「恋した魚は空を飛ぶ」の歌詞を解釈する
この曲を初めてMVで観たときは、日向坂では聴き馴染みのない曲調と激しいダンスに気を取られて歌詞に注目する余裕がなかったんですが、先日行われた「渡邉美穂卒業セレモニー」にて、渡辺美穂さんがセンターに立ってパフォーマンスする姿を見て、楽曲自体がすごく印象に残ったんですよね。そこで改めて歌詞をしっかり噛みしめてみたいと思い、この文章を書いてみている次第です。
自分は読解能力に自信があるわけではないので、どちらかというと分析というより歌詞を受けて物語を想像しているのに近いですが、お手柔らかにお願いします。
まずは登場人物を確認しましょう
〈登場人物〉
・空を飛んだ魚
・それを見た人⇒「僕」=Aさん
・Aさんの話を信じてくれない人たち⇒「あんた」=総じてBさん
こんな感じですかね。
では、歌詞を見ていきましょう。
いきなりBさん視点から始まります。
何かを見たと言っているAさんに問いただしています。何を見たのでしょうか。
終盤で記述しますがこの「ああホントに」にかなり意味があり、いい味を出しています。
”ウララ~” はよく分からんので今後も出てきますが無視します。
視点はAさんBさん両方の視点に切り替わります。
自分にとって良くない災難も簡単に起こりうる世の中、幸せな出来事も不幸せな出来事も予想できないタイミングで起こる世の中だからこそ面白いと説いてくる大人たちの存在が明かされます。そしてそれに対してAさんBさんはともに気怠さを感じ拒否反応を示しています。大人たちにというより、何が起こるかわからない未知の世の中に対して一歩引いている感じがします。
なかなか尖ってる子供、、、。
もしかしたらAさんとBさんは自分の胸の内にだけ秘めた夢や野望があるのかもしれません。
しかし、時間のせいにして諦めたり、時には”どうでもよくない”ものなのに”どうでもいい”と言って、自分を納得させてしまっていた過去があるのかもしれません。
目指しているものを自分は愛しているのかどうかも分からず、その夢が自分の人生における価値になっているかも懐疑的になるほど、自分を見失っている状態です。
そんなどっちつかずの自分を客観的に見つめ、諭しています。
もしかしたら、このセリフはこの後出てくる魚からの神のお告げ的なものの可能性もあります。突然魚の声が聞こえてきたのです。
突然の語彙力低下。Aさんは魚が空を飛んでいる姿を見たのでしょう。人生で「まさか」を12連発することなんてありません。相当驚いています。
話は逸れますが、ここの歌詞、リズムを重視して「まさか(aaa)」で韻を踏もうと思えばいくらでもワードは出てくるはずなんですが、「嘘だ(uoa)」「マジか(aia)」「そんな(ona)」で完全には踏んでいないのが逆に不揃いの気持ちよさを生み出している気がするんですよね。それでいてラストの(a)だけは外さずにリズムを保っているという。意図的かどうか知らないですが。
目の前で今まさに”ありえない”ことが起きていて、心を動かされたのでしょう。あんなに足を踏み入れることにためらっていた”何があるか予想もつかない””世の中”を目の当たりにしているのです。Aさんの価値観が揺れ動かされた瞬間です。
ここでいう「あんた」はこの後の描写も踏まえるとBさんです。AさんとBさんは2人で同じ場所にいたのに、Bさんには空飛ぶ魚は見えていなかったようです。あの現象を見ていないBさんが狂っているのか、Aさんが狂っているのか、、、。
「〇も✕も全部正解」と、魚を見たAさん自身も、見ていないといっているBさんも受け入れていますが、この時点では受け入れられていないはずです。本当の意味で受け入れることができるのは2サビです。それまでは目の前で起きた現象含め、受け入れられない状態が続きます。
この”大問題”という部分がすごい面白い表現だなぁと思ったんですよね。「大発見」や「大事件」ならわかるんですが、「問題」と表現しています。何が問題なのでしょうか?
おそらく、あれだけ躊躇し、なんなら否定していた「何が起こるか予想もつかない世の中」に心が傾きかけてしまった自分に気づいたからです。これだけ自分をわくわくさせてくれる世界に足を踏み入れてみたい!と思ったのでしょう。女優を志すようになった渡邉美穂さんと影が重なります(渡邉さんは最初から役者業に肯定的でしたが)。
もうAさんの頭の中はあの魚のことで埋め尽くされています。魚で頭がパンクしそうな状況って結構気持ち悪いです。
魚との出会いを「非現実的なキス」と表現しています。この表現もかなりお気に入りポイントです。アイドルの歌詞でありがちな、どんなテーマの楽曲でも恋愛に転用してしまうやり方はそこまで好きではなかったのですが、この比喩は言い得て妙です。その時のAさんの心情が手に取るようにわかる、素晴らしい表現ではないでしょうか。少女漫画でしかないような唐突であり得ない状況下でのキスをされたときのような、何が起きたか自分でも分かっていないのです。
ドラッグ中毒ばりの表現になってきましたが、Aさんはどうなっていくのでしょう。
経験したことのない出来事に説明を求めています。
「愛とは誤解された妄想」「勝手に夢見て醒めただけ」「打ち上げ花火は消える」この3つは類比表現です。似たような表現を使って強調しています。
「愛」「夢」「打ち上げ花火」という輝かしいものを「妄想」「醒めた」「消える」といった強めの言葉で打ち消しています。
つまり、Bさんは「空飛ぶ魚なんて幻想だから早く忘れろ」と言いたいのでしょう。
「説明しろよ」とAさんに迫られて、魚を見ていないBさんはこのような3つの表現を使って説明、というより強引に分からせようとしたのでしょう。なぜならBさんも「何が起こるか予想もつかない世の中」に魅力を感じたくない理由があるからです。その理由はもう少し後で出てきます。
ここでAさんの心境に変化が。目の前で起こった出来事が現実か非現実かで悩んでいたAさんですが、否定することはやめました。信じてみようと思い始めるわけです。
否定していたら何かが「終わり」を迎えてしまうようです。これだけだと何かがわからないので次も見てみましょう。
現状に満足していない状態でその場所に留まり続けてしまったら、生きている限り溢れ出る夢や目標などの「欲望」を追い続ける必要もなくなり楽になるかもしれないが、その瞬間に「溺れ」、人間活動をしていく上での「生」のパワーが「終わり」を迎えてしまうということだったのです。
これが先述した、Bさんが「何が起こるか予想もつかない世の中」に魅力を感じたくない理由です。その世界に魅力を感じてしまったら、今いる幸せな場所から離れ、荒波や逆流に襲われても泳ぎ続けなければいけなくなるからです。
またまた渡邉美穂さんの姿が浮かび上がります。
そしてさらに衝撃事実が!「あんた」=Bさんも空飛ぶ魚を見てたはずだというのです。
「ただの錯覚」だとAさんを説得した言葉は、Bさんが自分をその場所に留めておくための言い訳だったかもしれないですね。
久々のBさん視点!これは激アツ展開です。自分の夢を叶えるため未知の世界に飛び込んでみようと覚悟を決めたAさんの眼と姿を見て、自分だけが取り残されたような気がしているのでしょう。
この「待って」は本当に待ってほしいわけじゃないはずです。勇ましく挑戦を続ける隣のAさんを見て、自分も進まなければいけないという決心が少しずつ芽生え始めているのではないでしょうか。
ここで冒頭の「その目で見たというのか ああホントに」という歌詞が刺さりますね。ついに別の道に進むAさんを目の当たりにし、嬉しくもあり寂しくもあり、自分も前に進もうと思い始めるBさんの心理をド頭に持ってくる秋元康さんの遊び心がうかがえます。
これはAさんBさん両方で取れます。
未知の世界へ挑戦をすると覚悟を決めたAさんが言った言葉であれば強い説得力を感じますし、
覚悟を決め切れていないBさんが、とどめとして自分に投げた言葉であればアツい信念を感じます。
2サビです。1サビ以上に「〇も✕も全部正解」に意味を感じられます。
「〇も✕も全部正解」に関しては敢えて自分の解釈は控えます。答え合わせができるわけではないんでね、、、。
ここまでくると、この「あんたの知らぬうちに大問題」は楽曲を聴いている私たちリスナーであり日向坂ファンに向けて投げかけているようにも感じられますね。
私たちの知らないうちに(匂わせてたけど)演技に恋した渡邉美穂さんは決心をつけ、新たな世界で空を飛ぶことを決めました。
空を飛んだ渡邉美穂さんが新たな飛行機雲を作っている姿を楽しみに、卒業後も応援したいと思います。
以上です。お読みいただきありがとうございました!
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