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金欠日記『深夜の吉野家葛藤編』(後前編)

9月12日
外に出て歩道で差し入れのパンとマリーを口にしたものの、深夜に無性に何か食べたくなる。
良く考えたら二日以上米と野菜を口にしてない。
牛丼のサラダセットが食べたい。
我慢出来ずに吉野家へ。
入り口で牛丼定期券ののぼりを見る。
牛丼定期券は80円引、ガスト100円引、はなまるうどんの天ぷら一つ無料が期間中何度も使える券だ。
値段は300円。欲しい。
けど今から食べるやつも使えるのか?
今から食べるやつにも使えるなら欲しい。『この定期券って今買って同時に頼んだ牛丼にも使えるのですか?』と聞きたいが恥ずかしい。
僕には恥ずかしいツボがあって、『つゆだくで』も16年間言えなかった。
たまたま先月初めて克服した所で32にして初めてつゆだくを食べた。
そこで僕はこの店で牛丼定期券だけ買って、一駅先の別の吉野家まで行ってそれを使う事を覚悟した。
とりあえず牛丼定期券だけを買って、勇気が出たら聞こう。
覚悟を決め店に入った僕は牛丼定期券だけを買いに来た客だとアピールする為に、椅子と椅子の間の変な位置に立ったまま店員さんを呼んだ。
すると店員さんはお冷を片手に近づいて来た。
座らされて注文を取られると思った僕は食い気味に『牛丼定期券を下さい!!』と言った。
動揺で少し声が大きすぎた。
店員さんは一瞬不思議そうに『え?』なるも『定期券ですね300円です』と言って手に持ったお冷やを僕の近くの席において、定期券を取り出し、受け取った僕は300円を払った。
店員『ありがとうございます』
した。ではなく、す。
僕の左横の席にはお冷やが。
(あれ?このままいけるんじゃない?)
僕は迷いながらゆっくりと精一杯の
(あれ?定期券だけ買いに来たのにお冷や出されたし、申し訳ないから食べてこうかな?そういえばお腹すいてるしな!)の顔をしながら席に座った。
(そういえばお腹すいてるしな!)の気持ちがこもった右手で腹を抑えながら。
今思い出すとこの瞬間が一番恥ずかしい。
席についた僕はもう決まってるのに少しリアルに今決める感じで20秒悩み、牛丼並のサラダセットを、つゆだくで頼んだ。
その時僕はあっ急遽食う事に決めたにしては頼みすぎか。と思い再び右手で腹を抑えら(食べれるかなぁ?)の顔をした。
絶対誰も見てないのに。
しかし作戦は成功牛丼は80円引きに。
店を出た後、コンビニでコーヒーとチロルをTポイント全額と足りない分を小銭で支払って差し入れのタバコで一服。
ここ数日で一番いい腹の状態に。
残金は3001円。

残り6日 全財産3001円

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