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歌詞に込めた想いは、短編小説から始まりました

『無題』

少しのチャンスもないのかな…。
こんなに君を目で追っているのに。
一緒にいたくてたまらないのに。
ただそれだけなのに…。
君の周りにはいつも人が集まっているから、
眩しくて。
その人たちと親しい訳でもない僕は、羨ましさや寂しさとも戦っていた。

その日の夜、
「僕には一ミリの隙も与えてくれないんだよな…」と、
呟きながら空を見上げた。
「綺麗な夜空だな」と、君を目で追うようになってから、すっかり独り言が多くなってしまった。
「このままじゃヤバい奴かも…」そう、また呟いていた。
けど、空の輝きが心を優しく包んでくれた。
なぜか涙が出た。
僕は泣き虫だ。
何度部屋に入ろうとしても、入れない。
気持ちに寄り添うような綺麗な空が、君に思えて仕方なかったのだ。
けれど、どれだけ星の降るような空を見上げても、君は一番の光を放っているから。同じ空にはいられない気がして。
それはまるで、仕事での自分を見ているようだった。
ならば、この澄んだ空気の中、隣に君がいてほしい。
もっと難しいのだろうな。
苦しい…。人を想うことは、もっと素敵なことだと思っていたから。でも、
人生でこんなにも悩んだことは無かった。
そんなことに気付かせてくれた君は僕にとって大切で、特別で。
『今の自分の気持ちを忘れたくない』そう強く思わせてくれた。
僕はきっと、この日の夜空を忘れない。
部屋に入る時、背を向けた空には流れ星が流れていた。
窓を閉め、カーテンを閉める前に手を合わせて『少しでも二人になれますように』と願った。

流れた星が戻ることはなくても、また新しく流れる星をまてばいいのだろう。

次の日、出勤すると部署移動が貼り出されていた。
そこには君の名前があった。そして会うことが難しい肩書を持つ人へと昇格していた。
おめでたい。仕事もできるし、評価されて当然だと思った。だけど、
神様は、意地悪だ。
今までが幸せだったのだと思い知らされた。
『同じ建物にはいる。偶然でも会うことを信じよう』そう、思った。

その日の仕事から帰る時、雨が降っていた。
昨日はあんなに綺麗な空だったのに…。
胸がギュッとして、頬の膨らみを涙がつたった。
傘を忘れてしまった僕は、雨に涙を隠してもらおうと前に進もうとした。
その時、視界が可愛らしい傘で覆われた。
「傘、忘れたの?良かったら入る?」と。
君がいた。
「ありがとう…ございます」
それから最寄駅まで、緊張して覚えていない。確かなことは、聞こえるのではないかと心配になったくらいドキドキしていた。
君は言った。
「部署移動なんていくらでもあることだから、また戻ってきたら、よろしくね」と。
「あ、はい。絶対に戻って来て下さいね」と、思わず言っていた。
「…これ、貸すよ!いつか返してくれれば良いから!お疲れ様!」と、
反対側の電車に乗り、発車とともに手を振ってくれていた。
僕は傘を持ったままお辞儀をした。

夢みたいだった。
輝いていた君を見ていたけれど、雨降る空も素敵だと知った。
神様は味方してくれたんだ。

僕は、星空も雨も台風だって関係ない、クローバーの種を買った。
部屋で大切に育てようと。
空ではなく、いつか育った四葉に願いを込めたい。
それに、傘がある限り僕は頑張れる。
星空に願った想いは雨の日に突然の幸せをくれた。

これからの笑顔を、先にもらった気がした。

おしまい(^^)

🍀このようなことを書きながら、短く歌詞にできないかと考えたのでした🕊️
嬉しかった🕊️🍀