その子どもは、雨の中で空を仰ぎ見ていた

息子が、学校から帰ってくると文句を言うのだ。

「○○くん、皆に迷惑かけるんだよ」と。

曰く、○○君は、公園の入ってはいけない(柵で囲われている)ところに入ったり、ランドセルを道端に置いて走り出しちゃったり、帽子をあずまやの屋根の上に投げて、取れなくなっちゃったりしたらしい(通りがかった親切な方が落ちていた枝を使って取ってくださったとのこと。知らないところで親切にして頂いていて、有難い)。

息子の学校は、低学年は同じ方面の子ども同士で分団下校することになっているので、途中でその子を置いてくるわけにはいかず、だから帰ってくるのに時間がかかるし、皆から離れて逃げ回ったりもするらしいので、そもそも危ない。

自宅のベランダから子どもたちが帰ってくるのが見えるので、その話を聞いたあとからは帰ってくるところを見るようにしていた。

そんなある日。

パラパラと雨が降っていた。子どもたちの声が聞こえたので外を見ると、その男の子が道に立っていた。

雨が降っているのに、傘を差さずに。軽く両手広げて、空を見ていた。

その時思い出したことある。私も昔、雨に打たれるのが好きだったことを。

変な子ねえと親に言われながら、ちょっと高揚した気持ちでわざと雨に打たれたりしたものだった。

そんな時は、決まって遠い場所に思いを馳せていた。行ったことのない遠いところへ行きたい、みたいな気持ちであることが多かったと思う。

○○君はコロナ休校明け、しばらく登校してこなかった。想像だけれど、学校に行くのが少しだけ辛いところがあったりするのかもしれない。皆を困らせる様子からも、少しそういった感じが伺えるところがあった。あくまで想像だけれど。

雨の中で空を仰ぎ見ていた彼は、ここではないどこかを見ていたのかもしれない。その空のずっと先を。


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