Aooo「サラダボウル」〜夕焼け空から藍い空へ〜

※人に読ませるために書かれた文章じゃありません。あくまで覚え書き、もしくは日記のようなものなので、あしからず。

▫️ごめんね、初っ端から自語りではじまるよ


赤い公園のアルバムをずっと聴いていた時期があった。

2ndフルアルバム「猛烈リトミック」でハマり、メジャーデビュー作「透明なのか黒なのか/ランドリーで漂白を」から順々にローテーションで赤い公園のアルバムをエンドレスリピートしていた。


当時の私は、人生で最悪の時間を過ごしていたと思う。

新卒で入社した会社でボコボコにパワハラを受けていたのである。

数回ではあったが、普通に暴力を浴びせられることもあった。


「なぜ、私は今ここにいるのだろう」


そんな疑問がたびたび頭に浮かんだ。

職場で上司の視線にビクビク怯えながらデスクワークしていた時、夜のお店へと楽しくもない接待に付き合っている時…


「なぜ、私はいまここに居る?」


と、強い疎外感に苛まれた。


突如あらわれたドラえもんにふふふーと微笑まれながら拉致された後、タイムマシンで連れ出されて、大昔の貴族のパーティに参加させられれば、きっと誰でもあのような気持ちを味わえるのではないのだろうか。


私は地獄の釜の中でグツグツとシチューの具のように煮込まれ、かき混ぜられていた。

廃墟を徘徊する生きる屍の如く、呆然自失であちこちを散歩しながら聴いた音楽のひとつが「赤い公園」だった。


歌詞の世界観は、小説のようだと感じている。

江國香織や恩田陸が描いている世界観に近いように思う。控え目でおしゃれな文体で描かれる女性視点の時折怖い物語。

私はそんな仄暗い物語の世界観に没頭することで、現実逃避をしていたのだろう。

有線イヤホン越しに浸った景色には、時折励まされ、時折駆け出したくなるような熱に浮かされ、時折独特な世界観が醸す美しさに恍惚とさせられた。


▫️2020年10月中旬

赤い公園の楽曲の作詞作曲を担当していた津野米咲が亡くなったと聞いた時は驚いた。死因は自殺と考えられると報じられていた。

しかし驚いた反面、『彼女なら不思議じゃないな』と感じたのもまた事実だった。

私の理解を超える暗い心情を、彼女は楽曲に落とし込んでいたからだ(具体的には「ドライフラワー」という楽曲で)。

彼女はずっと前から、深い深い闇の中に身を置いていたように思う。


私はその頃、赤い公園の楽曲と出会った当時とは大きく心情が変わっていた。

自分のやりたいことに向かって、がむしゃらに前進しだした時期だったと記憶している。

だから、「なんで自分はここに居るのか」と、万年迷子みたいな心情に陥ることもほとんど無くなっていた。


だからだろうか、赤い公園の最新楽曲もあまり追えてなかった。


▫️2024年10月中旬

赤い公園の元ボーカル、石野理子がボーカルを務めるAoooがメジャーデビューを果たした。

デビューアルバム収録曲の一つ、「サラダボウル」のMVが公開されたのは、アルバムの発売1ヶ月前の9月中旬のことだったらしい。


お恥ずかしながら、私がサラダボウルの楽曲の存在に気づいたのは、MVが公開されてから4ヶ月が経過した2025年1月中旬のことだった。


初めて聞いた時、赤い公園ライクのバンドが現れたのかとテンション爆上げになった。

それから、『いや、津野米咲は実は生きてて、ゴーストライターとして活動を再開したのを目敏い私が見つけてしまったのかもしれない』と烏滸がましい妄想も働かせた。

だが、その楽曲を歌うバンドを調べると、Aoooの楽曲が赤い公園に似ている理由がすぐに判明した。


先述した通り、赤い公園の元ボーカルを中心に結成されたバンドだったのだ。

(私は赤い公園のボーカルが佐藤千明から変わって以降の楽曲もしっかりと聞き込んでいなかったため、失礼ながら石野さんの顔は覚えていなかった。そのため、MV初見ではそのことに気づけなかったのである)


「サラダボウル」は聴き込めば聴き込むほど、赤い公園の楽曲そのものだった。
そのように設計され、計算づくでテイスティングされているのだとすぐに理解できた。

歌詞は『石野理子という人物が、赤い公園の元ボーカル』という経緯を踏まえて聞くと、かなり示唆の富んだ内容となっている。


どのような示唆が含まれているかについては、ぜひ実際に楽曲を聴いて、歌詞を読んで、ご自身で解読してほしい。



▫️おまけ;サラダボウルの作詞作曲者である「すりぃ」は…

有名なボカロPである。

「テレキャスタービーボーイ」はあまりにも有名だし、直近だと私が大好きなプロセカの劇場版アニメーションで、これまた私の大大大好きなユニットニーゴが唄う劇中歌の編曲を担当していたのもこの人である。


…シンプルすげぇよ。凄すぎて鼻水でてきた。

さすがに神とさせていただきます。

そして何より、この一回きりだけだったかもしれないけれど、(そして、とても失礼な表現かも知れないけど)赤い公園の新曲を聴かせていただきありがとうございます。

いいなと思ったら応援しよう!