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ボーンマス序盤戦を振り返る
こんにちは七シノです。
24−25シーズンが開幕してはや8週間、プレミアリーグは全チームが7試合を戦い終えました。まだまだ始まったばかりではありますが毎週白熱した試合や物議を醸す判定や作戦、相変わらず無能なPGMOLにネット上で下ネタとレスバに命を燃やす声とプライドだけはデカい一部のサポーターと、例年通り退屈しない刺激的な週末を我々に与えてくれています。
今週から2週間は代表ウィーク、リーグが一段落つき、各チームもそろそろ目標の修正、戦術の変更・調整などをする時期ではないでしょうか。そんな序盤戦、ボーンマスはどんな感じだったのか、順位や試合内容など色々な面から振り返っていきましょう。
基本戦績
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7節終了時点での順位は勝ち点8での13位。8得点と10失点で得失点差は−2となっています。
13…普通だな!
特に褒められる順位でもありませんが危機感を覚えるわけでもないザ・中位ですね。ただ一つ下のマンチェスターユナイテッド(!?)から6位ブライトンまでの勝ち点差は4。序盤戦ということもあり、一つの勝敗で大きく順位が変わっていきます。それに昨季は開幕9戦未勝利&勝ち点3という最悪のスタートでしたので、それよりはよっぽどマシです。(昨季序盤は日程が鬼なのもありましたが)
続いて試合結果の方へ。
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勝ったり負けたりを繰り返してますね。エヴァートン、セインツという下位集団をしばき、フォレスト、ニューカッスルの中位仲間と仲良く勝ち点を半分こしつつ、ビッグ6相手には靴を舐める三下ムーブをかましている、と書こうと思っていたのですが、先週まで未勝利だったレスターに敗れ、完璧な法則ではなくなってしまいました。まあこれは残留への支援だから……ボーンマスは優しいから……
そしてこれからに目をむけると次の5試合は鬼門ばかり。アーセナル、ヴィラ、シティのCL組三連戦に加え、2部時代含めてマジで勝った記憶がないブレントフォードに対ボーンマスの殺戮兵器カオル・ミトマ擁するブライトンと厳しい相手が続きます。
個人成績
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FotMobからのデータです。データ項目は他サイト含めて多岐にわたるのですが、いちいちあげていたらキリがない上そういうのは前半戦終了とかシーズン終了とかでやるべきなので今回は割愛します。
こうしてみるとやはり目立つはSemenyoの貢献度。チーム内得点王にして平均採点もトップ。Solankeなき今最大の得点源としてチームを引っ張っています。
Cook、Dango、Sinisterraなど好調な選手も採点トップ8にランクイン。特にCookはすでに3GAと今季はファイナルサードでの貢献も見せ始めています。
CBのSenesi、Zabarnyiの双璧も順当に好採点ですね。当初はHuijsenとSenesiの競争がありましたが、結局Senesiがスタメンの座を堅持したように見えます。Huijsenは精進!
戦術・昨季からの変更点
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基本フォーメーションは昨季と変わらず4−2−3−1、ただ保持、非保持ともに少し変更された部分があります。
保持
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後方からのビルドアップの際は2−3−2−3(2−3−5)あるいは2−4−4でボールを動かすことが多いです。前者では基本的にボランチの一角であるCookがアンカーの位置に立ちつつ相方のChristieはより前方に移動。キーパーのKepaも積極的にボールに絡みます。
試合を通してどちらか一方のみを使う時もあれば使い分ける時もあります。基準はよく分かりません。私は雰囲気でフットボールを見ています。個人的には相手がプレスに出てくる時は2−4−4を使って誘引しつつ前線に一気に送って擬似カウンターを狙う時に使ってる気がします。あくまでも気がするだけです。
ただどちらの配置にせよ辛抱強くポゼッションを回すことはほぼなく、ロングボールを使ったりSBへのパスからさっさと前に進むことが基本。手数をかけることなく一気にゴールへと迫るのが狙いです。
Attacking Style: Bournemouth edition 🔴@Carra23 comments on the Cherries being the most direct team in the Premier League 🍒 pic.twitter.com/kYCSKJtCHx
— Sky Sports Premier League (@SkySportsPL) September 30, 2024
この動画で紹介されているのですが、攻撃速度やロングボールの使用率、シュート1本あたりまでのパス本数の少なさなどはいずれもプレミア1、2を争う数字で、いかにボーンマスが直線的かがわかると思います。
そしてミドルセカンド(ゾーン2)でボールを保持する場合は配置がまた変形し、3−2−5や3−1−5-1の様相となります。
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3バックはCBに加えてボランチの一角、大半の場合はCookが左右どちらかのCBに入り、押し出されるSBはウィング的なポジションを取ります(所謂2−7移動)。左SBに入るKerkezあるいはDangoはIHのポジションに入ることもありますね(2ー8)。特にKerkezは味方の配置・動きを見つつ柔軟に移動しているイメージ。稀ですがツーボラにも入ります(2−6)。中盤はボランチの残りとトップ下が降りて3ー2ー5の2を作る場合もあれば、残ったボランチがそのまま一人になってアンカー然として振る舞う場合もあります。
昨季もゾーン2に入れば3−2−5を形成していましたが、片方のSBが2−7移動をするよりシンプルなものでした。
実際これ(Cookの斜めサリー)のメリットってなんですかね?教えて偉い人。ただ3バックになることで2トップの場合が多い相手1stライン相手に数的有利を作り出すことで2トップの脇からSenesiとCookがボールを持ち上がれるのは良いところだと思います。特にSenesiは相手を最後方まで押し込んだ時に前目に出る傾向があるのと、ペナ角少し手前あたりからのクロスがかなり刺さるので攻撃に厚みが出ます。(ただ主要クロスターゲットだったSolanke退団が痛い…)中央に入るZabarnyiもスピードがありクリーンにボールを奪い取る技術もあるので、両サイドCB後方のカバーはモーマンタイ。そう考えるとまあまあ理にかなっている?
兎に角、ミドルセカンドまで相手を押し込んでしまった場合は当社比で丁寧に繋ぐことも増えるようになります。攻撃の重点が置かれるのは左サイド。LWとLBが連携しつつ、トップ下やボランチとともに流動的に動き、LCB(主にSenesi)もボールに絡みつつ大外からのクロス、ポケットへの侵入、相手の注意を引きつけつつ右サイドへのサイドチェンジでSemenyoにフィニッシュまで全てをお願いなど、ユニットでの攻撃を機能させたい感じ。具体的な選手の名前を出すとTavernier、Sinisterra、Kerkez、Dango、Christie、Senesi辺りがよく左サイドからの崩しを担っています。
非保持
そら(Iraolaなんだから)そう(ハイプレス)よ。
というわけで今季もIraolaボーンマスの代名詞であるハイプレスは健在。サイドに相手を制限し、圧縮して奪い取ったり無理やり蹴り出させて回収することが狙いです。ただ昨季の主に前半戦に見せたオールコートマンツーマンのような過激なプレスでは減り、マンマークとゾーンを合わせた感じになりました知らんけど。
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ボーンマスのプレス時の陣形も4−4−2ということで素直にいけば配置がそのまま噛み合う組み合わせ。しかし今季はトップ下の選手がより相手の中盤を意識をしつつ、ボランチの一角(そして今度も大体Cook)が少し後方に待機するようになったかなという印象。後方に待機することでライン間にいる相手も牽制するようになりました。
昨季はトップ下が純粋な4−4−2としてCBの一角をマークしていたことも多々あったのですが、今季はまず中盤をケアしつつ、目の前のCBにボールが渡った場合はカバーシャドーしながらCBに向かい、その後方のCookも合わせて中盤にマークするようになる感じです。昨季よりも少しリスクヘッジに重きを置いたプレスの仕方になったでしょうか。
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一方で後方は変わらずマンマーク。相手のトップやトップ下が降りてボールを引き出そうとすればどこまでもついていきます。担当の選手にボールが出ればタイトに寄せて前を向かせないことが重要。ファール上等でくらいつき、綺麗に奪えれば即座にカウンター発動です。特に血気盛んなKerkezやSenesiはノリノリガツガツ担当マークを襲っています。
トランジション
ポジトラは速攻が基本。高い位置でのプレスからにせよ撤退ブロック守備からにせよボールを奪ってからは前へ前へと進みます。中央ではEvanilsonのポストプレーが役に立ち、サイドから攻め上がる時に光るのがSBの攻撃参加。特にKerkezは鬼のようなスピードで上がってきます。ネガトラは即時奪回を目指します。ポジトラでもネガトラでも求められるのは強度と運動量。特に二列目と三列目は90分を通してピッチを縦横無尽に走らなければいけませんが、Iraolaもそれは考慮しており、大体後半60ー70分くらいで一気に交代カードを切ってチームの燃料を補充します。交代枠が5枠になって本当に良かったなーって今更思います。
良い点
内容の向上
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横軸:得点期待値(x GA)
@markrstats
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Opta
一年目の昨季から内容自体はかなり良化してきました。x Gやx GAに全幅の信頼を置くわけではありませんが、データ的にはボーンマスはリーグでも上位の指標。Optaによれば順位の期待値は5位とかなりの好評価です。
実際に試合を見ていても「手も足も出なかった!」と言う試合はなく、0−3でボコボコにされたリヴァプール戦も少なくないチャンスを作りx G自体は1を超えました。というか今季ここまでx Gが1を下回ったことがありません。
志向する戦術の浸透
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— Sky Sports Premier League (@SkySportsPL) September 30, 2024
再びこの動画から引用しますが、ボーンマスは走行距離、スプリント数、ファイナルサードでのプレッシャー、シュートに繋がる高い位置でのターンオーバー数などでリーグトップクラスの数字を残し、Iraolaの目指す高強度のハイプレスサッカーがさらに洗練されてきたことを雄弁に語っています。
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横軸:相手のビルドアップ完了率
@markrstats
この図を見ればもっとわかりやすいかな?右上にいるチームは相手のビルドアップを阻害し、高い位置でのボール奪取ができているチームです。ボーンマスは縦軸(ボール奪取数)で頭ひとつ抜けていますね。プレスの成功率で言えば数チームに劣りますが、それをプレスの回数で補う脳筋集団。トランジションの項目でも触れましたが二列目と三列目は消耗が激しい中本当に足を止めず頑張ってくれています。う〜んIraola先生のご指導だ。
ボーンマスの中盤〜2列目。迷いなく食いつき時間を奪うとともに、外されると二度追いプレスバックも厭わないのえらすぎるな
— かりんとう (@karin_cpfctokyo) September 30, 2024
特にツーボランチを組むCookとChristieはボール回収でリーグトップの数字を残しています。お互いインテンシティーがウリの選手ではなかったのですが、Iraola政権下で化けた二人です。う〜ん(re
Most times possession won in the midfield third in the Premier League this season:
— WhoScored.com (@WhoScored) October 11, 2024
◉ 25 - Ryan Christie
◉ 25 - Lewis Cook#AFCB's midfield duo leading the way. 💪 pic.twitter.com/VEuLncpXyR
課題・改善点
内容と釣り合わぬ結果
先ほど言った通りボーンマスは数値上はリーグでも有数の指標を残しています。しかし現実は7試合で2勝止まりの13位。せっかく試合を優勢に進めておきながら勝ち点を落とす試合が頻発しています。特にニューカッスル戦、チェルシー戦、レスター戦は相手を抑えながらチャンスを作ってたにも関わらず、この3戦で得られた勝ち点はたったの1。サポーターも毎回もどかしさを抱えながら試合を見ています。
じゃあ何がいけないんでしょう?何で期待値通りにいかないんでしょう?答えは大体攻撃にあります。具体的に言えば
カウンターが下手:折角プレスで奪っても、折角空いたスペースから速攻を仕掛けても、なかなかゴールにつながりません。洗練されたプレスとは裏腹に、カウンターでは各選手の意図が揃ってないことが多く、ため息をつくようなフィニッシュに終始します。特にウィンガー陣はもっとエゴ抑えろ周り見ろ。
シュートが下手:単純ですが深刻な問題。x Gはリーグ6位の12.24を記録しながら実際は8ゴール。下振れ具合はリーグ有数です。特にEvanilsonとTavernierはすでに個人で−1を超える下振れ具合。
セットプレーが決まらん:昨季リーグ3位の数字だったコーナーからの得点は未だゼロ。これは正直運要素が強めで、フォレスト戦とニューカッスル戦で際どい判定でコーナーの得点を取り消されたり、レスター戦ではZabarnyiのヘッドがポストに嫌われたりと、内容自体は悪くはないので自ずと決まり始めてくれるはずです。
ストライカー頼れん:現在のストライカー1番手は移籍後全試合にスタメン出場しているEvanilsonですが、現状は苦戦気味。少し降りて来てワンタッチツータッチで味方にボールを解放できるポストプレーは良いのですが、他の面でいいムーブができなくて辛い。Solankeのように裏抜けを試行することも多くなく、ボックス内でも長身でもないため怖さがない。控えのÜnalも怪我明けでまだ本調子ではない様子。ストライカーで点が取れない問題はチームの決定力不足にそのまま直結しています。
代替案の欠如
これも気になりますかね。プレスがはまらなかったり、ハイラインが裏目に出たり、ロングボールが通用しなかったり、相手がドン引きした時のプランBがありません。プレスが空転しハイラインの裏をつかれ大量失点したリヴァプール戦は実力差があるとわかっていても「もっと上手く戦えたんじゃ…」と頭を抱えました。中盤が間延びして中央を一気に前進されることもあるので、相手や時間帯によってもうちょっと柔軟にEUROで大流行したミドルブロックなんかも取り入れられると良いんですけどね。保持面でもフォレストやレスターなど引いて守って裏のスペースを消す相手には苦戦を強いられました。まあそもそもこんな複数の局面で容易に戦術を整備できたら苦労しないんですけどね。殴り合い戦法を極めてビッグ6だろうが降格圏だろうがカオスな試合をするのもまた一興か。
これから期待する・頑張って欲しい選手
個人の独断と偏見です。もう疲れたんで雑にざっといきます
Kepa:ここまではまずまず。キックを活かした素早い攻撃に再現性を。
Araujo:守備はやはり良い。スタメン定着を目指そう。
Kerkez:地味だが確実に成長。スタミナ、対人と気の利くオフザボール○。ボールを持った時のプレー精度をあげよう
Huijsen:地上迎撃でもっと強くいきたい。挑戦を恐れず成長しよう。
Adams:はよ怪我治せ。Cookの負担を軽減してさしあげろ。
Dango:怖さは増してきている。このまま精進しスタメン奪取!
Brooks:他ウィンガーとは一線を画するタイプ。きっと必要になる場面が出てくる。
Sinisterra:頼りになるジョーカー。出場時間は少ないが決定的な仕事に期待。
Evanilson・Ünal:Solankeの後釜は大変だと思うが、プレッシャーに負けず自分なりのストライカー像を見せたい。目指せ二桁。
最後に
ここまでボーンマスの序盤戦を振り返って来ました。最初の7試合、ロケットスタートというわけではありませんが、内容は充実していると言っても過言ではないと思います。ここから細部を詰め、よりチームとして洗練された姿を見せ結果でも進化を見せたいところです。
深夜にバーって書いたので誤字脱字あったらすみません。最後までご覧いただきありがとうございました。