動物撮影は知識・技術・敬意【動物園・水族館のススメ】
SNSの普及で動物園や水族館でカメラを構えるお客さんが増えました。
Twitterにも愛らしい動物たちの姿や行動が日々アップされているので
僕も撮影の参考や新たな知識を得るために活用しています。
手軽なのはスマホでの撮影ですが、段々とそれが趣味になっていくと
一眼レフに手を出し、レンズの沼にハマり…と際限のない世界が待っています。(その辺好きに散財してください)
しかし、スマホでも一眼でも一度立ち止まって考えてもらいたいのは
被写体は「生きている動物」であるという事です。
「人間に撮影される為に産まれる動物」は存在しません。
僕に関わって素敵な写真を撮影したいと思い、飼育施設を訪れる人達には
「動物を撮る」ではなく「動物に撮らせていただいていている」
という認識を持って欲しいのです。
そこで今回は動物を撮影する上で
僕が大切にしている3つの事をお話します。
・知識
まずは「知る」という事です。
以前も「掲示物を読む」事が大切であると記述しましたが
事前に被写体の動物を知っておくと特徴を捉えるため意識的に
撮影箇所や撮り方が変わったり、習性行動が起きそうな時にカメラを構えて
じっとシャッターチャンスを待つことができます。
もちろんその構図は動物の「意志」によるもので撮影者の「意図」で
必ず撮影できる保証はありません。ただ、その行動を見せてくれた瞬間を
逃さないために「知る」というのは人間の大きな脳みそ特技だと思います。
・技術
まず、大前提ですがカメラのフラッシュやAF補助光は厳禁です
特に犬や猫などヒトに身近な動物は網膜が敏感なため健康に害を及ぼす
可能性があります。最低限フラッシュやAF補助光の設定ができるぐらいまでカメラには慣れておきましょう。
さて、本題ですが撮影するならば彼らを魅力的に撮ってあげたいものです。
そのためにはカメラの操作や取り回しを身につけておくことが重要です。「シャッターチャンスだったのにズーム方向を間違えた」とか
「シャッタースピードが遅すぎてブレブレの写真を撮った」とか
「撮影設定が分からなくなって撮りそこねた」とか
僕も含め最初はそうやって失敗を繰り返してきました。
(ぎょえ…)
その状態を図で表すと
「動物」と「カメラ」+「ヒト」
という感じでカメラを間に噛ましているような違和感があります。
しかし、撮影を続けているうちに体に慣れていきカメラの取り回しで
失敗する事は少なくなっていきます。そうやって撮影していてカメラを意識しなくなった時に初めて「動物」と「ヒト」として被写体に向き合う事ができます。
(時期によっては飛んでるトンボを撮影して練習してみたりとか)
いざという最高の瞬間のため常に準備をしておきましょう。
・敬意
3つの要素の中で最も大切な事が「敬意」です。
僕が敬愛する動物写真家の岩合光昭さんは
「動物と同じ目線」になって撮影された作品が特に注目されています。
例えば猫の写真でも「猫の背丈と同じ目線」で撮影された写真が多く
逆に日常的に見る「立った人間から見た猫」という構図の写真は
僕が知る限り見たことがありません。
他にも犬だったりワニ(!?)だったりと人間がその動物目線まで
頭を下げ目線を合わせる機会の無い動物の写真も
同じ目線の構図にこだわっています。
この話は単純に「良い写真が取れる構図」の話ではなく
「動物と同じ立場になって撮影するのだ」というメッセージなのです。
そして、なぜ動物に対しての「敬意」が3つの項目の中で最も大切なのか
逆に敬意を欠いてしまったケースとして、以前起きた事件をお話します。
ある名声の高い写真コンテストに入賞した写真がありました。
内容は「鳥の群れが湖面から飛び立つ様子」を収めた写真でした。
確かに幻想的な写真で「よく撮影できたな」と感心してしまう作品でした…
が
「鳥を飛び立たせるために音や光で刺激を与えた」
「我ながら【してヤッタリ】の一枚だ!」
といった受賞者のコメントが掲載されると作品への称賛は
一気に非難の嵐に変わりました。
どれだけ美しい写真が撮れようとも、動物達の生息環境を乱したり
周辺の環境を侵す事は絶対にあってはなりません。
最近でも著名な写真雑誌が別巻で「鳥の生態を知らない愛好家の問題」
という特集で野鳥撮影でのルールやマナーを警鐘しなければならないほど
悪質なカメラマンが目につくようです。
ハッキリ言ってそんな人間に一生カメラを触らせてはいけません。
称賛を得るために動物を撮影するのではなく
レンズを通して接することで何を考えることができたのか。
人間がもし賢い動物だというならば、敬意を持って被写体の動物達と同じ目線になり、それらを伝える事ができるはずです。
一部の動物として。
ご支援頂けると僕が遠めの動物園に行けます。