「お忙しいところ申し訳ございませんが、これどうしたらいいんですか?」

最初に言い訳しておくと、私自身も断じて愛想の良い方ではない。
というか、威圧系である。
そして今から述べるようなミスをしがちだ。

なので、自戒も込めてということで。

コミュニケーション能力が大切とはよく言う。
会社でも若手対象にコミュニケーション研修がある。

あるはずなのだが、部署が違う人(若い人とは限らない)が2~3枚、あるいはそれ以上の枚数の書類を突出し、標題のような質問をしてくる。

突き出してきた書類について何か説明してくれるのかと思いきや、そのままこちら何か言うまで書類を突き出したまま無言である。

断っておくが、私が引き渡した仕事でもなければ直近まで打合せをしていたり共同作業をしていた書類ではなく、初見である。

「これ何?」
2~3枚の書類を瞬時に読んで適切な処理を指導しろというのか?

本当に「お忙しいところ」と思っているのであれば、何の書類か概要くらい説明してくれ。

こういうこともある。
「お忙しいところすみません。今お時間よろしいですか?書類が見つからないんですけど、持ってきたやつに混じっていませんでしたか?」

コミュニケーション研修の講師のところに送り返すか、「金返せ」とクレームを入れるかしたいところだ。

「挨拶が基本」とか教えていたとしたら首絞めたい。

「こちらが1日に何人からの何枚の書類に目を通していると思っているのだ?」
と言いたいのをぐっとこらえて、いつごろ持ってきたどの案件のどんな内容な書類なのか聞くことになる。

それもこんな感じになる。
「それはいつごろ持ってきた何の書類?」
「たぶん、先週だったと思います」
「何の案件の何?」
「えっと、請求書。2件あるんですけど」
「だから、何の請求?」
「A社さんの。何かはBさんのなんで私は聞いていません」
「・・・・・」
A社からの請求書は月30枚超来る。「おまえは伝書鳩かっ!」と言いたくなるが口に出して言ってしまうと前後左右にしっかりパワハラだし、伝書鳩に失礼なので黙っている。

が、まあまあ顔には出ていると思う。

まあそれでも「Bさんが担当していてA社から請求が来る」でだいたい5枚くらいまで絞り込めなくもない。そして私はそこそこ記憶力は良いほうだ。

「来てない。システム上の決裁はおりているようだが、部長の机の上は確認した?」
「してません。」
「・・・・・」
そんなにキッパリと言われても困る。なぜ確認する前にこちらに聞きに来る。(他部署の部長が私に直接請求書を持ってくる事はない。)
「確認します。」
「そうしてください」

その後、請求書が見つかったとしても報告はない。しれっと他の書類と一緒に回ってくるので「あ、あったんだ。。。」と思うだけである。最初のうちはどこにあったか聞いていたが、聞いても部長の机か担当に戻されているかなので、最近は「あったんならいいや」と思って聞いてもいない。

他部署の書類の廻し方まで指導しなければならない義務はない。

しかし、今回はその話ではない。

「これどうしたらいんですか?」の話である。

え?何それ???といったところだと思う。

そういうことです。

「これどうしたらいいんですか?」と聞いてくる人は、「これをどうしたらいいのか?」という事について、他人に聞く前に少なくとも数分間、場合によっては数時間考えていて、結局わからないから聞いてきているので「これ」が何かは自明だろうが、聞かれた方はまず「これ」が何かがわからないのだ。

こちらが全く違う作業に没頭している時はなおさら頭を切り替えて記憶を呼び覚ますのにタイムラグが発生する。

「お忙しいところ申し訳ございませんが」と言いながらも、少しもこちらの理解を助けるような情報をくれていないので本当は申し訳ないとは少しも思っていないのでは?と考えてしまう。まあ、枕詞のようなものなので本当に思っていないのかもしれないが。

この場合最初の挨拶は「今から私の話す事を聞いてください」ということで飛行機で言われる“Attention Please!”のようなものであり大切なのは後に続く内容部分で、あり意思疎通を図る事にある。

急ぎの用事でどちらかを省略するのであれば、省略すべきは挨拶のほうではないか。

挨拶は大切だと思うが業務上の会話をする上では、意思疎通を図る前段階の手段に過ぎない。

「お忙しいところ~」のほうが「おい」とか「ちょっと」とか言われるよりは数百倍はマシだが、「あのさー」ぐらいであれば「あのさー、先週水曜位に私請求書10枚くらい持ってきたと思うんだけど、その中にA社の請求書ありませんでした?Bさん担当の物件なんでCとDだったと思うんですけど。システム上の部長決裁は降りているのに請求書が見当たらないんです」の方がマシに思えなくもない。

まあ、この場合も「部長の机の上は見たか?」「あ…」「『あ』じゃないし」みたいな会話になりがちだがそれはまた別の話である。

「コミュニケーションの基本は挨拶」「きちんと挨拶ができることが大切」と唱える人に言いたいのは、「確かに挨拶は大事だと思うが、『きちんと挨拶さえできたらそれでいい』と思っているやつをけっこう大量に生み出しているぞ」という事である。

業務上の会話は一家団欒や友達との雑談ではない。意思疎通ができていなければあまり意味がない。

挨拶は大切だし丁寧に話すに越した事はないのだが、あくまでも話の導入部分であり、頭の中でグルグル考えている問題や、自分が抱えていて解決を要する課題について、きちんと文章化して簡潔に説明する事ができなければ、他人は内容を理解し協力のしようがないのだ。

コミュニケーションの基本は「自分が頭の中で考えている事をきちんと言語化し、他人に理解できるように説明する努力をすること」だと思う。

そしてそれは単発の研修ではなく、自分がうまいと思う人のマネをしたり、自分で日々練習するほうが効果的に見に着くのではないか?

とにかく、あなたが何時間その問題について悩んでいようと、あなたにとって最重要課題であったとしても、他人にとっては今初めて聞く話だという事を忘れないでほしい。

というか、自分も忘れないようにしたい。

というか、自分が部長に「決裁お願いします」と言って渡した書類が手元に戻ってきていないことぐらい覚えておいてほしい。。。。

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