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何を目指す林業で、何を捨てる林業にするか

 10月に入っても日中の気温が30℃近くになるなんて、今年は冬が来るのだろうかと無駄な心配している今日この頃です(いつか本当にエヴァの世界になってしまうのでは…)。

 さて、最近ではようやく新潟県でも再造林についての話がちらほら聞くようになってきました。再造林の推進をはじめ全国的にも林業の様子が変わりつつある中、今まで通りのやり方ができないという不満の声というのはよく聞きます。少し遡りますが、森林経営計画の制度がスタートした頃から、この制度をはじめ補助金や森林管理などのルールに対する批判というのは業界内から多くなってきた印象です。私が働いている地域でもこの批判(いや文句?)の声は大きく、林業事業体と行政に少々溝があるように感じます。
今回はこの批判(いや愚痴?)をするだけにとどまっている今の状態に対し、私が感じた違和感と危機感について書いていこうと思います。

1,森林管理・補助金システムに対する愚痴

これまで耳にしてきた愚痴をまとめるとこんな感じでしょうか。

〇 補助金制度は複雑で手続きもめんどくさい、後出しでルールが決まり、どんどん使いずらくなっていく。
〇 素材生産量を上げろと言う割には、それに直結しない間伐のノルマや再造林なんて押し付けてくる。
〇 そもそも山の管理は所有者の責任なんだから、なんで再造林のことまで我々が管理しなくちゃいけないんだ。
〇 ただでさえ材価が落ちてきて売り上げを確保するのが大変なのに、余計なコストばかり増えていく。

 素材生産をやってきた業者からすると森林経営計画を立て長期的に山を管理し所有者とお付き合いしていくというのが、慣れないものがあるのだと思います。

 しかし、現状、補助金を使うとなるとこのような管理や手続きというものをやっていかなくてはいけません。また、バイオマス発電用の木材を高値で販売するには森林経営計画で管理した山から出材した素材でなくてはいけないなど、流通にもこの補助金がらみの仕組みが絡んできているため、片足を突っ込まなくてはいけない状況にあるということだと思います。






2,そろそろこのめんどくさい仕組みを受け入れてはどうだろう

 今の日本の林業(素材(丸太)生産業)は産業としては残念ながら破綻状態にあって、今の時点で木材を山から出してくるにも、未来の山づくりをするにも補助金に頼らざるを得ない状況にあります。加えて、自然災害の危機感や持続可能な社会形成の機運が高まっている現代で、国の共通財産である森林資源を使うにはそれなりの説明が求められてくるのは当然なのかもしれません。

破綻したビジネスを公的なお金を突っ込んで支えるのも、「どうも森林って私たち生活の安全につながっているのかもしれない」と考えるようになったのも、社会や技術が発展してきたからこそであり、社会が良くなってきたからこそ仕組みが複雑になりめんどくさくなってきているとも言えます(仕組みが最適化されていないという可能性も否定しませんが)。

となれば、「このめんどくささは今後もあまり変わらないのだろう」と考え今度はこのめんどくさい仕組みを受け入れ、自分たちが適応していこうという思考回路に切り替えてはどうだろう と思うのです。





3,置かれた環境に対していかに柔軟に対応できるか

 補助金などのルールは常に見直されるべきだし、より良くするために常にアップデートしていくべきだと思っています。ですがこれらのルールを変えるというのは多くのエネルギーと時間が必要になるものです。ルールのアップデートのために力を使うのと同時に、一方で今のルールに合わせてどうやって上手に生きていくかについて考えることもとても大切だと思います。


 今を生き抜くには、「素材生産と補助金で売り上げを伸ばしていきたいという私たちの下心」と「共通財産である森林を健全に管理する補助金(出資者:国民)交付側の狙い」をすり合わせ、上手く落としどころを見つけていく柔軟さが必要だと思います。

 そして、これは補助金だけの話ではなく、今後森林・林業には色々なところからお金(カーボンクレジットなど)が流入し始めることを考えると、そのお金をの使い方についての説明責任というものが生まれ、出資した人たちの考えや思いにも応えていかなくてはいけません。今後は様々な立場の狙いや思いや下心、それらの折衷案や妥協点を探し出す力というものが求められると思います。

 そしてこの折衷案を探すために、「今まで大切だと思っていたこと」や「こだわっていたこと」を手放さなくてはいけない時が来るはずです。そんな時、私たちが林業をやるうえで、目指すところは何処のなのか、譲れるところは何処なのかこの線引きができているかがとても大切になってくると思います。惰性で進もうとすると、どんどん窮屈な林業が待ち受けているのではないでしょうか。

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