MaSa.×Co-Writing Farm座談会 〜コーライト(共創)の魅力とは?co-creation project第4弾 Special interview〜
co-creation projectとは
nana公認クリエイター(※1)となった歌い手ユーザーを中心に、「歌い手になりたい、オリジナル曲を歌ってみたい」というユーザーをアーティストとして輩出、デジタルリリースを行う取り組みです。
Co-Writing(共創)を得意とする音楽クリエイターチーム「Co-Writing Farm(※2)」をタッグを組み、リリースアーティストごとに専門チームを設立。
歌い手は歌うだけではなく、作詞作曲を含めゼロから一緒にコーライティングし、リリースまでの音楽作品制作を行うのも特徴です。
第4弾アーティストはnana公認クリエイターでもあるMaSa.さんです。
作家陣にはCo-Writing Farmよりペンギンス、堀川ひとみ、p.e.t.、ミキシングに小木岳司、マスタリングエンジニアには森﨑雅人(敬称略)を迎え、2022/9/24に「ぽつり」をリリース。
▼各種音楽配信
元々ご自身でもDAW環境を整え作曲も行っていたMaSa.さん。そこで、今回はリリース後インタビュー特別版!Co-Writing Farmとのコーライトによって生まれた「ぽつり」の音楽制作秘話について、MaSa.さん×Co-Writing Farm作家陣で座談会を行いました!ロングインタビューとなりましたが、MaSa.さんファンはもちろん、コーライトに興味がある方も、これから作詞・作曲を始めてみたい方も、ぜひご覧ください。
座談会メンバープロフィール
第4弾 │ MaSa.
https://nana-music.com/users/2978458
https://twitter.com/masanana19
Co-Writing Farm
ペンギンス /作曲家
堀川ひとみ /シンガーソングライター・作曲家
p.e.t. /Producer/Songwriter/Keyboardist/Guitarist
MaSa.×Co-Writing Farm座談会
── 今回はリリースおめでとうございます。MaSa.さんは元々作曲経験もあり、「ぽつり」に関してプロの作家の皆さんとの曲の作り方がまさに”共創”で、非常に面白いなと感じていました。そのため、作家の皆さんを交えて座談会形式にてリリース後のインタビューをさせていただくこととなりました。本日はよろしくお願いいたします。
全員:よろしくお願いいたします。
──制作経緯を順に追ってみたいと思います。Co-Writing FarmよりMaSa.さんのチームが結成され、最初の打ち合わせでどのような曲を作りたいか、MaSa.さんのこれまでの音楽活動や人生経験の深掘り、また制作フローなどの話し合いが行われました。その際、MaSa.さんから
・におPの「理想論」のような、ゆらゆら揺れるような、不思議な透明感のあるバラードを歌ってみたい
・闇から始まって光に向かっていくような曲を歌いたい
・作詞はちょっと苦手、メロディはいつも迷子になってしまう
といったようなお話があり、ペンギンスさんから「今回は曲先(メロディを先に作り後から歌詞を載せる手法)で、ライティングセッション的にピアノ弾きながら2時間くらいオンラインセッションをしてみよう!」という提案がありました。
ライティングセッション的という形を取った理由や狙いを教えていただけますか?
ペンギンス:今回のアーティストがMaSa.さんだから、というところが一番大きいです。”アーティスト”と一言で言ってもシンガータイプ、フロントマンパフォーマータイプ、キャラが立っている人…など色々あると思うのですが、MaSa.さんのプロフィールを拝見したり初めてZoomで対話したときに、MaSa.さんはクリエイタータイプ、ミュージシャンタイプだと思いました。僕たち作曲家と近いタイプのアーティストなのだろうと。だとすると、コーライトというのは作る人同士のコミュニケーションでできる物なので、これは向いているなと。コーライティングの中でも一番の理想系は、face-to-faceで会話をしながら、何もないところから音楽を作っていくことだと思っているんですね。MaSa.さんがクリエイタータイプだとしたら、理想のコーライティングがきっとできるだろうなという予感がして、まずはライティングセッションから始めることを提案しました。
──MaSa.さんはこういう形での作曲は初めてでしたか?
MaSa.:はい、プロの作家さんと一緒に作るというのは初めての経験でした。
──ライティングセッションについて、どのように感じたかを教えてください。
MaSa.:堀川さんが最初に提案してくださったコード進行が、僕が普段あまり使わないコード進行だったので、そこにどうやって新しいものを重ねていったらいいのかだいぶ悩みました。最初は頑張って考えようとしてもなかなか出てこなくて…でも、進める中で少しずつアイデアを言えるようになってきて、最終的に僕から提案したコード進行やメロディラインが所々採用されていて嬉しく思っています。
──ライティングセッションを通し、闇⇨雨⇨光、優しい世界観の曲にしたい、などのテーマが上がり、その中から「雨宿り」というキーワードが生まれ、それをテーマに進めていこうということになりました。セッション後も、Slack(co-creation projectは、Slackというチャットツールでチームごとにチャンネルを作成し、オンライン上でやりとりをしています)で凄く良いキャッチボールをされていた印象なのですが、堀川さんはその辺りはいかがですか?
堀川:そうですね、今回のファーストデモからのやり取りを思い出してみると、確かに一番最初は私がコード案のたたき台を出したのですが、それはMaSa.さんが感じていた”最後に光が感じられるような展開”にインスピレーションを得て、まずサビのコードができました。それにプラス、”浮遊感が欲しい”とか、いくつかのリクエストをいただいた部分をどうやってバランスをとりながら曲の中に入れていくのか、と考えながら作っていったところがあります。
最初のベース案は私でしたが、進めていく中でMaSa.さんもどんどん案を出し始めてきて、そこからは「よし、これはみんなでもっとガンガンに揉んで良いものができるな!」という予兆を感じたんです。これはガチンコでがっぷり四つでいけると(笑)みんなで容赦無く戦って良いメロが作れると確信したので、そこからは全員で良い磨き上げができたな、という感覚があります。
──側から見ていてそのキャッチボールは非常に面白く、一方でこれだけスムーズなやりとりができたのは、MaSa.さんが元々DAW環境があってLogicユーザー(Logic Pro:音楽制作ソフト。ペンギンスさんもLogic使い)だったことも一つ関係しているのかな?と思ったのですが、機材面についてはどうですか?
堀川:確かに!
ペンギンス:マイクや機材の話をした時も、MaSa.さんが違う畑の人には思えなかったんですよね。同じ畑というか、なんならMaSa.さんが使っているそのマイクは僕がいつも使っているマイクよりいいマイクだな〜みたいな(笑)オーディオインターフェイスも僕のよりいいやつだな〜とか(笑)これならもうなんの心配もなくOK!と。
だからやっぱり終始フォローするとかケアするという発想はなくて、これぞコーライト、ソングライター同士でいられたのは幸せなことだったなと。
──MaSa.さんはその辺りのキャッチボールはいかがでしたか?
MaSa.:すごく楽しかったです!こういう経験は本当に初めてだったので…今まで趣味で曲を作るときは、伴奏も最初にリズムをつけちゃったりしていたんすが、シンプルにコードをジャーンと弾くところから作っていくんだなと。それを元に考える方が展開が思いつきやすいんだな、ということを発見したし、勉強にもなりました。
──今度は歌詞ついてお伺いします。曲が少しずつ形成されてなんとなくの1コーラスの仮歌のメロディができ始めた頃に、「痛いよ」というワードが先にサビの中に出てきた記憶があります。
歌詞の組み立て方の経緯や裏話があれば聞かせてください。
堀川:歌詞は、元々MaSa.さんがシンガーソングライターでオリジナルも作っている、けれど作詞はちょっと苦手という認識を持たれていて、全然そんなことないのにと思って聞いていたんですけど(笑)
どうまとめていいか分からないという不安があったようなので、最初にざっくばらんに話を聞きました。歌で表現したいことや、「雨宿り」というキーワードが出てきたのでそれに纏わる話を聞いて、まずはMaSa.さんからエピソードを出してもらうことになりました。
※MaSa.さんから最初に出していただいた雨に纏わるエピソードを公開!
堀川:このMaSa.さんのエピソードが凄く良くてここから歌詞を起こしたのですが、一番初めの打ち合わせで「最後に光をみんなに見せたい、みんなに勇気を与えたい」というMaSa.さんの意思を聞いていて、過去の思い出を歌にするだけではMaSa.さんのやりたいことが収まらないな、と。
今のMaSa.さんならどうするか、少し先の未来にどうありたいか、過去だけではなく”今を生きる僕”のビジョンがもう少し欲しいという提案をしたところ、MaSa.さんよりもう一つ素敵な言葉(下記)が返ってきて、このエピソードから受けた印象をできるだけ壊さないように作詞をしていったプロセスがありました。
※MaSaさんによる「今の僕と、少し未来の僕」についての言葉がこちら!
──「痛いよ」というワードについてはいかがですか?
堀川:「痛いよ」という言葉は、なんとなくフェイクを決める中でメロディが呼んできた言葉ですね。でも実は、仮歌の時点では本番の歌詞の中に入れる予定はなかったんです。その当時も「この言葉は、ほぼほぼ別の言葉が入る予定です」とSlackにも書いていたかと思います(笑)
なんですけど、最終的にストーリーを構成する中で「痛いよ」に勝つ言葉が他になかったこと、場所的にしっくりきたこと、そして、嘘をついた心の痛さの”痛い”と、君と一緒に”いたい”という2つの意味がうまくクロスできるなと思ったので、これはそのまま生かした方が良いかなと。それで初めて固定されました。
──MaSa.さんは作詞が苦手とおっしゃっていましたが、最初に自分の体験を言葉にして出していただいた文章が、情景が浮かぶ一つの小説のようで、本当に作詞が苦手なの?と思ったくらいだったのですが(笑)その辺りはいかがでしたか?
MaSa.:エピソードは基本本当のことなんですが、傘を忘れたフリはしていないです(笑)
全員:えっ!?そうだったんですか?(笑)
MaSa.:忘れたフリをした方が物語に膨らみが出るかなと思って(笑)
堀川:それは知らなかった(笑)
MaSa.:何故か今まで、別れ際は割と雨が降っていることが多くて。落ち込んだり悩んだりしている時って、普段目が行かないところに目が行きがちじゃないですか。例えばそんな時に雨音が聞こえたら、というようなところから考えて言葉を起こしていきました。
──MaSa.さんが出した言葉から、プロの作詞家さんによって”歌詞”という形になった時どのように感じたか教えてください。
MaSa.:昔、どん底に落ちていた時期があって、その時にとある歌を聞くことで助けられたことがあったんですが、「ぽつり」がそんな存在になっているんじゃないかなって。単純な恋愛ソングではなくて、この曲を聞くことで悩みを持っている人が共感できるような歌だと思うんです。元々「闇から光」がテーマだったと思うんですけど、それがしっかり作品として形作られていて、やはりプロの方は凄いな...と改めて思いました。
──ある程度曲がまとまってきたところで、アレンジャーとしてp.e.tさんがチームに加わりました。アレンジのコンセプトや狙いなどがあれば教えていただけますか。
p.e.t:僕が入った時は、ワンコーラスがほぼ完成していて、歌詞がざっくりあるくらい、の状態だったと思います。メロとコードが結構強い曲だと思ったので、アレンジで違うところまで飛ばすということはしなくて良いだろうなと。下手に方向性だけ間違えると古くなる可能性があったので、そこだけ気をつけて、あえてBeatや音の質感などは今風にしました。
──サウンドについては、実は昨今流行っているシティポップを少し意識しようかという話が最初に出ていたりもしていたんですが、少しノスタルジックな雰囲気もありつつ同時に今のトレンドをしっかり押さえていてめちゃめちゃかっこいいな!と感じました。
MaSa.:僕も感動してました!
p.e.t:ありがとうございます。
──では、続いて作家の皆さんに、MaSa.さんのボーカルについてお伺いします。初めてMaSa.さんの歌声を聴いた時と、レコーディングの過程で聴いた時の印象などあれば教えてください。
ペンギンス:今回のプロジェクトで初めての男性シンガーですよね。Co-Writing Farmにも(nanaだけではなく)様々なプロデュースの相談はあるんですが、女性シンガーの案件が進行しているところがありました。
そんな中、今回男性ということで、これまでのMaSa.さんのnanaの投稿を聴かせていただいた時に、凄く音楽の力のある歌い方で、親しみを覚えました。きっと音楽の世界の人なのだなと。今となっては「ぽつり」というタイトルなので雨の印象が強いですけど、その前から、何かしら良い意味でウエットなもの、ツヤとか水のようなものを早くもイメージしていた気はします。
堀川:一番最初にMaSa.さんのnanaの投稿を聞いた時に、もうシンプルに「歌がうまいな」と思ったんですよ。自分の声の扱い方をすごく知っている。逆にこんなにできる人がプロの作曲家と一緒に何がしたいんだろう?くらいの…、いい意味でですよ?(笑)プロなんて必要ないんじゃないか、私たちがどうやって入っていけるんだろう、と思ったのが最初の感想です(笑)
実際に制作を始めてみて、「ぽつり」はおそらく今までよりもレンジの広い曲だと思うんですよね。そんな中でMaSa.さんが少し苦労されている様子が垣間見れて、すごく頑張っていらっしゃるシンガーさんなんだな、と感じました。
基本的に歌が上手い方だなという印象は最初からずっと変わらないんですが、レコーディングの中でさらにどんどんレベルアップしている感覚がありました。録ったTakeを聴くときも、例えばビブラートの最後の揺れまで凄く気にされていて身の引き締まる思いでした。刺激にもなりましたね。
例えば新体操って、指先足先の一本一本に至るまで全神経を集中させて表現しますよね。そういう感覚でシンガーの声として意識されているように感じました。なかなかそこまで気を配って自分の音を聴ける方はいなくて、そういうところでより凄いなと、一緒にやっていて感じました。
──ベタ褒めですが、MaSa.さんいかがですか?
MaSa.:僕も語尾は凄くこだわっていたので、それが伝わっていたことが嬉しいです。
──p.e.tさんはいかがでしょう?
p.e.t:もう皆さんにだいぶ言われてしまったんですが(笑)アレンジの兼ね合いで言うと、通常アレンジをする際、ある程度歌唱力を想定してオケ組み立てる部分があるんですが、最初に歌声を聴いた時に、こちらのイメージ通りに好きにやっても大丈夫だな、うまく歌ってくださるだろうなと思えたので、すごくやりやすかったです。
──レコーディングの裏話などあればお伺いしたいです。MaSa.さんは最初サビのフェイクの歌い回しに苦労されていて、堀川さんより「ヨーデルを意識してみて」というキーワードが出てきたのが印象深かったのですが…
MaSa.&堀川:(笑)
MaSa.:僕は堀川さんからヨーデルのアドバイスをいただいていなかったら一生歌えていなかったと思います(笑)
堀川:一番最初の仮歌でMaSa.さんが苦労しているバージョンを聴いた時に、低い音からいきなり高い音に移行しようと、そのまま一生懸命に上ろうとしてるなと思ったので、一回力を抜いた方が良いなと。裏声に行くところの過程がうまく行けば全部綺麗に収まることがなんとなく分かったので、ディレクションとして「悲しみのヨーデルでお願いします」みたいなことをMaSa.さんに言ったんです(笑)
でもそれでMaSa.さんが一発でコツを掴んでいたので凄いなと思って見ていましたね。
MaSa.:ヨーデルの箇所のファルセットの力強さの歌い分けを意識しました。1番は割と力強く歌っているんですが、2番は力を抜いています。それを表現するのがなかなか難しかったですね。
堀川:同じファルセットのフレーズが1番と2番にあって、1番は”悲しみのヨーデル”、2番は包み込むような”包容のフェイクで”、闇から光へのイメージを反映してもらえたら嬉しいと要望していたので、そこは苦労されたと思います。でも、すごく頑張っていただいて結果を出していただきました。MaSa.さんのツイートのレコーディング秘話に「ヨーデル」と書いてあるのを見て、やはり相当苦労されて印象に残っていたのだなと(笑)
──その他改めて注目して聞いてほしいポイントなどありますか?
堀川:MaSa.さんから”闇から光”の比喩として「信号機」というヒントをいただいたんですね。赤信号から青信号に変わって前進していくという描写です。それを歌詞だけではなく歌でも表現できないかなと言うことで、実は曲中ひっそり”信号”のアイデアが生かされています。さりげなく入っていると思うので、よく聞いて見つけてもらえたら嬉しいなと..
MaSa.:信号の仕掛けについては僕も配信で話したんですけど、まだ誰も見つけていないと思います。
僕がこだわった様々なポイントはnanaのユーザーさんも気づいてくださっているんですけど、信号機だけはまだ誰も気づいてないんですよね。気づいて欲しいんですけど…これはこちらからは言いません(笑)見つけて欲しいです!
堀川:信号機以外では、気づいてもらって嬉しかったポイントがたくさんありますよね。
MaSa.:そうですね。感想もたくさんいただいて嬉しかったです。「感情が変わっていく様子が、歌詞だけじゃなくて歌やメロディやコーラス、映像からも伝わってきて何度聞いても引き込まれる」とか「最後の続きを予想できるようなブレスに鳥肌が立った」という感想は本当に嬉しかったですね。
ペンギンス:あのブレスはやってやりましたね(笑)
MaSa.:あのブレスは入れて良かったなと。
──実はブレスの位置についても何パターンかアイデアがありましたよね。
MaSa.:最初はエレピの音と合わせて終わってたんですが、最終的にちょっと間を開けて終わらせる、に変わりました。
堀川:最初にMaSa.さんからもらったTakeのブレスはもっと前の位置にあったんですが、このブレスが意図的ならもっと聴いている人にわかりやすいようにした方が良いんじゃないかと。音の隙間に置いてみるのはどうだろう?など、MaSa.さんと違う視点でMaSa.さんの意図をもっと伝えられるにはどうしたらよいか、と結構議論しましたね。
p.e.t:実は何回かエレピのタイミングも変えていて、エレピの場所もずらしてみたり音を変えてみたり何バージョンも作って、最終的に収まりよくスンと消える感じにした、と言う試行錯誤がありました。他にも細かい調整で結構悩んで、Kickの位置をちょっとずつ変えてみたりとか…全体の印象に響かない程度に結構苦労していましたね。
──その他ハモやコーラスについてはいかがでしょうか。
堀川:コーラスは、最初はまずMaSa.さんに自由にコーラスを作ってみてくださいとお任せしたんですが、最初に上がってきたテイクが私たちが欲しかった感覚のフレーズそのものだったんですね。制作が進行するにつれてどんどんシンクロ率が上がってきたような気がしています。
MaSa.:この曲調が、世の中にないような曲調だったので、ハモを考えるのは難しかったですね。
──世の中にない曲調、とはどういうことでしょうか?
MaSa.:今までに聞いたことのない曲だと僕は思っていて。誰にも何にも似ていないような..元々個性的な曲の方が好きなのですが…言葉で説明しづらいのですが…
──確かに、懐かしさもありつつ今風でもあり、でもどの曲でもない不思議さもあります。
堀川:不思議ですよね。
ペンギンス:でもそれが一番素敵なことだと思います。その曲がそこにある意味が間違いなくあると思うので。
堀川:もしかしたらそれは、いろんな人が楽曲を制作していることで、それぞれの隠れルーツが集まっているのかもしれません。知らない間に漏れ出ている何かでうまくセッションできたのかなと。
──それはコーライトしたからこそ、なのでしょうか。作曲からアレンジまで一人の人が作り上げる曲は世の中にたくさんあって、それはその人の色が出る良さもあると思うのですが、複数名で共作・競争することでいろんなカラーが盛り込まれていくというのはコーライトという手法においてよくあるものなのでしょうか?
ペンギンス:コーライトにおいてそれはよくあることだし、願わくば毎回そうあるべきと思っています。ある人が1人チームに入れば、その人の色が足し算、あるいは掛け算されるようなものだと思うんですね。カレーの具みたいに1個増えると個性が足される、そういうふうになってくると思います。
──なるほど。もちろん、一人で最後まで作り上げる良さもあるとは思うんですが、コーライトの面白さってなんでしょう?
ペンギンス:これは僕の考えなんですが、良い意味で理想が広くなるというか…高みを目指すというよりは、広がりを作っていける面白さがあると思っています。例えば今回もMaSa.さんを入れて4人が作詞・作曲としてクレジットされていますが、4人で大きな布の四隅を持って引っ張るというか。そうすると布が広がりますよね。高みを目指すとか一つのことを突き詰めるのであれば1人の方が良いのかもしれないですが、コーライトをするとその中でいろんな正しさや理想があって、でもそれがぶつかって打ち消し合うのでなくて、一つずつ伸びていくみたいな。だからやっぱり「広がり」という言葉が一番合うのかなと思っていて、それがコーライトで曲を作るときの良さになっていればいいな、とも思っています。
──確かに「ぽつり」も、全員の異なるカラーが融合して一つになった感じがしますね。
さて、座談会も後半戦となりました。
少しミキシングやマスタリングについても触れたいのですが、今回のマスタリングも森﨑さん(※注)だと知って、MaSa.さんのテンションが上がっていたように感じたのですが…(笑)
MaSa.:憧れです!僕も昔、音響を学んでいたんですが、知らない人はいないのではないでしょうか。マスタリングエンジニアで検索したら森﨑さんの写真が最初に出てきますもん(笑)
──MaSa.さんは、ミックスやマスタリングにも興味があるようにお見受けしたのですが、今回その辺りはいかがでしたか?
MaSa.:小木岳司さんのミックスも感動しました!
あと、僕は元々どの音がどの定位でなっているかなどをいろんな機材で聴くのが好きで、今回もマスタリング前にそのようにして聴いていたんですが、右下の空間にちょっと隙間があったんですね。それが森﨑さんのマスタリングから返ってきたら隙間が見事に埋まっていたのでやっぱり凄いなと。
家のモニタースピーカーで聴いた時も低音の伸びも良くて、ミックスもマスタリングもどちらも凄いなと感じました。
ペンギンス:今回、ミックスではLOW(低域)を聴いて欲しいなと思っています。スマホのスピーカーではちょっと難しいのですが、もしモニタースピーカーをお持ちの方はそれで聴いていただけると迫力の低音が広がっていると思います。あと、ヘッドホン推奨です!昔ニコニコ動画によく「ヘッドホン推奨」というタグがあったんですが、今でもあるんでしょうか…?(笑)この曲はぜひヘッドホンで聴いてみて欲しいです。大きな音でヘッドホンで聴くとまた楽しいのではないかと思います。
──色々と貴重なお話をありがとうございました。
最後に「ぽつり」を聴く方に向けたメッセージをお願いします。
ペンギンス:MaSa.さんと一緒に雨の情景が浮かぶ曲を作れて楽しかったです。これからの季節、雨が降ることも多いと思うので、ぜひ雨の曲のプレイリストなんかを作っていただいて、雨の1日とともに聴いていただけたら嬉しいです。
堀川:MaSa.さんご本人はもちろんですけど、私たちも”MaSa.さんとは。MaSa.さんらしさとは。”というMaSa.さんの魅力をどうやって作品の中にてんこ盛りにするかを第一に考えて作ってきたので、MaSa.さんのファンの方にも、これから初めてMaSa.さんの歌声に触れる方にも、MaSa.さんの魅力が伝われば嬉しいなと思っています。あと、nanaユーザーのみなさんにはぜひ悲しみのヨーデルを歌って楽しいんでいただきたいです(笑)
p.e.t:自分としても楽しく作ることができましたし、コーライトとしても良いコーライティングができたとも思っています。普遍的な曲でもありながら色々な冒険もできた曲です。MaSa.さんの歌声もしっかりそれに調和して、良い仕上がりだと思うので、ぜひみなさん聴いていただけたらと思っています。
MaSa.:恋愛ソングではあるんですが、季節だったり天候だったり信号機の色の変化などで人の心情の移り変わりを表現しているので、そこに注目して音も映像も楽しんでいただけたらと思います。
──nanaが目指している「共創」というコンセプトと、今回の「ぽつり」のコーライトという制作過程はある種共鳴できたように感じています。MaSa.さんにも、このリリースはゴールではなく更なる第1歩として、未来に進んでいただけたらと願っています。
本日はありがとうございました!
第1弾
第2弾
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