第4回WSレポートへの返信
2021年度開催の ななめな学校 連続ワークショップ における 金川晋吾さんの授業「夏への扉 日記をつける、写真をとる」の往復書簡で、金川さんとななめな学校ディレクター細谷でやり取りしています。
これは金川さんから細谷への、WS四回目のレポートに対する返信です。
細谷さま
こんにちは。
WS第4回の丁寧なレポートであり感想を書いていただきありがとうございます。
第5回の前に返事を書こうと思いながら、すでに今は第5回の翌日になっています…。
第5回を経験したあとだと、当たり前ですが第4回の記憶がさらに遠のいてしまいますね。
やってしまいました。
正直に言うと、第4回目を迎えるときには日記をつけること(日々写真を撮ること、日記のなかでその写真を見せること)へのテンションはけっこう下がっていました。人に見せる前提となると書けないことが多々出てくるし(自分は日記に書けないことがけっこう多いことに気づきました)、人に見せる前提で日記として書く文章というのがどういうものであるのか自分のなかで定まっていなかったというか、こんなものは人が読んでもあんまりおもしろくないんじゃないかと思ってしまうというか、わざわざ書くだけのモチベーションを維持することがむずかしくなっていました。
ただ、第4回WSで8月の成果展に向けての話をするために、これまでの日記と写真を試しにプリントアウトしてホッチキスでとめて本の体裁をとってみると、なかなか悪くないように思えてきました。普段なら「作品」としては発表しないような写真が乱雑に並べられていて、なんだかとても新鮮でした。これはけっこうおもしろいものになるかもしれないという気がしてきて、やる気がまた出てきました。
このことから、やっぱり自分は「何かおもしろいものを作る、作ることができる」ということがないとなかなかやる気にならないのだということに気がついたのですが、今回のWSの参加者のみなさんは普段はいわゆる「作品」と呼ばれるようなものを作ろうとしていない人がほとんどなので、どういうモチベーションでこのWSの日記を書いているのか、8月の成果展に対してどういうテンションなのかを聞いてみたくて、「書くことべのモチベーション」「表現というものとのこれまでの関り」「表現への興味」というようなことを問いかけてみました。
細谷さんが「写真は自分にとっては基本的にはアウトプットではなくてインプットだ」と書いてくれていたのが、とてもおもしろいと思いました。
たしかに写真にはその両方の側面があって(そしてこれは写真に限ったことでもないですね)、自分もインプットとして写真を使うこともないわけではないが、やっぱり自分は写真はアウトプットのツールになっています。だから、普段の生活のなかではあまり写真を撮らなくなっていて、あとになってから「あのとき撮っておけばよかったのかも」とぼんやりと思うことが多いです。インプットのためにというかアウトプットのためではない写真をもっと撮りたいと思っているんですが、それがなかなかできなくて、今回のWSはそういう写真を撮るためのいい機会だと思いながら、やっぱりそれほど撮れずにもう2ヶ月が過ぎてしまいました。
でも、成果展まではあと1ヶ月あるので、この8月はできるだけスマホで写真を撮っておこうと思っています。
8月の成果展、いいものにしたいですね。参加者のみなさんが展示に向けてどういうふうに日記を仕上げて来るのか、とても楽しみにしています。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします!
2021年 08月01日 金川晋吾
■ひとつ前の書簡(WS四回目のレポート)はこちら
金川晋吾(かながわしんご)・ 1981年、京都府生まれ。写真家。千の葉の芸術祭参加作家。神戸大学卒業後、東京藝術大学大学院博士後期課程修了。2010年、第12回三木淳賞受賞。2016年、写真集『father』刊行(青幻社)。写真家としての活動の傍ら、「日記を読む会」を主催している。
近著は小説家太田靖久との共作『犬たちの状態』(フィルムアート社)
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