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水の上で移動生活をする無国籍者の現実|カンボジア
カンボジア・シェムリアップに位置するトンレサップ湖。
アンコール遺跡群にも近く、多くの観光客がアンコール遺跡とともに訪れている場所だ。
実は、私はシェムリアップに到着し、ホテルの方から教えてもらうまで「Floating village(水上村)」があることを知らなかった。
なぜ、水上に村ができたのか?
いつから人が住んでいるのか?
どんな人が水上で生活しているのか?
「水上村がある」と聞いてから、素朴な疑問が色々と湧いてきた。
今回は、私自身が調べた内容や実際にガイドさんから聞いた歴史と、実際に水上村を訪れて感じたことを本記事にまとめていく。
トンレ・サップ湖とは
トンレ・サップ湖は、カンボジアの中央部に広がる東南アジア最大の湖で、乾季と雨季でその広さが大きく変わることが特徴的だ。
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湖の面積は、乾季は琵琶湖の約3倍・さらに雨季には10倍以上にもなる。
雨季になると、それまでメコン川に流れ込んでいたトンレサップ川の水が湖に逆流するため湖が拡大するのだ。
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ガイドさんの情報によると、この水上村には8万人のひとが住んでいるとのことだった。そして、これくらいの規模の村が170以上あるという。
「この水上村に暮らしている人の数は8万人くらい。僕がその情報を見たのが10年ほど前だから現在の正確な数字はわからない。現在は8万人よりも多くの人口が暮らしていると思う」
湖の上には170ヶ所の水上村がある
なんと驚くべきことに、「トンレサップ湖の水上村」といっても170を超える村があるという。
アンコールワットで有名なシェムリアップから観光で訪れることができるのは、大きく2つだろう。
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①Kompong Phluk Floating VIllage|コンポンプルック
(特徴)
・観光ツアーなどが豊富で、安心していくことができる。
・雨季にも対応できる高床式住宅を見ることができる。(固定式の住宅)
・ツアーに参加すると、実際の施設内の様子などを見ることができる。
・住んでいるのはクメール人(カンボジア人)
★②Chong Khneas|チョンクニア
(特徴)
・自力で行く必要がある
・乾季と雨季で住む場所を移動する集落(移動式の住宅)
・ベトナム難民が多く居住しており、歴史的背景が垣間見える。
今回私たちが訪れたのは、★②のチョンクニアの水上村。
なぜベトナム人が多く住んでいるのか?
水上村にどんな歴史的背景や課題があるのか?
これらの疑問を解決すべく、実際に現地に足を運んでガイドさんに話を聞いてみた。
ベトナム人が多く住む水上村・チョンクニア
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ベトナム人が移住し始めた背景
この村で生まれたガイドさんによると、彼が生まれた35年前には既に多くのベトナム人が住んでいた。
トンレ・サップ湖にベトナム人が居住しているのは、大きく2つの背景があると考えられている。
ひとつ目は「漁業をするため」だ。
かつて、漁業をしていたベトナム人が魚を求めて船に乗ってベトナム・メコン川を北上した結果、魚が豊富なトンレサップ湖にたどり着いた。
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ふたつ目は「戦争からの避難」だ。
1955年〜75年にかけて、ベトナム戦争が勃発した。
戦火を逃れるために隣国・カンボジアへ避難したと推測される。
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そうして、ベトナム移民たちがトンレ・サップ湖に移り住んだ。
水の上に生活することで、市民権を証明する必要がなく多くが無国籍として生活している。
住民を取り巻く課題
水上村の住民は多くの課題に直面している。
課題1|漁獲量の減少
近年では人口増加や経済発展に伴い水質が悪化。
魚の乱獲なども相まって、年々漁業量は減少しているといわれている。
ガイドさんは「みんなが魚を取りすぎてしまっている」と話していた。
政府側では、漁獲量に規制をかけ始めているようだが、住民は生活するためには魚を獲らなければならない。
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かつてガイドさんが幼い頃は、1〜2時間で40~50kgの魚が獲れた。
でも今は1日かけて4~5kgの魚しか獲れないこともあるという。
漁業をして生活をしている住民にとって、「魚がいない=収入が減る」ということを指す。
課題2|引っ越したい・でも引っ越せない
先述のとおり、漁獲量も減少し「お金を稼ぐ」こと自体が困難になってきた。
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内陸で仕事を探すも、未経験の職種で採用をされることは難しい。
また、トンレサップ湖から離れ、他のところに引越しをするにも多額の費用がかかる。
陸地に住む場合は土地を購入したり、家を買ったり借りたりするにも多額な費用が発生する。
住民の稼ぎは1日1,000円ほど。
その稼ぎで家族を養って暮らしている。
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病院なども湖から離れたところにあるため、生活の利便性を鑑みて、内陸に引っ越したいと考えている家庭は多いという。
ただ、いくら彼らが引っ越したいと願っても、引っ越しを実現することは極めて難しい現実がある。
課題3|学校に通えない子どもたち
水上村には驚くほどたくさんの子どもたちが暮らしている。どこからともなく、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
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しかし、その子どもたちもまた多くの課題に直面している。
水上村には、学校がある。
現在は162名の子どもたちが学校に通っている。
当初、ガイドさんから話を聞いたとき結構多くの生徒が学校に通えているな〜という印象を受けたが、実際村にはそれ以上の数の子どもたちがいた。
つまり、ほとんどの家庭の子どもが学校に通えていないということだ。
授業料自体は無料だが、制服代や文房具など授業料以外にもお金がかかってしまう。学校では子どもや家族のために無料で食事を提供しているが、それでもなお学校に通ってくる子どもは少ない。
ガイドさんの話によると、学校に行けていない子どもたちは親の仕事を手伝っているという。
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実際に働いているのか、親の手伝いをしているのか…
そんな子どもたちも多く見かけた。
家業の手伝いをすることはとても頼もしいことだ。
しかしながら、漁獲量も減り続けている湖で、これから10年後20年後彼らの生活はどうなっていくのだろうか。
もし幼少期に少しでも勉学に励むことができたら、新たな道を切り拓いていけるかもしれない。でも、1日1日を生きている彼らにとって、先の見通しを立てることはなかなか難しいことなのかもしれない。
彼らには、漁業以外の何か新しい経験をするチャンスが必要なのかもしれない。
課題4|無国籍であるということ
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実は、ここに住む多くのベトナム人はカンボジア国籍もベトナム国籍も持っていない人が多くいる。つまり、無国籍なのだ。
彼らの何世代も前に、ベトナムからカンボジアへ移動してきた。
また、近年ではカンボジア政府がベトナム難民をベトナムに帰そうという動きがある。しかしながら、ベトナムに帰ることもまた彼らには困難である。
先述したように引越しをするにもお金が掛かり、ベトナム国内で新たな仕事や家を探すことも難しい。
私が色々考えた挙句、辿り着いた結論
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今回、実際に水上村を訪れて感じたことは本当にたくさんある。
様々な要因が関係して、今日にたどり着いたのだろう。
一言で私が感じたことをまとめるのは非常に難しい。
でも敢えて、ここに私の感じた記録を残すとすれば、実際の水上村の様子は明るかったということだ。
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訪れるにあたり、様々な記事を読んだ。文面から得られる印象は、本当に住民は大変で苦しいという印象だった。
もちろん様々な課題があり、私も彼らの全てを知ることはできないため、一概にこんなことを言うのはいかがかと思うが、少なくとも私には幸せそうに見えた。
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なぜなら、家族や友達とみんなで時間を共有していたからだ。
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私はこの旅で、各国の社会背景・時代・状況によって「幸せの定義」は異なるのかもしれないと思うようになった。
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彼らは彼らなりに、毎日楽しいことや幸せなことがたくさんあると思う。
そして、それは子どもたちの楽しそうな笑い声やカラオケ屋さんの外に積まれた大量の空き缶が証明していると思う。
この記事をきっかけに、Youtubeや記事等でもっと歴史を調べてみるなり、自分なりに頭の中で考えてみるなり、現地に足を運んでみるなり、実際に寄付やボランティア活動をするなり…
それぞれの人が自分にあったカタチで、次の行動に起こしていくことが大切なのかもしれない。
そして、カンボジアやベトナムという国はもちろん、日本や諸外国の歴史や社会に興味や関心をもつ人が増えたら何よりも嬉しい。
アクセス方法|Chong Khneas(チョンクニア)
トンレ・サップ湖へは、カンボジアの主要都市シェムリアップからアクセスするのが一般的だ。
シェムリアップ市内で見かけたツアー会社では、今回訪れた『Chong Khneas(チョンクニア)』を見つけることができなかった。ちなみに、ツアーで連れて行ってくれるのは、クメール人が多く住む『Kompong Phluk Floating VIllage(コンポンプルック)』だ。
私たちは『Chong Khneas(チョンクニア)』に行きたかったため、バイクレンタルをして自分たちで移動した。Grabやトゥクトゥクなどでもアクセスすることは可能だろう。
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【バイクを利用した場合】
所要時間|片道20分
バイクレンタル料|半日8ドル ※要交渉
オススメのバイク屋さん|https://maps.app.goo.gl/Zhp4BSALvVJ82eU16
※通常1日プランのみですが、半日で交渉し8ドルになりました。
※こちらのバイク屋さんはスタッフがみんな英語が話せるので安心。
※デポジットとしてパスポートが必要ですが、パスポートを預けるのは不安だったので私たちは国際免許証と1万円を預けました。
ボートのチケット購入方法
実はChong Khneas(チョンクニア)の水上村は、事前情報によるとGoogle mapの口コミや地元の人からもあまり評判が良くない場所だった。しかしながら、2022年よりチケットオフィスが建設され、現在は安心してツアーに参加することができる。
チケットはチケットカウンターで購入することができる。
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1人〇〇円ではなく、5人までの乗車で1ボート28ドルだ。人を集めて乗る方が、1人当たりの乗船料は抑えられるということだ。
クレジットカードにも対応している。
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スタッフから案内されたボートに乗車すると、ガイドさんと運転手さんがついてツアーが始まる。
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参考までにガイドさんと運転手さんがとても丁寧に案内をしてくれたので、最後に2人にそれぞれ心ばかりのチップをお渡しした。
また、1箇所だけワニが見れるという売店に連れて行ってくれた。
この村の住民のためにと思い、少しだけ買い物をした。
【チケットの購入について】
購入場所|https://maps.app.goo.gl/E68HVzEWQ4ZNsHVc9
乗船料|5人乗りボート(28ドル)
ガイドさんは、この場所を知って多くの人に来てもらうことが本当に嬉しいと語っていた。
この記事を読んで「この場所を訪れたい!」そう思っていただける人が1人でもいたらとても嬉しい。
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私自身、この体験はとてもとても勉強になりいい時間を過ごすことができた。「行ってよかった!」そう思える場所がまた増えた。
ガイドさんと運転手さんに感謝したい。
本日も最後まで読んでいただきありがとうございます!
旅の記録、特にnoteでは心で感じたことを記録していこうと思いますのでぜひフォローして次の投稿も読んでいただけると嬉しいです!
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