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優しいあの人が盗人になってしまうまで|アイデンティティ探し

ペルーに住んでいたころの話です。当時住んでいたマンションにはダニエルさん(仮名)というレセプショニストの方がいらっしゃいました。私たち兄弟に会うともいつも優しく挨拶してくれて、子供が大好きでよくお菓子をくれたり、自分の子供の写真を見せてくれたりしていました。レセプショニストの方は他にもいて、皆さん優しかったですがダニエルさんは特段フレンドリーで明るくてひまわりのような方でした🌻

ダニエルさんは首都リマから車で4~5時間程かかるイカ(Ica)という地域出身でご家族もそこに暮らしていました。イカは砂漠地帯の都市で、ナスカの地上絵(Líneas de Nazca)が位置している地域であり、ピスコ(Pisco)と呼ばれるペルーを代表するブドウ蒸留酒の産地です。また、赤道直下でありながらフンボルト海流という寒流の影響で、野生のアザラシやペンギンを見ることができるバジェスタス島(Islas Ballestas)のあるパラカス(Paracas)という場所もあって、砂漠地帯でありながら様々な海洋動物にも会える不思議なエリアでした。

ある日しばらくダニエルさんの姿が見えなくなり、再び見かけるようになると手作りのチラシを住人に配り始めていました。その内容は奥様がガンになり、入院するためのお金が足りず、そのための寄付金を募るものでした。そのチラシにひまわり🌻のイラストが描かれていたのを私は忘れません。

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