見出し画像

「エッセイ」 ある日の小屋で

瞼から感じる光の強さ。
鳥のさえずり。

私の目覚まし時計がなった。

目が覚めると、暖炉の火が消えていて肌寒く感じる。

寝袋から出るのは辛いと感じたが、

小窓から見える白い雪には驚きを隠せず、
目をまんまるにして飛び起きる。

春の雪の珍しいことよ。ありがたや。

体を起こしてすぐ、
外の世界の美しさに体がザワザワ。

思い切り走りたくなった。
小屋裏にある丘を犬のように上がっていく。

走るたびに肌にあたる寒さが心地よく感じた。

気がつけば頂上。

ちょうど地平線に移るのは、東から昇る朝日と反対側の空に沈む満月。

太陽と月と真ん中に私。

この一直線の真ん中で、

生まれては死んでいく、この営みの間。
人生という限られた時間。
光と闇の間。

を心に感じながら手を合わせた。


月が沈むと太陽がさらに輝きを増した。

ここ数日は曇りがちだったので、まるで心身が元気をもらっているかのように蘇っていく。

太陽の力はやはりすごい。


今日は何をしよう?

と問いかける。

どうせなら普段しないことをしたい。

そう思い、森の奥へと入っていくことにした。

奥へ進むたびに、瞳の奥が輝きを増していく。

どんどんと引き込まれるように
足を進めていく。

そこには、想像を超えた世界が広がっていた。

目の前を何頭もの鹿が飛び跳ねていく。
私の存在に気づいていないよう。

ぴょんぴょん飛び跳ねていくウサギ。
低木をうまく使って切り抜けていく。

大きな樫の木に登り、誰か通らないかと
しばらくじっとしていた。

すると、目の前を雪梟がすっーと飛んでいく。

私と同じように、彼らにもある、もう一つの時間を感じた。

彼らはどこから来てどのように生きているのだろうか。


1日の探検を終え、私は小屋に戻った。

まだ、私の心は踊るようにワクワクしている。

日本の郊外で育った私にとっては
想像もしていなかった出逢いの連続だった。

この日、私は寝袋の中で、
私以外の周りのものたちの生きる時間を考えながら、

眠りについたのだった。


いいなと思ったら応援しよう!