好きなボカロ曲『モラトリアム 耐久』(無期懲役さん)感想メモ
タイトル: モラトリアム 耐久 / 重音テト
作者: 無期懲役 さん
再生数: 4,951
https://www.nicovideo.jp/watch/sm41951784
ザ・ロック。ザ・バンドサウンドという感じの曲。
はじまりから音が最高。
おそらくご本人たちが演奏をしている MV のよさもあいまって、ギターもベースもドラムも最高にかっこよくて、そこに加わる重音テトの機械味の強い声が最高に合う。これは UTAU のテトじゃないとこの感じが出ないと思う。
歌詞も、いきなり「抗うつ剤を焼酎で割る」からはじまる。
本当は酒で割ったりなんてしたら危ないんだろうけど、そうまで頭を濁らせてようやく向き合える現実の重みと息苦しさを、この歌い出しを聴くといつも想像してしまう。
それでも、
「時間には力がある と思う」
「俺は感激する」
という歌詞もあるので、ただ絶望して打ちひしがれているのではなく、何かがあることを信じて歩きつづけていくような力強さもある。
この、テトが「俺は感激する」と歌うところ、めちゃくちゃ好き。
「狂った方が気持ちもいいね 他愛もない別れの歌」とか「音楽を越えるまで」とか、歌詞とテトの声のリンクが半端じゃなく、どこをとってもひたすらにいい。
『サイバーかわいくないガール』のときも書いたけど、なんか初音ミクや重音テトなどの合成音声の女の子が、「俺」って当たり前に歌うのがなぜかめちゃくちゃ自分のツボにハマる。
ふたつの面を同時に感じるからかもしれない。
ボーカルとしてこの曲を歌い上げている重音テトという存在と、自分のなんらかの感情なり主張なりを表現するための手段として合成音声を用いている背後の作者の存在と、そのふたつの面が曲を聴いているときに同時に入ってくるような「存在の濃さ」があるような気がする。
女性ボーカルで男性が作曲しても同じでは、みたいな話ではなくて、あくまでも「合成音声ソフト」という存在のあいまいさ・不確かさがあってこそはじめて成立するものなのだと思う。
5分と、現代では長い曲なんだけど、濃度がとにかくすごい。
こういう曲に出会うために音楽を聴いていると思える。
出会えてよかったとずっと感激している。
などつらつらと書いていてふと Twitter を見てみたら、作者の無期懲役さんがバンドを組んでそちらに注力するので、ボーカロイドの楽曲制作は無期限の休止をされるのだそう。
生きてたらまあ驚くほどいろいろなことがある。
人間なんてどうなるかわからないものだし、7~8年したらひょこっとまたボカロ曲をつくってくれるかもしれない。
ただただ「この曲をつくってくれてありがとう」と思えている。
たとえ人生の一時期だけだったとしても、無期懲役さんがボカロ曲をつくってくれたことが、そしてなによりもこの曲をつくってくれたことが、自分にとってはなににも代えがたい。
本当にすばらしい曲。大好き。