生まれてくる時代をまちがえた
たまに、10年あとに生まれてこればよかったな、なんて思ったりする。
昔は、あと10年はやく生まれてこればよかったのに、なんて思っていたのに。
ハタチくらいのころは、大人がみんな「あの頃の音楽がいちばんよかった」「あの頃のドラマおもしろかった」という話ばかりをしていた。今のドラマはおもしろくないとか、今の音楽はありきたりだとか、今の時代をディスることをしていた。
ハタチの私は、もちろん昔のことに興味がないし、今の時代の音楽で生きているんだから否定しないでほしかった。好きな音楽は増えていくばかりで、たくさんライブに行っていたからこそ、よけいにそう感じていたんだと思う。
「あの頃はよかった」
なんて、私はぜったいに言わないと決めた。
たしかに、自分の青春時代がいちばん楽しいのは確かで、今でも思い出して浸ったりすると、切なくてさみしい。でもぜったいに「あの頃に戻りたい」とか「あの頃はよかった」なんて言うのはかっこ悪い気がした。
過去に縛られてるなんていわないけど、過去ばかりの話をするのは、なんだかもったいないような気がしてたまらない。
過去は過去。今は今。未来は未来。
いろんなことを感じながら生きてきた私だから、今の私があるわけで。また、10年後にきっと今のことを思い出すんだと思う。
思い出しても「あの頃はよかった」なんて言わずに、同じ時代を生きてきたなら、「どこかですれ違っていたかもね」と言おう。
生まれてくる時代は変えられないし、今だからこそできることがたくさんある。今の時代を生きてる若者が羨ましいなんて思う時もあるけれど、やっぱり生きてきた自分の人生がおもしろくて楽しいと、はっきり言えるように今日も私は生きていく。
だって、今の時代もすごく楽しい。
【月刊ナナメドリ】では、1000文字程度の日々是作文をお送りします。