エア係長「ポテチは野菜である」宣言をポテ党党首に支持される

私は食べ物の好き嫌いが多い。

子供の頃、私の偏食を直そうと母親は毎日私の嫌いな食材で料理を作り、父親は食べない私を怒鳴ったり殴ったりした結果、嫌いな食材は見ただけで頭痛がするようになった。

大失敗である。(この話は「鬼の住む家」のどっかに書いたが、長くなりすぎてどこに書いたか忘れた)

今その話はどうでもよい。

大人になったわたしは、自分の嫌いな食べ物は食べなくていい幸せを噛みしめているところだ。

前に私は職場で雑談をしない派だと書いたが、しようと思えばできるがしない派である。

で、雑談の鉄板ネタと言えば相手が今はまっているモノ(事)を聞いて、それについて語ってもらうというパターンがあるが、私は嫌いな食べ物について語ってもらうのが好きである。

偏食は個性だ。

いや、「好き嫌いは全然ありません。何でも食べられます」と言う人もいる。

それはそれでいいと思う。オメデトウ。どこの国でも生きていける。どこででも寝られるのと同じくらい強みだ。自慢してよい。

ただしそういう人が「偏食は健康に悪い」「大人になって好き嫌いを言うのは恥ずかしい事」「食べ物の好き嫌いが多い人は、人の好き嫌いも多い」と私に説教した場合は「うるせえバカ」という対応をしている。(ただし、子育て中の人が子供について心配している場合は、ちゃんと応対しています。)

偏食は個性であり、その理由が変であれば変であるほど面白い。

嫌いな食べ物の話といってもいきなり「嫌いな食べ物は何?」と聞くわけではなく、好きな食べ物と嫌いな食べ物の両方を聞くのだが、たいていの人が好きな食べ物については「好き、美味しいと思う」しかないのに対し嫌いな食べ物に対しては「味が嫌い」以外にも「匂いが嫌い」「見た目が苦手」「色が嫌い」などいろいろな理由が出てくる。そこが面白い。

ピーマン
苦い。匂いが嫌い。←わりと普通
千切りや輪切りなど細切りになっている場合はいいが、ピーマンの肉詰めやBBQのように半分に切って焼いた場合、箸やフォークで刺したり触った時の表面に皺がよるのが嫌い。←こういう話が好き。この人は青椒肉̪絲なら食べられるという。

キノコ類(ただしマツタケは除く)
菌だから。←ヨーグルトや納豆の立場はどうなる?と突っ込めて楽しい。
ちなみに「ヨーグルトや納豆は菌が含まれているものであり、キノコは菌本体だから」とのこと。

煮た肉(焼き肉は好きだが肉じゃやシチューは苦手)
「焼いた肉と煮た肉は別物である」という主張。これは私自身、肉は煮ても焼いても好きだが、ソーセージは焼いたものは食べられるが煮たものは食べられないので同盟を組み、前述のキノコの人とどちらが変かバトルした。

チーズ
ピザやグラタンなどのとろけるチーズは好きだが、固形のプロセスチーズは苦手

牛乳
暖かいのは匂いが無理。ココアやカフェオレなどにすれば大丈夫。
コーヒーと牛乳はだめだがコーヒー牛乳、カフェオレは飲める(わりと多い)

ビシソワーズ
スープの癖に冷たい

トマトジュース
ジュースのくせにしょっぱい

すっぽん
子供の頃、カメ飼っていたから。


応援するものだから。

ナス、きゅうり
スズムシの餌にしていて、朽ちていく様子を見ているうちに食べられなくなった。

ネギ
口の中でずれる。←すき焼きのネギのようなものが食べられない人

オールブラン
鳥になった気分がする(ちなみに私は食べ物に歯ごたえを求める派なので、この鳥の餌っぽい感じが好きである)

タマゴ
A.目玉焼き・茹でタマゴ派…白身と黄身が分かれている方が好き
B.スクランブル・卵焼き派…白身と黄身が混ざっている方が好き
これはどちらも好き、どちらかと言えばAorB、どっちも苦手までグラデーション的に広がっている。後、生はダメとか、半熟に限るとか、温泉タマゴのみダメとかいろいろ意見が分かれる。

だいたい今までに聞いたところではこんな感じ。

ただ、この話は宴会時のメニュー選びを兼ねている。

私は甲殻類アレルギーでエビとカニが全く食べられない。喘息を起こすと最悪生死にかかわるので、絶対に避ける必要があり、配慮できない場合は欠席するので、言い出しやすいとかにくいとか言う以前に、言っておかなければならない。

しかし、アレルギーでもないのにどうしても苦手な食べ物があると言う人はわがままと思われたくなくて言い出しにくい。(子供の頃、田舎暮らしで鶏を捌くのを手伝わされたので鶏肉がダメな人とか)

なるべくみんなに喜んでもらえるように、どうしても苦手な食べ物というのは聞いておいた方が役に立つ。鶏専門店とかカニ食べ放題を避けるだけでなく、きゅうりやキノコのようなものなら手を付ける前に交換したりもできる。

「たとえ自分がどんなに嫌いな食材や料理であっても、それを好きな人がいる」というのが大前提である。

また、「世界には食べるものがなくて困っている子がたくさんいるんだぞ!」と言われると「ごめんなさい」としか言いようのないたまたま飽食の国に産まれた贅沢な話なのであまり上品なことではない、ということも理解している。

なので、食べ物の好き嫌いにからめて他人に意地悪を言う人は嫌いである。

以前、お弁当を食べている時、先輩女性(Aさん)が別の先輩女性(Bさん)が持ってきているお弁当にジャコが入っているのを見て、「私、お魚って顔が付いているの食べらんない~。目がこっち見てる気がするの。Bちゃんよく食べられるよね。私だったらかわいそうでそういうの食べられない。」と言ったので、「へぇ~。牛だったら八つ裂きにして食べられるのに、小魚はダメなんですね。あ、それとも首、もいでおいたら大丈夫ですか?」と言い返して「ひっど~い」とドン引きさせた。

後からBさんからは「よくぞ言い返してくれました」と礼を言われた。

まあ、Bさんのためと言うよりは自分もジャコが好きだったので腹が立ったからなのだが。

Aさんは日頃、気が利くやさしい先輩なのだが、時々後輩をからかうことがあり、それがわりとしつこい。

本人はコミュニケーションのつもりで、軽い気持ちで言っているようだったが、Bさんは嫌がっているように見えた。

BさんはBさんで先輩には「嫌だ」と言えないタイプだったので、だんだんエスカレートしていて、「Bちゃんの持ってくるオニギリって岩みたいに大きい。私なら食べきれない」「え、いいなって羨ましがっているのよ。食べても太らないんだから」とかしょっちゅう言うようになっていた。(AさんもBさんも細い人です。私も標準よりは細いので、第三者が見るとかなりウザイ会話です)

「Aさんにはやめてって言ってるよ」


「通じてないですね。あのタイプは『うるせえ、バカ』と即答しないと『口ではやめてって言ってるけど笑顔だったからかまってもらって嬉しいのだ』と勘違いします。
それに私が見る限りBさん、Aさんに『やめて』とは言っていません。
『そんなことないですよ~(笑顔)』または『なんでそんなこと言うんですかぁ~(笑顔)』です。
はっきり『うざっ!!(怒)』と言えないのであれば、今度から嫌な事を言われたら完全にスルーする事をお勧めします」


「えー、できないよ。」


「あはは、AさんはBさんに甘えてかまってもらいたいんですよ。『お魚は体にいいから食べたほうがいいんですよ』とか説教してもらいたい。悪気はないけど面倒な人です。」


「そんな感じするする。よくわかってるね。」


「いや、ホントの所はわかりません。ただの想像です。
もっとも私は『世間一般で体にいいと言われている食べ物でも、本人が嫌いでいやいや食べるのは体に悪い』と思っているので言いませんけどね。
Aさんにとってはからかうのはコミュニケーションの手段です。『そのやり方は好きじゃない』とAさんにわかるやり方で返さないとO.K.なんだと思ってずっとやられますよ。」


「私には無理だよ」


「じゃあ、あきらめて我慢してください。」

というような会話をしたが、しばらくしてAさんが退職してあっさり解決してしまった。

が、後でけっこうな人数が「BさんはAさんにいじめられていたからAさんが辞めてて喜んでいるんじゃないの?」と言われてビックリした。(それもわりと上の方の人が)

ランチは3人で食べていた。本当に怖いのはBさんのようなタイプなのかもしれない。

話がそれた。

要するに私は「好き嫌いがない」という人は好きだが、「好き嫌いはすべきではない」と言ってくる人は嫌い。

自分が嫌いな食べ物について話してくれる人は好きだが、それを他人に対して「よくそんなの食べられるね」と言う人が嫌いなのだ。(なので、テレビで昆虫食が出てきて明らかに出演者がマズそうに食べる事が推測される場合はチャンネルを変える。)

好きな食べ物を選べるこの時代に産まれた事をメチャメチャ感謝しつつ、自分の好きなものを自由に食べつつ、他の人も好きなようしていてほしいし邪魔はしてほしくない。

で、好きなものを好きに食べる自由を得た私の食べるものと言えば、
パン、チーズ、ヨーグルト、米、レタス、肉類、豆腐、納豆、わかめ、めかぶ、もずく、昆布、ラーメン。。。。以上。。。か?
親が体罰まで使って教え込もうとした「好き嫌いなく食べる」を全力で無にする偏食ぶりを発揮している。

先輩Cさんから「野菜が少ない」との指摘を受け
1.海藻は海に生えているだけで、植物だから野菜とみなしても良い
2.たまに食べるポテチを(他の人はどうか知らんが)私的には野菜とカウントしている。
ポテチは概ねイモであり、イモは八百屋に行けば売っている。八百屋で売っているのは野菜である。ゆえに、ポテチは概ね野菜である。というか野菜である。
3.米、麦(パンとラーメン)も植物だから私的には野菜。

この2番が若手や若手っぽい人を中心に支持され、若手じゃない人の顰蹙を買いつつ各部に周知された。

で、だいぶ離れた部署にいるDさんは普段からイモ(ジャガイモ)と肉類しか食品として認めないポテ党党首であり2番は自明であると言っていると後輩Eさんから聞いた。

「素晴らしいな。彼に比べたら私が食べられるモノの数ははるかに多い。もはや『何でも食べらる人』と言ってもいいくらいだ」


「でも奥さん大変でしょうね。どうしてるんだろ?」


「???」


「家族の分とは別に、お肉はともかく、毎日イモを使ったメニューを考えて作らなきゃいけないんでしょ?そんなにありますかね?」


「あ?毎日同じでいいんじゃないの?」←偏食人種の「好物」とは毎日同じものでも平気な食べ物を指すと思っている。

「え?変えなくていいんですか?飽きませんか?」

「米、ほぼ毎日白米じゃん。飽きる?それになぜ奥さんにやらせんとあかん。大人なんだから自分が好きで偏食やってるのなら自分で作ればいい。まあ、子供がいると、たまに自分がド偏食の癖に子供には『好き嫌いしないで何でも食べる子に育ってほしい』なんていうムシのいい事言ってる人いるけどね。」


「できますかね?男の人に?」


「できるでしょ。ウチの会社料理できる男の人多いよ。というか、できない人の方が少ないよ。特にDさんの部署はモノづくりが好きで手先が器用な人が多からね。Fさんはお弁当毎日自分で作ってて、ついでだから奥さんにも同じの作ってるって言ってたし、Gさんもお弁当自分で作ってるし、っていうかGさん料理が好き過ぎて学生時代は肉屋でバイトしてて、牛さばけるって聞いてる。」


「牛?」


「牛を一頭買いして、食肉として販売するのとレストランを併設している店だったらしい。奴を絶対怒らせたらあかん感じするやろ。」


「なんかスゴイですね。Dさんって子供いるんですかね?」


「知らん。仕事でしか話した事ないんで、奥さんがいるのも今知った。」

ここでC先輩に「相変わらず他人に興味ないよね」と言われて話は終了した。(C先輩…鬼の住む家⑰の「年齢を聞くのはセクハラか?」に出てきた先輩です。)

ちなみに後輩Fさんはフルーツ(全般)がジュースも含めて嫌いだ。
Fさん本人が気にしているが、Fさんは語彙が少ない。
なので「フルーツ嫌い」については「ムリだから」しか理由はない。

本当のところ口の達者な連中が、ただ嫌いというだけのものに後付けでそれっぽい屁理屈をつけて言い訳しているだけの事が多い。(キノコ類は菌だからなんか間違いなく後付けだと思う)

語彙なんて別に多けりゃいいというわけでもない。Fさんは自分でも言っているが嗅覚、味覚は人より優れている。ぜひ大事にしてほしい。

そして何より、私にとっては数少ない貴重な後輩である。辞められたら困る。

嫌いなものは少ない方がよいし、好きなものは多いほうがよい。食べ物でも映画でも音楽でもスポーツでも好きなものが多い方が生きるのが楽しいし楽になる。

でももし嫌いなものや苦手な物があったとしたら、自分はスルーすればいいと思うし、それを好きな人を攻撃する必要はないと思う。


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