コロナ禍、発熱患者お断りは医師法19条の応召義務違反ではないのか
かかりつけ医の必要性が”医師側”から主張されて久しいですが、
そんなかかりつけ医ですら、風評被害等を恐れてか、患者の発熱外来お断りが後を絶たない状況が続いています。しかし、そもそも発熱外来お断りは倫理的な観点のみならず、医師法上の問題はないのでしょうか?
医師法19条には、所謂、『応召義務』が規定されており、
第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
2 診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。
患者等から要求があった場合には、法令上、これに応じることが義務付けられています。『正当な事由』の定義は何かというと、通常、厚労省見解・ガイドラインや判例に委ねることになりますが、
厚労省見解の『正当な事由』:
とされており、患者が緊急を要する場合、医師が不在、医師が病気等により診療が不可能な場合に限られる、とされています。緊急を要さない場合でも、原則、求めに応じて必要な医療を提供しなければならない、とされています。
(引用:医療を取り巻く状況の変化等を踏まえた 医師法の応召義務の解釈に関する研究について, 令和元年7月18日 厚生労働省 第67回社会保障審議会医療部会)
【コロナ時における厚労省見解】
コロナ禍以降、風評被害を恐れて発熱外来お断りする医院、クリニックが後を絶たないことは皆の知るところでありますが、これに対して、厚労省は既に見解を示しており、こうした発熱外来お断りは、医師法19条の応召義務における『正当な事由』に該当しない、という明確な解釈を示しています。
応召義務について:患者が発熱や上気道症状を有しているということのみを理由に、当該患者の診療を拒否することは、応招義務を定めた医師法(昭和 23 年法律第 201 号) 第 19 条第1項及び歯科医師法(昭和 23 年法律第 202 号)第 19 条第1項における診療を拒否する「正当な事由」に該当しないため、診療が困難である場 合は、少なくとも帰国者・接触者外来や新型コロナウイルス感染症患者を診 療可能な医療機関への受診を適切に勧奨すること。
(引用:新型コロナウイルス感染症が疑われる者の診療に関する留意点について, 令 和 2年3月11日 厚生労働省新型コロナウイルス感染症 対策推進本部 )
つまり、発熱外来お断りは、立派な法令違反、違法行為なのです。医師でなければ医療行為を行っていけない、という決まりに反することも医師法違反ですが、同様に、(行政・刑事上の罪を課されないにしても)、応召義務に違反することは、医師法違反なのです。
応召義務に応じず、発熱外来お断りで、病院を断られ、たらい回しにされた患者の中には、重症化し、命が失われた方もいるはずです。そうした親族もいるはずです。
平和な日本ではあまり問題視されていませんが、欧米なら医院、クリニック、医師会等に対して集団訴訟が無数に提起されてもおかしくない、むしろ集団訴訟が提起されない方が異常な状況なのです。
隗より始めよ。
ワクチン接種権限をよこせ、診療報酬を上げろ、といった権利を主張する以前に、まずは自らの義務をしっかりと果たすべきではないでしょうか?