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「物を大切に」をどう伝えるか
「物を大切にしようね」
という話を子どもたちに伝えたい時にあなたならばどう伝えますか。
大きく分けて3パターンかと思います。
①片付いていない事実を注意する。
②道具箱や机の中を整理する時間にする。
③物を大切にすることの価値を語る。
どれか、またはいくつかを複合的にしていることかと思います。
何年生であっても子どもたちの雑さには手を煩うものです。
かびたパンがロッカーから出てくるなんてことも。
そう思いながら放課後の自分の机を見るとグッチャリとしていて、おいおい人のこと言えねぇなぁなんて思ったりもしますが、さすがに大人ですからカビパンをつくったりはしません。
この辺りの、整理した方がいいと思っていてかつ、最低限のものの管理は行えているのが物を大切にしているか否かの境界線であるように思います。
分解すると、この二つです。
①整理した方がいいと思う気持ち
②ものがどこにあるかわかる最低限の管理
そして、大人はこの辺りの最低限の境界線は超えないので、雑に扱っていても問題ないように感じるのではないでしょうか。
子どもたちは平気でこの境界線を下回ってくるので、「ちょっと待て!」となるのでしょう。
子どもたちに伝えねばならないのは、当然①と②の両輪です。気持ちだけで整理はできませんし、方法論だけで整理する気も起きません。
方法論はいろいろあるでしょう。
整理術というのは世に溢れています。ここでは触れません。が、多くの方が、この整理方法についても教えていることかと思います。
あくまで、①の気持ちにさせることがまず大切であると思っています。
日々、「どうやったらあの子に伝わるだろうか」「響くためにどう伝え方を工夫しようか」そんなことを考えています。
テレビでも講演でも、響く人の言葉というものがあります。
言葉に人は感動し、動かされます。
伝わらないということは、伝え方がその相手に合っていなかったということです。
ならば、適切な伝え方がなされれば、自分の考えや気持ちもしっかりと相手に伝えることができるはずです。
以前、伝わり方について考えたものが以下です。
今回は受け取り手側になって考えてみます。
受け手からすると、その話で知性が動くのか、感性が動くのかそのどちらかが動けば、心が動いたと言えるのではないかと思っています。
知性とは知的な話。
偉人の話や教訓的な話です。いかに、それを行うことで価値(自分のメリット)が生まれるかということ。
たとえば、こんな話をクラスにしたことがあります。
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これは知的に子どもたちに語りかけた一例で、知的な話が好きな子たちは心動くお話の一つです。
しかし、これではあまり心動かない人もいる。
シンプルに自分ごとになっていないからということもありますが、心動いていないから自分ごとにならないのです。
もう一つアプローチがあります。
それは、感性に働きかけるというものです。
1年生はこうした知的な話が伝わりにくい傾向があります。
抽象的なものの考え方がまだまだ難しいためです。
そのため、このような通信で紹介しました。
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物語調で訴えかけるのは、ものの気持ち。
「えんぴつくんがかわいそう」という発言からもわかるように、子どもたちは直感的に「物を大切にしないと」という気になっています。
実際このあと「先生、今日からもの大事にするよ!」なんて言っていた子もいました。
ここから、物をどうやって大切にするのか。大切にするってどういうことなのか。
具体的な話や方法論に繋げていくのは先生方の今まで培ってきた経験値次第です。
知的な話も感性的な話も状況によって使い分ける、または両面から語りかけることが必要です。
もっと直感的に、子どもたちが「自分の道具を可愛がることができる」アプローチをするのも一つの方法です。
たとえば、物に名前を書くことや愛称をつけることがよく挙げられます。
今回は「物を大切にする」という事例を一つ挙げて紹介しましたが、何を語る場合にも、いえ、語るだけでなく、授業で得心いくように展開していくためにも、知的なアプローチと感性的なアプローチの両方が必要であるように思います。
子どもたちは、発達段階や好みに応じて入りやすいアプローチがあります。
そして、こうした多角的なアプローチを一度だけでなく、二度三度と複数回かけていくことを教育と呼ぶのではないかと思っています。
お読みいただきありがとうございました。
本記事は、教育サークル「まほろば」による、マガジン「紡ぐ学級通信」の一編です。学級通信を通した教育について、6人のメンバーが執筆した記事が50以上あります。ぜひ、ご覧下さい。
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