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【特別なキス】-Zain- 0話「ひそやかなる戒め」

ふと閉じていた目を開いた。
そこは、星々が息づく空間。
かつて、彼が産まれた故郷の宇宙。

…今、何かを感じたのに……

…なんだろう、この嫌な予感。
…切り離した大切な空間。
…遠ざけた、あの……

長い髪が波打った。琥珀の瞳が金色に輝きを増す。

…タンダードの地が、近づいてくる。
…行かなければ…。大切な人たちを守るために。

眠っている体を起こしにかかる。そして意識も。
彼のまわりで眠りについている意識を、かの地に飛ばす。また、新たに巡り会うために。
そして、彼の体も光に溶ける。
行かなければならない。

黒い煙のような、まとわりつく炎。
一瞬の隙をつかれた。

…そんな! こんなに近いだなんて……

意識がバラバラになる。忘れもしない感触に意識を突き通されて、崩れそうになる。
まだ眠りについている意識のいくつかを、最後の力でかの地へ飛ばす。

…無事に着いて……

いくつかが、黒い炎に飲み込まれるのがわかる。大切な人たちを奪われてしまう。
奪い返せるか…。

…………、届かない…。

かの地を目指す意識と、執拗に追う炎の間に結界をつくる。
そして、力を解放した。
空間が歪むほどの衝撃が、彼自身をも傷つける。
もう、自分をかばう力は残っていない。そんなことをしたら、吹き飛ばせない。

かの地への方角をみつけて、そして、彼は眠りにつく。
しばらくの間、かの地に着くまで、傷ついた体と疲れた意識を、休めるために。
その側にきらめく黒い瞳を持つ者が現れた。
すべてを解放して、深い眠りにつく彼をそっと抱きしめる。

…行くがいいさ。今度こそ私が……

気付かれない様に、彼の意識に少しだけ潜りこむ。
彼の意識。光に満ちた美しい世界。
想うことは、ただひとつ。

…行かなければ……
…あの「ウェドリアーナ」へ……


(続く)


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プロローグ。モノローグ。
なんか韻を踏んでますが、一応導入部です。双方ともに我が儘です。てか、宇宙規模で我が儘されたら、止まりません、うん。
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