ベーシストだって、エフェクターは使いたい〜ベーシストの「足許」に関する濃ゆい話。
え、ななまん、ベースなのにエフェクター使うんだ。
割とベテランのギタープレイヤー、そうだなあ…ベンチャーズとか寺内タケシとか、その時代に影響を受けた年代の先輩方から、よく言われる台詞ではあるんですよね。え、変ですかねえ…なんてつい思ってしまったりもするし、実際、現場で先輩のギタリストがBOSSのGT-1とかコンパクトなマルチ一台で凄いプレイをしてたりするのを目の当たりにしてしまうと、自分はベースなのに、こんなにいろいろ繋いでていいのかしらん、なんて思ったりもするのだけれけど。
ベースはアンプ直結。そういう拘りを持つ方もいらっしゃいますね。それはそれでいいと思いますし、そうだなあ…例えばプレシジョンベースとかヴァイオリンベースとかね。ああいう所謂「いなたい」音がするベースは、確かにアンプ直でぽつりぽつりと、敢えて少ない音数でちょっと弾いてみたりすると、独特な空気感が出て、それが味わいになるってところもあったりしますからね。「アン直」派の人たちが言いたいこともよくわかる。
確かにベーシストとしての究極のあり方として、誰が言ったか知りませんが「最強のエフェクターは、俺の右手だ」なんて話もね、あったりしますし。
しかしながら、私のように「最強のエフェクター」を持っているわけでもなく、固定のバンドではなくて師匠筋とか知り合いとか、そういう人たちに混ざって、半ばセッション的な感じで音を出す事が多くなり、その場その場に合わせて音作りをし、プレイスタイルも変えないといけないということになると、自分の好きな音だけ出せればいい、というふうにはできなかったりもするので、やはりエフェクターなんかも、使えるものは何でも使おうという感じにはなるわけで。
例の流行り病のせいで、今年はライブハウスのステージに全く立てていないのだけど、このままのほほんと自宅で過ごしていると、もともとそれほどでもない腕前も、機材も錆びついてしまうので(汗)、先月の勤労感謝の日の3連休の間に、ちょっとエフェクターボードを組み直して、自主トレに励んでみた訳ですがね。丁度11月の連休明けに、noteで知り合ったギタリスト、GIG33さんの記事で、
なんて記事も読ませていただいたので、じゃあちょっと、ななまんの足許、晒してみようかと思います(笑)
これが直近の、ななまんの「自宅練習用」セッテイング。
ラインは、上段右の黒い奴、TC ELECTRONIC のPolytune2のインプットから入り、左隣のMAXONのCP9Pro+→MXR M282 Dyna Comp Bass、下段に移って右側のMXR M80 M80 Bass D.I.→ZOOM B1XFourから出力される形になってます。
ま、コンプを2台繋いでたりとか、M80というプリアンプの後にマルチエフェクターをかますとか、いろいろ「変態」なセッティングではあるのだけど、ななまん的には結構気に入っているセッテイングではあるんですよね。
では、ちょっと個別に見ていきましょうか。
チューナーからコンプレッサー周り。
チューナーは、抜群の安定度のPolytune2。これ、ギターではじゃらーんと全部の弦を鳴らすだけで、どの弦がどのくらい上下にずれてるかをLEDで示してくれるのだけど、これ、ベースでも普通の4弦のもの、E〜Gの通常のチューニングであれば、ちゃんとトレースしてくれます。凄い。
5弦ベースの一番低い弦、Low-B弦だとちょっとポリモードで使うのは無理かな。結構チューナーが迷う(笑)なので、ななまんはポリモードではなく、弦一本ずつでチューニングしてます。
以前はBOSSのTU-2を使っていたんですがね…あれもPolytune同様、5弦ベースのLow-B弦のチューニングで「チューナーが音を取れずに迷う」という挙動は一切なく、いいチューナーなんですけどね。ただ、どうしてもBOSS特有の「音痩せ」があるような気がして、乗りかえてしまいました。実際、ライブハウスではPolytuneのLEDのほうが明るくて見やすい、という利点もありましたし。
ちなみに、Polytuneの設定はA=443Hzにしてあります。一般にはA=440Hzですが、プロのアーティストの楽曲などは442Hzとか444Hzとか、そのあたりでレコーディングされてることも多いようで、自宅練習でCDなどの音源と一緒に演奏したりすると、ちゃんとチューニングしているのに一緒に弾くと微妙に音程がずれてるような気がすることもあったりするので、こういう設定にしています。で、もしA=440Hzが必要な場合は、Polytuneの設定を変えてもいいんですが、面倒なのでB1XFourのチューナーを使うようにしてます(笑)
コンプレッサーは、私にとっては音作りの要というか。
難しいエフェクターではあるんですよね。コンプ。ホントにかけてて意味あるの?と思う方もおられるでしょうなあ…
ただ、ベースの場合だと、まあちょっと横着かもしれませんが、ひとつの楽曲の中にマイルドなフィンガー・ピッキングで弾くところとスラップで弾くところ、両方あるようなケースだと、いちいちボリュームを調整しなくても良いとか、そういうところですかね。
ギターにしろベースにしろ、弦楽器である以上は、ダイナミクスに合わせて音色も変わるということは避けられないわけで、ちょっと矛盾したような表現にはなりますが、「強く弦を弾いた時の音色を、小さく出したい」というような事を叶えてくれるのがコンプの効用のひとつではありますね。
あとは、まあこちらが本筋というか、コンプをかますと独特なアタックが付けられるというか。このあたりはコンプの持つ「音を圧縮する」という働きを、ほんの少しだけ実音の入力より遅らせることで、俗にいう「パッコーン」という感じのアタック音が加味されるというわけで。特にアタック音が肝になるスラップ奏法においては、コンプをかけるとかなり気持ちが良いというのはありますねえ。
Polytuneの隣の赤いのがMAXONのCP9Pro+。もともとはギター用ですが、ベーシストでもファンは多いみたいですね。本当に真面目なコンプで、ななまんも現場で一番多く使ってきたコンプではあります。あまり極端に音に味付けをするタイプではありませんが、これをかけると、ベースの各弦のボリュームのばらつきみたいなものが無くなり、特に3弦から上の高い方の弦は、「美味しい音」になりますね。
ベースのコンプといえば、ベストセラーのEBS、MultiCOMPとかね、定番もあるんですが、あれは言うなれば「味の素」で、かけると簡単に美味しくなるんだけど、ちょっと便利すぎるきらいはありますね。そこを行くと、CP9+は「ちょっと高級なだしパック」くらいでしょうか。自然派です。
その左隣の白いヤツは、コンプの名作、いわゆる「パコパコ系コンプ」の代表格であるMXRのダイナコンプのベース版、MXRのM282 Dyna Comp Bass。こちらはCP9+に比べると「いかにも」な音がしますね。味付け濃い目な感じで。これはスラップをやる時には気持ち良い感じで。
コンプを2台かませているのは、もちろん同時に使用するわけではなく、楽曲に合わせてコンプを切り替えるためですね。ライブ本番の時は、どちらかを抜きます。基本、派手めの曲が多い時はMXRかな。迷った時は、信頼と実績のCP9+です。
プリアンプ。でもあまり人とはかぶりたくないの。
プリアンプ。ここでベースの音色の基本線を決めていきます。
弾いてるベースの低音域と高音域、あるいは中音域を、どのくらい持ち上げ、あるいは削るかというのをね、ここで決めていくんですが、単に周波数の上げ下げだけでなく、用いるプリアンプによって音の太さや質感も変わってくる世界で。
まあ、ベース用のストンプ型プリアンプでは、Tech21のBassDriverという不朽の名作がありましてですね。一時期、ななまんも使ってましたね。あれはね、いい音が出るんですよ。多くの人がイメージする「ベースの音」になるというか。あれも「味の素」系かな。ただね、どうだろう。BassDriverは、ベースのキャラクターを薄めてしまうというか。どんなベースを繋いだところで、あれはベードラの音だよねえ、という感じになってしまうのがね、ちょっと惜しいというか。
最近使っているのは、これも最新機種ではないのだけれど、MXRのM80。このプリンアンプの良いところは、何と言っても、
COLORスイッチ。
ここでしょうなあ。写真をご覧いただくと、左上にありますよね。「COLOR」というプリント文字。このスイッチをオンにすると、いわゆる「ドンシャリ系」の音、ベース、トレブルがドーン、中音域はバッサリ、という感じのトーンになるんですよ(ただし、バルトリーニのXTCTプリアンプのような、ああいう感じのドンシャリ感とは質感が異なる感じで、ヌケ感が控えめな代わりにガッツ感があるというか)ね。これがね、音源と一緒に弾いたりする場合なんかにかなり効いてくるというか。
ただ、個人的には、実際のライブでは使うにはややアクが強いトーンになってるような気がして、本番ではCOLORは使わず、普通にEQを強めにかけてますが。
もちろん歪みもかけられるんですが、ザラつき具合が絶妙で、ちょっとソロにかけるとか、飛び道具的にも使えますんでね。ベンチャーズ世代の先輩方なんかは、一緒に演ってる時にベースに歪みをかけたりすると「何それ?」みたいな感じで驚かれたりもしますが、「まあ、ななまんらしくて良い」と言ったところで、割と受容されてます(笑)
ちなみに、ななまんが使ってるプリアンプはもう一台ありまして。
ProvidenceのDBS-1。これもなかなか優秀なプリアンプで、2系統の音色を設定できるんだけど、中音域は盛ったり削ったりできる周波数もコントロールできて、フット・スイッチで切り替えできるのが肝。出音はかなり上品な感じかな。EQの効きはやや控えめではあるけれど、かゆいところに手が届く感じというか。
ちなみに写真のつまみ位置はライブで使う時のセッティングで、Aチャンネルは普段使うドンシャリ系、Bチャンネルはフィンガー・ピッキングで使う中音域を強調したファンキー系の音色。惜しむらくは、EQ自体をスルーするスイッチがないことかな。曲によってベースを持ち換える時、アクティブ系のベースだと足許のEQをバイパスしたい時もあったりするので。DBS-1を使うのは、歪みを使わず、かつ手持ちのベースがパッシブだけっていう環境の時かな。
あると便利なワイルド・カード。ZOOMのB1XFOUR。
MXRのM80からのシグナルを受けるのは、ZOOMのコンパクトなマルチエフェクター、B1XFOUR。
ん、マルチエフェクターがあるんなら、別に前段のストンプ系エフェクターはいらないのでは?という疑問を持たれる方もいるでしょうなあ。
確かに理屈からいけばその通りで、実はこのB1XFOURだけでも、自分なりに作り込んだ音色は入れてますので、自分として及第点をつけられるライブは出来ると思うんですよね。実際のところ、スタジオ練習なら持っていくのはこのB1XFOURだけだったりしますし。
じゃあ、何故ストンプボックスのエフェクターと組み合わせるのか。
それは、組み合わせているストンプ形のエフェクターの出音のほうが「好きだから」ですし、ざっと自分の足許のつまみの位置を見て、おかしなセッテイングになっていないか一望できるということ。これがまず一点。
二点目は、実はこのB1XFOURがボリュームペダルの代わりだから。
ボリュームペダル、これはね、あったほうがいいケース、割とあるんですよね。かねがね、ななまんが師匠に言われていたのは、
「巧いバンドというのはね、ボリュームを下げてもちゃんと聴けるもんだよ」
と言うことで。
ななまんの場合、インスト曲の間を縫うようにボーカル曲が入るような感じのライブが多いと、ボーカル曲ではバックバンドの音量がすっと下がる、インストでは上げるというような調整が必要だったりするので、ボリュームペダルは必須だったりしますね。ただ、ボリュームペダルって、良いものだとエフェクタ―ボードの中で、結構スペースとっちゃうし、重かったりもするので、だったらマルチのエフェクターでペダルの付いてるやつを選んだら良いんじゃないの、という発想ですな。B1XFourのペダルは幸いなことに音痩せも無く(ま、あればあったで、内蔵エフェクトのブースターで補うことも出来ますしね)、ちゃんとボリュームペダルのミニマム音量もパッチごとに設定できたりするのでなかなか便利だし、1曲だけリバーブをかけたいとか、コーラスをかけたいとか、そういう時にも専用機を繋がなくても事足りるので、こういうところも便利かな。
そして何より、三点目に。
ライブに持ち込む機材は「故障するかもしれない」という想定が前提
だからですね。
もちろん全ての機材はライブに持っていく前に、動作チェックは絶対しますよ。しかし移動中の衝撃で不具合が起きるかもしれないし、何しろステージには「魔物」が棲んでいますんでね。本当に何が起こるかわからんのですよ。リハの時は問題がなかったのに、本番になったら故障してるとか(汗)シールドケーブルやパッチケーブル、エフェクターの給電ケーブル、バッテリー。こういうものの予備なんかもね、もちろんいつも携行してますし。
そういう事を考えると、システムが二重系になっていれば、最悪ストンプ側が駄目になっても、マルチ側が駄目になっても、それなりの音を出すことができる。こういうところがストレスフリーであることは、ライブの演者としては結構大事な事なんじゃないかと思うんですよね。そういう意味で、自分の足許の「しんがり」として、B1XFOURの存在は結構大きいものがあったりします。操作系もわかりやすいし、中に入っているエフェクトも派手すぎず地味すぎず、いい感じのものが多いしね。このあたり、個人的にはBOSSのGT-1Bよりも好みですね。
というわけで、今回の記事もまた長文になってしまったけれど(その意味で、いつも適切なテキスト量で毎日noteを更新している方々は凄いと思うんですけどね)、こんなシステムでななまんはベースの自宅練習を楽しくやってます。
忌々しい例の流行り病は、まだ収束までに時間はかかりそうだけど、いつか必ず、ステージの上にいつものメンバーと立てる日が来ることを祈りつつ、今は個人でできる感染防止策を徹底しながら、爪を研いでいましょうかね。
(了)