
A.初期の検討ではそのような検討も行いましたが現在は打ち上げ以降の軌道傾斜角を小惑星に合わせるという軌道設計を行っています。
Q.衛星本体について、SAPの回転軸が端にありますが真ん中にしなかったのはなぜですか?太陽光圧で姿勢が乱れる可能性が気になりました。
A.コメットインターセプター子機B1でこの形だったのが直接的な理由ですが、数百時間でミッションが終わるため、ご指摘の事項は発生しないと考えられます。
Q.小惑星への誘導はどのように行いますか?
A.初期の誘導は地上望遠鏡の観測で得た小惑星の軌道情報を元に行います。小惑星近傍でのキックステージ/衝突機の誘導はONCによる画像航法をキックモーター内に搭載されている亜酸化窒素を使ったRCSで行います。
Q.フライバイフェーズの図を説明してください。
A.緑の広い角度が広角カメラの視野、オレンジの狭い角度が望遠カメラの視野です。途中で望遠カメラ軸周りに180度回転することで広角カメラの視野を反転する姿勢変更を行っています。この操作により望遠カメラで確実に小惑星にキックステージが衝突する瞬間を捉えつつその後の追尾の安定化を図る目的があります。この姿勢変更の間では地球に対して向ける面が変わらないので通信リンクを確保し続けることもできるのではないかと考えています。ただ地球周回楕円軌道からの観測というこのコンセプトには観測データのダウンリンクを近地点で行えるメリットがあると考えており比較検討が必要だと思います。
Q.重量計算はどのようにしましたか?
A.コメットインターセプター子機B1を元にした衛星本体は磁力計などを降ろすことから30kgと見積もりキックステージ/衝突機はGEO-Xの乾燥重量の資料を探し推薬を150kg増量、増加分の構造重量も加味し乾燥質量40kgであるとしました。それ以降にも発表には適用できていませんがGEO-Xの構造質量を搭載する推薬体積から算出したタンク表面積(固体燃料は円柱型/亜酸化窒素は球型と仮定)で割ることで表面積あたりの構造質量を推定し検討を行っています。その結果としては5kg程度の重量増となり再検討が必要だという結果になりましたが衛星本体側がコメットインターセプター子機B1に対してかなり軽くなっている可能性がある(搭載機器をカメラ中心に変更したこと・ダストシールドを外していること)ためそちらを含めて精査する必要があると考えます。
Q.分離機構はどこに取り付けますか?また分離機構を重量計算にいれていますか?
A.衛星本体の側面いずれかとキックステージ/衝突機の上面を接続することを考えています。重量計算には入っていません。今後の検討が必要だと思います。
Q.ターゲットによってフライバイ時の速度幅が大きいですがカメラによる追尾は実現可能ですか?
A.参考にしたコメットインターセプターが10〜70km/sでの広い範囲でのフライバイ速度を持っているので大丈夫だと考えました。
Q.ジュニアは発表時間が短いしここまでやるならアイデアに出しても良かったと思います。
A.ありがとうございます。ジュニアに出る最後の機会だったのでジュニアに出しましたが発表時間は思ったより短かったです。
以上です。最後まで読んでいただきありがとうございます。