学級開きの三原則
学級経営が上手な先生ほど、子どもたちとの出会いを大切にされている先生が多いのではないかと思います。
それはやはりファーストコンタクトが印象を大きく左右し、その後の人間関係にも大きく響くことを経験上よくわかっておられるからだと思います。
特に最初の三日間は、黄金の三日間とも呼ばれる、先人の先生たちも大切にしてきました。
この三日間に大切にすること=その先生の学級経営の柱
でもあると思います。
そこで、私なら学級開きにおいて何を大切にするか3つの柱から紹介していこうと思います。
ぜひ、読まれる前に、ご自身ならどんなことを大切にするか3つ考えてみてください。
3つ考えついたでしょうか?
以下に示すのは、ぼくならこうする、というものです。あなたの考えと同じところも違うところもあると思います。
比較すると自分の考えが、よりくっきり浮かび上がってきます。
あなたが本当に大切にしていること、実はそんなに大切だと思っていないことを本記事と比較しながら読んでいただければ幸いです。
(もし、3つ思い浮かびましたら「私ならこの3つ」とコメントいただけたらうれしいです😊)
さて、ぼくが学級開きで大切にしている3つは次のものです。
1.教師が上機嫌であり続ける
2.笑顔で全員の名前を呼ぶ
3.子どもを褒めて合格させる
以下に詳細を記します。
1.教師が上機嫌であり続ける
新学年初日。ピカピカの教室に座る子ども達はワクワク感と不安にもまれています。
前日、いや前年度からずっとこの日を思い続けてきたことでしょう。
新しい先生はどんな人だろうか。
楽しい学校になるだろうか。
勉強は難しくなるかな。
このような状態で教師がまずすべきことは「不安を取り除く」ことです。
彼らはもうすでにワクワクしっぱなしです。
そのワクワク感をそのままに、不安を取り除くことさえできれば、学級開きとして大成功と言えます。
私は上機嫌である状態とは具体的に以下の三点であると考えています。
笑顔であることは何より重要です。
ニコニコしてさえすればいい。
そのぐらいに重要です。
笑うという行為は反応の豊かさです。
教師の反応に豊かさがあるからこそ、子ども達は、ほっと息をつけます。
子ども達の言葉にうなずく。
にこやかに微笑み返してくれる。
目を見開いて受け止めてくれる。
こうした豊かな反応により、子ども達の安心感は形作られていきます。
それを加速させるのが、ほめることです。
子ども達をほめることで、自分が相手に好意的な印象を持っていることを伝えられます。
そしてそれは、決して打算的なほめ言葉ではいけません。
子どもを認め、素直に驚ける、心からほめられる。そんな誉め言葉が必要です。
生まれたての子ども達は、立てどしゃべれど、すべて「後追い」で育てられてきました。
「もうそんなことができるようになったの?」
「こんなこともできるんだね」
すべて後追いでほめられてきたのです。
しかし、年齢を追うごとにだんだん
「いつになったらできるんだ」
「まだそんなことしてるのか」
そうした「先待ち」の教育になっていく場面はよくあるのではないでしょうか。
4月の最初は、生まれたてです。
教師も「後追い」の心で子ども達の成長を心待ちにしながら楽しみたいです。
2.笑顔で名前を呼ぶ
子ども達との出会いでは飛び切りのサプライズを用意してあげたいところです。
ギターを演奏したり、
楽しいゲームをしたり、
レクをしたり、
もちろん、そうした時間のプレゼントも温かいものになるでしょう。
私もそうした取り組みを始業式では組み込みます。
しかし、それよりもっと早い段階で渡せるプレゼントがあります。
それが名前を覚えることです。
子どもといっても、いち個人の人間です。
名前を呼んでもらえることは、自分を認識してもらえているということ。
初対面の相手が自分のことを知っている、これほどシンプルかつ相手に伝わりやすい好意の伝え方を私は他に知りません。
私は4月の始業式で自分の自己紹介をした後、一番最初に、子ども達の名前を呼びます。
始業式の時に姿勢が良かった子。
大きく口を開けて校歌を歌っていた子。
起立のスピードが速い子。
拍手がすばらしかった子。
これらの子達を記録しておきます。
顔と名前を始業式の時点で覚えていれば可能です。
始業式後に、こんな感じでクラスで言います。
努めてにこやかに。
子ども達は驚きます。
名前をなぜ知っているのか?
始業式の時にそんなところを見ていたのか?と。
休み時間に入ると次々と子ども達が周りによってきます。
「私の名前分かる?」
「俺は?」
すべて答えます。
子ども達は嬉しそうに驚きます。
ただ、名前を覚えるそれだけです。
4月なら、始業式までにだいたい1週間近く時間もあります。
技術も何も必要ない。
前年度の写真と名簿があればだれにでもできます。
名前を憶えている状態で、ギターを弾いて一緒に歌ったり、ゲームをしたり、レクをしたり、その瞬間に子どもの名前を呼んでほめたり、なんなら、名前を呼ぶだけでも、より一層その時間が豊かになることは想像に難くありません。
名前を覚えるということはそもそも、人間関係において非常に重要なコミュニケーション方法の一つです。
当然、対子どもでも効果は抜群です。
名前を覚えることはすべての活動の効果を底上げしてくれます。
初対面の先生が自分の名前を覚えていて、ニコニコと自分のことを呼んでくれる。
それだけでも十分過ぎるほどの"出会いの演出"になりうるのではないでしょうか。
3.子どもをほめて合格させる
学級開きではたくさんのことが語られるでしょう。
学級の展望、教師が大事にしていること、子ども達に大切にしてほしいこと。
めちゃくちゃ大事だと思います。
ぼくもそうした話をします。
ただ、これは先生方によって大切にしていることが異なるので、ここでは大きく触れません。
どんな話であれ、先生が腹の底から大切に思っていることであれば響くと思います。
その上で。
言葉は言葉にすぎません。
どれだけ希望を語っても、実体験が伴わなければそれは空想にすぎないのです。
また、一番初めの段階で、固く心を閉ざしている子どももいるかもしれません。
彼らに、何とか希望を持たせたい。
自分はできるんだということを感じさせたい。
そう思って、熱く語られる方が多いのではないかと思います。
子どもたちの心を開くのは、言葉だけでは難しいです。
実際に体を動かし、教師から丸をもらうこと。
そして、その「できた」という体験を幾度も積むことが彼らに希望を持たせる手段です。
どんなことでもいいです。
教師が価値を語り、子どもに活動させ、教師が一人一人に必ず丸を付ける。
一人一人に必ずフィードバックを返す。
そうした時間が学級開きには必要です。
たとえば、私は、学級開きの際には、連絡帳を書かせます。
徹底してその価値を語ります。
こんな感じです。
子ども達はズバババッと連絡帳を出し、たぎった眼でこちらをみつめます。
黒板に今日の連絡を書き、書けた人から教師のところに持ってこさせます。
「頑張ったな!」
「めちゃめちゃ濃く書けてる!」
「最高に美しい」
「魂こもってる!」
「よく持ってきたね」
ありとあらゆる言葉でほめ、丸を付けます。
やっていること自体は非常に簡単です。
でも、その価値を伝えることでこれほど簡単なことでも、シーンと熱中して取り組みます。
丸をもらえることで子ども達は小さく成功体験を積むことができるのです。
思いっきり活動のハードルを下げます。
そして、思いっきりその活動の価値を上げます。
簡単なことでも、その価値を十分に伝えれば、子どもたちはそに熱中します。
日々の授業はこの「連絡帳を書く」の延長にあります。
教師のマインドとして、先述した「後追いの心」を持つとは、こういうことなのだと思います。
できることに価値を見出し、教師がフィードバックをする。
超えたハードルは小さくとも、いつしか驚くようなハードルに達していることもあるものです。
ちなみに、この連絡帳の字は今後のアセスメントにもなります。
その子の全力の字はどの程度かという判断ができるのです。
雑な字になっている場合でも、丁寧な字になっている場合でも、4月の一番最初の字を振り返ることができます。
終わりに
ぼくの学級開きで大切にしている3つのことを書きました。
あなたの大切にしていることと被っていものはありましたか?
違っているものはありましたか?
違っている場合はなぜ違うのでしょうか?
それを考えていくと、あなたが大切にしたい「学級の柱」が見えてくるのではないかと思います。
ぼくも、みなさんの考えから自分の大切にしていることを再度見返したいと思っています。
ぼくと考えが違う人ほど、ぜひ教えてください。
きっとそういう意見を聞くことでぼくの大切にしていることがもっとくっきり浮かび上がってくると思うのです。
最後までお読みいただきありがとうございました。