「ニューシネマパラダイス」という体験
私のニューシネマパラダイスとの出会いは3年前の目黒シネマだった。
「来週、目黒シネマでニューシネマパラダイスが上映されるらしいよ」
ある日知人が教えてくれた。
目黒シネマとは、旧作の作品を主に上映する「名画座」という場所らしい。
初めて知ったその「名画座」という響きのかっこよさと、名作と呼ばれる作品であることのみ知っていたニューシネマパラダイスを観ておきたい、という思いで即座に手帳に映画の予定を書き入れたのを覚えている。
[映画 名作]と検索すると「絶対に観るべき○○作品」だとか「名作映画○○選」だとか出てくる。今日ならそのうちの多くが動画配信サービスを通していくらでも、いつでも観ることが可能だ。でも、なんだか私はそれらの作品を単に消費している気がしてならなかったのだ。
夜ご飯を食べた後に、明日の朝起きる時間を考えながら、時には通学中の車内でそれらの作品に触れる。日常と地続きに触れる名作。
おそらく、名作は日常にふさわしくないのだと思う。
映画館に行く一週間前からそわそわして、電車に乗って映画館に向かって、劇場について、電気が消えて、映画に入り込んで、何十人という人と同じ2時間を共有して、電気が再びついて「ああ終わってしまった」と30秒くらい呆然として、帰り道の電車で映画のストーリーを噛みしめて…私にとってはそれ全部がニューシネマパラダイスとなった。
映画って、限りなく日常に近い、非日常なんだな、きっと。
ニューシネマパラダイスの日本での上映は1994年。私の生まれる1年前。
でも、その「ニューシネマパラダイス」という体験は1994年公開当時、劇場に足を運んだ人の気持ちを瞬間冷凍して2017年にそのまま解凍した気持ちを味わえたような気にさせてくれたのだった。
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