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ちづる×Co-Writing Farm座談会 〜コーライト(共創)で生み出される音楽 co-creation project第6弾 Special interview〜

co-creation projectとは

nana公認クリエイター(※1)となった歌い手ユーザーを中心に、「歌い手になりたい、オリジナル曲を歌ってみたい」というユーザーをアーティストとして輩出、デジタルリリースを行う取り組みです。
Co-Writing(共創)を得意とする音楽クリエイターチーム「Co-Writing Farm(※2)」をタッグを組み、リリースアーティストごとに専門チームを設立。
歌い手は歌うだけではなく、作詞作曲を含めゼロから一緒にコーライティングし、リリースまでの音楽作品制作を行うのも特徴です。

第6弾アーティストはnana公認クリエイターでもあるちづるさん。作家陣にはCo-Writing FarmよりKaz Kuwamura、永野小織、p.e.t.という豪華クリエイターを迎え、2022/12/10に「午後9時47分の幸福論」をリリース。

▼各種音楽配信

このプロジェクトならでは、ちづるさんはボーカルはもちろん、クリエイターの一人として、Co-Writing Farmから編成された作家陣と一緒にゼロからコーライトして作り上げた一曲です。そこで、今回はリリース後インタビュー特別版!ちづるさんさん×Co-Writing Farm作家陣で座談会を行いました!音楽制作秘話をたっぷりお届けします。

座談会メンバープロフィール

第6弾 │ ちづる


https://nana-music.com/users/2282007
https://twitter.com/M19dL

nana公認クリエイター。2015年からnanaを始め、ロックからバラードまで歌いこなす多彩な表現とエッジの効いた歌声で多くのファンを魅了する。現在はSNSでの歌い手活動のほか、路上ライブなどリアルでのライブ活動も少しずつ行なっている。nana公認イベント「ナナカン2」(2022開催)グランプリ受賞者。

Co-Writing Farm

Kaz Kuwamura / Singer / Songwriter / Artist

2017年、NHK WORLD “J-MELO” Breakthrough Artist ShowcaseにてJ-MELO AWARD受賞。クリエイターとして Da-iCE「CITRUS」作曲で2021年レコード大賞受賞(ストリーミング再生累計3億回超え)など、アーティストの声にフォーカスを置いた新しく斬新なメロディーメイクをモットーとしている。

永野小織 / 理系ギター作家

女性目線/理系出身の感覚を活かした戦略的楽曲提案を得意とする。コーライトにおいて、主にディレクション/トップライナー/作詞の役割を担い、作家の強みを最大限に引き出しつつ、アーティストの新しい姿を見せることができる楽曲を目指し、日々制作をおこなっている。
<代表作>Kis-My-Ft2「想花」(Japan billboard 1位獲得・日本テレビ土曜ドラマ「祈りのカルテ」主題歌)/=LOVE「ズルいよ ズルいね」(オリコン/Japan billboard 1位獲得)/Girls2/ClariS等

p.e.t. /Producer/Songwriter/Keyboardist/Guitarist

幼少期よりクラシックピアノに親しむ。学生時代には主にバンド活動にてギターやボーカルなど様々な役割をこなし、多様な音楽ジャンルへの造詣を深める。
2021年より作・編曲家、トラックメイカーとして作家活動を開始。時代を先取ったトラック制作、捻りの効いたアレンジ、ポップなメロディ作りなど、幅広い分野で定評を集める。
Works: 東京女子流 「rainy step」ukka 「ニューフィクション」BUDDiiS 「R4U」Da-iCE 「ホンネはJoke」など。


ちづる×Co-Writing Farm座談会

──この度はリリースおめでとうございます!今日は作家の皆さんを交えて座談会形式にてリリース後のインタビューをさせていただくこととなりました。本日はよろしくお願いいたします。

全員:よろしくお願いします!

──最初にちづるさんに。co-creation projectのアーティストに決まった時の感想を教えてください。

ちづる:最初にその連絡をいただいた時に「ええっ!?」と声に出して言っちゃいまして(笑)本当に自分でいいのかな?って。ありがたいお話で…。信じられなさとありがたさと嬉しさで感情がぐちゃぐちゃでした。でも、その時ちょうど路上ライブを積極的にやったり、何かに応募してみたり、音楽に対して意欲的に活動していこうと思い動き始めたタイミングだったので、自分にできるのであれば頑張りたいなと思いました。

──決まってから解禁されるまで結構長かったと思いますが、気持ち的にはどうでしたか?

ちづる:本当に私であってる?夢なのかな?と最初は思ったんですが(笑)時間が経つにつれ徐々に現実感が出てきて、さらに気持ちが高まりました。

──作家の皆さんにもお伺いします。次のアーティストがちづるさんと決まった際、最初にnanaの投稿音源などをお聴きいただいたかと思うのですが、ちづるさんの歌声の印象はいかがでしたか?

永野:すごくパワーのある声だなというのが印象に残っています。すごく意志を感じる声だなと思いました。

Kaz:僕の第一印象は素晴らしいボーカリストだなと。本当にいいシンガーというのは声そのものに説得力がありますよね。ちづるさんはそれに付随して歌唱力も高いんですけど、自分もシンガー上がりなので、まずは純粋に良い声だなと。ある一定の領域を超えている声を持っているなと感じました。

p.e.t.:やはり強い声だなと思ったのと、ウイスパーな感じとかHighの感じも個性があって、一回聴いたら忘れられない声というか。それに合うようなトラックが作れたらなという気持ちがありました。

──7月頃、最初にチームでオンラインでの顔合わせがありました。その時に、ちづるさんと"どのようなオリジナルを作りたいか"という方向性の話から始まりました。ちづるさんのこれまでの人生や、抱えてきた思い、かなり深いところまで色々お伺いしたように思います。

ちづる:少し前に仕事でちょっと辛いことがあって、それでも逃げ出さず頑張って来れたというのが「続けることに対して価値がある」という自信にもなったんです。どんなオリジナルを作ってみたいかと聞かれた時に真っ先に思ったのは、今、辛い思いをしている人が元気になるような曲を歌いたい、ということでした。

──その後、歌ってみたい曲、ちづるさんが好きな曲を教えてください。といった流れがありました。Official髭男dismの"コーヒーとシロップ"や、藤井 風さんの"damn"など10曲以上上げてくれたでしょうか。その際に「私はこの曲のこういう部分が好き」という言語化がすごいなという印象を受けたのですが、ちづるさんは元々曲を噛み砕いて聴くタイプなのでしょうか?

チームのやりとりはSlackで

ちづる:普段は自分が歌ったらどうなるのか?自分ならどう歌うだろうか?という視点と、どちらかというと歌詞よりメロディやリズム重視で聴いていると思います。いつもは感覚で聴いているんですが、今回は「どういう曲を作りたいか」「なぜこの曲が好きか」を言語化して伝えなくてはいけない。だからめちゃくちゃ考えました。言葉に出して表現するのは難しいですね。面白いけど難しくて…理由がない好きもあって。でもこんな機会はないので、楽しんで選曲しました。

──その後も2回、どういう曲を作ろうか、ちづるさんのこれまでの体験や抱えている想いなどをさらに深掘りするようなチームZoomミーティングがありました。テーマや方向性についてはそこで決まりましたね。

ちづる:作家の皆さんには仕事のことも色々お話ししました。以前の自分は真面目すぎて、完璧を求めてしまうところもあって…仕事でも周りの期待に応えなきゃと思ううちにそうなってしまったんです。そんな時に、どうしたら自分を救ってあげられる?って考えたら、少しでもできた自分を認めてあげることだなって。
ちょっと無理だなと思った時に、1日1個でも頑張れたことがあったらそんな自分を褒めてあげる、そうすることで楽になれました。
そんなに頑張りすぎなくても生きていればいいんだって思うようにもなれたんです。だから、自分を救ってあげた経験を自分の曲にぶつけて、そういう人を救ってあげたい、ということをお話ししました。

──2回目のMTGの最後に、Kazさんが「絶対に良いものを作るから任せてくれないか」と熱く語っていたのが印象的でした。そこから1ヶ月くらい、ファーストデモが上がるまで、ちづるさんとワクワクしながらお待ちしていたのですが、今回このようなフローにした理由があればお聞かせいただけますか。

Kaz:Zoomとはいえ、顔が見えた状態で話をして、ちづるさんの人柄をちゃんと知った上で一緒に作りたいという想いはありました。サオさん(永野)はちづるさんのツイートを見てそこから拾ってきたりもしましたね。
通常の作品制作は、アーティストを担当するディレクターやA&Rがいて、そういったスタッフさん達からの色々なオーダーを受けて何が似合うかを寄せていくクリエイティブな作業をしていくわけなんですけど、最近、特に海外では、クリエイターのアイデンティティ=アーティスト、作家もアーティストの一人である、という傾向が往々にしてあるんですね。
今回、ちづるさんはアーティストではあるけれども、僕たちはちづるさんというシンガーを理解し、その上で僕とサオさんとp.e.t.くんの3人も一緒に作業をするクリエイターとして、自分たちの中のアーティスティックな部分をちづるさんに合うように持っていくことが結果的にちづるさんのためにもなるんじゃないかなと考えました。全ての役割の人がフラットな関係性で良い曲を作れたら、ちづるさんと一緒に輝けるんじゃないかなと。自分達にしかできないカラーを出すことに意味があり、それがちづるさんへの誠意だとも思いました。
その結果、今回は自分達自身が大好きな、「これ一緒に作ったんっす!」と声を上げて自慢できる曲になったというか。自分達が腹の底から”大好きだ”と言える曲になりました。

──先ほど「ツイート」という話がありましたが、実は今回、ちづるさんのある1つのツイートが歌詞のきっかけになったんですよね。最初にツイートを見つけたのは永野さんですか?

※ツイートの時間に注目!

永野:私ですよね?

Kaz、p.e.t.:そうです。

永野:私がちづるさんのTwitterをストーキングしていて(笑)

3人:言い方が(笑)

永野:作家はいろんな役割をすることがあって、私もメロディを書くこともあればトラックを作ることもあるんですけど、このチームなら私は歌詞のところをやろうかなと。ちづるさんのお話を色々聞いた上で、ミーティングの場以外で普段どんなことを言ったり考えたりしているのか情報はたくさんあったほうが良いなと思って、コンセプト探しの一環でちづるさんのTwitterを見ていたら、このツイートがすごく好きだったんですよ。わかるなぁ、って思って。すごく景色も感じるし、いいなぁ、これだ!って。

──今回のタイトルは、ツイートの時間の「午後9時47分」も元になっていますが、ファーストデモができるまでは詞先だったんですか?

永野:順番的にはトラックが最初です。p.e.t.さんのトラックが先で、そのあと詞。最後にメロディ。

Kaz:トラックと詞が先にあって、そこに僕がメロディをかまさせていただきました(笑)

永野:かまさせて(笑)トラックを聴きながら情景を思い浮かべて詞を書きました。Kazさんは絶対想定を超えたメロディを作ってくれるというのが分かっていたので…

Kaz:p.e.t.くんのトラックを最初に聴いた時に「あ、ヤバいのがきたな!」と。トラックと、サオさんの素敵なリリックと、あとちづるさんの圧倒的な歌唱力で何をやってもちづるさん色に染めてくれるだろうというところでほとんど迷いませんでした。私は結果的にメロを主に担当はしましたけど、役割分担的に自分がメロを書いたという認識はあまりなくて、トラックとリリックに導かれて曲ができた、全てが一つになって切り離せないものとなって曲が生まれた、という感覚があります。これがライティングを一緒にやる醍醐味かなって思います。

──そうなると気になるのは立ち上がりのトラックを作ったp.e.t.さんなんですが…

4人:(笑)

──トラックはコードとリズムですか?

p.e.t.:そうですね、コードとリズムと、あと多少。コードとリズム、キーも決まってました。この3人では何回も曲を作っていて、絶対に良いメロが来るという信頼があったので、多少ややこしいコードではあるんですがなんとかしてくれるだろうと。実は最初2パターンあったんですよね。

永野:ありましたね。

p.e.t.:でも全員一致で決まりました。

永野:私とKazさんは「いやもうこっちしかないでしょ」って感じでした(笑)悩みもせず、という感じで。

Kaz:…2パターンあったことをすっかり忘れていました(笑)

──(笑)トラックのコンセプトや狙いはどういったところにあったんでしょうか。

p.e.t.:そうですね…最初にリファレンスとなるような曲を10曲程度決めて、その中から自分の得意分野でもあり、ちづるさんの声が活かせつつシティポップ風味の感じというところで…でもコード自体は悩まず10分くらいでできました。

──そうして待ちに待ったファーストデモが届いたわけですが、ちづるさんは最初に聴いた時いかがでしたか?

ちづる:「なんじゃこれは!?」と思って、とりあえず歌ってみな分からんと思って…即歌った記憶がありますね。

──なんじゃこれは、というのは...?

ちづる:想像を超えすぎていて、自分が触れたことのない音楽だったので、これに歌を乗せたらどうなるのかというワクワクが押し寄せてきたという感じです。歌ってみなければ想像ができないというのと、このかっこいい曲を自分の曲として出せる嬉しさ、というのがまず率直な感想でした。早く歌を乗せたいと思って、Slackのボイスメモ機能で皆さんに歌を送っちゃいました。

──そのボイスメモ的なファーストトラックがめちゃくちゃ良かったんですよね。もう直しもいらないんじゃないか、というくらいの出来で。

永野:そうそう。

ちづる:とにかく曲が凄すぎて。ワクワクしすぎて、とにかく早く歌いたい!!って感じでした。

──ボイスメモで送っていただいたのがすごく早くてびっくりしたんですが、割とスルッと歌えました?

ちづる:普段歌うとき、自分のクセが結構あるんですよね。♪私だけの〜の「わ」の裏返るようなシャクリも普段からよくやるクセなんですけど、それを出すべきか否かで悩みました。当たり前なんですけど、オリジナルなので正解がないじゃないですか。私が初めて声を乗せて発信する音楽なので、どういう感じで歌うべきなのかなっていうのは結構悩みました。実は、何テイクも録って、これ違うな、これも違うな、みたいな感じで…。最初はパワフルさを少し抑えて儚い感じで歌ってみたら「私じゃないなこれ?」と思ったり(笑)もっと私らしく歌おう、ってどんどんクセを付け足していったりとかして....一人で楽しんでましたね。オリジナルは初めてだったから、それが新鮮で楽しかったです。

──ファーストデモの時点では1番のみで、2番以降の展開をまたチームで話し合いました。その時に、「みんな」といったような第三者的視点を入れるかどうか、といったやりとりがありました。

永野:ちづるさんとも、第三者目線を入れるかについては結構綿密に話しましたよね。でもこの曲は「世界で一つだけの主人公ソング」というコンセプトにもあるように第三者的な目線は出さず、個人的なことに拘るほうが良いタイプの曲だと思って、思う存分個人的な視点からの想いを詰められたかなと思います。何事も軸は振り切ったほうがいいんですよね。私もp.e.t.さんもKazさんも振り切るタイプで。どっちかに寄ってしまえ、みたいな。

Kaz:そういうやりとりしてましたよね。一人称を貫き通すことでより普遍的に伝わっていくものになるかなって。第三者的な目線を入れると薄まって逆に伝わらないよね、と結論が出て、方向性が定まりました。

──ちづるさんのツイートが元になり、ちづるさんから色々伺ったエピソードからストーリーが生まれて曲が完成したわけですが、初めてのオリジナルという部分でちづるさんはいかがでしたか?

ちづる:自分の体験やツイートが元になっているので、これは自分の曲だ、と早めにストンと自分の中に入り込んできた感覚がありました。

──レコーディングについても伺います。実は今回、このプロジェクト初の試み、全員家が近かったこともあり、p.e.t.さんのスタジオに全員が集まってのレコーディングとなりました。レコーディングの思い出を聞かせてください。

ちづる:あまり経験がなかったのと、最初緊張めちゃめちゃしてて...これ歌えるのかな?みたいな(笑)でも親のように皆さんがあたたかく見守ってくださっていて(笑)ディレクションも「ちづるさんが思うように歌えばいいよ」ってKazさんがいってくださって、本当にありがたいなと思いました。実は色々言われると身構えて来ていたので..(笑)あたたかい言葉ばかりでリラックスして録音できましたね。

──Kazさんが中心になってボーカルディレクションをされていましたが、その辺りはいかがですか?

Kaz:レコーディングで実際のちづるさんの歌を聴くと、やっぱりシンガーとしてレベルとスキルが高いので、自分のオリジナルの曲だし、自分の体から思わず出てしまったことが正解なんだってことに気づいて欲しかった、という思いもあるんですよね。
いい意味で歌える人をコントロールしたくはないんです。通常のレコーディングだと、例えばここはこういうニュアンスで歌ったほうが伝わるかなとか、発音をこうしたほうがいいよ、というテクニカルなところで作家目線からのディレクションはするんですが、ちづるさんみたいに歌えちゃうアーティストさんは、ちづるさんの中に正解があるので。
スキルが高くて、オーガニックなピッチの感覚を持っている人ですから、色々言われてしまうと絶対素の自分が出なくなってしまい、下手すると歌っていても楽しくないみたいなことになっちゃうんで、そんなことにはしたくなかった。割と”好きに歌ってみたらいいよ”という、これはディレクションなのかな?(笑)って状態になったのは、そういう理由です。

ちづる:ありがとうございます(笑)楽しかったです、本当に。

──当初、ハモはKazさんの声で作る想定だったのが、レコーディングの場でやっぱりハモも全部ちづるさんの声にしよう、と変更した記憶があります。デモはKazさんの声だったのでそれはそれで素敵だなと思っていたのですが。

Kaz:レコーディングを見ていてやっぱり歌える人だなと改めて思い、ちづるさんの声の倍音でコーラスも入れたほうがいいというか、僕の訳のわかんない「誰だお前は」みたいな声を混ぜて聴きたくなくなってしまったので(笑)リスナーとして全部ちづるさんの声で聴きたくなった自分がいて、自分がやる必要がないなと思ったので変えました。

永野:Kazさんがすごく盛り上がってディレクションしてたのが見てて面白かったんですよね。エモーショナルなディレクションでした(笑)

Kaz:結構楽しかったですね。テンションあがっちゃいましたね。

p.e.t.:こっちはもう、”録れてませんでした”とかが絶対あっちゃいけないので、集中してやってましたね。間違えちゃうと大変なことになるので...。

Kaz:すげーいいテイクだったのに「あっ!(録れてない)」って想像するだけでも嫌だもんね(笑)

p.e.t.:怖いんで..実は昔やったことあるので、頑張ってました(笑)

──レコーディングでは何テイクか録り、その場で"この箇所はこれを使おう"というテイク選びもしていましたが、その後のMIXやマスタリングはいかがでしたか?

p.e.t.:現場で選んだものはほぼそのまま活かしました。

永野:もちろん多少エディットはしましたけど、ほとんど生じゃないかな。

──一番最初にちづるさんの歌声を聞いた時の印象と、レコーディングを終えた後の印象では何か変化がありましたか?

永野:整えるという意味でエディットはしましたが、基本的なピッチ等は活かしています。これは今回私も気づきだったんですが、一度エディットしてKazさんに聴いてもらった時に「これは元の声の方がいい」と返されて、確かになということが結構ありました。ちづるさんの歌声は、絶妙なところで感情が伝わるんだなと。そこはちづるさんが意識している部分もあるでしょうし、生まれ持った部分もあると思うんですが、その両方を含めてちづるさんの声ができているんだな、と。絶妙なニュアンスで聴こえ方や歌詞の説得力が違うと感じたので、きっと普段から色々声の出し方などを興味を持ってやっているのが活かされているんだなと。私たちは、そのちづるさんのバランス感覚や絶妙なラインを守り抜いた上で世に出さなければいけないと、私も学びがありました。

──マスタリングが終わり、完成した音源が届いたわけですが…ちづるさんにとっては初めてのオリジナルで、プロの制作工程を見れるのもおそらく初めてだったと思うのですが、何か気づきはありましたか?

ちづる:とにかく全てが初めてのことだらけで…曲ってこうやって作られるんだなって。思った以上に色々な過程があって、いろんな人を経由して、いろんな人が関わって、貴重な経験だなと思いました。あと、これからオリジナルを作っていきたいと思っているので、参考にして行けたらと一つ一つ大切に流れを見ていました。
曲が完成すると感慨深いですね。制作の途中では自分の声が音楽に乗って世に届くというのがなかなか想像できなかったんですが、マスタリング音源を聴いたら少しだけ想像できて実感が湧いて、夢のような体験だなと思うのと同時に、いろんな方に関わっていただけてありがたいなと感じました。貴重な経験をありがとうございます。

──そしてついにリリースとなったわけですが、周りの反応はいかがですか?

ちづる:全肯定ですね(笑)あたたかい人たちに恵まれていていろんな感想を伝えてくれる方も多くて。拡散してくださる方も多くて、恵まれているなあと。
私と同じくらい喜んでくれるフォロワーさんもいるんです。最初の♪9時47分午後〜だけを何十回もリピートして聴いてくれたりとか。「午後が後に来るんだ〜!?」って(笑)私も「そこ!?」みたいな(笑)客観的に見たら、午後が後に来るのは不思議かもしれないなって…実は私もデモを聴いた時に午後が後に来るっていうのは面白いなと思っていました。

永野:これはちょっと言いたいんですけど(笑)午後が後に来るのは私の中でひと葛藤あって…(笑)
”21時”とすることもできるじゃないですか。ただ、Kazさんが「9時47分午後〜」って最初に言ったんですよ。

Kaz:そうそう、「午後〜」って歌ったんですよ。

永野:私も若干びっくりして、これは果たして…?と若干葛藤があったんですけど、『サオさん、これは絶対大丈夫だから絶対これで行こう』って押してました。

Kaz:午後、かっこいいじゃんと思って。

永野:今は本当にかっこいいと思うんですけど、びっくりはしたんですよ(笑)今は最高だと思ってます。あと一つ伝えたいのは、p.e.t.さんが1週間かけてずっとMIXしてたんです。全部の予定断ってずっと。

p.e.t.:いや、1週間じゃない、もっとしてましたね。普段、MIXはエンジニアに頼むことが殆どなんですが、MIXって終わりがないんですよね。締め切りが来るまでずっとやってしまいました。自分の好きなようにするというのもあるんですけど、歌声が一番よく響く感じにしたかったので、拘りました。

──個人的には、サビの歌詞の韻の踏み方と、ちづるさんのリズム感も気持ちよくて好きです。

ちづる:最初から歌詞は韻を踏もうと思っていたんですか?

永野:そうですね、韻を踏むイメージはあったので、ひたすら「on」で終わる候補の言葉をたくさん書いて、最終的に残ったのがあれという感じですね。

ちづる:韻については、同じようなフレーズをどうやって何パターンか聴かせられるか歌い方を考えたりしました。ちょっと張ってみたり裏声にしたり。自分も気持ちよく歌えましたね。

──本日は貴重なお話をありがとうございました。最後に、この座談会を読んで改めてこの曲を聴いてみたいなと思った方、そしてこれからこの曲を聴く方に向けて、お一人ずつメッセージをいただけますか。

Kaz:繰り返しになるんですが、シンガーとしてのちづるさんの魅力を感じて欲しいなあと一番強く思っています。具体的には、ちづるさんの声って、下の方の倍音成分が豊かなんですよね。だから高いキーを歌ってもそんなに高く聴こえないんです。ファルセットも凄くまろやかで綺麗なんですけど、最後の大サビのフェイクも地声で行っちゃってるんですよね。レコーディングの時に、地声で行けそう?って言ってそのままやっちゃいまして(笑)でもあれはなかなかできることではないので。Dメロから大サビのフェイクまで、シンガーちづるさんの声の豊かさと繊細な表現が余すところなく散りばめられているので、堪能していただけたらなと思います。

p.e.t.:歌声、曲、詞、アレンジも含め、凄くうまくコーライティングできたという自信はあるので、ぜひ皆さんに聴いていただきたいですね。音楽的にも、後に「午後」が来るアイデアも面白いですし(笑)歌声も、低いところ
から高いところのフェイクもあり要素が盛り沢山ですので、何回もリピートしていただけたらと思います。

永野:私は本当にこの曲が大好きで…みんな好きだと思いますけど(笑)この曲が作れて、関わることができてよかったなと本当に思っています。ちづるさんの声あってこそこの世界観にみんなが導かれたのかなとも思うし、噛み合った感じがして作れてよかったなと思っているので、ちづるさんにはぜひずっと歌って欲しいなと思うのと共に、この冬の夜9時47分にこれを聴きながら歩くというのをみんなにもやって欲しいなと思います。ありがとうございました。

ちづる:昨日、元となったツイートを見ていたんですね。ツイートした当時は何も考えず呟いていたんですけど…そこまで遅い時間でもない夜10時前に何も荷物を持たず手ぶらで時間制限もなくお買い物ができるっていうのが、些細なことだけど幸せだなあっていう何気ないツイートだったんですけど。
昨日見返していて、このツイートをしたのにはちゃんと理由があったんだろうだなって思ったんです。
今までは仕事が終わるのが0時近かったり、休みの日でもストレスや仕事の疲れで外に出る気力もない日常を送っているうち、次第に何に対しても興味関心がなくなってしまっていたんですが、今は何気ないことが幸せと思えるようになって…そんな自分が愛おしいです。
それを曲で表現できる機会もありがたいですし、何気ない日常が幸せだと思える人たちにこの曲をもっと愛して欲しいと昨日改めて思って…
この曲ができたことによって、皆さんの力によって今までの私が救われたというか。辛いこともあったけど、今までのことにも全部意味があったんだなって、伏線回収したような気がしました。
ツイートを見ながら、当たり前のことを幸せだと思える、今まで辛かった自分を許してあげたいなと思いましたし、聴いている人にも自分ごとのように聴いていただけたらな、って思いました。
あと、職場の人たちも応援してくれていて…、曲出しました!って言ったらびっくりしてくれて。最初はヒソヒソ話していたんですけど、先輩がみんながいる前で聴かせたらしくて(笑)みんなダウンロードしてくれたみたいです。そこでやっぱり♪午後〜の部分が印象的らしくて、これは大正解だなと思いました。これは最後に伝えたかったです(笑)
この曲の魅力のポイントの一つでもありますよね。

Kaz:先ほどちづるさんが仰ってくださったことは3人も一緒です。普段作家としてやっていて色々大変なことも多いんですけど、自分たちも心の底から”良い曲が、良いアーティストさんと、良い形でできたな”思えることはお金に変え難い充足感で、幸せなんです。自分たちもちづるさんと同じ思いです。ありがとうございました。

──こちらこそ、素敵なプロジェクトに関わらせていただき、ありがとうございました!ちづるさんにも、ここからさらに羽ばたいていってほしいと心から願っています。
皆さんも「午後9時47分の幸福論」、これからもたくさん聴いて、歌ってくださいね。


これまでのインタビューはこちら
第1弾

第2弾

第3弾

第4弾

第5弾



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