泣く犬(冬の話)
うちの犬は泣く。世を憐んでいるのかもしれない。もしくは昼のリビングに差すポカポカ陽気に耐えられず、おおあくびをしたのかもしれない。
日がな一日床暖の上で毛布に包まって寝ている。稀に起き出せば、同じ屋根の下に住む猫の餌を盗み食いする。恐らく猫の餌の方が味が濃いのだ。なんてジャンキーなやつ。
散歩に行ってもほぼ歩かない。あまりに立ち止まっているので、後ろから小突くと仕方なしに7歩は歩く。そして止まる。小突く。7歩歩く。公園の草むらに行ったら、近所の猫が私たちに向かって不満げに鳴いている。なにかと思えば草むらには猫の餌が撒いてあった。どこのどいつがこんな所に……。その餌のわずか50センチほど隣で、うちの犬はおしっことうんちをしてみせた。喧嘩を売っている訳ではない。なにも気付いていない。
たまに死にそうなフリをする。窓辺の日向に寝転がって日光浴をしている時、こちらが暇そうにしていると息を荒げてこちらを見つめてみせるのだ。いよいよお迎えが来るのかとこちらが焦って水を持って行ってやったり、抱き抱えてみせたりすると、嬉しそうに尻尾を振って威勢よく水を飲む。そうして満足げにその日向でイビキをかきながら眠るのでたちが悪い。
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