「死にたいッス」(『モリメメちゃんメメントモリ』(仮名堂アレ)を読んで)
「哲学系ラブコメディ」。裏表紙にあるこの言葉が全てである。
ラブコメ、それでいて「哲学系」。たしかにキルケゴール、ウィトゲンシュタイン、ソクラテス、ニーチェの名前が並び、またデカルトやフッサールが用いた言葉も作中に出てくる(※1)。
しかし本作の要諦はそこではなく、杜愛芽(もり・めめ)の「死にたい」という言葉である。幾度となく口をついて出るこの一言が作中で色彩豊かに表現され、「死」という概念をまとって作品の核を為しているのである。
……とまあ、それっぽい文章はここまでにしましょう。
私はこの作品を、6月の文学フリマ岩手で偶然見つけました。見本誌コーナーを歩くうちに、「メメントモリ」というラテン語が可愛いイラストと共に私の眼に飛び込んできたんです。もう一度言いますよ、「メメントモリ」ですよ! 可愛いイラストですよ! しかも裏表紙の紹介文に「哲学系ラブコメディ」とあるんですよ! 「哲学系」! でもって本文を読むと大学の哲学科生が出てくるんですよ! 実学偏重のこのご時世に、「哲学科生」! 仮名堂アレさん(※2)ナイスですよ!
これはもうあれですよ、私に「読め」と言っているようなものですよ。勝手にそう判断してブースに向かい、一冊分けていただきました。実はラブコメをほとんど読んだことがないので後半の急展開に面食らいましたが、エピローグの杜さんが可愛かったので安堵しました。
哲学をテーマにした小説といえば『ソフィーの世界』(ゴルデル)が有名ですが、本作品も哲学への入り口になりうると思います。願わくば、『モリメメちゃん~』をきっかけに哲学を学ぶ方が現れんことを(※3)。
三留七生(※4)
※1 フランシス・ベーコンの名前もあったようだが、気のせいだろう。
※2 @are_kameido
※3 AmazonのKindleストアでも購入できるようです。
※4 学士(哲学)