映画「インファイナル・アフェア 4K 3部作」観ました
インファイナル・アフェア 4K 3部作
インファイナル・アフェア (2002年)
インファイナル・アフェアⅡ 無間序曲(2003年)
インファイナル・アフェアⅢ 終極無間(2004年)
以前からタイトルは耳にしていたので、この機会に観てみようと意気込んで久々に前売り券も買った。
香港ノワールの傑作で、互いの組織に潜入捜査している警察官とアフィアの二人が主人公であるという、ざっくりしたことしか知らずに行ったので、オープニングの仏像の映像や無間の説明に驚いた。想像以上に深い作品のよう。
ただ、始まったら、別にそんなこと難しいことを考えなくても充分面白い。看板がごちゃごちゃしている街の風景が、行ったことはないけれど、いかにも香港という感じ。互いに潜入している組織に素性がバレそうでスリリングな展開が続いてドキドキする。びっくりしたシーンで思わず二回くらい小さくヒッと叫んでしまった。また、登場人物達の日常や心情も細やかに描かれていて、キャラがより生身に感じる。
そして、ラストで椅子から転げ落ちそうになった。
予想もしていなかった終わり方に、ええええっ…ちょっと待って……これ続きも観る……べきなの…?と暫く茫然としてしまう。デモ、モウマエウリ、カッチャッテルシ……。
確かに、無間地獄では死ぬことも出来ず苦しみが続くという説明の意味がじわじわと来るラストだった。
そんな訳で全く期待しないで観たⅡ、結果からいうとすごく良かった。
映画館の椅子に座ってからも、もうⅡ飛ばしてⅢを観ればいいんじゃない?と不届きな事を考えていた。(そのⅢですら、その時点では、前売り買ってなかったら観なかったかもという感じ。)
けれども、見始めるとあっという間に物語りの中に。それに、Ⅱを観ないと物語りの重要な部分がわからなかった。組織のボスのサムとウォン警部の関係やヤンがなぜ警察学校を中途退学させられて潜入捜査の任務に就くことになったか等々。
確かにⅠ(便宜上この記事ではそう呼びます)を観ているときは余り気にならなかったけれど、後で考えると謎の部分も多かった。自分が字幕読み飛ばした?と思っていたけれど、そうではなく説明がなかったもよう。
それにⅡの方が過去に遡っているので、Ⅰよりも懐かしの香港が溢れていてている感じも素敵だった。かの有名な水上レストランのJumboという電飾看板観たときは、さすがにテンションあがったので、詳しい方だったら街並みや看板などもっと懐かしいだろうなと思った。
Ⅱのラストで香港が返還され、花火が夜空を彩るシーンを見ながら、確かに当時ニュースでこんな映像見たなと思った。映画の中では、警察でも旗や看板や制服の紋章のバッジを新しいものに付け替えたりするシーンもあって、話の表面には特別出てこないが、改めて登場人物達を取り巻く時代の重さを感じた。
自分の想像を超えてⅡが良かったので、Ⅲはそれなりに期待して観た。ただ一方で、ⅠとⅡが良かった分、どういう話しになるのか不安もあった。単なる補足と残務処理的な内容で終わったら、かえってつまらない気分になるだろうし。でも、そんな心配は無用で、Ⅲも凄かった。
ただ、過去に戻ったり現在になったりするので、ついていくのが少し大変。真相を追っていく部分は面白かったけれど、どちらの主人公の側に立っても、ひたすら切ない。ラウの選択はⅠでは、それは都合良すぎだろうと思ったけれど、Ⅲまでくるとその印象はあっても悲壮感の方が増して切なくなる。
しかも、ラウが組織に入った理由が明かされて、さらに複雑な気持ちになる。実際ラウは警官としても優秀だったから、正規のルートで入っていれば本当に立派な警察官になれたはずなので、人生誤った感が凄い。確かに、マリー姐さん格好いいので、ラウが陥ってしまった理由にも納得できるけど。
ただ、どちらかというと、ヤンの方がその生い立ち(組織のボスの隠し子)ゆえに、運命から逃れられなかった感じは強い。大人になったヤンは、どこかずぶ濡れになった子犬みたいな風貌なのだけれど、アフイアとしても警官としてもとても優秀なうえ、信念は絶対曲げず、ひたすら任務を遂行していくところは、皮肉なことにその血ゆえの才能なのかなと思う。
また、双方の組織とも本土との関わりが深くなっているのも、時代背景を感じさせる。更に、その影響で、ⅠⅡよりも誰が味方で敵なのかわからない。この人、絶対相手側だよねと思って観ていたら違って、思わず疑ってごめんという感じ。わざとミスリードするように描かれていたとは思うけれど、すっかりそれに惑わされてしまった。
そんなことも含めて、撃たれた跡が仏様の額のポチ、白毫(びゃくごう)というそうだが、それみたいに見える人は、生前の行動が正しかったのを表しているのかなと思った。
いろいろと時代も交差して、大筋はⅠでもう結末がついているし、ラストどう持って行くのかなと思っていたら、それが物凄くよかった。
無念さも切なさも包み込むような洒落たラスト。場所も流れる女性の歌声もすごく素敵で、もう一度Ⅰに戻って最初から観たくなった。
そして、そんなことはあり得ないのだけれど、このⅢから始まる話は、今までのⅠに戻るのではなく、皆が幸せになれる未来だといいのになと思った。
ちなみに、ヤン役のトニー・レオン氏とラウ役のアンディ・ラウ氏がⅢから18年ぶりに共演した「金手指」という映画が、今年の末に中華圏や米や英国などで公開されるそうなので、日本でも公開されたら観てみたいと思った。