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【ドイツ】思い込み

こんな場面に遭遇したことがありました。場所はパン屋さん。

ある日のお昼ごろ、あるパン屋さんで買い物をしていたら
いきなり大声で怒鳴りこんできた30代前半ぐらいの女性がいました。
身体まで小刻みに震えていてこっちまで怖くなりました。

これだけ感情的になった人はめったに見かけません。

彼女がどれだけ我を失っていたかというと
その時、お店の中は客がたくさんいて
けっこう混んでいるにもかかわらずおかまいなしで

「さっきの電話対応した奴誰やねん!?」

と店員たちを睨み付け、
対応をしたと名乗り出た年老いた店員に向かって

「アンタさっきの電話で私にLeck mich am Arsch(くそくらえ)て言うたやろ!」

と体をわなわなと震わせてまくし立てるほどでした。

「子供が聞いてるのになんてこと言うねん!」だの
「上に言うてやるから上司を出せ!」だの
とにかく大声でカンカンに怒鳴っています。

お客様は100%正しい
店員は悪くなくてもあやまらなければいけない
なんてお国柄ではないドイツ。

店員のほうにも言い分があって
説明しているのですが
その女性の頭が完全に煮え切っちゃって聞く耳を持たない。

周りで聞いていた私たちが理解した状況はこうだった。


☆☆☆
女性はさっきパン屋に電話をした。
しかし回線が悪く、2人とも十分に聞き取れなかった。
困った店員は
「kommen Sie doch hierher(ここに来てください)」
と言って電話を切った。

その最後の言葉を女性が
「Leck mich am Arsch (くそくらえ)」
と聞き間違えた。
☆☆☆

子供が聞いていたという女性の言い分から
その電話はスピーカーにされていて
スピーカーで電話をする状況ということは
車の中だったのだろうと予測ができます。
回線が悪いのもそのためだったのかも。

で、一見まったく別物にみえる2つの文、
実はアクセントが同じところにつくため
悪い回線の中聞き間違えたというのはありえそうな話。

仕事中に電話がかかってきて
客に聞こえるかもしれない状況で
くそくらえ
とはいくらなんでも言わへんのちゃうか・・・?

他の店員もそう証言していたんだけど
その女の腹の内は収まらず
(本当は店員の言い分を理解し自分を恥じているように見えたけど、あまりに怒鳴ってしまった手前、今さらひけないみたいなプライドが見え隠れした気もする)

「一言ここで謝りさえすればもうどこにも言わん。
全部忘れてやるから謝れ」

と言った。

結局他の客もいる中で丸く収まるのならと店員が折れてあやまっていました。


思い込みは人間なら誰でもある話。
怖いのは
自分の思い込みがちゃんちゃら正しいと思っている輩です。
だから自分の言い分を通すことしか考えられず相手の話が聞こえない。
衝動的に怒鳴って人を嫌な気持ちにさせる。


事を最初から最後まで黙ってみていた私たち客は
一人残らず店員に同情したに違いない。
そして思うのです。

アンタのその行為こそ子供に見せたないわ・・・。

☆☆

気を取りなおしてこの曲でも聴きましょうか。

モーツァルト作曲のカノン:”Leck mich im Arsch” ←意訳だと「くそくらえ」ぐらいの意味なんですが直訳は「おしりを舐めろ」なんですよね。この曲は日本語ではくそくらえカノンではなく、”おしりを舐めろカノン”と訳されていることが多いです。

ちなみに6声の男声合唱曲だよ。。。


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